父親は異世界からの亡命者 作:魔法使い育成委員会
場所を家の庭に移し、自転車に俺は乗せられて、自転車の後輪に取り付けられたモーターからコードが伸びて、左手首に巻かれたリストバンド。
ハンドルの真ん中にはスマホが置く場所が取り付けられていた。
「スマホを置いてみてくれ」
スマホを置くと、一見何の変化もないが、ペダルを漕ぎ始めると、電流が俺の体に流れ込んでピリピリする。
「その電流をハンドルを経由させて、スマホに電流を流してみろ」
そんな無茶な。
お父さんは魔法はイメージだと横で呟く。
イメージができることは魔法で大抵できる。
俺が今イメージするべきは充電器だと言われた。
左手首に流れた電流をそのままスマホに流し込む。
一種の抵抗器としての役割を俺は担う。
お父さん曰く、魔法が上手く使えるようになれば、体に流れている電流を魔法で増幅させて、流れる電流を大きくすることができると言われる。
「馴れるまでは体内に入ってくる電流をスマホにそのまま流すイメージで。この世界に来て、お父さんが効率的に魔法を覚えられる方法の1つだ」
実際左手首がピリピリするので、その電流をハンドルにそのまま流すイメージで、対応する。
するとピコンと、スマホが充電状態に移り変わる。
スタンドを立てて、自転車の後輪が空転するようにして、一種のエアロバイクみたい。
シャーと自転車を漕いでいる状態がスマホに表示されて、魔力の消費量や変換効率とかが表示された。
「お父さんこれは?」
「魔法の補助器具として杖の機能だけをそのまま機能させるって言うのはもったいないからな。だったら魔力の総量や消費量、変換効率とかを視覚化できるようにした方が練習効率がよいだろ」
なんというか……魔法使いのトレーニングって杖を振り回して、呪文を唱えてっていうのをイメージしていたけど、現代社会にお父さんが最適化してくれている感じがする。
お父さん曰く家のコンセントでやると電圧とかが大きすぎて感電するかもしれないから、自転車のモーターで発電できる大きさで最初は始めた方が良いと。
「あと更に魔法の練習効率を高めるんだったら、スマホで音楽とか動画を流しながら、その音を耳に集める魔法何ていうのが使えるようになれば、身体強化の初歩はできていることになるからな。他にも日常生活のあらゆることが魔法の練習になるぞ! 色々考えてみるといいぞ!」
とりあえず、お父さんから教えられた魔法の練習方法を試し始める俺達兄弟だった。
「水風呂に手を突っ込んで、魔力を流す……」
自転車以外でもスマホに表示されていた魔法の練習方法を試す。
お父さんが最初のうちは魔力を体内で多く蓄えることができないから、魔力を多く蓄えている飴玉を作ってくれた。
マジックポイントのポーションならぬ、マジック飴玉である。
「なんでわざわざ不味いポーションなんて摂取しないといけないんだよ。もっと効率的に体に摂取できて美味しい物の方がいいだろう」
それはそう。
飴玉を舐めながらだと、倦怠感は無くお湯を温める魔法を使い続けることができた。
最初は冷たい水に手を突っ込んでいたので、寒かったけど、次第にじんわり温かくなってきて、30分ほどすると、温度計が40度まで上げることができた。
飴玉は2つ舐めきっていた。
最初の練習だとお風呂じゃなくて、風呂桶とかに水を溜めて、温めるの方が最初はいいかもしれない。
何なら水に手に突っ込むんじゃなくて、器とかによそわれたスープとかを電子レンジで温めるようにできれば結構便利かも?
温めるだけではなく冷やすのもできれば……。
冷やす、温めるだけでも色々思いつく。
というよりも魔法初心者でも、イメージと魔力さえあれば多少のことはできるようになるんだな。
それができるのが才能なのかなって思ったり……。
「異世界の魔法使いってどうやって魔法を覚えるの?」
お父さんに聞いてみると、お父さんもエルフの魔法使いだから時間を普通の人間よりも使えたから、経験したわけじゃないとのこと。
あとエルフだから魔法の才能が高い種族なこと、エルフが生活していた森という環境が、魔法使いを育てるのに適した環境だったことや、周りの大人が高位の魔法使いだらけだったので、勝手に一定の魔法技術は習得できたとのこと。
それを踏まえて、お父さんが知る限り、人間の魔法使いはこの世界の学校の様な学び舎で師弟関係を結んで、魔法を習得していったりするらしい。
師の能力や学派によって魔法の習得方法もバラバラなので、お父さんも説明は難しいって言われてしまった。
ただおおよそ3年から5年で一般的な戦力となる魔法使いになるらしい。
「ただ魔法はイメージが大切だ。それこそ科学技術が発展していて、物理現象を再現するだけで高威力な魔法になったり、アニメや漫画の技を再現すれば魔法足りうるって考えると、この世界は魔法使いを育成する土壌はお父さんが居た世界よりも高い」
と、言われてしまった。
ただ魔法使いによっては魔法でないとダメージを与えられない物理攻撃を無効化する魔法とかの厄介な魔法が普通にあるし、異世界の住民は身体強化くらいの魔法は普通に使ってくるから、普通の兵士が銃を持っている自衛隊の隊員と近い戦闘能力を有していると言われた。
「お父さん的にも、この世界が好きだから、異世界からの侵略があった場合は守ってやりたいけど、どれだけ短期間に効率的に魔法を覚えるようになるかまでは分からないからな」
そのための息子、娘を使っての魔法使いの育成実験ということ。
俺的にも、異世界からの侵略など無い方がありがたいんだけどなぁ……。
「和人」
「何、兄さん」
俺の部屋は和人とカーテンで仕切れるようになっているけど、互いの声は聞こえるようになっている。
うちはお父さんが大学教授でそこそこ裕福。
お陰で俺達兄弟と恵の3人で同じゲーム機を3台購入して対戦していたりする。
カーテンで挟んだだけなので、和人とは寝る前までゲームでローカル通信していることもしばしば。
「和人は魔法を覚えて何かしたいこととかある? なんか、お父さんの話を聞いていると色々なことができるような予感がするんだけど」
「そうだな……スポーツ選手でも目指してみようかな? 魔法で身体強化ができるんなら、凄い選手になれそうじゃない?」
「チームスポーツは辞めておけよ」
「なんで」
「だって魔法の身体強化で無双するなら個人スポーツの方が凄いことをやるんじゃないか?」
「うーん……そんな感じ?」
「まぁ普通にうちの近くの中学に進学するんだったら、陸上とか水泳とか?」
「うーん……陸上かぁ……兄さんはもう少しで中学生活始まるけど、何処か部活には参加するの?」
「いやぁ……部活やったら、放課後の時間潰れちゃうから帰宅部だろうな。今はお父さんの教えてくれる魔法について色々高めたいし」
「俺もそんな感じ……1年で何処まで強く成れるかな?」
和人はそう言うと、スマホを眺め始めた。
「恵もやる気満々だし、俺も魔法を使って、色々できないかな〜。金持ちになるのもできそうだし」
「俺はお父さんが言う異世界からの侵攻があるかどうかが気になる。なぁ……和人」
「何? 兄さん」
「俺さ、その侵略者に対して防衛する部隊みたいなのを作りたいわ」
「私兵ってこと?」
「うん。面白そうじゃない?」
「じゃぁ俺はお金を稼ぐ担当をしようかな。金持ちになりたいし」
「俺達兄弟で日本……いや、地球を異世界からの侵略を守ろうぜ!」
「うん!」