真央先輩はおとこ♂の娘    作:ろあタルト大福

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第7話 「バレンタイン&水着」

 「バレンタイン」

 

 

『君、チョコは好きかな?』

 

 先輩に話があると言われ、わざわざ休み時間に会いに行ったのだが、

会って早々、よく分からないことを聞かれたので驚いてしまった。

 

「な……なんですか急に」

「まあチョコは好きですけど…これ聞くなら、メールでよくないですか……」

『君の生の声が重要なんだよ。なにしろバレンタインだからね』

「はい??」

 

 俺は思わず声が出てしまった。

とっくに今年のバレンタインの時期は終わっているし、

来年のバレンタインのことなら早すぎる。

今は6月だというのに……。

 

「なんでバレンタインなんですか」

『ん?僕と君が会ったのが入学式、つまり4月だよね』

「まあ、はい」

『だから、今年のバレンタイン分のチョコをあげようと思ってね』

「ぜんぜん意味が分からないんですけど…」

『まあいいじゃないか、……おっとそろそろ時間だね、またね枕木君』

 

 そう言うと先輩はクラスへ戻っていった。

正直まだ事態を飲み込めていないが、

俺もクラスへ戻ることにした──。

 

「ふう……」

 

 授業が終わり一息ついていると、

先輩からメールが届いた。

 

【先輩】 『君は、チョコの甘さはどれくらいがいいかな?』

 

【まくらぎ】 「俺はハイカカオがいいです。というか生の声が重要じゃなかったんですか」

 

【先輩】 『生の声はさっき聞いたから大丈夫だよ』

 

 相変わらず、先輩の考えていることはよく分からない。

だが先輩が俺のためにチョコを作ってくれるのはかなり嬉しい。

俺は今まで生きていて、バレンタインにチョコなどもらったことがない。

だいぶ季節外れではあるが、楽しみだ。

 

 そして後日──。

 

【先輩】 『校舎裏に来てくれるかな?』

 

 そうメールで言われ、校舎裏へ向かうと、

そこには包みを持った先輩が立っていた。

 

『やあ、はいこれ』

「あ……ありがとうございます」

『せっかくなら今食べてみてほしいな』

「じゃあいただきます」

 

 俺は包みを開け、チョコを手に取った。

先輩が後ろで手を組みながら、にこやかに笑っている。

感想を待っているのだろうか。

 

 とにかく一口食べてみると、口の中にカカオの風味が広がった。

ほどよい苦味のあと、心地のいい酸味がやってくる。

これこそ俺が求めていたチョコだ。

 

「美味しいです」

『ふふっ、なら良かったよ』

『さて、バレンタインの次はホワイトデーだね』

「えっ?」

『お返しに期待しているよ』

 

 そう言うと先輩は上目遣いでこちらを見つめ、なにかを待っている。

まさか名前で呼んでほしいのだろうか、それともキス待ち?

どちらにせよ今の俺にそんなことをする勇気はない。

だがチョコを貰ってしまった以上、お返しをしないのも、

気が引ける。

 

「な……なんですか」

『ん?お返しを待っているんだよ』

「お返しって……なにがいいんですか」

『それは君の気持ち次第だよ』

 

 おそらく先輩の中ではしてほしい行動があるのだろうが、

俺はテレパシーを持っているわけではないので、分からない。

そもそもチョコのお返しに、なぜこんなことを…なんてことを思っていると、

『まだかな』と先輩が急かしてくる。

 

「なにしてほしいか言ってもらわないと困りますって……」

『確かにそうだね、ならヒントをあげるよ』

「はあ」

『親しい人と』

 

 先輩がこちらへ近づいてくる。

 

『体を近づけて』

 

 さらに近づいてくる。

 

『互いに見つめ合いながら、そっと触れ合うことだよ』

 

 そう言うと、先輩は俺の目の前まで来て、俺の顎にやさしく触れた。

上目遣いでこちらを見つめてきている、その顔は少し赤い。

間違いない、先輩はキスを望んでいる。

 

 ドクンドクンと自分の心臓の鼓動が聞こえてくる。

だが俺はまだキスなんかできない。

この状況を切り抜けるために頭を回転させると、あることを閃いた。

俺は地面に座って、先輩を持ち上げ、膝の上に乗せた。

 

『ん?』

 

 先輩が驚いている。

 

「ほ、ほら、体を近づけて触れ合ってますよ」

『見つめ合っていないじゃないか』

「あっ」

 

 慌てて先輩をこちらへ向ける。

 

『これはなにかな?』

「い……いや、前に先輩が俺の膝の上に座りたがってたから……」

『……そうだね、僕も少し焦りすぎてしまったよ』

『でもせっかくだし、もう少し君の上にいることにするよ』

 

 どうやら切り抜けられたようだ。

キスもしたかったが、俺に勇気が足りなかった。

しかし、先輩が俺の膝に座っているという事実だけで、俺はドキドキする。

 

 しばらくして、先輩が満足したのか立ち上がり、

『そろそろ僕は行くよ、素敵なお返しをありがとう、枕木君』と言って、

どこかへ行ってしまった。

 

 俺もそろそろ行こうと、立ち上がろうとしたが、

まだ先輩の感触が残っている──。

俺はその余韻で立ち上がることができなかった──。

 

 

 

 「水着」

 

 

『やあ』

「なんですか、先輩」

 

 俺は今、先輩に呼び出されて、二人きりで校舎裏にいる。

 

『次の休みは暇かな? よかったら一緒に買い物に行かないかい?』

「はあ、まあいいですけど。なに買うんですか」

『水着だよ』

「え゛っ」

 

 思わず変な声が出てしまった。

先輩の水着……?想像しただけで胸がドキドキする。

鼻血も出てしまいそうだ。

 

『そろそろ夏だろう?だから水着が欲しいと思ってね』

「は、はあ」

『あ、最初に言っておくと、今回は二人きりで行くよ』

「え゛っ」

 

 またもや変な声が出てしまった。

先輩と水着を見るだけでも、おかしくなりそうなのに二人きり……?

俺は鼻血が出てしまう前に、顔をハンカチで押さえた。

 

『相変わらず君の反応は可愛いね』

「い……いやだって急に二人きりとか言われたら」

 

 もしかしてこれは遠回しなデートのお誘いなのだろうか。

先輩ならやりそうだ。

 

『だって恥ずかしいじゃないか』

「はい?」

『りゅりゅは女の子だからね、異性と一緒に見に行くのは少し恥ずかしいからさ』

(先輩に恥ずかしいという感情があったのか……)

 

 デートの誘いではなくて少しがっかりはしたが、

先輩と二人きりで行くというのなら、行かない理由はない。

俺は誘いをOKし、その日は一度別れた。

 

そして後日──。

 

「すいません、お待たせしました」

『やあ、僕もちょうど来たところさ』

『じゃあ、行こうか』

 

 そして俺たちは水着売り場へと向かった。

向かう道中、俺にはある疑問が浮かんできた。

 

(先輩の水着ってどっちの性別なんだ……?)

(男? それとも女? いやジェンダーレス水着かも……)

 

 そんなことを考えていると、先輩がこちらをチラッと見てきた。

 

「な……なんですか」

『どれだと思う?』

「はい?」

『君が今考えていたじゃないか、僕の水着のことだよ』

「また俺の考えていることを……」

『ふふっ、あっ着いたよ、答えはお預けだね』

 

 先輩と話していると、いつのまにか水着売り場に着いていた。

ここには様々な水着が売っている。

可愛いもの、カッコいいもの、セクシーなものまで置いてある。

 

『いろいろあって悩んでしまうね。君もよかったら、僕に似合いそうなものを探してほしいな』

「えっ、いいんですか」

『一緒に来たんだから当然だよ。あっ、あまりセクシーなものはダメだよ』

「なっ、そ……そんなの選ぶわけないじゃないですか!」

『ふふっ、じゃあ探そうか』

 

 そうして俺と先輩の水着探しが始まった。

どうやら、まず男性用の売り場を見るらしい。

 

「へえー、男水着にするんですか?」

『まだどんな水着を買うか決めてないからね』

「えっ、決まってなかったんですか。答えはお預けって言うから決まってると思いましたよ」

『まあいいじゃないか、おっ、これとかどうかな?』

 

 先輩が選んだのは、少しゆったりとしたサーフパンツだ。

 

「サーフパンツですか、いいです……」

 

そう言いかけた瞬間、俺の頭をよぎったのは、

白い砂浜に佇む、サーフパンツを穿いた先輩……。

そしてその上半身は…。

 

「だあああああっ、せっ先輩それはセンシティブすぎますっ」

『ん?これにするなら上にラッシュガードを着るに決まっているじゃないか。枕木君はスケベだね』

 

 やってしまった。

早とちりした結果、俺のいやらしさがバレてしまった。

 

『うーん、ここにはなさそうかな、次は女性用へ行くよ』

「ううっ……」

『まだ落ち込んでるのかい?ほら、行くよ』

 

 そう言うと、先輩は俺の手を握って、女性用売り場まで連れて行った。

 

『やっぱり女性用の方がデザインがいろいろあっていいね。ほら枕木君、これとかどうかな?』

 

 その水着は、タンクトップのようなデザインだった。

 

「俺はもっと……その肌が見えた方が……」

『やっぱりスケベなんだね』

「うっ」

 

 その後もいろいろ探したが、先輩と俺が納得するような水着はなかった。

 

「なかなか見つからないですね」

『そうだね……というか探してるのは僕ばかりじゃないか』

『君にも探してほしいのだけど』

「だ、だって俺が選ぶやつはその……多分あれですから」

『露出が多いってことかな?』

「……はい」

 

 またスケベだと思われてしまった。

もう俺はダメかもしれない。

だが次の先輩の一言は俺の予想とは違っていた。

 

『じゃあ一回それを選んできてほしいな』

「えっ」

『せっかく一緒に来たんだから、君の選ぶものが知りたいんだ』

「じゃ……じゃあ」

 

 俺が選んだのはフレアビキニという、

胸の部分にフリルがついていて可愛らしい水着だ。

それに加えて、パレオという、

腰に巻いて着用する布がついているものだ。

 

『へえ、こういうのが君の好みなんだ』

「あっ……嫌なら全然、気にしないでください」

『それいいね、気に入ったよ。せっかくだし試着してこようかな』

「えっ」

 

 そう言うと先輩は俺が選んだ水着を手に取り、

試着室へ向かった。

 

『一応言っておくけど、見たらだめだよ』

「しませんよそんなこと!」

『ふふっ、じゃあ着替えるね』

 

 そして少し時間が経ったあと、

声が聞こえてきた。

 

『着替え終わったよ』

 

 そう言ったあと、先輩は試着室のカーテンを開けた。

 

『どうかな?似合っているだろうか』

「すごく……すごく似合ってますよ先輩!」

 

 

 黒を基調とした水着は、先輩の白い髪と合わさり、

美しい色合いに感じる。

そしておへそと肩が出ているのが、俺的には素晴らしい。

だが、パレオのおかげで露出も多すぎず、いい塩梅だ。

 

『あまり、こういう水着は着たことがないから恥ずかしいね』

「いやでも、いいですよ!ほんとに」

『……じゃあこれを買おうかな。だって、君が選んでくれたんだからね』

 

そう言った先輩の顔は、少しだけ赤く見えた。

 

『それと……』

「なんですか?」

『恥ずかしいから閉めていいかな』

「あっ、はい」

 

 そして少し時間が経ったあと、先輩が試着室から出てきた。

その表情は満足そうだった。

そして俺たちはレジへ向かい、水着を買って店を出た。

 

『今日はありがとう、枕木君』

「自分も楽しかったですよ」

『いろいろといやらしいことを考えていたもんね』

「それは忘れてください……」

『ふふっ、じゃあまたね枕木君』

「さようなら、先輩」

 

そして後日──。

 

「先輩とプールに行けるなんて、私幸せですわ」

「はあ」

 

 今日は先輩とプールに来ている。

竜崎もいるがまあいい、なぜなら先輩の水着は俺が選んだものだからだ。

おそらく竜崎は驚くだろう。

 

「おや、先輩が来たようですわ」

『ごめんね、遅れてしまったよ』

「いや、いいですよ、せんぱ……」

 

 水着が違う。

サーフパンツの上にラッシュガードを着ている。

俺の選んだものじゃない。

 

「せ…先輩、あの水着はどうしたんですか!?」

『……だって』

「だって?」

『露出が多くて恥ずかしいじゃないか』

 

 その日、俺の選んだ水着が見れることはなかった──。

 

 

 




「バレンタイン」のおまけ

【まくらぎ】 「俺、昨日先輩にチョコ貰ったんだ。」

【竜崎】 「そうですか」

【まくらぎ】 「羨ましいだろ」

【竜崎】 「私は先週いただいたので」

【まくらぎ】 「……」

【竜崎】 「羨ましいですか?」

先輩が俺より先に竜崎へチョコを渡していたという事実と、
竜崎に煽り返されたことにより、
俺は嫉妬と悔しさでベッドの上でのたうち回った──。
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