『神様の手違いで死んだ社畜、異世界で《創造》の力を手に入れる』   作:やのちてぇ

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第八話 初めての本気

 

 

光が、俺の手の中で渦を巻いていた。

 

眩しい。

 

熱い。

 

それなのに――不思議と怖くない。

 

むしろ。

 

身体の奥から、何かを引き出しているような感覚があった。

 

「……何なんだよ、これ」

 

目の前では、巨大な魔物がこちらを睨んでいる。

 

黒い毛。

 

二本の角。

 

巨大な身体。

 

さっきまでなら、逃げることしか考えられなかった。

 

でも今は。

 

違う。

 

俺は光を見ながら、頭の中でイメージする。

 

剣。

 

炎。

 

もっと強く。

 

もっと鋭く。

 

そして――

 

俺が「こいつを倒す」と思えるもの。

 

「……頼む」

 

光が弾けた。

 

バシュッ!!

 

「――っ!」

 

俺の手に現れたのは。

 

一本の剣だった。

 

ただの剣じゃない。

 

刀身は黒に近い銀色。

 

刃の周囲には、赤い光が細く走っている。

 

炎が燃えているわけじゃない。

 

それでも。

 

刀身そのものが、熱を持っているのが分かる。

 

「……何これ」

 

自分で作ったのに。

 

分からない。

 

今まで作ってきたものとは明らかに違う。

 

まるで。

 

「……こいつのために作られたみたいだ」

 

魔物が吠える。

 

「グオオオオオッ!!」

 

突進。

 

地面が揺れる。

 

俺は剣を構えた。

 

「……来い」

 

巨大な爪が迫る。

 

俺は横へ飛ぶ。

 

そのまま身体を回転させる。

 

そして――

 

剣を振った。

 

ズバァッ!!

 

「――え?」

 

斬った。

 

確かに。

 

斬った。

 

だが。

 

「……浅い!」

 

魔物の肩から血が流れる。

 

致命傷ではない。

 

魔物が振り返る。

 

怒っている。

 

「やっぱ一発じゃ無理か!」

 

魔物が再び突っ込んでくる。

 

俺は走る。

 

避ける。

 

斬る。

 

避ける。

 

斬る。

 

何度も何度も繰り返す。

 

だけど――

 

こいつは強い。

 

一撃でも食らえば終わる。

 

腕をかすめただけで、服が裂ける。

 

「くそっ!」

 

俺は距離を取る。

 

息が上がる。

 

「……こんなの、どうやって倒すんだよ」

 

魔物も息を荒くしている。

 

俺の攻撃で傷は増えている。

 

でも。

 

まだ倒れる気配はない。

 

俺は剣を見る。

 

赤い光が、刀身の中を流れている。

 

「……そうか」

 

ふと思った。

 

俺はこの剣を作った。

 

だったら。

 

もっとイメージすればいい。

 

ただ斬るだけじゃない。

 

「燃えろ」

 

俺が呟いた瞬間。

 

刀身の赤い光が、一気に広がった。

 

ボォッ!!

 

炎が噴き出す。

 

「……!」

 

炎が剣全体を包む。

 

昨日と同じ。

 

でも。

 

昨日とは違う。

 

炎が、俺の意思に反応している。

 

右へ振れば右へ。

 

左へ振れば左へ。

 

まるで。

 

俺の身体の一部みたいに。

 

「……これなら」

 

魔物が突進してくる。

 

俺は逃げなかった。

 

正面から向かう。

 

「――行けぇっ!!」

 

魔物の爪と。

 

俺の剣が。

 

ぶつかった。

 

ガキィィィン!!

 

凄まじい衝撃。

 

身体が吹き飛ばされる。

 

「ぐっ……!」

 

地面を転がる。

 

腕が痺れる。

 

「……痛ってぇ……」

 

それでも立ち上がる。

 

魔物もこちらを向く。

 

その肩には。

 

大きな傷。

 

そして。

 

炎が燃え移っていた。

 

「……炎は効いてる」

 

なら。

 

もう一度。

 

俺は剣を握り直す。

 

魔力が減っている。

 

身体も重い。

 

《創造》でいろいろ作った時とは比べ物にならない。

 

この剣は――

 

魔力を食っている。

 

「なるほど……」

 

強いものを作れば。

 

その分だけ、俺も消耗する。

 

だったら。

 

「一回で決める」

 

魔物が吠える。

 

俺も走る。

 

「うおおおおおおっ!!」

 

魔物が爪を振り下ろす。

 

俺はギリギリで避ける。

 

地面に巨大な亀裂が走った。

 

「怖ぇぇぇ!!」

 

思わず叫ぶ。

 

だが。

 

止まらない。

 

魔物の懐へ入り込む。

 

剣を下段に構える。

 

そして――

 

「これで……終われぇぇぇ!!」

 

斬り上げる。

 

ズドォォォン!!

 

炎が爆発した。

 

魔物の巨体が宙へ浮く。

 

黒い毛が燃え。

 

巨大な身体が地面へ落ちる。

 

ドォン……。

 

静かになった。

 

「…………」

 

俺は剣を握ったまま。

 

動けなかった。

 

魔物は。

 

動かない。

 

「……倒した?」

 

恐る恐る近づく。

 

胸が上下していない。

 

「……マジか」

 

俺はその場に座り込んだ。

 

「……勝った」

 

初めて。

 

自分の力だけで。

 

強敵を倒した。

 

「……はは」

 

笑いが出る。

 

「俺……冒険者やってんじゃん」

 

その瞬間。

 

手の中の剣が消えた。

 

「……あ」

 

そして。

 

身体から一気に力が抜けた。

 

「ちょ……」

 

そのまま。

 

俺は地面に倒れ込んだ。

 

 

どれくらい眠っていたのか。

 

分からない。

 

目を開けると。

 

空が見えた。

 

「…………」

 

青い。

 

雲が流れている。

 

「……生きてる」

 

身体を起こす。

 

全身が重い。

 

特に腕。

 

「魔力切れ……ってやつか」

 

俺は苦笑した。

 

《創造》は便利だ。

 

でも。

 

何でも無限に作れるわけじゃない。

 

少なくとも今の俺には。

 

限界がある。

 

「……覚えとこう」

 

俺は立ち上がり、倒した魔物を見る。

 

改めて見ると。

 

やっぱりデカい。

 

「これ……どうやって持って帰るんだ?」

 

しばらく考える。

 

そして。

 

「あ」

 

《創造》を使えば――

 

そう思った瞬間。

 

頭の中に嫌な予感が走った。

 

「……いや、やめとこう」

 

こんな巨大なものを作ったら。

 

また魔力切れになる気がする。

 

「引きずって帰るか……」

 

俺は魔物の足を掴んだ。

 

「……重っ」

 

当然だった。

 

 

数時間後。

 

北門。

 

門番の男が遠くからこちらを見ていた。

 

「……ん?」

 

ズルズル。

 

ズルズル。

 

何かを引きずりながら歩いてくる。

 

「…………」

 

近づいてくる。

 

巨大な魔物。

 

そして。

 

その後ろに。

 

ボロボロになった男。

 

「……おい」

 

門番が目を疑う。

 

「お前……」

 

俺は手を上げた。

 

「ただいまです」

 

「…………」

 

「えっと」

 

俺は魔物を指差す。

 

「これ、調査対象です」

 

門番は。

 

しばらく何も言わなかった。

 

そして。

 

「……お前、本当に何者だ?」

 

「俺にも分かりません」

 

本当に分からない。

 

《創造》が何なのか。

 

あの剣が何だったのか。

 

なぜあんなものを作れたのか。

 

まだ何一つ分からない。

 

ただ一つだけ。

 

分かったことがある。

 

俺の力は。

 

俺が思っていたより――

 

ずっと大きい。

 

 

その頃。

 

冒険者ギルド。

 

リリアは受付カウンターで書類を整理していた。

 

「……レイさん、遅いですね」

 

調査依頼に出てから、かなり時間が経っている。

 

嫌な予感がする。

 

「無茶してなければいいんですが……」

 

その時。

 

ギルドの扉が開いた。

 

「おい!!」

 

門番の男が叫ぶ。

 

「レイ・アストレアはいるか!?」

 

ギルド中が静かになる。

 

リリアが顔を上げる。

 

「……レイさん?」

 

そして。

 

門の外を指差す門番。

 

「とんでもないものを持って帰ってきたぞ!!」

 

リリアが立ち上がる。

 

「……え?」

 

嫌な予感が。

 

見事に的中した。

 

「……またレイさんですか」

 

リリアは小さくため息をついた。

 

けれど。

 

その顔には。

 

ほんの少しだけ。

 

笑みが浮かんでいた。

 




熊ですら生で見ると怖いのに…
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