「手を、握ってもらって、いいですか」
掠れたような声しか出せなかった。
痛い、痛い、痛い。
視界が赤で染まる。
その中に、一つだけ光る、星。
僕は、あなたを
⬛︎⬛︎⬛︎めたい____
「あくまで模擬戦、わかっているね?」
冷たい天才の声が天皇を刺す。
「勿論、そんなヘマをするように見えるか?」
「前科があるもんで」
どうやら、雄略は何かやらかしたことがあるらしい。想像はつく。
「今回は、戦闘不能になる前まで追い込めたらよしとする。注意を払って行うこと。いいね」
「はーい」
礼装の確認はガリレオにしてもらった。どうやらこちらでも正常のようだ。
「雄略、お前は藤丸少年に傷をつけることを許すな」
「おう?」
「後に諸々やりたいことがあるからな」
傷をつけてもらっちゃ困る、と不気味に笑う天才を他所に、シュミレーターは展開される。
青空一面と、それに相対するように広がる草原。どこかオルレアンを感じさせる景色だ。
「準備はいい?」
「ああ、勿論だ。なぁ、マスター?」
「うん!」
2人と2人、マスターとサーヴァント。異聞帯のクリプターたちとそのサーヴァントを思い出す。今は、力試しだというのに。
「先輩」
「うん」
「 カルデアがマスター、
綾三原千鶴が許可する!
アギス・アスピオ、霊基を解放せよ! 」
アギスの小さい体が魔力を纏う。青光りに照らされたそれは、やがて形を変え____
「大人になった…!」
変わると言うより、元に"戻った"ような…霊基再臨のようなものだろうか。鎧を身に纏う美しい青年に姿を変えた。手に持っているのは、盾…のようなものだ。
「マスター、いつでも」
「うん!じゃあ藤丸くん、いくよ!」
千鶴の声によって模擬戦は開始した。
別世界だからか、それとも日が空いているせいか、かなり体が鈍っている気がする。
「なぁに、俺がサーヴァントだぜ?大船に乗った気でいろ、マスター!」
オレの不安を感じ取ったのか、雄略はこちらに笑みを向けてからアギスの方に向かった。アーチャーだと言うのに、近距離を望むのだろうか?
「よっ…と!」
ガン、と鈍い音が風に乗って響く。
なんと、雄略は足でアギスの盾?に攻撃をぶつけていた。
「アーチャーと侮るなかれ!俺こそはスメラミコト!直接制裁を下す!」
「それは直接攻撃の方が好むと言うわけでは!?!?」
アーチャーの意味は!?
※「だって弓持ってたらカッコいいだろ?」とのこと。
雄略がアギスの盾?を次々に蹴っていく。そして、アギスはそれを難なく防いでいる。
「ハ!防ぐことしかできねぇのか?なり損ないが!!」
「僕は今を生きるデミ・サーヴァント。なり損ないでもなんでもない」
アギスが押し返し、雄略は後退する。
「くそ、めんどくせぇの」
手に持ったのは大型の弓だ。雄略の身長よりも大きく、それをどう使うのかオレにはわからない。
「マスター、バチッと決まったら褒めろよ?」
「え?」
ぐい、と弓を引く。手には三本の鉄剣、まさか…
「…当たる!」
それを矢代わりにして一気にアギスに放った。クロスボウみたいな使い方だ。器用だ…
「アギス!」
「マスター、おまかせを」
アギスは降り注ぐ3本の鉄剣を華麗に躱わす。体が大きくなれど、その動きはまるで猫のようだった。
そのままこちらに向かってくる。アギスは手に持っている盾?を雄略に向かって投げた。
「そんなもの、当た
「雄略!左だ!!!」
そう、それはフェイクであった。盾であれ何であれ、それを避けられるとアギスはわかっていたようだ。そのまま剣を持った雄略の脇に突っ込む。
「っよ!!」
「…当たらなかった」
「さんきゅ、マスター!お前のおかげで避けれたわ!」
太陽のようにニカッと笑ってこちらにピースを出しながら、雄略がこちらに寄ってくる。
「じゃあ宝具行くぜ、マスター魔力くれ」
「あ、うん!」
雄略の肩に触れようとすると、不思議そうに首を傾げた。
「?ちげぇって、こっち」
肩に伸ばした手を取り、そのまま握られる。
…???
「っし、チャージ完了!いっちょぶっ放してくるぜ!!」
手を離し、ぶんぶんと腕を回しながら前線へ戻っていく。距離がちかーい…
「アギスも、よろしく!」
「はい。宝具、展開します」
二つの宝具がぶつかり合う。
一つは炎の鉄剣が降り注ぎ、もう一つは美しい神殿を生み出した。
その神殿は、キャメロットではない。
つまり、アギスと融合した英霊はギャラハッドではないと確信できた。
でも、美しいことは変わりなかった。
それは、人の目を奪うような
「アギス、大丈夫?」
「心配ありません。ちょっと掠っただけです」
シュミレーターを終了し、千鶴はアギスの元に駆け寄っていた。もう身体は縮んでいる。あれは戦闘のみらしい。
「ち、脆いとはいえ作りはしっかりしてんだよな、あれ」
「あれっていうのは、アギスの宝具のこと?」
髪をいじりながらも、雄略は頷く。
「あれは攻撃とか守備とかそういう類じゃないんだよ。まぁ今は防御っていう形なのかもしれないけどな。」
それより、と雄略は俺の方に肩を寄せる。前もこの構図あったな…
「俺、当たったぜ?大半は弾いたけど、それでもアイツに届いたぜ?」
「うん、ありがとう。雄略はすごいね」
そう言って笑ってみせると、雄略は見て分かるように機嫌が良くなりそのままスキップしながら廊下を走っていった。なんだか犬みたいだ…しっぽが見える…
「藤丸くん、お疲れ様!」
「良い戦いでした」
アギスが頭を下げ、千鶴がペットボトルをこちらに寄越してきた。
「オレはなにもできてないよ。頑張ったのは雄略。」
「何言ってるの、マスターは肝心だよ。」
「そうだよ、藤丸くん」
背後からひょっこりドクターが現れる。また菓子でも食べていたのか、ふんわり洋菓子の匂いが漂う。
「後で色々とみさせてね。心配だから」
「はい…」
目が少し怖い。もしかして、ガリレオはドクターに何も言わずシュミレーターの許可を出したのだろうか…
「それより、聞きたいことがあります」
アギスが一歩前に出、オレの目の前に来る。
「どうしたの?」
「僕は、強いですか」
「強いと思うよ」
「それは、あなたのサー」
「はーいストップ」
千鶴がアギスの口を塞ぎ、ずるずると後ろに引きずっていく。
「じゃあ藤丸くん、今日はゆっくり休んでねー!」
「まったく、千鶴ちゃんは」
「…雄略は、あの2人は姉弟なんかじゃないって言ってたけど」
「ん?」
「確かに、姉弟ってよりか一心同体みたいでいいな」
懐かしい記憶が蘇る。
特異点でのマシュとの思い出。他のサーヴァントたちと交わした言葉。きっと彼女らが体験するこれからの物事全部、形作る一部となる。
ずっと一緒にいてほしい、とかわがままってわかってるんだけどなぁ
「そうだね、2人とも互いがなくてはならない存在みたいだ」
「それより、僕は君とアギスの方が兄弟に見えるな」
「見た目で言ってない…?」
※立ち絵参照
天皇は気に入った人にはグイグイいくので、ぐだには距離近めです。
次ぐらいから本編ストーリーいきます!頑張るぞ〜