父親は異世界からの亡命者   作:魔法使い育成委員会

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中学校入学

 魔法の練習を始めて1週間と少し。

 

 相変わらずやれることは、味噌汁を少し温めることと、風呂をドーピングの飴玉を使って時間をかけながら温めること、自転車を漕いで人力スマホの充電器をやることくらい。

 

 うん、魔法使いって感じは全くしない。

 

 もっとこう、火の玉を飛ばしたり、怪しい薬を調合したりとか色々あると思うのだが、お父さんは、

 

「基礎ができるまではこの調子だな」

 

 って言われてしまった。

 

 基礎というのがどこまでなのか、そもそも初歩とされる水を生み出す魔法がまだ使えてない時点で、俺達兄弟は基礎が出来てないのだろうが……。

 

 そんなこんなで春休みはあっという間に過ぎていき、中学の入学式。

 

 裏山があるくらいなので、全校生徒が200人も居ないような田舎の中学校。

 

 自分の住んでいる地域だけ小学校の学区から抜けているので、小学校同じクラスだった友達達は別の中学校へ。

 

 俺だけ中学校から友人関係を再構築しないといけないが、なんとかなるだろう。

 

 それに、俺の進む中学校は地産地消の名目で、地域から安くて美味しい食材を仕入れることができて、周辺の中学よりも美味しいことで有名だ。

 

 小学校の先生が都会の中学に転勤になる時に、給食の質が悪くなるって悲しんでいたことがあったけど、俺の場合は小学校の時より美味しくなることが確定しているので、結構楽しみだ。

 

「1学年60人、2クラス……うちの市だと自転車で1時間近くかかる奴もここに来るんだよな」

 

 そんな俺も中学まで自転車で50分近くかかる。

 

 早い所身体強化を覚えて、自転車を早く漕げるようになるか、テレポートでも覚えたいところである。

 

 魔法がイメージによることが大抵できるんならテレポートくらいはできそうだと思うけど……。

 

(毎日往復1時間40分も自転車漕いでいたら体力も付くよな。魔法を鍛えるのに肺や心臓を大きく、強くしないといけないから適度な運動はありがたいか)

 

「さてと」

 

 クラス分けの表を見る。

 

 俺のクラスはA組。

 

 俺の名字が森久保なので、出席番号は後ろの方。

 

 うちのクラス山が前に付く名字が5人、ら行の名字が2人、和田さんもいるので、後ろから9番目……前からだと21番目が俺の出席番号になる。

 

 席は6列になっているので、21番の俺は窓側2番目の最前列。

 

 目の前には先生の机があり、教卓からも近い。

 

 内職や居眠りは絶対できない位置だな。

 

(うわぁ嫌だなぁ)

 

 ちょっとテンションが下がったが、なってしまったものは仕方がない。

 

「えっと席隣だね。別の小学校出身だよね?」

 

 俺が席に座っていると、瞳が漢字の三みたいにバーコード模様になっている茶髪の女子が話しかけてきた。

 

「私白河の三船小学校出身の八雲怜(やくも とき)って言うんだ。あなたの名前は?」

 

「今号小学校出身の森久保大翔よろしく、八雲さん」

 

「うん、よろしくね!」

 

 最前列だけど、可愛い女子の横に成れた。

 

 これはこれでアリ! 

 

 沈んでいた気分は急上昇。

 

 我ながらチョロいな。

 

 そんなこんなで先生が入ってきて、校長先生の長い話や生徒生徒会長による生徒代表の歓迎の祝辞を聞き終える。

 

 入学式を終え、クラスに戻ればオリエンテーションの時間。

 

 時間割の発表や校則、あとは教科書の配布が行われて、それに名前を書き込む作業が待っている。

 

 都会の中学ではタブレットが配られて、電子黒板になっていたりするらしいが、うちの田舎の学校はまだまだ黒板や紙の教科書が現役。

 

 重くてかさばるけどそれは仕方がない。

 

「全教科の教科書が一気に配られると、これだけの量になるんだね!」

 

「置き勉(教科書を学校に置いて帰ること)しないと、これは辛いな」

 

 毎回自転車で持ち帰りするには結構キツイ量がある。

 

 1教科でも教科書にドリル系や便覧などの副教材、それに授業が始まればノートとプリントを纏めるファイルも必要になる。

 

 1教科で5冊くらいにはなるから、基本5教科でも25冊。

 

 これに体育がある日は体操着が必要になったりと、滅茶苦茶重たい。

 

 教師側も分かっているのか、教室の後ろにあるロッカーは人数が30人と普通の学校よりも少ないからか、ロッカーのボックスを1人3つも使っていいことになっていた。

 

 お陰で荷物を入れておくスペースには困らなそうである。

 

 暗に置き勉も黙認してくれるっぽい。

 

(魔法がもっと上手く使うことができれば、荷物を軽くすることや、荷物をロッカーに転送したりできないかな? それができればだいぶ楽になるんだけどな……)

 

 俺はそんなことを考えながら教科書を整理していると、自己紹介をそれぞれしようということになり、出身小学校と名前、趣味、一言を言っていく。

 

「今号小学校出身の森久保大翔。趣味は……ゲーム。部活動は入るか迷ってる。3年間よろしく」

 

 パチパチと拍手が起こる。

 

 無難な自己紹介はできたらしい。

 

「三船小学校出身、八雲怜です! 趣味は読書! 漫画やライトノベルをよく読みます! 部活動はまだ決めてませんが、文芸の部活に入りたいって思ってます!」

 

 八雲さんは趣味が読書何だ……ラノベや漫画とかだと魔法の練習にもなるし、覚えておいて損はないし、仲良くなるならそこが切り口になるかな? 

 

 そんな感じで中学校が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

「ひー、自転車で50分は遠いって……」

 

 魔法の練習になるからと、お父さんが改造してくれた自転車で、手首にリストバンドを、ハンドルの真ん中にスマホを取り付けて自転車を走らせる。

 

 まだ魔法の練度が低いから音楽を聴力強化を行なってイヤホンが無くても聞き分けるっていうのは出来ないけど、できるようになれば楽しいだろうな。

 

「魔力消費量15%……スマホは充電状態……魔法は使えている」

 

 ひーこら言いながらも家に帰る頃には汗だくになっていて、速攻でシャワーを浴びる。

 

 これまだ晴れた春だからいいけど、夏や雨の日とか地獄だな。

 

 雨に濡れないようになる魔法とか早く使えるようにならないと、雨具のカッパで蒸されて酷いことになる。

 

「あ、兄さんお帰り」

 

「大兄、お母さんは買い物、お父さんは仕事で居ないから」

 

 兄さんと呼ぶのが和人、大翔の大を取って大兄って呼ぶのが恵。

 

 2人はスマホをいじりながら、魔法の練習をしていた。

 

 2人がやっている魔法の練習はお父さんが育てた特殊なクルミを手の中で回すこと。

 

 クルミに魔力を込めて回せば回すほど、光沢あるクルミが出来上がるようになるらしく、それを割って食べると、消耗した魔力の補給にもなるし、蜂蜜に漬けた落花生(ナニーナッツ)みたいな味に変わる。

 

 片手で2個コロコロ回すだけでいいから、スマホやテレビを観ていたり、漫画を読む片手間でやるトレーニングにはちょうどいい。

 

 ちなみに魔力を込めないでクルミを割って食べると滅茶苦茶渋くて不味い。

 

 魔力を体に循環させるトレーニングになるし、魔力がこもった食材を食べることで魔力を体に蓄えられる量を増やせて一石二鳥のトレーニングだ。

 

「小学校は午前中で終わりか?」

 

「そう。11時には終わって先に帰ってた」

 

「やっぱり中学校は遠い?」

 

「うん、遠い」

 

 小学校まで徒歩25分だったのが、自転車で50分に増えたからな。

 

 距離は延びた。

 

「魔法を覚えて移動時間を短縮する魔法や雨に濡れない魔法を覚えないと、ヤバいかも」

 

「俺と恵も中学校に上がるまでに覚えないとな」

 

「そうだね〜」

 

 そんな会話をしながら、お母さんが作り置きしてくれた昼食を食べた後は、お風呂を魔法で沸かして、汗を洗い流すのだった。

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