災害の女神になったので異世界巡ります。神話の時代から 作:Revak
「せっかくだし街を見て行かない?」
そうエルフィが提案した。
「いいよ。一緒に行こうか」
「うん。あ、荷解きだけさせてね」
「あ、私もまだだった」
そう言って二人は寝室を決め、そこで荷解きを済ます。
同じぐらいの時間で終わり、二人はアインスの街に出た。
「賑わってるねー」
「うん。活気がある」
そう言いながら二人は街を歩く。
街の人口は四千人程度と言ったところだろう。
家などは建築途中だが大工が気合を入れながら作っている。
街は結構広い。港町であり、のちに多くの者たちが来るのを想定しているので大きめに壁が作られているのだ。
と言ってもそのほとんどが無人地帯だが。
「お、屋台だ。食べよ」
「うん」
エルフィが屋台に駆け寄り、ローフェもそれに続く。
「おじさん、これ何の肉?」
屋台では串肉を焼いていた。
「これはうしどりの肉だ。美味いぞ」
「うしどり? 聞いたことない肉ね」
「おう、この大陸にしかいないモンスターだ」
モンスターの肉は貴重品である。
何せ供給が安定しないのだ。
ローフェの統一王国時代に人の世界からほとんどのモンスターは駆逐された。と言っても森深くや人類未踏の地にはモンスターは多くいたが、それは置いておく。
兎も角モンスターの殆どが駆逐されたニヒツではモンスターの肉を食うとなるとわざわざワーカーに依頼を出して探し出して狩って貰う必要があるのだ。
だがこのラモトラでは違う。
まだモンスターが多く蔓延り、人類と日々鎬を削っているのである。
故にモンスターも大量に居る為モンスターを定期的に狩って供給するという事が可能になっていた。
うしどりは名の通り牛に鳥がくっついたような外見のモンスターであり、肉は牛肉と鶏肉が混ざったような不思議な味がする。肉は少し硬いがほんの少しだ。
「じゃあ二本頂戴」
「あいよ、一つ五百円ね」
円の通貨はまだラモトラで使われている。
通貨関係は教会管理の元製造されており、通貨の材料は
それぞれローフェとエルフィが五百円玉で支払い、串を頬張る。
「ん、美味しい」
ローフェが笑顔になる。
「ほんと、美味しいわねこれ」
五切れあった肉はすぐに食べられ、無くなってしまった。
もう一つ欲しいところだが他のところを見たい、という事で竹串は近くのゴミ箱に捨て、別の場所を見に行った。
幾つかこの大陸でしかない物を売っている露店などを見てから、二人はカフェに入った。
「ねぇ、パーティ組まない?」
そうエルフィが提案した。
「ん-、いいけど……
そうローフェは言った。
「そこはまぁ、明日組合に行って前衛募集するしか……できればタンクと前衛剣士が欲しいところだけど」
タンクは防御系に特化した戦士職の事だ。クルセイダーなどが該当する。
「募集かけるしかないね。良い人来ると良いんだけど」
「きっと来るわよ」
「お待たせました。コーヒーとチョコケーキになります」
そこに店員が注文した物を持ってきた。二人は軽く礼を言ってから食べ始める。
「ん、美味しい」
■
翌日。
ローフェとエルフィはワーカー組合に来ていた。
ワーカーのランクは最下級の六級から一級まである。
このランクはパーティでの単位になる。
そのため一級のパーティに居るが個人戦闘力は二級、という者も居る。
エルフィのランクは四級だが、第三環魔法を使える優秀な
六級は入り立ての新人。五級は一般的な冒険者。四級は熟練者。三級は精鋭レベルのワーカーとなる。
二級からは街の代表レベルとなり、一級は三十レベルにも達する強者が所属する。
二人は受付に進む。
受付に居るのは女ではなくイケメンの……どことなく弁護士でもやってそうな雰囲気のスーツを着た男性だった。
「すみません、前衛を探しているんですが……前衛の戦士とタンクで募集している人いますか?」
その言葉に受付の男ウエルナは苦笑した。
「前衛なら当てはあるけど、タンクはいないかなぁ……槍使いで一人だけいるけど、男性だけどいいかな?」
男性、という言葉にエルフィはうーんと悩んだ。
この世界、性差による能力差は殆どない。
レベルさえ上げれば女の方が男より力持ちになるのは簡単だ。生まれ持っての筋力差というのも無い。
更にこの世界の女性は生理が非常に軽い。精々股から血が出たべ、程度で済み痛みなどは無い者が多い。
と言っても全体の一割程度は痛みを感じる者もいるが、それも一日や二日で終わるのがほとんどだ。だから女性だから不利、なんてことはないし逆に男性だから有利という面も無い。
更にローフェが千年統治していた間に性差別を殆ど排除したので無くなっている。
だから女性でも騎士にもワーカーにも成れる。
だが、それはそれとして性欲などは地球と左程変わらない。男は狼である。
女性だけのパーティに男がはいったら崩壊した、なんてのはよく聞くし逆もまた然りだ。
「ローフェ、大丈夫?」
「私は大丈夫だよ」
「それなら……その人の紹介をお願いします」
「わかった。今なら居ると思う。呼んでくるから待っててね」
そう言ってウエルナは立って去っていった。
「いい人だと良いね」
「うん」
そうして少し待つと青い髪の男がやって来た。
少年と青年の間ぐらいの歳の男だ。背中には青い槍を持っている。
「あんたらが新しく来たワーカーか。俺はウー。四級だ」
「私はエルフィ。同じ四級よ」
「私はロー。よろしくね」
ウーはローフェを見て少し眉をしかめた。
「どうしたの?」
ローフェはそれに嫌な予感を感じつつ問いかけた。
「ああいや、俺の崇めている女神さまと似た容姿と名前だな、と」
「ローと似ている女神っていうと……ローフェ様の事かしら」
そうエルフィが言った。
ローフェはギク、と顔を少し固めた。
今のローフェはそのまま大人形態から幼女化しただけの容姿で非常にというか当然似ている。更に装備は便利なので変えていない。
グングニルこそ装備していないが神器の鎧であるアキレウスの鎧はそのままなのだ。
「まぁ、気のせいか……」
ウーはそう判断し、手を差し伸べた。
「よろしくな、二人とも」
そうして三人は悪手をした。
「まずはパーティのリーダーを決めよう。誰がする?」
最初にウーがそう提案した。
必要なことだ。司令塔がいなければパーティは容易く瓦解するし、報酬の分配で揉める。
「俺としてはローを指名したいな」
ウーは決め顔でそう言った。
ローフェはそれに驚きの表情で返した。
「あら、私もローが良いと思っていたわ。じゃあ決まりね!」
「?!」
エルフィもそう言ってしまい、決まってしまった。
「えぇ……まぁ、できるけどさ……」
ローフェは千年国というパーティのリーダーみたいな者だったので一党のリーダーぐらいできる。
「それじゃあ、まずは依頼……を受ける前に、ここら辺に生息しているモンスターの分布図を見ようか。組合で借りれるよね」
「おう、資料は一般公開されてるぜ。こっちだ」
ウーに従い二人は併設されている酒場の端に行く。
そこには本棚が二つあった。
ウーが片方の本棚から本を取り出す。
「これにモンスターが乗ってるぜ」
「ありがとう」
そして三人はテーブル席に座り、本を見る。
出現するモンスターは魔獣系モンスターが多い。
そして図鑑にはちゃんと写真も載っている。
写真は第二環魔法の
この魔法は紙に写真を撮ることが出来る魔法だ。
「色々いるわね。どれも見たことないモンスターだわ」
エルフィが興味深そうに見る。
先日食べたうしどりの写真もあった。牛に鳥がキメラのようにくっついたモンスターだ。
それ以外にもハンキング・スパイダーという狩りに特化した蜘蛛。トロールという亜人種。草木の色をしているフォレスト・ウルフなどが乗っている。
レベルこそ乗ってないが戦闘手法は乗っているのでこれを見れば警戒は用意だろう。
「よし、それじゃあ実際に倒しに行こうか」
「おう、狩は任せろ」
そうウーはニカっと笑みを見せた。
三人は本を本棚に戻し、組合を出る。
そして街中を少し歩き門を出て外に出る。
外には平原が広がっているが、東の方に進むとすぐ森がある。
東にある森こそが魔獣の森であり、多数の魔獣系モンスターが生息する危険地帯だ。
日々ワーカーが狩りをすることで何とか魔獣の森からの魔獣の氾濫を防いでいるが、一日でも欠けるとすぐ湧いて出てくるだろう。
エルフィとウーは最大限警戒しながら森に入っていく。ローフェは最強なので問題ない。
そうしてすぐ進むとモンスターに遭遇した。
図鑑に載っていたモンスターの一種、ホワイトエイブだ。
名の通り白い猿だが、巨体である。ゴリゴリに筋肉が付いている上二メートルほどの巨体を持つ。
群れをつくらず単独で生きるモンスターだがその分戦闘力は高い。
肉は筋肉なので硬くて不味くて食えないが、毛皮は鞣すといい皮になって服の材料になる。
「よし、やるぞ」
ローフェがそう言った。
「なら俺が前衛だ。バフ頼む」
「わかったわ。私がバフ担当するわね」
エルフィがそう言い強化魔法を唱える。
「
第二環魔法の強化魔法二つと第三環魔法の強化魔法を唱えた。
これによりウーのステータスが上昇する。
ウーが静かに突進した。
それにホワイトエイブも気づく。
ドラミングで応戦する。お前はサルではなかったのか。
だが当然ウーはそんなのを気にも留めない。槍で心臓に向かって突きを放った。
途中でホワイトエイブが手で槍を掴み、止めたことで心臓までは届かなかったものの深い傷をつけた。
「
ローフェが風の刃の魔法を唱え、エイブの胸に大きな傷がついた。
血がどくどくと流れ落ちる。
そこのウーが止めの一撃を差した。今度は妨害されず心臓を貫かれた。
「うっし解体すっぞ」
ウーが槍をしまい、解体用ナイフを取り出した。
「え、ここでするの?」
エルフィが引きつった顔で言った。
「おう。はやくやらんと血の臭いでモンスター寄ってくるしな」
「死体は収納して街の解体所でやるとかは駄目?」
「いや、これだけのサイズ収納するのは無理だろ。出来たとしても容量がすぐ埋まっちまう」
二人が言っているのは
この魔法は術者の魔力量や魔法行使能力に応じて異空間に物資をしまうことが出来る魔法だ。生物はしまえない。
簡単に言えば魔力消費型のアイテムボックスである。ローフェもこの魔法を習得しており異空間にグングニルをしまっている。
「そっか……よし、手伝うよ」
エルフィは心底嫌そうな顔をしつつ言った。
「じゃあ私も」
ローフェもそう言い三人で解体した。
必要なのは毛皮だけなので肉などはそこらに放置だ。スカベンジャーが処理してくれるだろう。
皮だけを取ったので十分ほどで終わった。
「それじゃあ、狩を再開すっか」
そうして半日ほど狩をするのだった。