ある日の男二人のたわいない会話。

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寝取られ性癖

「お前さ、寝取られ好きだよな」

 

「はあ?」

 

 休み時間。友人がいきなりそんなことを言ってきた。

 

「なんだよ急に」

 

「いやさ、俺はそんなの全然受け付けないんだけどお前にとってどういう感情であれでしこってんのかなっと思ってさ。だって、自分の好きな人と他人が愛し合ってるって内容だぜ。普通に考えれば」

 

「気持ち悪いってか」

 

「そうそう」

 

「まあ、確かに。世間一般から見れば寝取られっていうのはそういうもんだろうな。だけど、あのジャンルは好きな人はとことん好きな作品なんだよ。お前さんがロリを好きなのと同じようなもんだ」

 

「な、俺の愛するろりたちとお前の異常性癖を一緒にすんじゃねえ」

 

 俺の言葉に少し怒りのこもった声で返す友人。

 

「悪い悪い。ただまあ、そうだな。寝取られってゆうのはまあジャンルとしては確立してるが寝取りと混同されがちだしな」

 

「寝取りとは?」

 

「寝取られが自分の好きな人が別の人物とそういう行為をしているって内容で、寝取りはその寝取っている人物の視点。すなわち間男視点の話だな。こっちのほうがメジャーなジャンルだなどっちかといえば」

 

「へ~知らなかった」

 

「興味ないからだろ」

 

「ああ、みじんも興味ない」

 

 友人は感情のこもってない声でそう言った。

 

「で、それのどこが問題なんだ」

 

「好き者としては大問題さ。寝取られと思ってみたら寝取りでしたじゃ、気分が下がってなえちまうしな。寝取られ好きとしては寝取りと寝取られはちゃんと区分分けしてほしい」

 

「そういうもんか?」

 

「そういうもんさ。そしてほかにも問題がある」

 

「なんだ」

 

「この手の物は当然、アダルトなものだから行為そのものに重きを置いている作品が多い。だから女性が間男に体を許すとすぐ落ちてよがり狂うという作品が多い」

 

「性欲を発散させるもんだからそれでいいんじゃないの?」

 

「いや。寝取られはどちらかというと内面、つまり登場人物たちの精神面をクローズアップしなければいけない。それも、主人公である男の精神面を。そうすることで読者は寝取られという非日常に入って行くことができる。この場合、間男の視点や女性の視点はメインではないんだ。メインは主人公の疑念や疑問、そこからくる心配、それによって想像される間男と彼女の関係という流れでなければならない」

 

「つまりどういうことなんだよ」

 

「簡単に言うと、寝取られのメインはあくまでも主人公の妄想。やってるかもしれないしやってないかもしれない」

 

「でも結局はやってんだろ」

 

「ああ、だけどその主人公の心の闇こそが寝取られを最高のものにするんだ。そして彼女と間男の関係を主人公が知った時、物語は山場に差し掛かる。その後の展開は作品によって違う。そこから先も好みが違う」

 

「復讐する以外にあるのか」

 

「それも一つだ。彼女と間男を自身の持てる力、知識を駆使して破滅に追いやる」

 

「ほかには」

 

「二人の関係を知りながらあえて今まで通りの生活をする。この場合はぱっと見では日常は続いていくけど当然、間男と彼女の関係は続いていく」

 

「それでいいのか」

 

「まあ、人それぞれだな。ちなみに俺が好きなのは行くところまで行っちまうタイプだ」

 

「どういうことだよ? 」

 

「主人公と彼女は別れ、彼女は間男色に染め上げられてしまう。ラストは変わってしまったヒロインと主人公が街中で偶然にも再会するが彼女のほうはもう主人公に気が付かない」

 

「完全バッドエンドじゃねえか」

 

「俺は寝取られていうのはそういうもんだと思ってる。いわば不幸な事故。よけようと思えばよけられたかもしれないが、もうそれはもしもの話。今となってはどうしようもないってこと」

 

「なんか納得いかねえ。そんな大事だったらちゃんとしろよって俺は思う」

 

「それが普通だし、現実的に考えりゃそんなケースはめったに起こらない。調べたんだが現実の不倫なんかはもっとえげつない」

 

「やめてくれ、もうききたくない」

 

「そうか。じゃあ最後に、寝取らせについて少し語らせてほしい」

 

「まだ話すのかよ。てかまた新しい単語が出てきたな」

 

「これで最後だ。というのも世に出ている大半の寝取られを名乗っている作品は、大体が寝取らせ作品だからだ」

 

「いやしらねえよ」

 

「寝取らせとはそのまんま、自身のパートナーを別の人に寝取ってもらうという行為だ」

 

「それの何が問題なんだよ」

 

「さっきも言ったが寝取られというのは主人公が実際は知らないということが重要になってくるんだが。たいてい寝取られを期待する人はその哀れな主人公に感情移入する。だが、ページをめくるとそこにはヒロインと間男の行為シーンが、という場合があまりにも多い」

 

「しこることが目的なんだからそれでいいだろ」

 

「何度も言ってるが寝取られでは行為というのは一番最後のとり、山場なんだ。それなのに主人公が知らないはずのシーンを入れられるとこっちとしてはいやそうじゃないんだけどな、って感じになっちまうんだよ」

 

「つまり萎えるってことか」

 

「そう。そして世の中にこの手の物の多いこと。わかるんだけど、もうちょっとあってもいいでしょちゃんと寝取られをやっている作品があっても。それこそAV系は悪いけど論外のものがほとんどだ。あれらは行為にほとんどを割いている、本気で寝取られをやるなら1時間半のドラマ仕立ての物にするぐらいはしてもらわないと」

 

「わかったわかった。聞いた俺が悪かったからそろそろ冷静になってくれ」

 

「ああ、すまん。熱くなりすぎた。ただこれだけは言わせてくれ。世の中のほとんどの寝取られを自称している作品は基本寝取られ未満であり寝取らせとしても失格の微妙なものだということを」

 

 二人の話はなおも続いていく。


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