「読心術」
いつものようにお昼休みに、先輩たちと三人でご飯を食べている時、
俺はふと午後の授業のことを思い出し「嫌だなあ、もう帰りたいなあ」と思っていた。
すると、たまたま先輩と目が合い、
先輩に「ふふ、気持ちは分かるけど、帰ったらダメだよ枕木君」と言われてしまった。
「もお〜俺の顔見ないでくださいよお〜」
「たまたま視界に入ってしまってね。ふふ、ごめんね」
「まあ別にいいですけど……っていうか、先輩ってよく顔見るだけで考えてることを当ててきますけど、どういう仕組みなんですか? それ」
俺が、前から少し思っていた疑問を投げかけると、竜崎も乗ってきた。
「確かに、私も気になります。それに、枕木が読まれているのはよく見ますが、他の人もいけるのか? なども気になりますわ」
「おや、二人とも興味を持ってくるとは驚いたよ。まあ、話したいところだけれど、お昼休みだと時間が足りないかもね。二人とも、今日の放課後は空いているかな?」
「俺は大丈夫ですよ」
「私も、今日は空いていますわ」
「ふふ、じゃあ決まりだね。じゃあ放課後、僕の家に行って話そうか」
俺はその言葉に舞い上がった。
先輩の家に行けるなんて嬉しすぎる。
だが、俺が舞い上がったのは一瞬だった。
それは……俺以上に竜崎が喜んでいたからだ。
自分以上に上がってる人がいると、冷静になってしまう。
竜崎は目を輝かせ、その場で舞っていたり、
他にも助走をつけて飛び、まるでアイススケーターかのように回転ジャンプしている。
……空中で十回転以上しているように見えたが、きっと気のせいだろう。
とにかく、竜崎の喜びようはまさに狂喜乱舞と言えるほどだった。
(まあそれもしょうがないか……竜崎は俺と違って忙しいから、その分先輩の家に行く機会も少ないだろうしなっ。ははっ。)
「……今、あなた変なこと思いましたよね?」
「さあ〜?」
そのあと、竜崎と軽く言い争いをしていると、
先輩が笑いながら「ふふ、楽しそうだね。さて、僕はそろそろ教室へ戻るよ」と言い、戻っていった。
……時計を見ると、次の授業がもうそろそろ始まる時間になっていて、
それを見て俺たちも言い争いを止め、急いで教室へ戻った──。
そして時が経ち──。
「さあ、二人とも入って」
「お邪魔します、先輩」
「先輩のお家ですわぁっ。お邪魔いたしますっ」
俺たちは先輩の家に入った。
竜崎のテンションがおかしいが、まあいつも通りだしいいだろう。
「そういえば、リオさんもお母さんもいないんですね」
「ん? ああ、また二人でお出かけの刑さ」
どうやら、お母さんは先日のリオさんの言葉を気にしていたようだ。
……先輩も似たようなことを言っていた気がするが、先輩には刑は科されないのだろうか。
「先輩のお母様にお会いできると思っていたのに…残念ですわ」
「ふふ、それはまた今度だね。さて、お茶とお菓子を持ってくるから、そのあと今日の本題を話そうか」
そして、先輩がお菓子とお茶を持ってきて、俺たちは話し始めた。
ちなみに先輩が持ってきたお菓子は、また「たけのこの森」だ。
「さてと、枕木君は、なんで考えていることが分かるのか、その仕組みが気になるんだったかな?」
「そうですよ。見ただけでなんておかしいですよ」
「そうかな? まあ真面目に答えると、日常生活で「あっ、この人嘘ついてるな」って思う時があるだろう? それを見抜くのが生まれつき得意なだけさ」
「……嘘かどうか分かるだけならそれでいいですけど、先輩は心まで読んでくるじゃないですか」
「顔は情報が沢山出ている場所だからね。そこを見れば分かるのさ」
……俺はもう一度「なんで見たら分かるんですか?」と言おうとしたが、
これ以上言っても「生まれつきさ」くらいしか返って来なさそうなので、諦めることにした。
心を見抜く仕組みは、そういうものとして考えた方がいいのかもしれない。
「さて、枕木君の質問に答えたところで、次はりゅりゅの質問に答えようか」
「はい、先輩は枕木以外の人も顔を見れば分かるのか、教えてほしいですわ」
「ふふん、答えは「YES」だよ。ただし、分かりやすい枕木君と違って、他の人はじーっと見ないと分からないけどね」
俺は今、分かりやすいと言われてしまった。
そんなに俺は顔に出ているのだろうか。
「せ、先輩。俺ってそんなに分かりやすいんですか……?」
「うん、君のは一瞬見ただけで分かってしまうよ。分かりやすすぎて、僕が
その気になっていない時でも頭の中が見えてしまうほどにね」
「そ、そんなあ」
どうやら俺は、よっぽど分かりやすいらしい。
これからは、先輩に見られても恥ずかしくないようなことを考えなければ……。
それはともかく、そのあと竜崎が本当に自分のも見えるのか試してみたり、
本当に一瞬でも俺の思考を読めるのかなどを試したりしたが、
いずれも先輩は思考を読むことができた。
なんて恐ろしいんだ。
そんなこんなで遊んでいると、すっかり日が沈み、家に帰る時間になってしまった。
「あら、もうこんな時間ですわ。私はそろそろ帰ります……」
「そうだな、俺も帰ろうかな」
「そっか、ふふ、今日は楽しかったよ」
先輩が、とても嬉しそうに笑っている。
その笑顔が、普段と比べてもとてもよいものだったので、
俺は先輩に「なんでそんなに笑ってるんですか?」と聞いた。
「だって、二人とも顔を見た時、心の中まで楽しそうだったからね」
「「先輩……」」
先輩の思わぬ一言に、思わず竜崎と言葉が被ってしまう。
俺たち二人が、楽しそうにしているだけで、
そんなに笑顔になっていたとは思わなかった。
「さて、エントランスまでお見送りをするよ……それと、これからもよろしくね。二人とも──」
「「はいっ」」
また竜崎と言葉が被った。
……まあ、楽しいしこれでいいのかもしれない──。
「特技」
昼休み、俺はお昼を食べる前にお手洗いに行こうとしたが、
そこが混雑していたせいで、普段より遅れていつもの場所へ行った。
到着すると、竜崎と先輩がなにかについて楽しそうに話しているのが聞こえる。
俺はなにを話しているのか気になり、物陰に隠れて盗み聞きをすると、
どうやら「特技」について話しているらしい。
……これはまずい。
きっと、俺が今行ったら「やあ、枕木君。あ、そうだ、君って特技はあるかい?」とか言ってくるだろう。
……俺には、特技と言えるようなものはない。
だが、俺と違って先輩や竜崎は凄い特技があるのだろう。
(よしっ、ここは、俺だけ特技無しで自尊心が傷つかないように話題が変わるまで隠れていよう、そうしよう)
そう思っていた時だった。
足元にあった小枝を踏んでしまい、音で気づかれてしまった。
「枕木君かな?」
「そ、そうです。は、ははっ、すいません今日遅れちゃって……」
「ふうーん……」
先輩はそう言いながら俺の顔を見ようとしてくる。
これはまずい。
このままでは盗み聞きや、特技のことまでバレてしまう。
そう思った俺は急いで先輩から顔を背けた。
「そんなに顔を隠さなくてもいいのにね。僕は悲しいよ〜ふえーん」
先輩がわざとらしい声で泣いたふりをしている。
「だ、だって顔見せたら思考読まれるじゃないですか」
「……そうだね。君が盗み聞きとかしてたのがね」
その一言に俺は一瞬固まってしまった。
なぜか、盗み聞きしていたことがバレている。
……ここまで読まれているということは、おそらく特技のこともバレているだろう。
「な、なぜそれを……」
「前に言っただろう? 君は分かりやすいから一瞬で分かるってね。さて、そんなことよりお昼を食べようよ」
「ぬぐぐ……」
そして、俺は渋々ベンチに座り、一緒にお昼を食べ始めた。
すると、竜崎がこちらを軽蔑が混じったような眼差しで見つめてきている。
「な、なんだよ竜崎」
「盗み聞きとは、感心しませんわね。というよりあなた、前も盗み聞きを行っていましたよね?」
竜崎が眉を顰めながら俺を見つめてくる。
「そ、そんなこともあったかなあ。ま、まあいいじゃん、昔のことは忘れようぜ」
「ふふ、そうだよりゅりゅ。いいじゃないか少しくらい」
「先輩……」
先輩が俺をかばってくれたのが嬉しく、つい声が出てしまう。
先輩は優しい。
「それより、特技の話に戻ろうよ」
先輩はニヤけた表情で、俺を見つめそう言った。
俺の思考を読んだはずなのにわざわざ話を戻すなんて……やっぱり先輩は優しくない。
「りゅりゅは、確か『気配を消す』のが得意なんだったよね」
「はい、そうなんですわ」
(なんだその特技……本当かなあ)
俺がそう思っていると、先輩が俺の顔を見て、
「おや、枕木君は疑っているようだね。せっかくだし、りゅりゅ見せてあげてよ。枕木君が来る前にやったけど、凄いんだよ」と言い、
竜崎は一旦、見えなくなるほど遠い場所まで歩いていった。
「ふふふ、枕木君、今のうちに周囲を警戒した方がいいよ」
「なんすかそれ……」
一応、周囲を見回してみたが誰もいないし気配もしない。
「誰もいませんよ先輩。はあ、早く終わら……」
そう俺が言いかけると、急に背後から肩に手を置かれた。
……い、いやそんなはずはない。
先ほど見回した時にはいなかったはずだ。
だが確かめるために背後を向くと……そこには竜崎がいた。
「ほあああああっっ」
「ふふ、言ったでしょ。りゅりゅの特技は凄いって」
「す、凄いですけど……びっくりしますよ」
「ちなみに、私はあなたが見回してる時にはすでにいましたわ。ベンチの下に隠れていましたの」
「そ、そうか……まあ竜崎の特技が凄いのは分かったよ……」
「ふふ、じゃあ次は僕の特技を話すよ。りゅりゅにはもう言ったのだけれど……」
その瞬間、午後の授業が始まる五分前を知らせるチャイムが鳴った──。
「おや、もうこんな時間だね。そしたら教室へ行こうか、じゃあね二人ともばいばい」
先輩は手を振りながら教室へ戻って行く──。
……結局、昼休みは竜崎の特技を見ただけの、意味の分からない時間になってしまった。
そのあと、俺たちも教室へ戻り、授業が始まった。
(はあ、今日の昼休みはご飯食べて驚かされただけかよ……まあいいけど。てか、先輩の特技ってなんだ? 気になってきたぞ……)
それを考えだしてからというもの、俺は授業に全く集中できなくなり、
気づいた時には……。
(やべ、今日の授業もう終わっちゃった。授業内容なんにも記憶に残ってないぞ)
そう思いながら帰りの準備をし、少し落ち込みながら帰ろうとすると、
校門に先輩が立っていて、俺に話しかけてきた。
「やあ、どうやら僕の特技が気になりすぎて授業に集中できなかったようだね」
「ぬぐぐ……そこまで見られるの嫌ですね……。まあ、そうなんですけど」
「ふふ、でも集中できなかったのは僕のせいでもあるし、お詫びに僕の家に来てほしいな。僕の特技を実演してあげるよ」
「えっっ、先輩の家に行っていいんですかっ? やったああっ」
「ふふっ、じゃあ行こうか」
そして俺はウキウキしながら、先輩の家に行き、
先輩の部屋に入った。
「はあ〜、先輩の部屋に入るのは久しぶりですね」
「枕木君、あまり気持ち悪いことはしないでね」
「しませんよっっ」
「ふふっ、さて本題に入ろうか」
そう言うと先輩は、どこからか縄を取り出した。
その縄は重いものを吊るしても千切れなさそうなくらい、立派なものだった。
「えっと……それは特技にどう関係が……」
「関係大アリさ。さあ、この縄で僕を縛っておくれよ」
「えっっっ」
特技とはまさか緊縛されることなのだろうか。
いや、それは特技というより趣味のような気がするが、
どちらにせよ先輩にこんな趣味が……。
戸惑いながら先輩を見つめると、先輩は口を開いた。
「何を勘違いしているのか知らないけど、僕の特技は『縄抜け』だよ」
「あっ……そうでしたか」
「枕木君のスケベ」
「スケベじゃないですうっ」
(ま、まさか先輩の縄抜けが特技だったとは……まあいいや。スケベ扱いしてきた仕返しにキツく縛ってやりますからねえ)
俺は、縄で先輩の手と体をまとめて、帯のようにぐるぐる巻きにして縛った。
「ふうん、枕木君は僕をこういう風に縛り上げたいんだ」
「違いますっ。そんなことより早く抜けてみてくださいよ。無理だったら早めに言ってくださいね。ハサミで切ってあげますから」
「ふふ、その心配は必要ないさ。いくよ」
そう言うと、先輩はするりと縄から抜けた。
「なっ」
「ふふ、驚いたかな。まあいろいろとコツがあるのさ。君が知りたかったら教えてあげるよ」
「別にいいですよ……てか、この特技いつ使うんですか」
「ん? ほら、いつか変な人に襲われて縛られるかもしれないだろう? その時に助けになればと思ってね」
その言葉を聞いた瞬間、俺は少し不安になった。
確かに、先輩は可愛くて綺麗だから、そんな目に遭わないとは言えない。
けど、そんな状況になってほしくはない。
「……あ、ごめんね枕木君。こんな暗めの話をしてしまって」
「だ、大丈夫ですよ。その……そうならないように、俺が守りますから……」
少しの間、二人の間に静かな時間が流れたあと、先輩が笑った。
「な、笑わないでくださいよ。お、俺結構本気で言ったんですからね」
「ふふ、知っているさ。君が守ってくれるって聞いて嬉しくなってしまったんだ」
「もお、先輩ったら……」
「ふふっ、そういえば君は特技ないことに悩んでいたけれどあるじゃないか」
「え、なにがですか?」
「僕を喜ばせてくれるって特技さ。ふふ、じゃあこれから守りは頼んだよ、枕木君」
「は、はいっ」
後日──。
「あっ、先輩待ってくださいっ。ベンチに座る前に俺が確認しますからっ。よしっ、ささくれ等はありません。安心して座ってくださいっ」
「あっ、先輩危ないっ。足元に葉っぱが落ちてますっ。滑ると危ないですよっ」
「あっ、先輩っ。他の生徒にあまり近づきすぎないでくださいっ。他のやつらなんか何を隠し持ってるか分かりませんからねっっ」
「あっ、先ぱ……」
「枕木君」
「どうしました先輩?」
「ちょっと過保護かな……」
そのあと、俺は守りの任を解任された──。
R-15有り 「ズボンorスカート」
「おはよう、枕木君」
「あ、どうも先輩……ん?」
今日もいつもと同じように、校門にいる先輩に挨拶をしたが、
一つだけいつもと違う部分があった。
制服が女子ではなく男子用のものだったのだ。
「今日は男子ですか。珍しいですね」
「ふふ、ズボンの気分だったし、なにより今日は風が強いしね」
先輩の男子制服は、いつも女の子のように見える先輩が、実は男だという事実を思い出させてくれる。
普段とのギャップを感じられるから、俺は先輩の男子制服姿が好きだ。
ただ、風が強い日に着てくるというのはいただけない。
俺は風の日でも……いや、風の日だからこそ先輩にスカートを履いてほしいっ。
「ふうん……君は、僕が風のいたずらに困っている所が見たいのかな?」
「えっっ、まだ顔見られてませんよっ」
「ちらっとね。まあ、君がスケベなのは今に始まったことではないけど、風の日にスカートを履いてたら、君以外にも見られるかもしれないしね」
またスケベと言われてしまったが、今回は否定できない。
それはそれとして、確かに他の人に先輩のスカートが風にいたずらされている所を見られるなんて、
想像しただけで怒りで全身の血が体から吹き出してしまいそうだ。
「とにかく、僕は風が強い時はスカートを履かないということさ……あ、そうだ。君に教えてほしいことがあるんだ」
そう言うと、先輩は急に俺と目を合わせ、真剣な表情になった。
なにか重要なことでもあるのだろうか。
「ど、どうしました……?」
「もし、僕がこの先ずっと、ズボンかスカートどっちかしか履けないってなったら、君はどっちを選ぶかな?」
俺は予想外の答えに力が抜けそうになった。
真剣な顔だった割には、こんなよく分からない二択をしてくるなんて。
「なんすかその二択……」
「いいから、答えてほしいな」
「はあ……まあいいですけど」
……おそらく、この質問の意図は「ズボンとスカート、どっち姿の僕をずっと見たい?」ということだろう。
しかし、そうなってくると正直スカートを選びたい気持ちが強くなる。
ズボンにはズボンの良さがあることは承知だが、
スカートには、先輩の黒いニーソとスカートの間の太もも……いわゆる「絶対領域」が見られるという魅力が……。
ズボンの先輩には申し訳ないが、ここはスカート先輩だろう。
「俺は、スカートを選びますっ」
すると先輩が、自分の口に指を当て、俺を笑ってくる。
「な、なんですか」
「ん〜? 予想通りだなって。だって君、僕がスカート履いてるとき太ももばかり見てるもんね」
「えっ、そ、そんなことは……」
「これは君の思考を読んだ訳じゃなくて、君の視線がいつも太ももを向いていたということさ。僕が座ってる時なんかは特にね。ちなみに、ズボンの時は君は僕の顔ばかり見てるよ」
自分で意識していたつもりはないが、どうやら俺の視線はずっと先輩の下半身に向いていたらしい。
また先輩にスケベ扱いされてしまう……。
「まあとにかく、君の答えは『スカート』でいいんだね?」
「えっ、まあ、はい」
「本当に……? 本当の本当に……? ファイナルアンサ〜〜?」
先輩がしつこく聞いてくる。
この二択にそんな時間をかける必要なんか……いや、もしかすると、
先輩は本気で俺の答えた方しか今後着ないのかもしれない。
普通の人ならこんなしょうもない二択で、今後の人生の服装を決めたりしないだろうが、先輩は決めてくるかもしれない。
だとしたら安易にスカートと決めるのも……いや、だがしかし……。
「ふふ、悩んでるみたいだね。じゃあ僕は教室へ行くよ、またね枕木君」
「え? ちょ、ちょっと待ってくださいよおっ」
俺は先輩に声をかけたが、そのまま教室へ行ってしまった。
人を悩ませるだけ悩ませておいて先に行くなんて、酷い。
「先輩のいじわるっ、先輩の悪魔っ」と、教室に行く途中に振り向いてきたら、
俺の顔を見せて、思考を伝えてやろうとしたが、先輩が振り向くことはなかった。
そのあとも俺は授業中や昼休み、とにかく一日中、
先輩の質問に対して頭を悩ませていた。
そして気づけば──。
(全然集中できずに今日の学校終わっちまった……。これも全て先輩のせいだ)
そんな風に先輩のせいにしながら、帰ろうと校門へ向かうと、
いつも通り先輩が立っていた。
「やあ、枕木君」
「もお……先輩のせいで集中できなかったんですからね」
「ふふ、ごめんね。でも君は賢いから、これくらいでは成績に支障はないはずさ」
なんか「賢い」と褒めて誤魔化そうとしている気がするが、
なんだかんだで褒められるのは嬉しいので、俺は誤魔化されておくことにした。
「それで……二択の答えは決まったかな? 枕木君」
「それは……」
俺は一日中考えたが、結局答えは出なかった。
俺には、先輩の一生の服を決める勇気はない。
「その、俺には決められないというか……どっちもいい所があって選べないっていうか……」
「……ふふっ、仮定の話なのにそんな真剣に考えてくれたんだ」
「えっ、仮定なんですか」
「当たり前じゃないか。二択で今後の服を決めるなんてありえないよ」
俺は深読みしすぎていたらしい。
だがそれはそれとして、先に言っておいて欲しかった。
「まあとにかく、君はどっちかじゃなくて、どっちもが良いんだね」
「え、まあ、はい……」
「ふふっ、そしたら明日を楽しみにしておいておくれよ。じゃあね枕木君」
そして、先輩は帰って行った。
……明日を楽しみにとはどういう意味だろうか。
そして次の日の朝──。
登校すると、また校門に先輩が立っている。
今日の先輩は女子制服に戻っている。
「やあ、枕木君」
「どうも先輩、あの、昨日のことについてなんですが……」
「……ここだと人が多いから、校舎裏へ行こうか」
「えっ? わざわざですか?」
「うん、ほらおいで」
先輩が俺の手を引っ張って、校舎裏まで連れて行こうとする。
一体なにがあるのだろうか。
「……さて、ここなら人がいないね」
「先輩……なんのために来たか教えてくださいね」
「ふふっ、それはね」
先輩はそう言いながらスカートの裾をつまみ、まくり上げようとする。
「ちょ、ちょちょっと、なにしてんですかあっ」
「いいから、見ててほしいな」
先輩はスカートをまくり上げていく──。
朝からこんなことするために俺を校舎裏へ呼んだのだろうか?
困惑する俺をよそに、先輩はさらにまくり上げていき、もうスカートの中が見えてしまいそうで──。
「せ、先輩っ。朝からハレンチすぎま……ん?」
先輩がスカートをまくり上げ、その中に見えたのは、短ズボンだった。
「えっと……これは……」
「ふふっ、君が昨日『どっちもいい』と言ったからね、スカートとズボンをどっちも履いたのさ」
「は、はあ。そうでしたか……」
「ふふっ、困ってる枕木君が見れて楽しかったよ。ほら、ズボンなんだからもっと見ていいよ」
先輩が、俺をからかってきている。
先輩は、まるで小悪魔だ。
「じゃ、じゃあ俺だってじっくり見てやりますからねっ」
「ふふ、構わないよ」
そして、俺は先輩の短ズボンの部分をじっと見つめた。
……短パンと、黒ニーソの間の太ももが素晴らしい。
先輩の太ももは細いが、それが体が小さめの先輩に合っていて、
見ているだけで、膝枕の時などの感触を思い出させ、俺を興奮させてくる。
そんなことを思いながらじっと見つめていると、短パンの一部分だけが、少しだけ膨らんだような気がして、
なんだろうと思い、今までより近くで見ようとすると、
先輩が、急にまくり上げていたスカートを下ろした。
顔を見ると、少し赤くなっている。
「……どうしました先輩? 見ていいんじゃないんですか」
「……思ったより恥ずかしかったから、これで終わりね。じゃ、じゃあね枕木君」
そう言って先輩はそそくさと教室へ向かって行った。
……自分でやっておいて恥ずかしがるなんて、先輩はよく分からない。
まあ、可愛いからいいか──。