父親は異世界からの亡命者 作:魔法使い育成委員会
「お父さんな、実は異世界生まれのエルフの魔法使いなんだ」
父親がいきなり衝撃すぎるカミングアウトを中1になる俺や小6の弟と妹の前で真剣な顔をして話始めた事に関する感想を述べよ。(配点10点)
答え……
「馬鹿じゃないの!?どうしたのお父さん、遂に頭おかしくなったの?おかしいのお父さんの髪の毛だけにしてよ!ツルツルにハゲていて、凄い恥ずかしいんだから!」
妹よ、それはお父さんに対しての攻撃力が高すぎる。
ああ、お父さん泣いちゃった。
「でもね〜お父さんの話本当なのよ」
料理を作っていたお母さんが料理を運び、テーブルに並べながら語り始める。
「あれはねぇ、私とお父さんの出会いで……」
クッソ惚気なので要約すると、普通の高校生だったお母さんの家の前で、死にかけのお父さんが落ちていたらしい。
救急車を呼んだりしていたら身元がわからないってなって、お人好しの俺から見たらお母さん側のおじいちゃんとおばあちゃんが身元引受人になって……。
「元気になったお父さんは最初言葉もろくに喋れなかったんだけど、直ぐに言葉を覚えて、おじいちゃん達の農業を手伝うようになってねて、その後にお父さん通信教育で大検を取って、大学に通って、今じゃ大学の教授よ。ただのハゲじゃないよ!」
「お母さん!ハゲは余計だよハゲは!」
ちょっと待て、俺ら兄弟はフリーズしていたが、確かにうちのお父さんは大学の教授って聞いていたが、物理学についてじゃなかったのか?
「うん、大翔よく覚えているな」
大翔(ヒロト)というのは俺の名前だ。
ちなみに俺の弟が和人(カズト)妹が恵(メグミ)である。
「お父さん、今年36歳って言ってたけど、今年で360歳になるんだ。エルフだから」
「お母さん、お父さんがおかしくなってるんだけど」
「和人、おかしく見えるかもしれないけど、これ本当なのよ」
これあれか?
ドッキリか?
「お父さん、ドッキリだろ。流石に分かるって」
「ドッキリじゃないんだな〜これが」
まだ続けるのかよ……。
「お父さん、たぶんこの子達信じないわよ」
「それもそうだな。ちょっと魔法を見せることにしよう」
お父さんが指を弾くと、マッチくらいの大きさの火が付いた。
お父さんが指を向けると、恵が大切にしている熊の人形がひとりでに踊りだす。
お父さんが指を振るうとお皿が飛んできて、俺達の前に置かれ、料理が勝手に盛り付けられる。
流石にこれを見せられたら普通の事が起こっているとは思えない。
「な、なんでこんな面白そうな力をお父さんは俺達に黙っていたんだよ!」
「そうそう!」
「面白そうか……よーく考えろ和人、恵。人間特殊な力が使えるってなったら迫害されるからな」
お父さんの目が鋭くなる。
これは真面目に聞かないとダメなやつだ。
茶々を入れるのは良くない。
俺は席に座りながら、お父さんに質問する。
「なんで今のタイミングなんだ?それこそもっと幼い頃でも良かったんじゃないか?」
「自我がしっかり成長し、魔法について教えても大丈夫って思えたのが最近だったからな。大翔はもう少し前でも大丈夫って思っていたが、和人と恵は第一声が面白そうって言った時点でまだ怪しく思っている」
すると2人はシュンってしてしまった。
中学生に成り立ての俺に、まだ小学生の弟と妹に暴露するのは正直まだ早いと思うのだが……。
「お父さんがエルフって言ったことに影響がある。大翔、和人、恵の3人はお母さんが人間だからハーフエルフっていう種族になる。エルフのお父さんより短命だが、普通の人よりも長生きしてしまう。それこそ300年近くは生きると思うぞ」
「さ、300年……」
江戸時代が始まって終わって、昭和、大正を全部足して同じくらい……お父さんの話が本当なら……確かに常人の時間軸とは別になる。
「エルフも20歳くらいまでは人間と同じ感じで成長するが、そこから老けないからな。お父さんも360年生きているけど全然老けないし」
「俺達がハーフエルフなのは分かったけど、じゃぁどうしろと……」
「だからお父さんと同じく魔法を覚えてもらいます!」
魔法を覚えろとは言うが、魔法とは何ぞや。
「魔法は魔法だ。不思議な能力とも言えるが、植物や生き物が発する空気中の微量な魔力を取り込んで体内で放出する魔法という形に変換する。簡単に言うとこれだ」
もっと具体的に言うと、電気で例えようとお父さんは言い出し、電気が魔力、出力させるのが家電……今回は扇風機と言われ、電気でモーターを回すのが魔力を体内で魔法に変換する工程で、出される風が魔法と同じだって言われた。
分かりやすい様な分かりにくい様な……。
家電でできることは魔法でだいたいできるとのこと。
「で、お父さんがこの世界に来ることができたってことは、いつか異世界と繋がる可能性があるんだよな……それに備えてもらうのに、戦力が欲しくてな」
「じゃぁお父さんが教えている学生に教えればいいんじゃないの?」
「それだと管理ができない。それにお母さんみたいに魔法を教えてもできない人もいるから、才能で大きく左右される。だからお父さんと血が繋がることによって魔法の素養が最低限はあるだろう子供達で実験してみることにしたんだ」
実の息子や娘が実験対象なのかよ……普通にやべぇな。
ただまた重要なことをサクッと言い出したぞ。
お父さんの異世界とこの世界が繋がるとか言い出したけど……マジ?
異世界からの侵略が発生する可能性があるのか?
「上手いこと技術提供できれば良いと思っているが、上手くやらないとお父さんもこの国の上層部に何をされるか分からないからな」
息子、娘へのカミングアウトが衝撃すぎるんだよ……。
「冷えちゃうからご飯はちゃんと食べなさい」
お母さん、この状況でご飯を普通に食べるのは難しいって……。
衝撃が大きすぎて食事が喉を通らないよ。
「まぁお父さんもいきなり色々話し過ぎたと思っているから、明日、ゆっくり整理しながら魔法についてもっと教えていこうと思う」
「そうして……俺達、頭がパンクしそう……」
「兄さん、何処まで信じた?」
「いや、実際に魔法を使われているから信じるしかないだろうけど……とりあえず飯食おう。お母さんに悪いから」
まだ色々聞きたい事はある。
お父さんは何故異世界からこの世界に来たのかとか、異世界とこの世界が繋がるのはどれぐらい先なのか……とか。
情報を整理しよう。
・お父さんはエルフの魔法使い。
・お父さんは魔法についての研究もしていた
・お父さんの年齢は実は360歳
・異世界からの侵略が将来あるかもしれない
・魔法が現実にある
・俺達兄弟はハーフエルフで魔法使いの才能がある
・魔法は空気中の魔力を体内で変換することで使うことができる
こんな感じか?
春休みの間でよかった。
これが学校ある前日とかだったら絶対寝れないもん。
これが俺達兄弟と魔法の出会いだった。