真央先輩はおとこ♂の娘    作:ろあタルト大福

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第2話 「テスト&同級生」

 「テスト」

 

 

 

 学校生活には避けては通れないものがいくつかある。

その一つがテストだ。

そして…俺は今それに焦っている。

 

 なぜなら俺は先輩と遊んでばかりで勉強をまったくしていなかったからだ。

このままではまずいと思い、机へ向かって、まずは授業の内容を振り返るためにノートを開いた。

 

 しかしそこにあったのはマス目だけが書かれたノートであった。

そう、授業中も先輩のことばかり考えてしまって、気づけばノートは真っ白だったのだ。

 

(まずいぞ……)

 

 テストはもう三日後に迫っていた。

幸い、テスト範囲はプリントに書いてあったので知ることができたが、今から勉強して間に合うかは分からない。

 

 今日は金曜日だったので勉強は明日の自分に任せて、眠ることにした。

 

 ──目覚まし時計が鳴り小鳥がさえずっている

気持ちのいい朝だ、テストのことがまったく解決していないことを除けば。

俺は朝ご飯を食べながら、考えていた。

 

(どうしよう? 勉強しても間に合う気がしないし)

(いや……だとしても勉強するべきだろう、しかし一人だとやる気が出ないな……)

 

 そこで俺は閃いた、先輩に教えてもらえばいいのだと。

この状況の原因は半分くらい先輩のせいだ。

とりあえず俺は先輩にメールを送ってみた。

 

【まくらぎ】「テストが迫っているので勉強を教えてください」

 

【先輩】 『かまわないよ、これでも僕は勉強には自信があるからね』

 

『それでどこで勉強するのかな?』

 

 しまった、それを考えていなかった。

近くの図書館は持ち込みでの勉強が禁止だし、カフェなどで長時間居座って勉強するのも俺は嫌だ。

 

 家で勉強するのもまず俺の部屋が片付いていないし、そもそも先輩と知り合ってからお互いの家に行ったことはない。

だが図書館もカフェもダメな俺には選択肢はこれしかなかった。

 

【まくらぎ】 「俺の家で勉強しませんか?」

 

 既読が付いたあと、しばらく返事はなかった。

俺は「やってしまった、流石に家に呼ぶのは早すぎた」と思いつつ、後悔で悶絶しながら床に転がっていると、通知音が鳴った。

 

【先輩】 『いいよ、そしたら何時にしようか』

 

 俺は驚いた。

もう少しまだ家に行くのは〜みたいな反応があると思っていたがあっさりOKされた。

俺が友人の家に行くことを深く考えすぎていただけなのだろうか。

 

 なにはともあれ、俺は先輩と12時に会う約束をし、俺の家の場所を伝えて、部屋の掃除に取り掛かった。

現在時刻は9時50分。急げば部屋の掃除も終わるだろう。

 

 だがここで俺は余計なことを考えてしまう。

カッコつけたくなってしまったのだ。

先輩が来るんだからいいところを見せたい……と。

 

 そして俺は掃除もせずに、近くの店でリードディフューザーとかいうオシャレっぽいアイテムを買い、無駄に部屋のレイアウトにこだわっていた結果12時になってしまった。

 

(もうこんな時間になってしまった、まだ片付いていないのに……)

(少しでも片付けなければ……!)

 

 そう思った瞬間、チャイムが鳴った。

来てしまったと思いつつ、俺は急いで玄関へ向かい、ドアを開けた。

 

『やあ、こうやって家に来るのは初めてだね』

『今日は僕に任せて』

 

 そう言った先輩の姿はとても綺麗だった。

制服ではない私服姿の先輩だった。

 

 いつもとは違う服装に、なぜか胸がドキドキしてきた。

思わず見つめていると先輩が、

 

『君はいつまで僕のことを見つめているのかな?』

『今の君の状況を考えれば、僕を見ている暇はないはずだけれど』

 

と言い、俺はハッとして本来の目的を思い出し、部屋に向かった。

 

「あんまり片付いてないですけどどうぞ……」

『本当に片付いていないね』

「お…お茶とか持ってきましょうか」

『大丈夫だよ、それよりテストの範囲を教えてくれるかな』

 

 俺はテスト範囲と現実の状況を全て話した。

すると先輩はふぅんと言いながら少し黙って考えた後、こちらを見つめながら口を開いた。

 

『予想以上だね、悪い意味で』

『まさか今からこの量をやるつもりだとは思わなかったよ』

 

 今から勉強することへの無謀さが改めて分かり、少し凹んで下を向いていると、パンッパンッという手を叩いたような音が聞こえた。

 

『凹んでいる暇はないよ、なってしまったものは仕方ないさ』

『それを解決するために僕が来た訳だしね』

 

 先輩の方を見るといつの間にかメガネをかけ、手には参考書が握られていた。

いつもとは違って見えて可愛かった。

 

『じゃあ始めようか、まずは現代文からね』

「はい!」

 

 先輩の教え方は優しく、そして分かりやすかった。

先輩がいれば家庭教師は要らないと思えるくらいに。

 

 そして優しく教えてくれる時の目元や表情も素晴らしかったが、見つめているのがバレると少し笑いながら『今はその時間ではないよ』と怒られた。

 

 そんなこんなありつつ、17時のチャイムが鳴る頃には、なんとか範囲の半分を終えることができた。

 

「やっと半分終わりました」

『よく頑張ったね、このままもう半分……と言いたいところだけど、17時になってしまったね』

『残念だけど僕はそろそろ帰って夜ご飯の支度をしなければならないんだ』

「そうですか……」

 

 俺は少し悲しい気持ちになった。

先輩とみっちり勉強をしたのに終わらなかったこと、そもそもこんな状況になったこと。

なんて俺は情けないんだろうと。

すると先輩が言った。

 

『そしたら今日は帰るけれど、明日は時間あるかな?』

「え?」

『ん? 別に今日は土曜日なのだから明日もやれば終わるよ』

 

 そうだった。

 俺は明日も同じ時間に先輩と約束をし、日曜日も勉強し、付け焼き刃ではあるが、無事に範囲を終えることができた。

 

『ふふっ、よく頑張ったね、でも次からはちゃんとこうなる前に学ぶべきだね』

「はい……」

『でも君は本当に頑張ったと思うよ、テストも頑張ってね』

「はい! 教えてくれてありがとうございました!」

 

──そしてテスト当日

 

 (おっこの問題は先輩とやったところだ、どう解いたっけな)

 

 そして俺は土日の記憶を蘇らせようとした。

だが、蘇ってきたのは先輩の姿だけだった。

そう、俺は先輩ばかりを見て、それ以外は忘れてしまっていた。

 

 付け焼き刃の勉強より先輩の姿の方が、俺の頭には焼き付いていたのだ。

当然そんな状態で良い点数が取れるはずもなく……。

後日、先輩に『テストどうだった?』と聞かれた俺は「先輩が綺麗でした」としか言えなかった──。

 

 

 

 「同級生」

 

 

 ──ある日の昼休み

 

「……みたいなことが前の授業であったんですよ」

『それは大変だったね』

「いやもうほんとに……」

『ふふっ、ところで』

「はい?」

『君は同級生と知り合いになったりはしないのかい?』

「えっ」

 

 俺は先輩の急な一言に驚いた。

なぜならそんなことは考えたことがなかったからだ。

 

「きゅ……急になんですか」

『君が僕以外と話しているのを見たことがないからね』

「俺は先輩がいれば別にそれだけで……」

『それは嬉しい言葉だね、でも同級生にも一人くらい話せる人がいてもいいと思うよ』

『僕が卒業したあと、君がひとりぼっちで寂しい思いをしていたら悲しいからね』

 

 その言葉を聞いて俺は少しハッとした。

確かに同級生にも知り合いがいた方が、テストの話題なども共有できる。

 

 それに先輩は俺より早く学校を卒業してしまう。

今のままでは俺の高校最後の一年はぼっちで過ごすことになるだろう。

 

『まあ、僕が留年すれば君と同級生になれるけどね』

「えっ」

『冗談だよ』

『とにかく話しやすそうな人を探してみたらいいんじゃないかな』

 

 先輩の冗談は本気か分からなくて、毎回ドキドキする。

その後も昼休みが終わるまでいろいろと話し、俺も先輩も自分のクラスへ戻った。

 

(話しやすい人……いるのか?)

 

 俺は自分の席からキョロキョロとクラス中を見回してみた。

傍から見ればだいぶ気持ちの悪い動きだったに違いない。

 

 とりあえず見回して分かったことは、もうグループができていて俺以外のぼっちはいないということだ。

陽キャは陽キャで陰キャも陰キャ同士で楽しそうに話しており、俺は疎外感を感じた。

結局何もできずにその日の学校が終わった。

 

──放課後

 

 俺は先輩と校舎裏で話していた。

 

『それで結局ダメだったんだね』

「はい…」

『まあ無理はしなくていいんじゃないかな』

『もし本当にダメだったら僕が留年してあげるよ』

「えっ、冗談じゃなかったんですか」

 

 そして先輩は俺の顔を見たあと、目を細めながら少し笑って、こう言った。

 

『さあ、どっちかな』

 

 俺はすごくドキドキしたが、それと同時に、このままではなにも解決していないということに気づいた。

 

「いや、このままだと同級生の話せる人ができないじゃないですか!?」

『そうだね』

「な……なんかアドバイスとかくださいよ」

『アドバイスかい? そうだね…君は……』

『人と話すのが苦手そうだから待ってたらいいんじゃないかな』

 

 それを聞いた瞬間、俺はずっこけそうになった。

それでいいなら誰も友達ができないことで悩まないはずである。

だが言い返そうにも事実ではあるので、俺は何も言えずに下を向いた。

 

『そう落ち込まないでくれよ、それに他にも手段はあるさ』

「留年じゃないですよね」

『違うよ』

「じゃあなんですか」

『部活に入ればいいんじゃないのかな』

 

 確かに、と俺は思った。

部活であれば今以上に人と関わるだろうし、それだけチャンスも増えるはずだ。

 

 それにもし、先輩も入ってくれるなら…。

そんなことを考えていると、先輩が俺の顔を見ながらこう言った。

 

『僕は入らないけどね』

「えっ」

 

 それを聞いた瞬間、俺はへなへなになってしまった。

友達を作りながら先輩と部活ができる…その幻想が打ち砕かれたからだろう。

 

『18時までには帰ってご飯を作らないといけないからね』

『それさえなければ僕も入りたいのだけれど』

「そ…そんな」

「先輩がいないなら部活はやめておきます…」

 

 俺がまた下を向いていると、

まるで今の俺の気分を表しているかのように日が沈み始めていた。

 

『そろそろ僕は帰ろうかな』

「うう……」

『ほら、顔をあげてくれよ。同級生のことはまた今度一緒に考えてあげるよ』

「先輩……」

『じゃあまたね』

 

 そう言うと先輩は手を振りながら帰っていった。

落ち込んでいたが、先輩のおかげでまた元気が出てくる。

 

「よし、今度こそいい方法を考えるぞ」

 

 俺はそう呟き、鼻歌交じりで帰路についた。

なんだかんだで先輩のおかげでいい一日になった気がする。

だがその時の俺は、背後からの視線に気づいていなかった──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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