真央先輩はおとこ♂の娘    作:ろあタルト大福

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第4話 「美術&制服」

 「美術」

 

 

 美術──。

それは俺が授業の中でも一番苦手な授業。

歴史などを聞くのは嫌いではないのだが、

実技…その中でも絵を描くことは大の苦手だ。

 

 周りは上手く描けているのに俺は下手だ……。

頭の中でイメージを持ってもそれを形にすることも……。

理由をあげればきりがないが、とにかく俺は美術が苦手なのだ。

そして今日──。

 

「今回のテーマは鉛筆を使った人物デッサンです」

「モデルは自分でも友達でも大丈夫ですよ、それでは描き始めてください」

 

 教師の言葉を合図に、教室に鉛筆の音が響き渡る──。

動いていないのは俺だけだ。

 

(ま…まずい、このままだと提出できないぞ)

(描くしかない、だ……だが俺は自分の下手なやつなんか見たくないぃ)

 

 とりあえずモデルは自分自身にすることにした。

なぜなら俺の画力で描かれるモデルが可哀想だからだ。

嫌だと思いながら、俺は自分の写真をじっと観察し、

描き進めていく。

 

──30分後。

 

 出来はあまりよくないが、ひとまずは完成させることができた。

普通ならここから終了時間まで手直しなどをするのだろうが、

俺はもう描きたくないので、残り時間は周りのデッサンを見ることにした。

その結果、俺は認めたくない事実に気がついてしまった。

 

 周りはみんな上手かったということだ。

竜崎にいたってはまるで人間をそのまま絵の中に閉じ込めたようなリアルさであった。

俺が絶望に打ちひしがれていると、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った──。

 

『ふーん、だから元気がないんだね』

「そうなんですよ……」

 

 昼休みに俺は、先輩と竜崎に愚痴っていた。

美術への文句、俺の下手さ…とにかく愚痴った。

竜崎は俺を氷のような冷たい目で見ていた。

 

「なんだよ竜崎、これはデッサンが難しいのが悪いんだよおっ」

「私はデッサンはそこまで難しくないと思いますが」

「じゃあ教えてくれよ」

「モデルを観察しながらしゅーっとやってしゃっです」

「教えるのは下手なのかよ!」

『まあまあ』

 

 俺はあまりのショックでお弁当が口を通らなかったが、

それを見た竜崎に「このままでは食品が無駄になってしまいます、まだ口はつけてないですね?」と言われ、

俺が頷くと、竜崎は俺のお弁当を品よく綺麗に食べ切った後、

竜崎は「クラス委員の仕事がありますので」と言い、早めに教室へ戻っていった。

 

「なんだよあいつ、大食いだったのかよ……でもそんなことどうでもいいや……先輩、もう俺は無理です」

 

 たった一つの授業でここまで凹むとは我ながら情けない。俺はうなだれた。

すると俺の姿を見かねたのか、先輩がなにか閃いた様子で『今日の放課後は暇かな?』と聞いてきた。

 

「暇ですけど…なんですか」

『このまま美術の授業が来るたびに落ち込まれても困るからね』

『僕が特訓してあげるよ』

『せっかくなら君の家でやりたいな』

『今日は学校も早く終わるしね』

 

 俺はあまり気乗りしなかったが、先輩が言うならということでOKした。

部屋の掃除はしていないが、急に来る先輩が悪いので問題ない。

なんとか今日の授業は乗り切り、放課後になった。

 

 校門を出る前、竜崎に先輩がいるのなら私も行きたいですと言われ、

三人でやることになってしまった。

うまくいけば先輩と二人きりだったというのに……。

 

 そんなこんなありつつも俺の家に到着し、三人で俺の部屋へ入った。

部屋に入るなり竜崎が「掃除がなっていませんわね」と言ってきたが、

「急に来る方が悪いんだあっ」と一蹴しておいた。

 

『じゃあ始めようか』

 

 そう言うと、先輩は鞄から紙と鉛筆を取り出した。

 

「まさかデッサンするんですか」

『そうだけど』

「俺デッサン嫌なんですけど」

『やらないと上手くならないよ』

 

 一理あると思い、しぶしぶではあるがデッサンをすることにした。

 

『あっ、モデルは僕にしてね』

「えっ」

 

 俺はその言葉を聞いて、少し止まった。

人を描くのは苦手だし、なにより先輩を俺の絵なんかで描きたくない。

 

「俺は先輩を描けないです、だって先輩に失礼だと…」

『……失礼じゃないよ』

『君に僕を描いてほしいんだ』

『上手い下手じゃなくてね』

「わかりましたよ…あんまり期待しないでくださいね」

『そうこなくちゃね』

「この部屋汚いですわね……」

「お前はなにしにきたんだよ!」

 

 先輩は俺のベッドに座って同じ姿勢で止まっている。

モデルをした経験があるのだろうか?

そんなことを思いつつ、俺は鉛筆を走らせた。

やはりというべきか、目の前の先輩とは似ても似つかない出来だった。

先輩を下手に描けないと思い、いつも以上に観察し丁寧に描いたが、

いつもと大差はなかった。

 

『描けたかな?』

「まあ一応、描けました……」

『じゃあ見せてほしいな』

 

 俺は嫌だった。

もし先輩にこれを見られて、失望されたりしたら立ち直れない。

俺が昼休みの時のようにうなだれると、

 

『えいっ』

 

 先輩に隙をつかれ、紙を取られてしまった。

取り返そうとしたが、先輩はすでに絵をまじまじと見ている。

手遅れだ。

 

「はは……言ったでしょ、失礼になるって……」

『僕は好きだな、この絵』

「はい?」

『だって君が僕を見て一生懸命描いてくれたんだからね』

『よく描けてるよ』

 

 正直、お世辞だと思った。

俺の絵は100点満点で点数をつけるなら10いけばいいほうだからだ。

だけど、先輩の表情は評価がお世辞ではないことを表していた。

 

「そんなに良かったですか?」

『うん』

「ならいいですけど……これ特訓になってるんですか」

『なってないんじゃないかな』

「ええっ」

『君の家に来たかったから口実にね』

 

 また先輩が冗談か分からないことを言っている。

でも、少し救われたような気分だ。

自分の作品で喜んでいる人を見ると嬉しくなる。

絵を描くことが少しだけ、好きになれた。

 

『ところでりゅりゅはどこにいるのかな?』

 

 そういえばずっと竜崎の声が聞こえなかった気がする。

どこへ行ったのかと思い、探していると、

玄関から音がした。

なんだと思い玄関へ行くと、そこにはパレットやイーゼル、キャンバスを持った竜崎がいた。

 

「な……なに持ってんだよ」

「なにって先輩を描くために家から道具を持ってきただけです」

『わあ、それは嬉しいね』

「では早速描きますので、先輩はポーズを…」

「ひとんちに勝手に道具を持ってくるなあッ」

 

なんだかんだで今日も楽しい一日だった──。

 

 

 

「制服」

 

 

 今日は風が強い……。

油断していると吹き飛んでしまいそうなほどに。

木々が揺れ、風の音がする……。

 

 正直、学校が休みになって欲しいと思うほどだったが、

そう都合よくはいかなかった。

やっとの思いで校門へ着くと、そこには先輩がいた。

 

『やあ、おはよう』

「おはようございます先輩」

「朝に会うのはめずらし……」

 

 俺はしゃべっている途中にいつもの先輩との違いに気がついた。

制服が女子用の制服ではなく男子用のものを着ていたのだ。

 

「せ……先輩なんで男の制服を……」

『今日は風が強くてスカートを穿くのは危険だし……そもそも僕は男だからね』

「男女両方の制服持ってたんですか」

『うん、僕は気分で変えるよ』

『普段はスカートの方が多いけどね』

 

 そうだったのか。

俺はずっと、女子の制服を着た先輩しか見たことがなかったから、

今のズボンを履いた先輩は、いつもとはまた違う雰囲気だ。

これもまたいい。

 

『じゃあ僕はそろそろ教室へ行くよ、またね』

「はい、じゃあまたお昼に」

 

お互いに挨拶した後、俺は教室へ向かった。

一時間目の授業への準備をしている間、俺は先輩のことばかりを考えていた。

 

(ズボンの先輩可愛かったな……でも今日はスカートの先輩も見たかったな)

(風が強いし、スカートなら運が良ければ……って何を考えているんだ俺は)

 

 そんな邪な妄想をしていると、いつの間にか授業時間になってしまった。

結局なんの準備もできなかったが、俺は先輩のせいにし、開き直ることにした。

授業が始まり、教師が黒板に文字を書き、周りの生徒はそれをノートへ写している。

 

 だが俺は、なにもしていない。

なぜならまた先輩のことに夢中になっているからだ。

 

(女子の制服ばっか着てるから忘れてたけど)

(そっか、先輩って男なんだもんなあ)

(あんなに可愛くて、綺麗で、優しい人が……男)

(なぜかドキドキする……)

 

「はい、では一時間目の授業を終わります」

 

(えっ?)

 

 俺は先輩のことを考えるあまり、授業をまったく聞いていなかった。

これはまずい、このままだとまた、テストで悪い点をとってしまうだろう。

俺は気合いを入れ直し、二時間目の授業へ挑んだ……が、

またしても意識が先輩へと向いてしまった。

 

(俺はなにをしてるんだ……これじゃあ先輩に失望されてしまう)

 

 そう思い、授業を受けたが結局午前の授業時間は全て、

先輩のことを考える時間になってしまった。

俺は何をしているんだと思いながら、先輩とのお昼の待ち合わせ場所へ向かった。

 

 今日は風が強いのでいつもの場所ではなく屋内の食堂で待ち合わせることにしている。

俺が食堂へ向かうと、すでに先輩が席に座って待っていた。

 

『おっ、来たね』

『授業はどうだったかな?』

「えっ、ま……まあまあですよ」

『ふーん、じゃあ今日の授業の内容を教えてよ』

「そ……その、いろいろやったんで、忘れちゃいましたあはは……」

 

 俺が苦し紛れに笑うと、先輩は顎に手を当てながら少し考えた後、

『君は……授業をまじめに聞いてないのかな?』と言ってきた。

 

「い、いやそんなことは」

『でも、一つも授業内容を言えないことなんてあるのかな?』

『少しでも聞いていたなら言えると思うのだけれど』

 

 俺は先輩に見透かされたのが恥ずかしく、洗いざらい全てを話すことにした。

 

『やっぱり聞いてなかったんだね』

「それは先輩の制服のせいで……」

『君が僕のことを考えてくれるのは嬉しいよ、でも僕のせいで学業が疎かになるのなら……僕は君から離れるよ』

「えっえっえっ」

 

 その一言は俺にとってあまりにも大きな衝撃を与えた。

先輩が、俺から離れる…?

もしそんなことになれば俺は、学校生活を楽しめなくなるだろう。

だが、こうなったら原因は俺にあるのだから仕方ないのかもしれない……。

 

『まあ、すぐ離れるのも君が可哀想だからチャンスをあげるよ』

「チャンス……?」

『うん、たしか来週あたりにテストがあったよね?』

「まあ……はい」

『そこで全科目90点以上とれたら、僕は君と離れないよ』

「9……90点って」

 

 俺は特段勉強が苦手なわけではないが、勉強不足の状態から、

一週間で90点を取るまで勉強できる自信はない。

 

「ちょ……ちょっと厳しいですよ」

『んー?確かに難しいかもしれないけど、僕は君ならできると思ってるよ。なにより、学生の仕事は勉強だからね』

 

 俺は不安になってきた、もし達成できなかったら、俺は先輩と離れてしまう。

そう考えて、俺はうつむいていると先輩が、俺の耳元まで来て囁いてきた。

 

『もし、90点以上とれたら……君にご褒美をあげるよ』

「えっ、ご……ご褒美って」

『それはその時までのお楽しみだよ』

『じゃあ頑張ってね、枕木君』

 

 そう言うと先輩はどこかへ行ってしまった。

俺は果たして一週間で90点を取れるほど勉強できるのだろうか?

だがそんなことを考えている暇はない。

 

 やらなければ先輩は俺から離れていってしまう。

それだけは絶対に避けなければならない。

それに…ご褒美の内容も気になる。

 

(……やるしかない)

 

俺は決意を固めたのであった──。

 

                    

 ──俺は、先輩のことを考えすぎたあまり、俺は次のテストで90点を取らなければいけなくなってしまった。

だが次のテストまでは残り一週間しかない、

ろくに勉強もしていない俺が果たして90点を取れるのか──。

 

「で、なんで私なんでしょうか」

「い……いや竜崎は勉強得意そうだから教えてもらおうかなと……」

「そもそもそのような状況になったのはあなたのせいです」

「それはもうおっしゃる通りで……」

 

 最終手段として俺は竜崎に頼ってみることにしたが、

やはり難しそうだ。

 

「それに私としては先輩があなたから離れてくれればライバルが減るもの」

「そこをなんとか……」

「無理です」

 

 その後も頼んでみたが、全く受け入れてくれそうにない。

確かに俺が勉強していなかったのが悪いのだ。

だがこのままでは俺は先輩と離れることになってしまう、

そこで俺は最終手段に出ることにした。

 

 膝を曲げ、体を前に倒しながら手を床につける、

そして頭を地べたにぴったりとくっつけた。

つまり、土下座だ。

 

「頼む、俺は先輩と離れたくないんだ……頼れるのは竜崎しかいないんだ」

「……分かりました、そこまで言うのなら今回は手伝ってあげます」

「ほ……本当か竜崎、本当にありがとう」

「では今度の土曜日、私の家に来てください」

「えっ、そ……そんな俺は女子の家なんて」

「何を勘違いしているんですか、勉強するだけです。住所は後ほどメールで送りますので、土曜日の12時に待っています」

 

 そう言うと竜崎はどこかへ行ってしまった。

それはともかく、俺は90点への階段を上ることができた。

やはり持つべきものは友ということだろう。

しかし竜崎の家はどんな感じなのだろうか……?

 

──土曜日

 

 俺はメールで送られてきた住所へ向かっていた。

なんとか住所へ辿り着いたが、

そこにあったのは家というよりは宮殿であった。

 

(な…なんだここ、庭が広すぎるし、建物もかなりデカいぞ)

(こんな所が家なわけないだろ、俺を騙そうとしてるのか…?)

 

 そんなことを考えながら門の前に立っていると、

使用人らしき人物が話しかけてきた。

 

「あなた様が、竜崎お嬢様のご友人ですね」

「は…・はい」

「お嬢様から話は伺っております、ご案内いたしますのでこちらへ」

 

 俺はこの使用人に案内され、部屋に入り、椅子で待っているように言われた。

待っている間、俺は部屋を見回してみた。

周りには高そうな壺に、高そうな西洋の甲冑……とにかく目に映る全てが高そうなものだった。

そうして待っていると、竜崎ともう一人、講師のような人物が現れた。

 

「竜崎、お……お邪魔してます」

「挨拶は結構よ、早速勉強を始めましょう」

「それはいいんだけど、その隣の人は……?」

「こちらはテミス講師です、今回あなたに勉強を教えるために特別にお呼びしました」

「ハロー枕木クン、今日はよろしくネ」

「あ……はいどうも」

 

 俺は講師との挨拶を済ませ、勉強を始めた。

まず、今のレベルを測るために、全科目の軽いテストを受けた。

 

「ど……どうでしょうか」

「オーノーこれはまずいネ、基礎がまずボロボロよ」

「えっ」

「でも安心してネ、ミーに教われば間に合うヨ」

「覚悟はできたかな、枕木クン?」

「は……はい!」

 

 それからはテミス講師との地獄の勉強が始まった。

まずは基礎からガチガチに教えられ、

その後意味のわからないレベルの応用を教えられた。

 

 だが、さすが竜崎が呼んだ講師というべきだろうか、

分からなかった問題がすらすらと解けるようになっていく。

そして──。

 

「オーもう、こんな時間ヨ、ミーはそろそろ帰る時間ネ」

 

いつの間にか18時になってしまった。

俺はもうクタクタだ。

 

「テミスさん本日はありがとうございました」

「ミス竜崎の頼みならノープロブレムよ、また何かあったら呼んでヨ」

 

 そして、テミス講師は帰っていった。

 

「つ……疲れた」

「さて、もうこんな時間ね。今日はこのあたりでお開きにしましょう」

「助かったよ、竜崎。今日はありがとうな」

「……あなたがいなくなると先輩が寂しがると思っただけです。これでテストがダメだったら許しませんよ」

「はは……頑張るよ」

「ではこれを渡しておきます」

 

 そう言うと竜崎は大量のワークシートを渡してきた。

 

「な……なんだよこれ」

「テミス講師から渡すように頼まれています、テストの日までそれで復習してください」

「テミス講師……俺、頑張るよ」

 

 そして俺は家に帰った。

そしてテスト当日まで復習を続け、ついに──。

 

(この問題は……テミス講師に教えてもらったところだ)

(なんだこんなの簡単じゃないか)

 

 俺は勉強の成果もあり、かなりの手応えを感じ、テストを終えた。

後は点数次第だ。それによって、今後の俺の学校生活が左右される…。

結果が出るのはもう少し後らしい。

テストが終わった日、先輩から連絡があった。

 

【先輩】 テストお疲れ様、結果が楽しみだね。

 

【まくらぎ】 自信はありますよ。

 

【先輩】 それは楽しみだよ、ご褒美の内容も考えておかないとね。

 

【先輩】 まあ、君の点数が出るまで僕は楽しみに待つことにするよ。

 

ドキドキする。果たして俺は90点が取れるのだろうか。

それにご褒美も気になる……。だがまずは点数を取らねば。

そしてついに答案が返ってきた──。

──その日は風が強かった。

 

「ということで見てください先輩」

『ふむふむ…これは凄いね、ちゃんと点数を取れてるじゃないか。よく頑張ったね、枕木君』

「ま、俺にかかればこんなもんですよ」

『ふふっ、りゅりゅに感謝した方がいいね』

「もしかして俺が勉強したの聞いてたんですか」

『うん。そうだ、君にご褒美をあげないとね。枕木君はどうしたい?』

「どうしたい…って俺が決めていいんですか」

『うん、君が頑張ったんだからね』

 

 どうしよう。

俺は悩んだが、選択肢が多すぎて決めきれない。

そもそもどこまで頼めるのかも分からないし…。

 

「ご褒美ってど……どこまでいけるんですか」

『僕ができることならなんでもしてあげるよ』

「えっ、たとえばキ……キスとかも…?」

 

 それを聞いた先輩は少し笑いながら、

『いいよ』と言ってきた。

俺はドキドキして心臓が破裂しそうだ。

 

『さあ、どうしたいのかな〜?』

 

 先輩がニヤニヤしながらこっちを見ている。

 

「お……俺は」

『うんうん』

「俺は……」

『うん』

「ひ……膝枕してほしいです」

 

 先輩が少し驚いた顔でこちらを見ている。

 

「さ……最初に出会った時も膝枕されたし、またしたいと……」

『へえ、君は膝枕が好きだったんだね。いいよ、おいで』

「できれば女子の制服でやってほしい…です」

『……ふうん、つまり君は僕の太ももを直に感じたいわけだ』

「い……いや」

『いいよ、ご褒美なんだからね。じゃあ明日ね』

 

 そして次の日──。

 

『君の要望通りスカートを穿いてきたよ』

 

 相変わらず、先輩を見ているといつもドキドキするが、

ご褒美という特別感でよりドキドキする。

 

『はい、おいで』

 

 先輩が自分の太ももを軽く叩き、俺を呼んでいる。

 

「じゃ…じゃあいきますよ」

『うん』

 

 俺は先輩の太ももに頭を乗せた。

先輩の肌は柔らかく……温かかった。

どんな高級な枕だって先輩には敵わないだろう、そう思える気持ちよさだ。

 

『どうかな?今の気分は』

「最高です……う……うぐっ」

『泣かなくてもいいじゃないか』

「だ……だって先輩と離れることがなくてよかったって……これからも先輩といられるんだって思うと…」

『君は僕のことが好きなんだねえ』

 

 そう言うと先輩は俺の頭をまるで聖母のように優しく、優しく撫でてくれた。

俺は……幸せだ。

 

『じゃあこれからもよろしくね、枕木君』

 

 そう言った先輩の顔は、天使のようでとても……とても綺麗だった。

そして俺はその言葉と膝枕の衝撃が合わさって……。

 

『あらら、気絶してしまったね。ふふっ、君らしいね』

 

俺と先輩の物語はまだまだ続いていく──。

 

 

 

 

 

 

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