真央先輩はおとこ♂の娘    作:ろあタルト大福

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第5話 「通話&趣味」

 「通話」

 

 

 俺は今、先輩と通話をしている。

なぜこうなったかというと、さかのぼること少し前──。

 

(ん?先輩からのメールだ。なんだろう)

 

【先輩】 『今、時間あるかな?よかったら通話をしないかい』

 

【まくらぎ】 「別にいいですけど……急になんですか」

 

【先輩】 『君の声を聞きたくなっただけさ』

 

 

 こうして俺と先輩は通話を始めた。

話題は学校についてだ。

 

『最近どうかな?』

「どうって…・まあ普通ですよ」

『授業はちゃんと聞いてるかい?』

「そりゃ今はちゃんと聞いてますよ」

『ふうん』

 

 ここから少し……いやだいぶ静かな時間が続いた。

話す内容がないのだ。

先輩から誘ってきたんだから、もっと話題を提供してほしいと思っていると。

 

『ビデオ通話にしないかい?』

「えっ」

『君の顔も見たくなってね』

「まあ、いいですよ」

 

 そう言って、俺はビデオをオンにした。

少しして、先輩もオンにしたが、先輩を見て俺は衝撃を受けた。

パジャマを着ていたのだ。

しかも、首にタオルを巻いていて、周りに少し湯気も見える。

 

『ふふっ、ビデオで君の驚いた顔が見えてるよ』

「そりゃ驚きますよ、先輩のパジャマなんて見たことないですし……」

「まさか、俺を驚かせたくて通話に誘ったんですか」

『ん〜?どうかなあ』

 

 先輩がニヤニヤしている。

こういう表情の時は大抵、俺のことをからかっているのだ。

 

「あ……あんまりからかわないでくださいよ」

『ふふっ、ごめんね、君の反応は可愛いからさ』

『でも君の声が聞きたかったのは本当だよ』

 

 相変わらず先輩の言っていることは本当か嘘か分からない。

だが素直に、先輩のパジャマ姿が見れたのは嬉しい。

薄手の長袖、長ズボンだが触り心地のよさそうな生地だ。

 

『ん?君はこのパジャマが気になるのかな』

「えっなぜそれを……」

『顔が見えてるからね、視線でバレバレだよ』

「まあ確かに、見てましたよ」

『ふふっ、触りたいかい?』

「……触りたいです」

『じゃあ今度制服の下に着ていってあげるよ』

 

 想像しただけで胸が躍る。

先輩が俺のために、学校でパジャマを着てくれる…。

それだけで俺は嬉しい。

その後も様々な会話をし、また静かな時間がやってきた頃。

 

『そうだ、せっかくだし僕の部屋をいろいろ見せてあげるよ』

「えっ」

『じゃあいくよ』

 

 そう言うと先輩は、携帯のカメラを動かしながら部屋を見せてくれた。

 

『ここが僕の寝ているベッドだよ、二人で並んで寝れる大きさだよ』

「…どういう意味ですか」

『それは君の受け取り方次第さ』

 

 また先輩がニヤニヤしている。

先輩は俺の心を惑わせるのが得意だ。

 

『次は本棚、君が知っている本はあるかな?』

 

 そこには上の方に難しそうな哲学や知識なんかの本、

下の方には漫画が入っていた。

 

「あ、その漫画俺も読んでますよ」

『おっ、趣味が合うね』

『そしてテレビとローテーブルだよ』

「えっ部屋にテレビがあるんですか」

『うん』

 

 もしかして先輩も竜崎と同じでお金持ちなのか?

そう思いながら先輩の部屋紹介を聞いた。

 

『最後に、パソコンデスクだよ』

「はえ〜」

 

 先輩の部屋は全体的におしゃれな感じだった。

俺もあんな部屋に住みたい。

 

『とまあこんな感じだよ』

「綺麗な部屋でした」

『ちゃんと掃除しているからね』

『いつか君にも来てほしいよ……お泊まりでね』

「えっ」

 

そう言った先輩の顔は艶かしかった。

まるで悪魔が囁いてきているような…甘い表情だ。

これも冗談なのだろうか……。

 

『ふふっ、また驚いた』

「だからそりゃ驚きますって」

『まあ、いつか誘うよ。それじゃあ今日は寝るね。通話に付き合ってくれてありがとう、また明日、枕木君』

 

そう言った後、通話は切られた。

まだ胸がドキドキする。

先輩の家に行く妄想をするだけで……。

それはともかく、俺も明日のために寝ることにした。

 

──次の日の昼休み

 

『枕木君、枕木君』

「ん?なんですか先輩」

 

俺と先輩と竜崎でいつも通りお昼ご飯を食べていた時だった。

先輩に話しかけられたので返事をすると……。

 

『えいやっ』

 

そう言うと先輩は俺の手を掴み、自分の制服の中に潜らせた。

 

「ちょ……ちょちょちょっとなにしてるんですか先輩!?」

『ん?昨日言ったじゃないか、制服の下にパジャマを着ていくって』

 

すっかり忘れていたが、今の強烈な衝撃で思い出した。

そしてパジャマの感触は昨日予想した通り、素晴らしい触り心地だった。

 

『どうだったかな?』

「い……いい感じでした」

『なら良かったよ』

 

そんなことを話していると、うめき声のような音が聞こえた。

どこからの音だろうと発生源を探すと、その音は竜崎から発せられていた。

 

「な…なんてハレンチな…」

「枕木、あなたが先輩をたぶらかしてこのようなことをさせるなんて……」

「え!?俺じゃなくて先輩が…」

『枕木君がどうしてもどうしてもって言うからね』

「そこまでは言ってないですよ!?」

「枕木、あなたを不純異性…不純同性交遊で職員室に連れて行きます」

 

竜崎は俺の腕を掴み、引っ張っていった。

 

「えっ、ちょっちょっと待って、助けてください先輩!」

『しょうがないなあ』

 

そう言って先輩は竜崎の腕を掴み、また制服の中のパジャマを触らせた。

 

『これで二人とも触ったからセーフだね』

 

俺にはその理論はよく分からないが、とにかく助かった。

竜崎も俺の腕を離し、先輩のパジャマを触っていた。

 

「……まあ今回は先輩の顔に免じてなかったことにしますわ」

(こいつ、先輩のパジャマ触れたからってコロコロ気分を変えやがって……まあ助かったし、なんでもいいか…)

『ふふっ』

 

今日も楽しい一日だ──。

 

 

 

「趣味」

 

 

 

 いつものように学校でお昼ご飯を食べている時だった──。

 

『突然だけどさ』

「ん?なんですか先輩」

『君って趣味はあるのかい?』

 

 返答に困ってしまった。

俺は趣味なんか特にないからだ。

だからといって、正直に特にないですというのは恥ずかしい。

俺は頭を回転させ、少しでもかっこつけられる言葉を考えた。

 

「先輩、趣味なんかなくたって人は幸せに暮らしていけるんです」

「そんなことにこだわるのって……意味のないことだと思いませんか」

 

自分でもよく分からないことを言ってしまった。

先輩も少し呆れ顔で空気が凍っている。

趣味があるか?と聞かれているのに、

これでは、空気の読めない気持ち悪いやつだ。

 

『ふうん、そっか。そうだ、りゅりゅは趣味あるのかな?』

「私は休日にビリヤードをするのが好きです」

「他にもゴルフだったりいろいろしていますよ」

『へえ、いろいろあっていいね、もっと聞かせてよ』

 

 先輩は竜崎と二人で楽しそうに話をしている。

俺だけ蚊帳の外にいる気分だ。

だがそれも仕方ない、こんなつまらない男と話などしたくないだろう。

なんであんなこと言ってしまったんだ、と思いながらうつむいていると、

昼休みが終わってしまった。

 

『じゃあ、またね』

「私もそろそろ教室へ戻ります、さようなら先輩」

「あっ、じゃあ俺も……」

 

 そうして、次の授業が始まったが、気分は落ち込んだままだ。

なんとか授業を聞き、ノートを取ることはできたが、

俺の頭は後悔でいっぱいだった。

 

(あそこでかっこつけたりせず、素直に無趣味って言えば……でも、それは恥ずかしいし…)

 

 そんなことを考えながら、授業を受け、今日の学校が終わった。

家に帰ろうと、とぼとぼ歩いていると校門に先輩が立っていた。

 

「あ……どうも……」

『まだ落ち込んでいるのかい?』

 

 バレている。

別に隠そうとしていなかったから当然ではあるのだが、

落ち込んでいるのがバレて恥ずかしい。

 

「だ……だって」

『分かっているよ』

『君はカッコつけたがりで考えすぎだからね』

「うう……励ましたいのか貶したいのかどっちですか」

『もちろん励ましさ』

 

 あまり励まされた気はしないが、やはり先輩と話すと元気が出る。

 

『それで……聞きたいのだけど』

「……なんですか?」

『君は趣味を作りたいのかい?』

 

 俺は悩んだ。

別に趣味が欲しいわけではないが、無趣味が嫌なのと、

かっこつけたい気持ちの方が強いからだ。

 

『別にいらないならそれでもいいと思うけど』

『もし君が趣味を作りたいのなら……僕が手伝ってあげるよ』

『それに……』

「それに?」

『僕は趣味を持ってる人はかっこいいと思うなあ』

「やります! 俺、趣味作りたいです!」

(ふふ……枕木君は単純だね)

 

 先輩は俺を見て少し笑っていたが、

俺にはその顔の真意は分からなかった。

それはともかく、先輩の一言で、俺は趣味を作ることにした。

 

「でもなにがいいんですかねえ」

『それは君が決めることだけど、アドバイスするなら継続できるものかな』

「継続できるもの……継続……あっ」

『何か思いついたかな?』

「料理とかいいかな……って」

『それはいいね』

 

 俺は、親があまり家に帰ってこないのでよく料理をしている。

お弁当なんかも俺が作っているし、料理を趣味にするのはちょうどいいと思った。

 

「先輩、おかげで趣味できました。ありがとうございます。じゃ、今日は帰ります。また明日」

 

 そう俺が言うと、なぜか先輩は少し頬を膨らませ、不満げな表情になった。

 

「えっ、俺なんか変なこと言いましたっけ」

『ん〜?だって解決するのが早いじゃないか』

「そんなこと言われたって…」

『……そうだ、今日、君の家に行ってもいいかな』

「別にいいですけど……なんですか急に」

『君の料理が食べたいんだ、食材費は僕が出すから』

「えー……」

『趣味を作るのを手伝ってあげたお礼ということさ』

 

 そんなこんなで俺は先輩に料理を作ることになってしまった。

まず、食材を買うためにスーパーへ行くことにした。

 

「先輩、なんか食べたいものとかあるんですか」

『特にないけれど、強いて言うなら鮭のムニエルかな』

「ムニエルですか、作ったことないな」

 

そして俺は食材を買い、家に帰った。

 

「そういえば先輩、家帰らなくていいんですか。18時には帰って、ご飯を作るんじゃなかったんですか?」

『すぐ食べて帰れば間に合うよ』

「はあ、じゃあ作りますね」

 

人に料理を作るのは初めてだ。

俺はとりあえず、フライパンに油を引き、鮭を焼いた。

その後、なんやかんやして、仕上げに野菜を添えて──。

鮭のムニエルの完成だ。

 

「できましたよ、先輩」

『わあ、とても美味しそうだね』

「まあ盛り付けとかも多少こだわりましたから」

『では、いただくね』

 

 そう言うと先輩は料理を食べ始めた。

緊張する。初めて自分の料理を人に食べられているからだ。

しかもその相手は先輩。

もしまずかったらどうしようという不安が募る。

 

 先輩は上品に、そして静かに食べている。

なにも言わないのは、あまり美味しくないのだろうか?

そう思っていると、先輩が口を開いた。

 

『美味しいよ』

「ほ……本当ですか」

『うん、表面は香ばしく、それでいて中はふっくらでジューシーだ。それになにより……』

「なんですか?」

『君が作ってくれたから、より美味しい気がするよ』

 

 先輩は嬉しそうな顔でそう言った。

俺まで嬉しくなってくる。

その後、先輩は俺の作ったムニエルを、美味しそうに全て食べた。

 

『ごちそうさま』

「おいしかったならよかったです、最初喋らないからダメなのかと思いましたよ……」

『ふふっ、君は相変わらず考えすぎだね』

「ははは……」

『……こんなに美味しいご飯が食べられるなら、ここに引っ越してしまおうかな』

「えっ」

『冗談だよ』

 

 頬に軽く手を当て、少しからかうような表情で先輩はそう言った。

けれどその頬は少し赤かった。

毎回、先輩の冗談は本気か嘘か分からない。

 

『おっと、もうこんな時間だね』

「本当ですね、そろそろ帰りますか?」

『うん、今日は急に来てごめんね』

「ほんとですよ」

『ふふっ、じゃまた明日ね、枕木君』

「さようなら、先輩」

 

 今日、俺は趣味ができて、さらに目標もできた。

次は先輩に、もっと美味しい料理を作ってあげたいという目標が──。

2話まとめるのと3話まとめるのと、どちらがいいですか?

  • 2話分がいい
  • 3話分がいい
  • そもそも分けずに1話分でいい
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