「準備」
ある日の朝──。
「先輩、俺今日嫌ですうぅ」
「はあ、そうなんだ」
俺は先輩に愚痴っていた。
理由はそろそろ文化祭があり、今日からその準備が始まってしまうからだ。
前までは放課後、残りたい人だけ準備すればよかったというのに、
今日からはそうもいかない。
そもそも、俺は文化祭にそこまで興味がなく、
自分のクラスの出し物がなんだったかもよく覚えてないくらいなのに、
どうしてクラス中と協力して準備などしなければいけないんだ。
今日からだって、やりたい人だけがやればいいのに……。
そんなことを思っていると、先輩がため息をつきながら呆れたような目で俺を見つめてきた。
「君の考えてることが分かりやすいというのは困りものだね。おかげで君の愚痴が嫌でも僕の頭に入ってきてしまうよ」
「でもだってえ……」
「授業が短くなるんだからいいじゃないか」
「その分、準備があるじゃないですか」
「……はあ、君は普段、授業が嫌だと言うし、準備は準備で嫌だと言うし、困ってしまうね。そしたら僕はもう教室へ行くよ。またね枕木君」
「えっ、まだ授業始まりませんよ。まだ俺の愚痴の時間は……」
「またね」
先輩は行ってしまった。
少し愚痴りすぎてしまっただろうか。
しかし、俺の愚痴はまだまだ……なんてことを思い校門の辺りでうろうろしていると、
授業の時間が迫ってきてしまい、俺は急いで教室へ向かった。
そして、準備が迫ってくることに恐怖を感じながら過ごしていると、
いつのまにか準備前最後のオアシスであるお昼休みになり──。
「やあ、枕木君」
「ですわ」
「あ、どうも先輩、あと竜崎も……ん?」
俺はいつもの場所へ向かい、お昼を食べに来た。
だが、普段はベンチの真ん中に先輩が座り、その両隣に俺と竜崎が座る形だというのに、
今日は真ん中に竜崎が座っている。
「な、なんでお前が真ん中なんだよ」
「対策ですわ」
「え?」
「だって、きっと君は愚痴るじゃないか。だから距離を離そうと思ってね」
「そ、そんなあ」
その言葉に俺が落ち込んでいると、それを見た先輩が口を開いた。
「まあ君が愚痴らずに心の中に留めておく、というならいつも通り隣にいてくれてもいいよ」
「え、そ、それなら俺も我慢しま……」
「ただし、もしお昼休み中に一言でも愚痴を言ったら、りゅりゅにアイアンクローをしてもらうことになるだろうね」
先輩の言葉に合わせ、竜崎が手の指を大きく開き、指の関節を曲げてカギ爪のようにし、
その手の甲には血管が浮き出ていた。
……それは人の頭蓋骨なんて簡単に握り潰せると言わんばかりの圧があり、
俺にとてつもない恐ろしさを感じさせた。
「ひ、ひ、ひいいいいっっっ」
俺は恐怖に怯え、その場で腰を抜かして地面に倒れてしまった。
すると、先輩が優しく俺を抱きしめ、背中をさすってくれた。
「大丈夫だよ。りゅりゅもそんな痛くしないし、君が約束を守れば大丈夫さ」
「せ、先輩……」
「ふふ、それじゃお昼を食べようか」
「は、はいっ」
その時の先輩は、まるで天使のような優しさだった。
……やっぱり、りゅりゅをけしかけたのは先輩だし、これはマッチポンプかもしれない。
まあ、優しかったからいいや。
そのあと、俺たちはいつも通りベンチの真ん中に先輩が座った状態で、お昼を食べ始めた。
楽しく会話しながら食べていると、今日から準備なので当然というか話題は文化祭のことになり、
俺は愚痴が口からこぼれないように手で口を塞いで、先輩と竜崎の会話を聞いた。
「そういえば、りゅりゅのクラスの出し物はなんだい?」
「私のクラスは『迷路』ですわ。段ボールで作るんですの」
(へえ、迷路なんだ。俺、忘れてたよ)
「先輩のクラスはなんですか?」
「僕のクラスは、確かお化け屋敷だったかな」
「それは面白そうですわ。文化祭当日は絶対に行きますわ〜っ」
「ふふ、待っているよ」
そのあとも、竜崎と先輩は楽しそうに文化祭の会話で盛り上がっていた。
その間、俺は思うところがありつつも、アイアンクローを避けるために黙り続けた。
そしてチャイムが鳴り──。
「あら、時間ですわね」
「そうだね。そしたら、僕はそろそろ教室へ行くとするよ。またね、りゅりゅ、枕木君」
「私も行きますわ」
そうして、竜崎と先輩は先に各々の教室へ戻り、
俺は二人がいないことを念入りに確認してから、一応配慮して校舎とは反対側へ叫んだ。
「準備いやだああああああああっっっっっッッ」
そして叫んでスッキリした俺は、準備へ向かい、
叫びのおかげか、辛くはあったがなんとか今日の準備を終えることができた。
やってみると、案外大したことはない。
まあきっと、明日はまた嫌になっているだろうが。
「ふう、終わった終わった。さて、校門へ行って先輩と話してから帰るぞ〜」
俺は終わったことによる解放感でウキウキしながら校門へ向かった──。
ただ、この時の俺はお昼休みの叫び声が大きすぎたせいか、
生徒の間で「大声で叫ぶ変な生徒がいる」という噂が流れていることをまだ知らない──。
「余裕」
その日分の文化祭の準備を終え、ヘロヘロになりながら、
校門へ向かうと、先輩がいつものように立って俺を待ってくれていた。
「やあ、枕木君」
「先輩〜、疲れましたあ」
「ふふ、お疲れ様」
「へへへ、ありがとうございます先輩。あ、そういえば、先輩は疲れたりしないんですか? 体力ないのに」
「僕かい? 確かに僕は体力はないけれど、その分使い方が上手いから大丈夫さ」
「はあ」
正直、その言葉はあまり信用できないと思ったが、
面倒くさいので言わないでおいた。
「言わなくても、僕は顔で分かるよ枕木君」
「あ、そうでした……」
「さて、じゃあ僕の言葉のどこが信用できないのか教えてもらおうかな」
「え〜、面倒くさいからいいですよ……」
「面倒くさくないよ。ほら、言ってごらん」
先輩がニヤけた顔になりながら、俺を人差し指でつんつんしてくる。
面倒くさいと思っていたら、本当に面倒くさいことになってしまった、
などと俺が思っていたその時、突然、冷たい風が吹いてきた。
その風の勢いは凄まじく、その勢いに先輩のスカートが捲り上がりそうになり──。
「あ、危なーいっッ」
俺は先輩のスカートの下を見ないように裾を掴み、風がやむまで押さえた。
「はあ、はあ……風がやみましたね」
「そうみたいだね。押さえてくれてありがとうね、枕木君」
「そ、それは他の生徒に見られたくないですし……」
「ふうん、なら僕と二人きりだったら押さえなかったのかな?」
「い、いやそんなことは……」
「ふふ、まあ今日は素直に感謝するよ。ありがとう、枕木君」
てっきり「君はスケベだね」と言われると思っていた俺は、
素直な感謝が来たことに驚き、目を見開いてしまった。
すると、先輩がクスクスと笑いながら口を開く。
「ふふっ、僕が感謝の言葉を言うのがそんなに不思議なのかな」
「えっ、あっ、あっ、そそそ、それより、先輩はスカートが捲れそうになったのに平気そうですね」
先輩にからかわれるのを恐れるあまり、俺は突然話題を変えてしまった。
先輩も少し目を丸くしている。
「……君は凄いね。そんな強引に話題を変えられるなんて。まあこれ以上君をからかったら可哀想だし、その話題に乗ってあげるよ」
その言葉を聞き、俺はほっと一息をついた。
「な、ならよかったです。そ、それで平気な理由は……」
「ふふ。それはね……君が押さえてくれたのもあるけれど、一番は『余裕』があるからかな」
「『余裕』?」
どういう意味か分からず、その言葉に俺が首を傾げていると、
先輩に「君はせっかちだね。今からそれを説明するんじゃないか」と言われてしまった。
「ま、まあそうですけど……」
「じゃあ、説明するよ。君は僕がどこで恥ずかしがったりするか気になったことがあるだろう?」
「まあ、はい。どこから恥ずかしくてどこまでは恥ずかしくないのかは気になりますけど」
「ふふっ、それこそ『余裕』で決まっているのさ。簡単に言えば余裕があれば恥ずかしくなくて、余裕がなければ恥ずかしい……ということだね」
「へえ〜、じゃあその余裕があるかないかはどう決まってるんですか」
「それはね……」
先輩の恥ずかしがる基準を知れると思うと、
その期待感からか、全身に力が入っていく。
「それは……」
「僕にも分からないや」
その言葉を聞いた瞬間、全身から力が抜けていくのを感じた。
なんじゃそりゃ。
今までの話はなんだったんだ。
「なんですかそれっ。ここまで引っ張っておいて『分からないや』じゃないでしょ〜っッ」
「そうは言っても、分からないものは分からないのだから仕方ないね。まあその時の僕次第かな」
「はあ……真剣に聞いて損しましたよ」
「ふふ、ごめんね。あっ、でも今日の『余裕』はきちんとした理由があるよ。今日はスカートの下にインナーを着ているのさ」
「ああ、そうだったんですか」
「まあつまり理由のある『余裕』となんとなくの『余裕』が僕にはあるということだね──」
そのあとも、先輩は「余裕は大事だよ」など、
余裕トークをしてきたので、俺は話半分に聞いておいた。
結局、今日分かったのは先輩という人はよく分からないということだけだ──。
「文化祭・前編」
──外から、人の話し声や笑い声が聞こえ、
普段は閑静な学校が今日は人々の賑やかさに包まれている。
校舎は華やかな装飾に彩られ、普段とはまるで別の建物のようだ。
そう、今日はついに文化祭当日、学校外からもたくさん人が来ているのだ。
そして、開始を知らせるチャイムが鳴ると同時に校門が開き、
外で待機していたたくさんの人々が、受付を通り校舎へ入ってくる。
それと同時に、それぞれの教室で生徒たちの「頑張るぞー!」という掛け声が聞こえてきて、
こちらも外の賑わいに負けないほど盛り上がっている。
ただ、俺も自分のクラスの掛け声に参加はしたが、
先輩はもちろん、竜崎すらいないので陰キャの俺はアウェイ状態であまり盛り上がれなかった。
そのあと、俺は行列の誘導を担当し、
クラスの出し物である迷路の行列を捌いたが、正直あまり楽しくはない。
だが、俺にとっての本番はここではなく、午後からだ。
今回の文化祭では午前と午後にシフトが分かれており、
俺は午前を選んだ……つまり、午後からは文化祭を満喫し放題。
先輩も俺に合わせて午前のシフトを選んでくれたので、先輩と遊びたい放題なのだ。
(おおお、この午前を乗り切ったら先輩と文化祭、乗り切ったら先輩と文化祭……)
俺は心の中でその言葉を何度も唱え、辛い仕事をこなした。
そしてついに午前が終わり、午後シフトの生徒が帰ってきて、
「午前お疲れ様! そしたら引き継ぎしたあとは、俺たちに任せて楽しんできて!」と、このクラスのリーダー格の生徒が言ってくれた。
(やっぱ労いの言葉は嬉しくなるなあ……あれ、そういえば竜崎いないな。午前にいないから午後なのかと思ってたけど……ま、いいや)
一瞬、竜崎がどこにいるのかに思考を働かせたが、すぐに打ち切り、
俺は午後の人に簡単な引き継ぎを済ませたあと、ついに──
「午前が終わったああああっッ」
と、声に出すのは迷惑なので心の中で大きく叫び、
先輩と連絡をとって、いつもの場所で合流することになった。
俺はウキウキしながら、校舎内の人の海の中を泳ぐようにして移動し、
外へ出ていつもの場所へ着いた。
そこで少し待つと、先輩もやってきて──。
「やあ、枕木君。お待たせ」
「せ、先輩、午前お疲れ様でした。俺、午前辛かったですう〜」
「ふふ、お疲れ様。でもこれからが本番だからね」
「そ、そうですねっ」
「今日は、たくさん楽しもうね……それにしても、今日は人がたくさんだよ。この場所ですら、こんなに人がいるんだからね」
先輩の言葉どおり、今日はこの場所ですら人が多く、いつもは滅多に人が来ずに落ち着ける場所が、
文化祭の参加者たちでいっぱいになっている。
普段、三人で座ってお昼ご飯を食べているベンチも、今日はもう満席だ。
「まあ、それだけ盛り上がっているってことですね」
「ふふ、確かにそうだね。そういえば、君は出し物のなんの役割を担当していたのかな?」
「俺は行列の誘導やってました。先輩はなにしてたんですか?」
「僕はお化け役をしていたよ」
「お、お化け……?」
「ほら、僕のクラスの出し物はお化け屋敷だからね。そこで井戸でお皿を数えるやつを僕が頑張って演じたのさ」
「へ、へえ〜、そうなんですか」
先輩がやっているなら、少し行ってみたかった。
だが、先輩の声は落ち着いたトーンで、声も大きくないので、
急に井戸から出てきてもあまり怖くなさそうだ。
そんなことを思っていると、先輩が俺の顔を見つめてくる。
「……枕木君。今、あんまり怖くなさそうって思っただろう?」
「えっ」
「今から近くの川に潜ってお皿数えてあげるから、それから判断してほしいな」
「なんですか川に潜るって!? その判断の方が怖いですよっ」
「ふふ、冗談だよ」
「は、はあ……」
……久しぶりに、先輩の本気か分からない冗談を聞いた気がする。
本当にやりそうだからやめてほしいものだ。
「それはそれとして、お腹がすいてきたね枕木君」
「あ〜、たしかに午前終わってちょうどお昼時ですしね」
「そうしたら、ご飯が売っている方へ行こうか。生徒が作ったものを売っている出店があるし、ここの文化祭は外からキッチンカーも呼んでるからいろいろあるよ」
「お、おおおっ。いいですね。それ聞いたらお腹が空いてきましたよ〜ッ、さあっ、いきましょ、いきましょッ」
「ふふ、それじゃあ、出発だね──」
俺は文化祭のご飯に胸が高鳴り、それに応えるように腹の虫も鳴いていた。
だが、その二つの高鳴りは人混みでかき消されることとなる。
そう、混雑しすぎて、もう全てが売り切れていたのである。
「そ、そんな……嘘だああああっっっッッ」
俺はその絶望に、その場で膝をついて叫んでしまった。
そのせいで、周りの視線がこちらに向いてしまい、
俺が「やっちゃった……」と落ち込んでいると、先輩が俺の手を引っ張ってその場から脱出させ、
人気のないところに連れてきてくれた──。
「ふう、ここまでくれば大丈夫だと思うよ、枕木君」
「あ、ありがとうございます。あと、ごめんなさい……」
「ふふ、急に叫んだときはビックリしてしまったよ。人混みのおかげで少し紛れたのが唯一の救いかな」
「うう……」
「そんなに落ち込まないでおくれよ。確かに君は急に叫んで周りを驚かせた迷惑な人だけれど、いつまでも落ち込んでいたら楽しくないよ」
「うぐぐ……」
俺は先輩から励ましと迷惑をかけた事実を喰らい、頭が混乱してしまったが、
一応先輩の励ましのおかげで回復し、少し立ち直った。
……そういえば、先輩はお昼がなかったのにいつも通りの顔で平気そうだ。
先輩もお腹が空いているはずだろうに、どうするつもりなのだろうか。
「先輩……売り切れてたのに平気そうですね」
「うん、午後からという時点で僕は薄々こうなると思っていたからね」
「ま、まあ確かにそうですね……でも、そしたらお昼どうしましょう。俺、買えると思ってたからお弁当、今日は作ってないですよ……」
俺が空腹を訴え、鳴り続けているお腹を押さえながらお昼がないことにうなだれていると、
突然、先輩が少し笑った。
「ふふふ……」
「な、なんですかあ……」
「ここで少し待っていてほしいな」
そう言って先輩はどこかへ行き、
数分後、クーラーバッグのようなものを手に持って帰ってきた。
「ただいま、枕木君」
「おかえりなさい、それで、なんですかそれ」
「ふふふ、これはね……」
先輩がニヤりとした顔で、バッグを開けていき、
バッグの中に入っていたおしゃれな箱を手に取って、先輩は口を開いた。
「じゃじゃーん、お弁当だよ、枕木君」
「えっ、作ってたんですか?」
「うん、こうなると思っていたからね。それとはい、これ」
先輩がお弁当箱を渡してくれた。
「え? いいんですか、そしたら先輩の分が……」
「大丈夫さ、三つ作ってきたからね」
「……三つ?」
「うん、りゅりゅには朝あげたからね。それよりほら、食べようか。お腹もそろそろ限界だろう?」
「……ですね。それじゃあ、いただきますっ」
「いただきます」
そうして俺は、先輩と一緒にお昼を食べ始めた。
お弁当の箱を開けると、中には色とりどりの具材が少し茶色い食パンに挟まっている、美味しそうなサンドイッチが入っていた。
「わあ〜、すごい美味しそうです。これ具材はなんです? それと、茶色い食パンって珍しいですね」
「ふふ、これはねレタスに赤パプリカ、あとはチーズとハムのシンプルなサンドイッチさ。茶色い食パンは全粒粉のものだよ。僕が焼いたのさ」
「えっ、そうなんですか?」
「うん、昨日の夜から準備して作ったんだよ」
まさか、先輩がパンも作れたとは驚いた。
いや、先輩はいつも家で料理を作っているし、不思議ではないのかもしれない。
そして、お腹が空いていたこともあり、俺たちはあっという間にお昼ご飯を食べ切った。
「美味しかったです、先輩。ありがとうございました」
「ふふ、ならよかったよ。さて、僕はこのバッグを荷物置き場に置いてくるから、少し待っていてね」
「はいっ」
先輩はどこかへ行き、再び数分待つと先輩が戻ってきた。
「ただいま、枕木君」
「あ、おかえりなさい。そしたら、どこ行きましょうか?」
「どうしようね、悩んでしまうよ……」
先輩と俺が次の行き先に悩んでいると、突然先輩のスマホからアラームが鳴った。
「おや、もうこんな時間だとはね」
「ん? なんでアラーム設定してあるんですか」
「枕木君、僕の行きたいところに行ってもいいかな?」
「え、いいですけどどこに……」
「説明はあとでするよ。ほら、行こうか」
先輩が俺の手を掴み、引っ張ってくる。
不思議と、声もワクワクしているのか上ずっていて、いつもよりテンションが高い感じがする。
そんなに行きたいものがあるのだろうか?
なんてことを思いながら先輩に引っ張られ続けていると、体育館の前で先輩が止まった。
「どうやらまだ間に合いそうだよ、枕木」
「目的地は体育館だったんですね。それで、なにに間に合うんですか?」
「受付を済ませたら教えてあげるよ」
「は、はあ」
先輩に連れられ、受付を済ませると体育館の中に案内され、
体育館の、壇上に向けてズラッと並べられているパイプ椅子に、先輩と隣合わせで座った。
「それで先輩、ここでなにがあるんですか?」
「ふふふん、この文化祭は豪華でね。外からゲストを呼んだりするんだ」
「へえ、それで誰が来るんですか?」
「僕の好きなお笑い芸人さ。この文化祭に来るって聞いてから、とても楽しみでね。アラームをつけていたのも絶対見れるようにするためだったのさ」
先輩がお笑いを見ていたとは意外だった。
「それで、その人たちの名前は……んむぐっ」
俺が先輩に聞こうとすると、先輩は「静かに」と言っているかのように、俺の口に優しく人差し指を当ててきた。
すると壇上の方から声が聞こえてくる。
どうやら、もう始まるようだ。
そして舞台の幕が上がり──。
──気がつくと、もう幕は下りていた。
覚えているのは、漫才のテンポが良く、俺の笑いを休ませてくれなかったことだけだ。
おかげで少しお腹が痛い。
そして体育館から出たあと、俺は先輩と感想を言い合った。
「お、面白かったですねっッ。先輩が好きなのも納得っていうか……」
「枕木君、ちょっと何言ってるか分からない」
「先輩、コンビに影響されすぎですって……」
「ふふふ、それくらい好きだということさ。今日は漫才だけだったけれど、コントも面白いんだよ」
「へえ〜、それは気になりますよ」
「ふふ、そしたら今度……おや?」
話しながら歩いていると、突然チラシを配っている人を見つけ、
俺たちはなんのチラシか気になって、その人の方へ近づいていった。
すると、チラシをくれたので俺は先輩とそのチラシをじーっと見た。
そこには「学校で一番まばゆい星になれ──」というキャッチコピーがデカデカと書いてある。
「どうやら、ミスコンのチラシのようだね」
「そういえば、前に校内に募集ポスターありましたね。でも先輩出ないしなあ……」
「まあまあそう言わずに、おや、裏にもなにか書いてあるみたいだよ」
そう言って、先輩がチラシを裏返しにすると、
裏には参加者の写真とちょっとしたプロフィールが載っていた。
「みんな綺麗で可愛いね、枕木君。さすがミスコン参加者なだけあるよ」
「まあ、先輩の方が綺麗ですけどね。え〜と参加者の名前は安藤花子、天堂寺凪……どれも知らない人だな……他には竜崎竜奈……これも知らな……竜崎っ!?」
突然知っている名前が出て驚いてしまったが、
今回は先ほどの反省を活かし、驚きながらも迷惑にならないほどで叫んだ。
「竜崎がどこにもいないと思ったらここにいたのか……」
「おや、知らなかったのかい?」
「先輩は知って……ああ、お弁当渡しに行った時に聞いたんですか」
「そういうことさ。ねえ、せっかくだし、見に行こうよ」
「ええ……」
俺は先輩に、グラウンドに特設されたミスコンの会場まで連れて行かれた。
会場はとても人が多く盛り上がっていて、竜崎のファンであろう生徒たちも大量にいた。
……果たして誰が優勝するのだろうか?
竜崎はこのミスコンで勝てるのだろうか?
正直、俺はどうでもいい──。
「11月10日締め切り」第1回人気投票 どのキャラが一番好きですか?
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月城真央(真央先輩)
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枕木遊星
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竜崎竜奈(りゅりゅ)
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月城理央(リオさん)
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先輩のお母さん(フレイヤさん)