「寝顔」
金曜日の帰り、俺は先輩と話していた。
「明日から土日だね、枕木君」
「そうですね。いや〜休みが来ると思うと元気が出てきますよ」
「ふふっ、それでさ、明日って暇かな?」
「え、暇ですけど……なんでそんなこと聞くんですか」
俺がそう聞いても、先輩はなにも言わずに笑った。
意味が分からない。
「もお、なんなんですか。土日に予定が無くて暇な俺をからかってるんですか」
「ふふ、ごめんよ。そんなつもりじゃなかったんだ」
「じゃあ、なんですか」
「……明日、君のお家に遊びに行けるなって」
先輩はまぶたを半分落とし、半目で俺を見つめながらそう言ってきた。
その口元は少し緩んでいて、嬉しそうだ。
……そんなに俺の家に来たかったなら、もっと早く言ってくれればよかったのに。
先輩は可愛いなあ。
「もお〜、先輩も早くそう言ってくれればこんな回りくどいことにならなかったのに〜」
「ふふ、でも僕が直接言わないのはいつものことだろう?」
「まあ、そうですけどね」
「それじゃあ、また明日ね、枕木君」
「はいっ」
そして、俺は先輩と別れ、家に帰った──。
先輩と俺の家で遊べるとは、なんて素晴らしい休みなんだ。
俺は明日を楽しみにしながら家の掃除などをし、
明日の先輩の服がスカートかズボンか予想しながらベッドに入った──。
次の日──。
「やあ、枕木君」
「あ、どうも先輩」
先輩が俺の家にやってきた。
服装はズボンで、上はカーディガンを羽織っている。
「……先輩、カーディガン羽織るの好きですね」
「ふふ、楽だからね。さて、そしたらお邪魔してもいいかな?」
「あ、どうぞどうぞ……ん?」
先輩を家に入れようとしたとき、俺は先輩が手に大きな荷物を持っていることに気がついた。
……俺の家で遊ぶだけにしろ、お土産を持ってきてくれたにしろ、それは大きすぎるものだった。
「あの……どうしたんですか、その荷物」
「ん? ああ、万が一の備えさ。あまり気にしないでくれたまえよ」
「はあ……」
「万が一ってなんだ?」や「気にしないでって言われても気になるんですけど」など、
言いたいことは沢山あったが、先輩にそれを言っても「ふふ、気にしないでおくれよ」とかはぐらかされそうなので、
聞くのはやめ、とりあえず家に入れた。
「ありがとうね、枕木君」
先輩は俺に笑いかけながら、そう言ってきた。
……いろいろ気になることはあったが、この笑顔だけでそれが吹き飛んでいく。
先輩はずるい。
「そしたら、なにして遊ぼうか、枕木君」
「え、あっ、お、オセロとかどうですか」
「ふふ、それはいいね」
そのあと、俺たちはいろいろなゲームで遊んだ。
オセロは心を読まれないために先輩に目隠しをしてもらったりしたが、
まったく勝てず、テレビゲームに切り替えても一度も勝てなかった。
「先輩〜、ちょっと手加減してくださいよお……」
「ふふっ、それでも別にいいけれど、君は手加減した僕に勝って嬉しいのかな?」
先輩が俺を挑発するような顔で見つめてくる。
「……嬉しくないですっ。よしっっ、やってやりますよっ。俺に本気を出させたことを後悔するといいですねっっっ」
「ふふ、その意気だよ」
俺はコントローラーを握る手に力を入れ、目を血走らせて戦ったが、一度も勝てなかった。
先輩のずるっ、いんちき。
「僕の勝ちだね」
「ぐぐぐ……」
「そしたら、僕の言うことを聞いてもらおうかな」
先輩が急に変なことを言い出してきた。
今日の俺たちはそんな取り決めはしていない。
「なんですかそれ、自分が勝ったからってずるいですよっ」
「え〜、ダメかな、枕木君」
「ダメですう〜急に言われても困りますう〜」
「むう……」
先輩は落ち込んだのか、眉が八の字になっていく。
だが、急になにか閃いたのか「ハッ」と言い、俺の膝の上に座ってきた。
「な、なんですか急に」
「ん、言うことを聞いてもらえないなら、勝手にやろうかなって」
「……そんなに俺の膝に座りたかったんですか」
「うん、君のここはあたたかくて落ち着くからね」
そう言うと、先輩が俺の胸に耳を当て、服を優しく掴んできた。
「ねえ、枕木君。このままここで寝てもいいかな……?」
「え?」
「ゲームで遊んで疲れてしまったんだ」
「はあ……まあ、いいですけど」
「ふふ、ありがとうね。あ、そしたら左腕を僕の方に寄せてほしいな……」
俺が先輩の言葉通りに左腕を寄せると、
先輩は両腕を回してきて、俺の左腕を抱いた。
「えっと……これは……」
「抱き枕が欲しいなって……」
「そ、そうですか」
「ふふ……ん……まぶたが重くなってきたよ。それじゃあおやすみ、枕木君」
「あ、はい。おやすみなさい、先輩」
俺がそう言うと、先輩はすぐに眠った。
どうやら、よっぽど眠かったらしい。
しかし、一緒に寝たことはあるが、先輩だけが寝るのは初めてだ。
(……そういえば、先輩の寝顔って見たことないな)
俺は思わず、先輩を起こさないように自分の顔を動かし、先輩の寝顔を覗き込んだ。
その顔は普段と違い、完全にまぶたが閉じていて、少し頬が赤くなっている。
先輩は、寝ている時も口を閉じていて、しっかりしている。
……先輩は、寝顔も天使のようだ。
それと、睡眠により高くなった先輩の体温を左腕を通して感じる。
とてもあたたかい。
(……先輩、可愛いな)
俺は、右腕で先輩を優しく抱き、そのまま過ごした。
そして数時間後──。
「ん……」
「お、ようやく起きましたか」
先輩は寝起きでまだ眠いのか、数回まばたきをしたあと、
大きく深呼吸をして、目を覚まし、いつもの表情に戻った。
「おはよう、枕木君」
「おはようございます、先輩。まあ、もう夕方ですけどね」
「ふふっ、そうだね……あっ」
先輩が急に、自分の体や服を確認し始めた。
服の乱れを見たり、においを嗅いだりしている。
「……よし、大丈夫だね」
「あの……どうかしましたか先輩」
「ん? 君が寝ている僕にいたずらしていたりしないかなって確認さ」
「なっ、そんなことしませんよっ」
「ふふっ、知っているさ。君を信用しているから、寝たんだからね」
「はあ……なら、確認しなくても……」
「一応ね」
先輩が笑いながら、俺の顔を見てきている。
……まだ起きてすぐなのに、先輩はもういつも通りだ。
もう少しだけでも、寝ぼけていたら……。
「おや、君は寝ぼけている僕の方がいいのかな」
「え、あっ、これは違くて」
「ふふっ」
「あ、あんまりからかわないでくださいっ。そ、そういえば先輩、帰る時間は大丈夫ですか? もう夕方ですけど……」
俺がそう聞くと、先輩はスマホで時間を確認した。
「おや、もうこんな時間だとはね。寝すぎてしまったよ」
「本当ですよ」
「ふふっ。はあ、本当は君の家に泊まりたいくらいだよ」
「ははは、でも着替えとかあったらいけますけど、そんなのないですからね〜」
俺が冗談混じりにそう呟くと、先輩の目つきが変わった。
「ふうん、着替えがあればいいんだ」
「え? まあ……」
「ちょっと待っててね」
先輩はそう言うと、持ってきた荷物の方へ向かっていく。
……なぜだろう、嫌な予感がする。
まさか、あの荷物がやたらと大きかった原因って……。
「はい、この荷物が僕の着替えや、ヘアブラシとかが入ったお泊まりセットだよ」
(や、やっぱりそうだったかあっ)
「これで、お泊まりできるよ」
「い、いや急に泊まるってなったら先輩のお母さんとかが困るんじゃ……」
「もう言ってあるから大丈夫さ」
「ええ……」
先輩の準備が万端すぎる。
おそらく、最初からこれを狙って俺の家に来たのだろう。
だが、俺が断ればこの話は終わりに……。
その時、先輩が俺に抱きついてきた。
「ちょ、なにするんですかっ」
「僕、君の家に泊まりたいな。ダメ……かな?」
先輩が甘えた声を出しながら、俺を上目遣いで見つめてくる。
「い、いや……でも急に……」
「お願いだよ、枕木君……」
先輩が抱きつく力を強めてくる。
そのせいで先輩の温もりがより伝わってきて──。
「わ、分かりましたよっ。泊めればいいんでしょっ」
「わーい。君は優しいね、枕木君」
俺は先輩の押しに負け、泊めることになってしまった。
……俺たちはどうなってしまうのだろうか──。
(勢いで泊めるって言っちゃったけど、どうしよう……。ご飯とかないぞ……。あと、いつ帰るんだろう……)
そんなことを思っていると、先輩が俺の顔を覗き込んでくる。
「な、なんですか。顔を見ないでくださいっ」
「僕は明日のお昼前には帰るよ。それと、ご飯なら持ってきているから大丈夫さ」
「え?」
「見ててね」
そう言うと先輩は、荷物から干し肉や缶詰など、大量の保存食を取り出してきた。
「君にご飯の負担をかけさせるわけにはいかないからね。たくさん持ってきたのさ」
「そ、そうでしたか……」
ご飯の負担を考えられるなら、急に俺の家に泊まるという負担も考えてほしいと思ったが、
言っても無駄だろうし、なによりもう俺が許可してしまったので、
言わずに黙っておいた。
「ま、まあとりあえずご飯にしますか」
「そうだね。ちなみに、君のご飯はなにを食べるんだい?」
「え、野菜炒めと味噌汁とお米ですけど……」
「ふうん、そしたら、僕も手伝うよ」
「えっ、言っときますけど材料は一人分しかないですから、手伝ってくれてもあげませんよ」
「君は僕を食いしん坊だと思っているのかな? ただ手伝った方が早く君も食べれると思っただけさ。一人で先に食べても寂しいしね」
先輩は笑いながらそう言ってきた。
「……ありがとうございます」
「ふふっ、じゃあ早速作ろうか」
俺は野菜炒め担当になり、先輩には味噌汁を担当してもらった。
お米は炊くのが面倒くさいから今日はレンチンだ。
そして、先輩が手伝ってくれたこともあり、一人分の食事はすぐに出来上がった。
「ふう、すぐにできましたね。それじゃあ、一緒に食べますか」
「ふふ、そうだね」
「「いただきます」」
俺たちは同じテーブルに並んで座り、食べ始めた。
先輩はなにを食べているんだろうと思い、チラッと見ると、持ってきた干し肉をパンに挟んで食べている。
「美味しそうですね」
「ふふ、あげないよ」
「俺は食いしん坊じゃないですうっ」
「ふふふ」
そのあと、俺たちはあっという間に夜ご飯を食べ終わり、
一緒に後片付けをしたあと、またゲームで遊ぶことにした。
俺はトランプのババ抜きをやることにして、
先輩には俺の顔が見えないように目隠しをしてもらうというハンデもつけた。
これならさすがに俺が勝てるだろう。
そして、二人ということもあって、あっという間に最後のババの駆け引きのターンになり──。
「先輩、俺のババは左にありますよ」
「え〜、ほんとかなあ?」
「本当ですよ〜」
……嘘だ。
俺のババは右にある。
だが、今の先輩は俺の顔を見れないし、分からないはず……。
「まあいいや、枕木君がババを置いてそうなのは……こっちかな」
「あっ」
左のカードを取られ、先輩のトランプが揃ってしまった。
「ふふ、本当はババがあるのは右なんだろう?」
「く、くそお……」
俺が負けて悔しがっていると、先輩は目隠しを外し、
どこからか、カリカリ梅を取り出して食べ始めた。
「……なんすか、その梅」
「枕木君、あんた、嘘つきだね」
「はい?」
「ふふ、気にしないで、言ってみたかっただけさ」
先輩はなにを言っているのだろうか?
急に二人称が「あんた」になるし……。
それはともかく、その後も何回か戦ったが俺は一度も勝てなかった……。
「な、なんで俺は勝てないんだあっ」
「そういうこともあるよ、枕木君。それより、そろそろお風呂の時間だね」
「勝手に話題を切り替えないでくださいっ」
あまりにも突然な話題変更に思わず、声を出してしまったが、
確かにそろそろ俺も疲れてきたし、お風呂に入りたい。
……いや、もしかして先輩はこれが狙いで俺の家に泊まってきたのか?
だとするとまずい、きっとこのあと「一緒に入るかい」なんてことをニヤけた顔で言ってくるんだろう。
だが、先輩の狙い通りにはさせないぞ。
「おっ、お風呂は一人で入りますっ」
「ふふ、僕はそんなこと言ってないよ」
「あっ……」
先輩がニヤけながらこちらを見てくる。
俺は恥ずかしくなり、逃げるようにお風呂を沸かしに行った。
だが、先輩がついてくる。
「な、なんでついてくるんですかあっ」
「ん? だって、どっちが先に入るか決めたいだろう?」
「別に先輩先でいいですよ……」
「今日の僕はゆっくり湯船に浸りたいし、髪を乾かしたりするから長くなるけどいいのかい?」
「……先に俺が入ってほしいんですか」
「僕は提案してるだけさ」
なにか狙いがあるのか知らないが、俺には先輩の考えていることが分からないので、
とりあえず俺が先に入ることにした。
そのあと、お風呂が沸いて先に入ったが、別に先輩が乱入してきたりなどはなかった。
……少しだけ、期待していたのに。
「先輩、お風呂あがりましたよ」
「ふふ、僕がなにもしなくて寂しかったかな?」
「俺の顔を見てないで早くお風呂入ってくださいっっ」
「ふふふ、じゃあね〜」
先輩は荷物からパジャマとバスタオルを持って、お風呂へ向かって行った──。
先輩はどれだけ荷物を持ってきたのだろうか……。
しかし、先輩が俺の家でお風呂に入っていると思うと、変な気持ちが胸の奥に生まれてくる。
そんなモヤモヤを胸に抱え、一時間ほどリビングで悶々としていると、先輩が戻ってきた。
「やあ、枕木君」
お風呂上がりの先輩の周りには湯気が立ち上っていて、とても暖かそうだ。
それと、パジャマもタオルも高そうで触り心地が良さそうだ。
そんなことを思いながら見つめていると、急に先輩が俺に両手を回し、抱きついてきた。
「なっ、なにするんですかっ」
「ん〜、君が僕を見つめているということは、僕も君を見つめているということさ。パジャマとタオルの触り心地が気になるんだろう? ほら、よく感じてみて」
……先輩の触り心地は想像していた通りとてもいい。だが、それ以上に伝わってくるのは、
お風呂上がりで温まった先輩の体温だ。
それに、シャンプーの匂いなのか、いつもよりいい匂いがしてくる。
「どうかな、お風呂上がりの僕は」
「……離れてくださいい」
「本当に離れていいのかい?」
「それは……」
「ふふ、じゃあずっとこうしてあげるよ」
先輩は、自分の体温が下がるまで抱きしめ続けてきた。
「あらら、冷めてきてしまったよ。そしたら、そろそろ離れようか──」
先輩が手を離し、俺から離れようとする。
……急に抱きしめてきたのに急に離れるなんてずるい。
そう思った俺は、自然と先輩の体に腕を回し、離れられないようにしていた──。
「……おや、捕まってしまったよ。大胆だね、君は」
「え、あ、これは体が勝手に……」
「ふうん、そっか。君の体は僕のことが好きなんだね」
「い、いやそれは……」
俺が言い訳をしようとすると、先輩が笑ったあと、
もう一度俺の体に腕を回してきた。
「それなら、もう少しこうしていたいな。いいかな? 枕木君」
「お、俺はいいですけど……」
「ふふっ」
そのあと、俺たちはずっとお互いを抱きしめ合い、
気づけば深夜になっていた。
「おや、もうこんな時間だとはね。そろそろ歯磨きをして寝ようか」
「そ、そうですね」
俺たちは回していた腕をほどき、歯磨きをし、
歯磨きを終えたあと、俺の部屋へ移動した。
「……もしかして、先輩、俺の部屋で寝るつもりですか」
「うん、君と一緒のベッドでね」
「先輩、俺と一緒に寝るの好きですね……」
「ふふっ、君と寝るといつもより落ち着いて寝れるのさ。君がよかったら毎日一緒に寝たいくらいさ」
「ま、毎日は刺激強すぎるのでダメですっ」
「ふふ、そっか。そしたら、そろそろ電気を消して寝ようか」
俺は電気を消し、先輩が待っているベッドに入った。
……なぜ俺の部屋で俺のベッドなのに先輩が待っているのだろうか。
「先輩、狭くないですか。これ一人用ベッドですし……」
「大丈夫だよ。それに僕は狭い方が距離が近くていいと思うな」
「……そうですか」
俺は距離が近いと、先輩の感触を感じてしまうので離れていてほしい。
現に今は先輩と近すぎて、眠れない。
しかも、体をこちらに向け、俺を抱き枕のようにしてきた。
「あの先輩……もう少し離れてくだ……え」
俺が先輩へ意見を通そうとすると、先輩はすでに寝ていた。
……いつもはこんなに早く寝ないのに、よっぽど疲れていたのだろうか。
それとも、落ち着くのだろうか?
暗さに目が慣れてきた頃、俺は先輩の寝顔を見つめた。
その顔は、とても幸せそうだった。
(……まあ、このままでいいか)
そのあと、俺も先輩を抱きしめ眠りについた──。
次の日──。
「おはよう、枕木君」
「ん……」
先輩の声で目が覚めていく。
目をこすりながらベッドから立ち上がり、先輩の方を見つめると、
すでに先輩はパジャマから着替え、しゃっきりとしていた。
「……早いですね」
「ふふ、僕は朝に強いんだ。ほら、洗顔と歯磨きへ行こう」
「はあ……」
俺はお母さんみたいなことを言われてしまった。
いや、お母さんにこんなことを言われたことはないが……。
それはともかく、俺は洗顔などを済ませ、朝ご飯を作った。
先輩は、昨日と同じ、干し肉をパンに挟んだものを作っている。
「それ好きですね、先輩」
「ふふ、美味しいからね。あげないよ」
「だから俺は食いしん坊じゃないですっ」
「ふふっ」
そして、一緒に朝ご飯を食べ、そのあと少し遊び、
先輩が帰る時間になった。
「おや、もうこんな時間だね。僕はそろそろ帰るとするよ」
「忘れ物とかしないでくださいね」
「ふふ、もちろんさ」
先輩は持ち物の最終確認をしてから玄関へ向かい、
それを見送るために俺も玄関へ向かった。
「それじゃあ、僕は帰るよ。急に言ったのに泊めてくれてありがとうね」
「本当に急でしたよ……」
「ふふっ、楽しかったよ枕木君。ありがとうね」
「……俺も楽しかったです」
「なら、良かったよ。それじゃあ、またね」
「さようなら、先輩」
そして、先輩は帰って行った。
……急に泊めて欲しいと言われた時は驚いてしまったが、
なんだかんだで、とてもいい時間だった──。
──その日の夕方、チャイムが鳴ったので玄関のドアを開けると、
先輩が立っていた。
……しかも、また大きい荷物を持っている。
なにか嫌な予感がしてくる。
「えっと……忘れ物でもありましたか」
「あのね枕木君……今日も泊まっていいかな」
「……ダメですっっっ」
二日連続はダメです──。
おまけ 「お風呂に入っている時の先輩」
(……お風呂は気持ちいいね。それにしても、急に言ったのに泊めてくれるなんて枕木君は優しいな)
チラッと浴室のドアの方を見る。
(……流石に僕が入っているからといって、入ってきたりはしないか。でも、もし入ってきたら僕の力では枕木君に抵抗できなくて……ふふ、想像しただけでドキドキしてしまうよ──)
しかし、結局なにも起きることはなかった──。
(むう……)
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