災害の女神になったので異世界巡ります。神話の時代から 作:Revak
五百年の時が過ぎた。
そこまでの年月が過ぎれば当然、国に問題が発生する。
ニヒツという大陸統一をしていた国家は反乱によって解体され、複数の国に分かたれた。
このニヒツという大陸自体が元ユーラシア大陸ほどの大きさを持つのだ。分裂するのも仕方がないだろう。
中には異形種が王の国なども生まれた。
ローフェはそれらを悲しく思いつつも、深くは干渉しなかった。
深くは、というように例えば人種統一だとか異種族排除などを掲げた者が現れればそれらを排除したが、それ以外はのんびりスローライフをしていた。
だが、どんなことも五百年もやれば飽きる。
最初の内は良かった。仕事が無く、平和にのんびりできた。
だが、その生活が二百年続けば飽きた。
ニート気質だったが娯楽の少ないこの世界では飽きがすぐに来てしまったのである。
そうなるとやる事無いし、放浪でもするかと転移の権能を使って大陸各地を見て回る事にした。
己の治世によって変わった世界。年月によって変化した世界。それらを見て楽しんだ。
そうしたある日、ローフェは大衆向けの食堂に来ていた。
ここはクンフトという海と接する国にある首都からちょっと遠い地方都市のひとつ。
今のローフェは幼女の姿なので酒場には入れないので飯を食べているのはヴィレミールという男が経営する大衆食堂だ。店名もそのままヴィレミールである。
テーブル席に着き、ローフェはシュヴァーンの肉を喰らう。
シュヴァーンは鳥系モンスターで白鳥に似た姿をしている。
戦闘力は高くないが渡り鳥で各地に居る。
シュヴァーンや牛肉などを喰らっていると隣の席の会話が聞こえて来た。
「なぁ、聞いたか? 新大陸への遠征が決まったってよ」
そう話すのは頭髪が無い男だ。
「新大陸への遠征? 既に何度も行ってるじゃないか」
新大陸とはこのニヒツから南にある大陸の事だ。
サイズは現在判明してないが、ニヒツと同程度あるのではないか、と言われるぐらいに広大である。
その大陸の名はラモトラという。
その大陸は各国が協力し調査団を何度も派遣し、入植を進めている。
「それなんだが、ワーカーからの募集があるらしい。上手く行きゃ新大陸で貴族様になれるかもしんねぇぞ」
「馬鹿、そんなうまくいくわけないだろ? 貴族になるには偉大な功績が必要だ。俺らの様なワーカーには無理だ」
ワーカーというのは簡単に言えば冒険者の用だ。
ローフェが大陸を統一していた時代は存在しなかった職業だ。
亜人種や異形種のモンスターに対抗すべく生まれた職業で、対モンスター戦に特化した者たちの事だ。
ワーカーギルドというのが統括しているが、国の影響を受けないなんてことはなく各国の管理の元動いている。
ワーカーには最下級の六級から最上位の一級まである。ローフェもワーカー組合に登録しており、ランクは三級になる。
「けど夢はあるじゃねぇか。こうしてその日暮らしするより一発逆転のギャンブルよ」
「お前賭け事弱いだろ」
「そうだった! ガハハハ!」
そうして二人の男は笑い合った。
(新大陸、か……)
ローフェはそれに興味を持ち、食事を終えると市役所に向かう事にした。
店を出て歩く。
幼女が鎧を着て歩いていると少し奇異の目を向けられるが、すぐ興味を失ったように視線を逸らす者が多い。
この大陸には様々な種族が住まう。エルフなどは外見から年齢が判別できない。
だから完全に小学一年生程度の身長しかないローフェを見ても鎧を着ている事からそういう種族なんだな、と考えられる。
たまに声をかける者も居るが、普通にあしらって終わりである。
ローフェは上機嫌に市役所に向かう。
街中には乗合馬車があり、バスの様な物が巡回している。
だがそれには乗らなかった。たまには歩きたかったのだ。
そうして暫く歩くと市役所に着き、中に入る。
サービスカウンターに行き、受付の女性と話す。
「すみません、ワーカーの新大陸への募集があると聞いて来たのですが、受付はどこですか?」
「ラモトラへの渡航ですね。でしたら八番窓口になります。奥の右手になりますね」
「わかりました、ありがとうございます」
ローフェは小さく頭を下げてから言われた通りの場所に向かう。
そこには三人程並んで待っていた。ローフェも並んで待つ。
五分ほどでローフェの番が来た。
対応するのは眼鏡をかけた青年だ。
「すみません、新大陸への渡航をしたいのですが」
「ラモトラへの渡航ですね。渡航費用は掛かりませんが、簡単な試験があります。試験は今週末にここ市役所で行われます。筆記試験と実技試験があります。受けますか?」
「受けます」
「でしたらこちらにサインを」
「わかりました」
ローフェはサインを書く。
馬鹿正直にローフェとは書かない。
ローフェは今でも信仰がある女神だ。その名を騙る事は重罪である。
だから偽名としてローとだけ書いた。
「ではこちらの受付表をお持ちください。今週末の日曜日の九時、第二会議室で筆記試験を。外の運動場で実技試験を行います。当日は筆記用具と武具をお持ちください」
「わかりました」
「それではこれで。ご健闘の程お祈りします」
そう眼鏡の男は微笑んだ。
■
日曜日。試験当日。
ローフェは開始五分前に市役所に来て、会議室の椅子に座って試験開始を待っていた。
会議室には二十名程いる。
そのほとんどは武装した者で、中には
ローフェの番号は十七番だった。
そして試験官が来る。
試験官は女だった。女傑と言った雰囲気の女であった。
「では今からテストを配ります」
そう言って試験官がテストを配る。
「時間は五十分。では始め」
全員テストを始める。
(簡単だな)
想定していたよりは簡単だ、とローフェは心が軽くなった。
テストの内容は常識を問う物が多い。一般常識テストだ。
中には簡単な計算問題もある。四則演算だ。
この大陸では義務教育制度がある。ローフェが作った制度が国が分裂してもなお残っているのだ。
と言っても小学生までで、中学生や高校生は無い。大学はあるが。
しかし学校の無い田舎の村などはある。戦争で学校を維持できなくなった国も一部あるが。
だから出てくる問題は小学生でも解けるような簡単な物だ。ローフェはサクサク解いていく。
そうして試験終了十分前に全て解き終えたローフェはミスが無いか確認しなおし、一部ミスがあったので修正すると時間になった。
「ここまで。全員ペンを置いてください」
試験管の言葉に従い全員ペンを置いた。
「それでは用紙をこちらの箱に入れてください」
そう言われ席から立ち上がり箱に答案用紙を入れていく。
全員が入れると再び試験官が口を開く。
「では実技試験に移ります。ついて来てください」
そう言われ全員試験官に着いて行き、市役所外の運動場に出る。
運動場には男が居た。背中に己の背程もある大剣を背負った男だ。
「よし、全員来たな。俺は試験管のラルフだ。今から俺と一体一で戦ってもらう。勝つ必要はない。ただ戦って力を見せてみろ」
そう言われると何人かの者がなら勝ってやると意気込む。
「じゃあ試験番号一番から来い!」
その言葉によって二刀流の男が前に出る。
「カズト、行きます」
「おう、全力で来い!」
カズトは二刀流で攻め立てる。
それに対しラルフは大剣を盾のように構え防御の構えだ。
カズトの二刀流はどちらとも直剣という二刀流にしてはだいぶ珍しいスタイルだ。本来二刀流は長剣と短剣の合わせ技である。
どちらも長剣だとリーチこそあるが重心のずれなどで威力が出ないはずだが、専用のクラスにでもついているのか問題なく攻撃出来ている。
ラルフが防御から攻撃に回る。
カズトは軽快なステップで回避する。
見た目通りアタッカーの為防御性能は高くない。しかし軽装なのでスピードはあるのだろう。
五分ほど攻防が続く。
「よし、合格だ」
「ありがとうございます」
そう言ってカズトは剣を納めた。
満足気な顔で離れていく。
「では次、二番!」
「ロイドだ、行くぜ!」
次はハンマーを持った頭髪の無い黒い肌の男だった。
その後も試験が続く。
殆どが合格していくがたまに落ちる者も居た。
そしてついにローフェの番になる。
「ローです。よろしくお願いします」
ローフェはそう微笑んだ。
「おう。かかってこい」
「では遠慮なく
唱えたのは第三環魔法の攻撃魔法だ。
火球が産み出され、ラルフに向かって飛んで行く。
ラルフは剣で防御する。剣に当たると同時に爆発。炎に包まれる。
「第三環魔法か……合格!」
第三環魔法を使えるのは相当な強者だ。一流の
だからこの時点で合格だ。
「ありがとうございます」
ローフェはそう微笑んで人の塊に戻った。
「それじゃあ、全員第二会議室に戻れ。そこで筆記試験の合否発表がある。実技で受かっても筆記で落ちてたら普通に渡航は無理だ。また次頑張ってくれ」
その言葉に落ちた者たちは気合を入れた眼をした。まだ次があるのだ、と。
そして全員で会議室に戻る。
会議室のホワイトボードには合否発表の紙が貼ってあった。
ローフェはそれを見、自分が受かっているのを見て満足気な顔をした。
そこに最初の試験管の女傑がはいって来た。
金髪碧眼の女だ。腹筋が割れている。露出の多い服を着ている。
「では合格した者はここに残って座ってくれ。落ちた者はまた来月頑張ってくれ」
そう言われ落ちた四人が渋々帰っていった。
残った十六人が座る。
「では、これから新大陸ラモトラについて話す。知っている者も居るかもしれないが、傾聴してくれ」
その言葉に全員真剣な表情を浮かべ、メモを出す者も居た。
ローフェもメモを取り出す。記憶力は良い方ではないのでメモ必須なのである。
「ラモトラには現在人類種は居ない。エルフも人間も、アマゾネスすらいないんだ。だが、亜人種や異形種は確認されている。ラモトラにある都市は現在一つだ。都市名はアインス。領主の名はカールとユルゲンだ」
「領主が二人いるのですか?」
カズトが問いかけた。
「領主の種族はドゥルガンと言ってな、一つの体に二つの頭があるんだ。それぞれ人格も能力も違う。カールは
ドゥルガンとは二メートルほどの巨体に二つの首から生える頭。四つの腕が特徴の異形種だ。
異形種の中でも強力な種族の一つで頭が二つあり魂も二つ。そのためレベルを二つとれるのだ。
片方は戦士職。片方は
と言っても種族レベルは共有される。クラスレベルは共有ではない。
カール&ユルゲンはレベル三十四の戦士兼
「アインスの近くには魔獣の森がある。そこから定期的に魔獣系モンスターが湧いてくるのでそれらの対処が主な仕事になる。
この世界で開拓するのは危険な事だ。
単純にちょっと武装しただけの人間より強い魔獣などの異形種のモンスター。亜人などの知恵が回る上人間より基本強い蛮族などが居る。
それらに対応するには武力が必要だ。
この世界では装備を統一しても個の力に差が大きく出る。
同じ武装でもレベル一とレベル十ではレベル十の方が圧倒的に強いのだ。だからどこの国も強者を歓迎する。強者の数だけ国の武力が増すのだから。
そして強者が子を成すとその子も強者になりやすい。両親とも強者だと鷹が鷹を生む。
「ではこれからアインスでのルールなどを叩き込む。忘れました、は通じないから頭に叩き込めよ!」
そうして勉強会が始まった。