この世の中の全ての災難は平日によるストレスのせいだ。そこで男は考えた。
なら全て休日にしてしまえばいいのでは、と。
「世界の中心といえばアメリカ!よし、理事長!俺ちょっとアメリカの七曜表全部日曜日にしてきます!」
なぜ土曜ではダメなのかって?そりゃあ土が太陽に勝てるわけないからだろ。土星ジョークも程々にしてくれ
世界というのは実に残酷だ。生まれながらにしてハンデを抱えていたり、反対に素晴らしい才能を持つものがいる。
その差は並大抵のことでは埋められない。
「あの真っ黒いケダモノを早くどこかにやってくれ。まったく、あんなに酷いウマ娘は今まで見たことがないぞ。目にするのも不愉快だ」
腐った世界だ。ぶっ壊してやりてぇくらいに。
「あれでも前よりよくなっていますよ。あまり酷なことをおっしゃらないでください。世の中わかりませんよ。彼女だって、いつかバラのレイが似合うようになるかもしれません」
だからといって、こんなところでは終われない。
「冗談も程々にしてくれ。あのろくでなしに似合う花は献花だけだ。墓に入ったなら送ってやってもいいが」
そんな現実は認めない。例え運命だろうと噛み付いてやる。
The star no one wanted.
「誰も望んでない?そんなの俺様には関係ねぇ」
勝者ってのは、最後まで立っていたやつのことだ。
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「今日は日曜日。なんだかいいことが起こる気がするぜ。月曜日は皆にとって悪魔の日だが、日曜日は違う。ブラックマンデーとはよく聞くが、ブラックサンデーなんて聞かねぇしな」
本来であれば活気あふれるこの地には現在静寂が漂っている。皆仕事や学校が憂鬱なのだろう。
「仕事があるのは日曜じゃない?うるせぇ!今日は誰が何と言おうが日曜日なんだよ!」
俺がそうと決めれば今日は日曜日なのだ。故に、俺は優雅な朝食を取っていた。
「そろそろこの国の食事にも飽きてきたな…ボリューミーなのはいいが、如何せん甘すぎたりなんだったりで慣れるにはきつい。帰国した時に怒られたくもねぇしな」
トレセン学園に無理を言ってアメリカに来た俺は、一週間近くこの国をバッチリ満喫していた。別にサボりとかじゃない。仕事に身を入れるには目一杯遊ぶのが効果的だからな。
「マジで登録面倒くさかったなぁ。ライセンスのほかに州ごとに申請しないといけねぇとか面倒くさすぎんだろ。州ごとにルールも変わるし、統一してくれんかね」
まあそうはいっても今更全部統一は無理ゲーだろうが。
「ま、とりあえずはクラブチームにでも行くかね」
トレセン学園的なものもないことはないが基本的には独立した施設があるらしい。ばっちゃんがいってた。文化の違いだとか何だとかで統一するのは難しいんだとさ。
まあ、俺にはよくわからん。全部日曜日にすればいいんじゃねぇかなぁ…
「州がURAでクラブが縮小版トレセン学園って認識でいいのか?なんかこっちに来る前学園側から説明された気がするんだが…忘れちまったな」
あんまり長い話をされると忘れちまうんだよな。
「まあなんとかなんだろ。ここはケンタッキー州だから一番近いのはストーン…ストーンなんだったっけか?」
ま、名前なんてわからくても関係ねぇよな。
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「あ〜めんどくさかったぜ。ここに来るのにも手続きが必要とか嫌になっちまう。マジ全部誰かやっといてくれたらよかったのによ」
ちょっと手間取ったせいか変な目で見られたぜ。あいつらレイシストだろ、舐めやがって。
「数はそれなりにいるがよくわかんねぇな。ま、こういうのはわかるやつに聞くのが一番だよな」
さてさて、誰に聞こうかね…あいつでいいか。
「よお兄弟。日曜日を満喫してるか?俺はジャックっつーんだが、ここに来るのは初めてでな。ぜひとも教えてもらいたいことがあるんだが」
近くにいた男に話しかければ怪訝な目で見られた。
「今日が日曜日だと?カレンダーを見間違えてるんじゃないのか?それに、ジャック?面白い冗談だな。お前はどう見たってアジア人だろ」
なんだこいつ面倒くせぇな。んなとこ気にすんなよ。ていうか今日はどう考えても日曜日だ。
「まあそんなこといいだろ兄弟。俺は今困ってんだ。鶴の恩返しって知らねぇか?礼ならするぜ?」
「礼はいらないが、金なら受け取ってもいい」
なるほど…正直なやつは嫌いじゃない。
「そうだな…とりあえず5ドルだ、兄弟。内容次第では上乗せしてもいい。いい情報をぜひ俺にくれよ」
「ジャック、現地人でもねぇお前がここに来るのはウマ娘を探してんのか?」
さっきまでは気にしてたくせに金をやった途端に呼び始めるとは、中々ユニークなやつだ。
「察しがいいな兄弟。そう、そういうことだ」
「ならいい場所がある。俺について来い」
そう言い俺の前を行った男に、俺はついていった。
「ここだ。ここならウマ娘も見渡せていいだろ?」
「そうだな。いい仕事するじゃねぇか兄弟」
「だろ。それで、もう他にはなにかないか?」
ウマ娘たちをみれば、一人気になるウマ娘がいた。
「なあ、あいつは他のウマ娘とは走らねぇのか?」
そう聞くと、男は少し微妙な顔をした。
「あいつは周りとは反りが合わないらしくてな」
「ほーん、なるほどね…」
「もしあいつが気になってるんならやめといたほうがいい。ありゃ何を言っても聞かないタチだ」
気性難ってのはそれだけ反発心があるってことだ。
「俄然興味が湧いてきたぜ兄弟。なに、ちょっとヤンチャなくらいがいいじゃねぇか。あいつの名前は?」
「サンデーサイレンスだ。さっきも言ったけどな、俺は本当にオススメしないぜ。気性難だけじゃなく何より見た目が悪い」
おお、サンデーサイレンスか。なんて日曜日なんだ…待て、見た目が悪いだって?俺から見る限りは少し暗いが悪いというほどには見えない。
「ん?そりゃどういうことだ兄弟」
「今は隠れてわからないが、あいつの脚は内側に曲がってる。気味が悪いと周りからは遠ざけられている」
「へぇ…そりゃ確かに重要だな」
「最初は同情したやつが話しかけたり世話しに行ったりしたんだが、全部跳ね除けてな。今じゃ誰も近づかない」
「大問題ウマ娘ってわけか」
「まあ運命に恵まれなかったんだろう。可哀想な子だ。孤立して周りと関わらずに生きて行くことを選んだんだ。アテがないから即決したくなるのは分かるが、相手は選んだほうがいい」
う〜んなるほど、完璧に理解した。つまり俺があいつを勝たせれば全ての曜日を日曜日にできるわけか。それに、サイレンスってことは静寂、つまり誰からも文句の声は聞こえないってことだ。
「選ぶ相手は最初っから決まってたらしい。兄弟、情報の礼だ。受け取ってくれ」
そう言って、俺は20ドル…いや、30ドルだったか?まあ、大体それくらいを渡した。
「忠告は耳に入ってないようだな…ジャック、お前の名前は?」
「名前ならさっき話したろ?」
「偽りなんかじゃない、本当の名前を聞いてるんだ」
「ああ、それなら聞く必要はない。どうせすぐわかるからな」
俺があいつと歴史に名を刻めば名前なんてすぐわかる。
「それじゃあな兄弟。次会うことがあればまた頼む」
「お前があいつに蹴られて死なないように祈っとくよ」
相手はサンデーだぞ?つまりは日曜日だ。日曜日なら死にはしない。
「日曜日だから大丈夫だ兄弟!」
そう言って俺はあのウマ娘の元へ走り出した。
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「よおチビ!走ってるところ悪いが俺と話をしよう」
「いいぜ。てめぇがくたばってからならな!」
ふむ、恐ろしく早い蹴り。俺でなきゃ見逃しちゃうね。だが、それを見切った俺には当たらない。
「チッ、避けやがったか。なんだお前?」
「人の話はちゃんと聞こうぜ。なんか嫌なことあったんなら俺が聞いてやるからさ。落ち着けよ」
「お前のせいで苛ついてるのがわからねぇのか?」
「その行動力には感心するが、まずは話をしたほうがいい」
「お前みたいな必要のねぇことをしてきやがるやつに話なんかいらねぇ。これ以上なんかされたくねぇなら失せろ」
こっ、こいつ…できる!高圧的な態度はイニシアチブを取る上で大切なことだ。やはり優秀なのでは?
「まあまあそう言わずに話を聞いてくれよおチビちゃん」
「殺す…!」
「ふん、先ほどと変わらぬ蹴り。何度やっても俺には…ゴフッ!!」
バカな…避けた先に拳を置くとは。なんてやつ!
「な、中々やるじゃねぇか…」
「ハッ、いい気味だ。似合ってるぜその格好」
相手の変化に応じて褒められる…うーん100点!
「やっぱり?実は俺もそう思ってたんだ」
「皮肉に決まってんだろ。てめぇの頭には脳みそが詰まってねぇのか?」
うおーん(泣)まあ皮肉は発想の転換とも言える。
「まあ冗談は程々にして、サンデー。俺と世界目指さねぇか?」
「は?嫌に決まってんだろ。頭おかしいのか?」
ストレート!直球!どう解釈しようとも悪口!
「なんでそんな意地悪ばっか言うの!?」
「はぁ…?」
「お前は周りを見返してやりてぇんだろ?」
「…だったらなんだ?お前には何の関係もねぇだろ」
「何言ってやがる。関係ないわけねぇだろ」
俺はサンデーを指差した。
「お前は周りを見返してやりたくて、」
「俺は担当が欲しい」
「そこに何の違いもありゃしねぇだろうが!」
「違うに決まってんだろ!」
「なんて早い返答…レスポンスが早いのはいいことだ」
「なんなんだお前?なんで俺に関わる?」
なぜわかりきったことを聞くのだろう…?待て、そうか!これは俺を品定めするための質問か!ならば答えは一つ。
「お前が欲しいからだ。例えどんなにお前が否定しようと、お前は優秀だ。見たときに思ったよ」
「何言ってやがる…?」
「確かにその脚は見栄えが悪い。だが、だからといって走れないわけじゃない。むしろ、お前はあの中で誰より力強く走ってた。俺はその姿に、惚れたんだ」
「………」
返答が急になくなると心配になるな。ちょっとキザすぎたかもしれん。減点か?これ。
「もういい。やる気なくしたから帰る」
「えっ?ちょ待てよ」
そんな俺の制止の声も虚しくサンデーは走り去っていった。
「減点どころか赤点かぁ…」
中々険しい日曜日になりそうだ。
_______
この曲がった脚のせいで今まで最悪な目に遭ってきた。
よく重視される血統を俺は持ち合わせていなかった。だというのにこの脚のせいで更に俺は侮蔑的な、屈辱的な目で見られてきた。どいつもこいつも俺を見下して、苛立って仕方がねぇ。
同情で余計なことをしてくるやつも目障りだった。
だからこそ関わってくるやつは全員漏れなく蹴ってやった。そうすりゃ苛立ちも解消できて、関わっても来なくて一石二鳥だった。
気づけば誰も俺に近寄らなくなって孤立した。俺を恐れてか、はたまた見下してる存在に手を差し伸べる自分への酔いが覚めたのか。
どちらにせよ、俺には関係なかった。誰とも関わらなければ、俺を見下した視線に晒されることはなかったから。
未来永劫、俺は一人のはずだった。だってのに…
「なんなんだよ、あいつ」
第一声がこっちを挑発したものかと思って蹴ってやれば避けられた。話す言葉に苛ついて殴ってやったときはスカッとした。皮肉を言えば更に俺様を挑発してきたかと思ったが、あいつの目には俺がいつも感じる見下した視線を感じなかった。
「あいつは絶対頭がおかしい。そうに決まってる」
じゃなきゃ蹴って、殴って、高圧的な態度をとる相手と会話しようなんて思わない。普通の人間は殴られたら怖気づいて話そうとは思わないし、もし違ったとしても出るのは怒りだ。むしろ俺を認めるような発言するわけねぇ。ましてや惚れたなんて…
「違う、そんなはずねぇ。あんなの欺瞞だ。嘘に決まってる」
お前が欲しいだとか、優秀なんてのも全部そうだ。
だから、期待なんてしてない。
「…だが、この脚についてあいつは否定も肯定もしなかった。こんな脚でも走れるって、そう言ったんだよな」
やっぱり、あいつは頭がおかしい。あんなキザなセリフを吐くやつは普通いない。
そんなことを考えながら歩いていると、曲がり角を曲がった際に誰かにぶつかってしまった。
「ん?おお、また会ったなチビ!日曜日を満喫してるか?」