エンジニアのSAO Progressive ~NPCが売ってないなら作ればいい~ 作:Edward
三日間。
秘鍵の修復を待つ、その時間を使って、サタンは第二層へ戻ることにした。
理由は一つだった。
――確かめなければならない。
ドワーフ王から聞かされた言葉。
《鉄王の手甲》の由来。
そして、それをかつて託された一人の体術使い。
聞けば聞くほど、思い当たる人物は一人しかいなかった。
だが、信じたくなかった。
いや――信じられなかった。
だから、自分の目で確かめるしかなかった。
ドワーフの洞窟を発つ前、サタンはこっこに頼んでいた。
「うまい酒と、うまいメシを用意してくれ」
「任せてよ」
いつもの軽い調子で、こっこは引き受けた。
そして第八層で二人は別れた。
こっこ達は森エルフの首都へ。
サタンは《ほっこり休憩村》へ向かい、そこで手配されていた酒と料理を受け取った。
その日は村で一泊した。
急ぐ必要はない。
師匠のところへ行くのだ。
久しぶりに顔を合わせて、酒でも飲んで、飯でも食う。
また修行をつけろと言われるかもしれない。
あるいは――。
『遅い!』
いきなり殴られるかもしれない。
そんなことを考えながら、サタンは眠った。
翌日。
第二層。
見慣れた道を進み、サタンは老師の修行場へ向かった。
何度も通った道だった。
ここを曲がれば、庵が見える。
その向こうには木人が並んでいる。
そして、滝の音が聞こえてくる。
――ゴォォォォォ……。
聞こえた。
変わらない。
あの音だ。
サタンは少しだけ歩調を速めた。
木々を抜ける。
視界が開ける。
「…………」
足が止まった。
ない。
何も、なかった。
「……は?」
庵がない。
何度叩きつけられたか分からない木人もない。
修行用の杭もない。
老師がいつも腰掛けていた岩場にも、誰もいない。
何もない。
まるで最初から――。
ここには誰も住んでいなかったかのように。
――ゴォォォォォ……。
ただ一つ。
滝だけがあった。
あの日と変わらず。
轟々と。
何事もなかったかのように水を落とし続けていた。
サタンの手から、酒瓶が落ちた。
続いて、料理の入った包みが落ちる。
地面へ触れたそれらは、システムの光となって消えていった。
「あ……」
間に合わなかった。
その事実が、ようやく胸の奥まで落ちた。
「……師匠?」
返事はない。
サタンは歩いた。
庵があったはずの場所を探した。
木人があった場所を探した。
岩の裏も、滝のそばも探した。
何度も。
何度も。
「師匠!」
返事はない。
「おい……!」
滝の音だけだった。
「師匠!!」
――ゴォォォォォ……。
そこで。
サタンは膝をついた。
「…………っ」
拳を地面につける。
頭が下がる。
歯を食いしばっても、どうにもならなかった。
「……約束しただろ……」
声が震えた。
「うまい酒……持ってくるって……」
返事はない。
「メシも……持ってきたんだぞ……」
返事はない。
「まだ……教えてもらうこと、あっただろ……」
そして。
「-----------------!!」
慟哭が、谷に響いた。
けれど――その声を聞く者はいない。
滝がすべてを飲み込んでくれた。
轟々と落ち続ける水の音が、サタンの泣き声を覆い隠してくれた。
誰にも見られない。
誰にも聞かれない。
だからサタンは、いつまでもそこで想いが爆ぜた。
どれほど時間が経ったのだろう。
気づけば、日は大きく傾いていた。
サタンはゆっくりと立ち上がった。
目の前に転がっていた、一つの大きな石を見る。
それを持ち上げる。
拳で砕くのではない。
少しずつ。
少しずつ。
削っていった。
師匠の墓を作るつもりはなかった。
墓ではない。
ここで死んだのかさえ分からないのだから。
だから――碑にした。
ここに、一人の男がいた。
誰よりも強く。
誰よりも体術を知り。
そして、一人の馬鹿な弟子に、そのすべてを叩き込んだ男がいた。
それを証明するための碑だった。
夕刻。
ようやく形を整えた石碑を、サタンはかつて庵があった場所に据えた。
しばらく、それを見つめる。
「あ……」
思い出した。
酒も飯も、さっき落としてしまった。
サタンは頭を掻いた。
「……悪い、師匠」
ストレージを開く。
残っていたのは、自分用に持ち歩いていた安酒だけだった。
「せっかく高いの買ってきたんだけどな……。落としちまった」
苦笑しながら栓を抜く。
そして、石碑へゆっくりと酒をかけた。
流れ落ちる酒が夕日を受けて、黄金色に煌めいた。
「今日は、これで勘弁してくれ」
きっと――。
『馬鹿者! 酒に高いも安いもあるか!』
そう言って笑うのだろう。
あるいは。
『詫びる暇があったら修行せんか!』
そう言って殴るのかもしれない。
「……へっ」
サタンは、ふっと笑った。
「次こそ、うまい飯と酒を持ってくるよ」
サタンは、石碑の前で背筋を伸ばした。
深く。
深く、一礼する。
「……ありがとう、師匠」
しばらく頭を下げたまま動かなかった。
やがて顔を上げる。
もう涙はなかった。
サタンは、ふっと笑って踵を返す。
――ゴォォォォォ……。
滝は変わらない。
老師がいた頃も。
いなくなった今も。
何一つ変わらず、轟々と水を落とし続けている。
サタンにとって。
それが、救いだった。
◆
――その一部始終を。
少し離れた木陰から見ていた男がいた。
こっこだった。
怪盗としての仕事を終えたあと、ドワーフの底なしの洞窟に戻る――はずだった。
だが、サタンのことが気になった。
ドワーフ王から《鉄王の手甲》の話を聞いたとき、こっこもその場にいた、だから盗んだ秘鍵をリズとシリカにまかせてこちらに急行した。
サタンの師。
第二層の老師。
そしてサタンが突然、
『うまい酒と、うまいメシを用意してくれ』
と言ったとき。
こっこには分かってしまった。
――サタンは、確かめに行くつもりだ。
だから《ほっこり休憩村》へ酒と料理を手配した。
そして――。
「……やっぱり、行くよね」
こっこは、こっそり後を追った。
声はかけなかった。
第二層へ向かう道中も。
修行場へ入ったときも。
何もない庵の跡を見て、サタンが立ち尽くしたときも。
酒と料理を取り落としたときも。
そして。
滝の前で膝をつき、サタンが慟哭したときも。
こっこは出ていかなかった。
あそこへ踏み込んではいけない。
これはサタンと老師、二人だけの時間なのだ。
だから、木陰で黙って見ていた。
サタンが泣き終わるまで。
一つの石を削り始めるまで。
それが少しずつ碑の形になっていくまで。
「…………」
こっこは何度も鼻をすすった。
自分まで泣きそうになった。
いや。
もう泣いていた。
それでも声だけは出さなかった。
墓ではない。
碑なのだ。
ここに、偉大な体術使いがいた。
自分たちは知らなかった。
アインクラッドを攻略する多くのプレイヤーも知らないだろう。
それでも。
確かにここに一人の達人がいて。
その技を受け継いだ弟子がいる。
それでいい。
サタンは碑を完成させた。
高い酒はもうない。
代わりにストレージから取り出した安酒を、その碑へとかける。
「次こそ、うまい飯と酒を持ってくるよ」
その言葉を聞いた瞬間だった。
「…………っ!」
こっこの涙腺が。
決壊した。
「うおおおおおおおおん 」
「!?」
サタンが振り返る。
木陰から、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにした男が飛び出してきた。
「サタァァァァァァン!!」
「…………」
「俺はずっとお前の隣にいるぞぉぉぉぉぉぉ!! 」
両腕を広げて走ってくる。
サタンは無言でそれを見た。
「サタァァァァァン!! 」
「…………」
数秒前まで。
確かにここには、男と男の静かな別れがあった。
夕日に輝く酒。
師から弟子へ受け継がれた技。
轟々と響く滝。
そして、師への感謝を胸に歩き出す一人の武人。
完璧だった。
完璧な幕引きだったのだ。
「俺はずっとお前の隣にいるぞぉぉぉぉ!! 」
サタンは前を向いた。
「……とりあえず、聞こえないフリをしよう」
「サタァァァァァァン!! 」
歩く。
「待ってくれサタァァァァン!! 」
歩く。
「一人で抱え込むなぁぁぁぁ!! 俺がいるぞぉぉぉぉ!! 」
「…………」
サタンは歩き続けた。
背後から、号泣する男が追いかけてくる。
――ゴォォォォォ……。
滝は変わらず、轟々と音を立てていた。
先ほどまでは、その音がサタンの慟哭を隠してくれた。
今は。
「サタァァァァァァァン!! 」
できることなら。
この男の声も消してほしかった。
どこまでも締まらない男。
こっこである。
三日後――。
ドワーフ王が告げた通り、最後の一本となる《秘鍵》の修復は完了した。
その日。
ドワーフの地下集落には、ほとんど時を同じくして姿を現していた。
一方は、ギズメルとキリトとアスナ
そしてもう一方は、ランスロット、こっことリズとシリカ、途中参加のサタンである。
第三層から始まった《エルフ戦争》において、幾度となく秘鍵を巡って争ってきた7人・・・。
だが今――。
ギズメルとランスロットは、互いに剣を抜くこともなく、同じ場所に立っていた。
「揃ったな」
こっこの言葉に、二人は静かに頷いた。
今回の作戦を成立させるため、闇エルフ、森エルフ双方には、意図的に情報が流されていた。
――最後の一本の秘鍵が修復されようとしている。
――これによって、世界に存在するすべての秘鍵が揃う。
そして。
――秘鍵を使用する《儀式の場所》も特定された。
それは、両陣営にとって無視できる情報ではなかった。
森エルフ側には、秘鍵の力を自らの陣営だけで独占しようとする派閥が存在する。
闇エルフ側も同じだ。
女王を取り巻く者たちの中には、秘鍵を森エルフへ渡すくらいならば、自分たちがすべてを手にすべきだと考える者たちがいる。
だからこそ――。
森エルフの長老も。
闇エルフの女王も。
穏健派である彼らが、ただ黙って事態を見守ることなどできなかった。
表向きには。
森エルフは――
《奪われた秘鍵を奪還する》
その名目で追撃部隊を編成した。
対する闇エルフも――
《森エルフより先に、修復された最後の秘鍵を確保する》
その名目で追撃部隊を送り出した。
もちろん。
闇エルフが持つ秘鍵は・・・
こっこが一晩で作った偽物である。
すでに作戦は始まっていた。
そして今。
その作戦の終着点へ向けて、二つの追撃部隊が、同じ地下道を迫っている。
遠くから、かすかな振動が伝わってきた。
地面の奥で、何かが連続して踏み鳴らされている。
一度。
二度。
やがて、その揺れは消えることなく、一定の間隔で続き始めた。
「……来たか」
ギズメルが、洞窟の奥へ視線を向ける。
ランスロットも振り返った。
まだ姿は見えない。
だが、遠くの闇から、金属の擦れる音と複数の足音が重なって聞こえてくる。
追撃部隊は、もう近い。
「では行くぞ」
ドワーフ王が立ち上がる。
その手には、修復された最後の秘鍵が握られていた。
「ここから先は、儂も行こう」
こっこが驚いて振り返る。
「王様も?」
「当然じゃ」
ドワーフ王は鼻を鳴らした。
「秘鍵を作ったのは、我らドワーフの祖先。そしてこれを直したのも儂らじゃ。最後がどうなるのか、見届ける権利くらいあるじゃろう」
「……ですね」
こっこは笑った。
だが、その笑みは長く続かなかった。
王は集落に残る民へ命じる。
「間もなくエルフどもが来る」
ドワーフたちがざわめいた。
遠くで響く足音が、少しずつ大きくなっている。
だが王は片手を上げ、それを制した。
「誰一人として表に出るな。森の者であろうが、闇の者であろうが、止める必要はない」
そして、洞窟のさらに奥を指差す。
「来た者は全員――儀式の間へ通せ」
ドワーフたちは顔を見合わせた。
やがて、一人。
また一人と頷いていった。
その間にも、遠くの振動は止まらない。
追撃部隊は、確実に近づいている。
こうして一行は、地下集落のさらに奥へと足を踏み入れた。
こっこ。
リズ。
シリカとピナ。
サタン。
ギズメル。
ランスロット。
そして、ドワーフ王。
目的地はただ一つ。
この第九層の最深部。
古の時代、エルフとドワーフがまだ共に歩んでいた頃に造られたという――
《儀式の間》。
だが。
当然ながら、そこへ至る道が無防備であるはずがなかった。
「止まって!」
先頭を進んでいたこっこが片手を上げる。
暗い岩肌の向こう。
何かが動いた。
ズズズズズ……。
巨大な影。
溶岩を纏った岩石の巨人が、ゆっくりと立ち上がる。
その頭上にカーソルが表示された瞬間――。
リズの顔が引きつった。
「……ちょっと待って」
シリカも絶句する。
「これ……色、おかしくないですか?」
「おかしいね・・・」
こっこも乾いた声で答えた。
「真っ黒だよ」
レベル差がありすぎる。
赤などという生易しいものではない。
ほとんど黒。
まともに戦えば、一撃で致命傷になりかねない。
さらに。
一体ではなかった。
奥の暗闇。
岩壁。
溶岩の向こう。
次々とカーソルが浮かび上がる。
「いやいやいやいや」
こっこが後ずさる。
「これ、まだ九層だよね!?」
リズが即座に怒鳴った。
「今それ言ってる場合じゃないでしょ!」
ランスロットが剣を抜く。
ギズメルも構える。
だが――。
「待て」
低い声が響いた。
一人の男が前へ出た。
サタンだった。
その頭上に並ぶ敵のカーソル。
すべてが黒。
彼とて、レベル差そのものがなくなったわけではない。
HPも。
STRも。
AGIも。
システム上の数値だけを見れば、圧倒的に不利。
だが。
サタンは静かに腰を落とした。
老師から教え込まれた言葉が、頭の中を巡る。
――力に抗うな。
――身を任せよ。
――最小の力で、最大の結果を得よ。
長かった修行。
打撃。
関節。
寝技。
投げ。
合気。
そして最後に辿り着いた――《闘気》。
それらすべてが、今。
一つにつながる。
岩石の巨人が腕を振り上げた。
「サタン!」
こっこが叫ぶ。
巨腕が振り下ろされる。
サタンは避けない。
半歩。
ただ半歩だけ身体をずらす。
轟音。
拳が地面を砕いた、その瞬間。
サタンの身体が滑るように懐へ入った。
握られた拳。
その一点に――。
闘気が集約される。
ドンッ!!
爆発ではない。
派手なエフェクトすら、ほとんどない。
だが。
拳が触れた一点から、岩石の巨体全体へ亀裂が走った。
ピシッ。
ピシピシピシ――!
次の瞬間。
巨大なモンスターが内側から崩壊した。
「……」
ランスロットが言葉を失う。
ギズメルも目を見開いていた。
こっこが小さく呟く。
「……老師、何教えたんだよ」
「古き友よ、いい後継者に出会えたな」
ドワーフ王は、その勇姿をサタンと重ね合わせた。
「行くぞ」
サタンはそれだけ言った。
そして次の敵へ向かう。
ステータス差。
レベル差。
装備差。
この世界を支配する数値の壁。
だが老師から授けられた奥義は、その差を技術によって埋める。
攻撃を受けない。
力とぶつからない。
敵の力を利用し。
最も脆い一点へ。
必要な瞬間だけ闘気を叩き込む。
一撃。
二撃。
三撃。
黒いカーソルを持つモンスターたちが、次々とポリゴン片へ変わっていく。
「道を開ける!」
サタンが叫ぶ。
「先へ行け!」
こっこたちは走った。
サタンが切り開いた道を。
ドワーフ王を中心に。
その左右を――
ギズメルとランスロットが固める。
かつて。
同じ秘鍵を巡り。
剣を向け合った二人だった。
森エルフ。
闇エルフ。
互いに譲ることのできないものを背負い、何度も敵として向かい合った。
だが今。
二人は同じ方向へ走っている。
背後からは、追撃部隊の足音が迫っていた。
洞窟の壁を震わせるほどの数。
森エルフと闇エルフ。
二つの軍勢が、同じ場所を目指している。
「急げ!」
ランスロットが叫ぶ。
「もうすぐ追いつかれる!」
その声に応じるように、後方で怒号が響いた。
「森エルフだ!」
「闇エルフもいるぞ!」
「先に儀式の間へ入らせるな!」
声が近い。
あまりにも近い。
こっこは走りながら、前方へ視線を向けた。
暗闇の先に、赤い光が滲んでいる。
「見えたぞ!」
ドワーフ王が叫んだ。
洞窟が終わった。
いや。
世界そのものが突然、開けた。
「……うわ」
こっこの口から、それしか出なかった。
巨大な地下空間。
その遥か下では、真紅のマグマが荒れ狂っていた。
ゴボッ――!
巨大な気泡が弾けるたび、灼熱の空気が吹き上がる。
岩壁が赤く照らされ。
地下とは思えないほど巨大な空間の中央に――。
それはあった。
巨大な魔法陣。
岩盤そのものへ刻み込まれた紋様。
長い年月を経ているにもかかわらず、その線の一本一本には淡い光が残っている。
エルフのものとも違う。
ドワーフのものとも違う。
いや。
その両方だった。
古代エルフの魔法。
ドワーフの技術。
二つの種族が手を取り合っていた時代に作られたもの。
そして。
巨大な魔法陣の内部には――
小さな魔法陣が、いくつも配置されていた。
ランスロットが息を呑む。
「これは……」
ギズメルが静かに続ける。
「秘鍵を……収める場所か」
ドワーフ王がゆっくりと頷いた。
「そうじゃ」
マグマが爆ぜる。
その光に照らされながら。
王は巨大な魔法陣を見つめた。
「ここが――」
森エルフの秘鍵。
闇エルフの秘鍵。
そして、長い年月を経て修復された最後の一本。
第三層から続いた長い争い。
奪い。
奪われ。
騙し。
追い。
逃げ。
時には剣を交えながら――。
すべてが、この場所へ集まろうとしている。
ドワーフ王は告げた。
「すべての秘鍵を使い――大地へ魔法を還す場所」
「《儀式の間》じゃ」
その瞬間。
洞窟の入口から、複数の足音が一斉に響いた。
追いついた。
森エルフの追撃部隊。
そして、闇エルフの追撃部隊。
怒号と金属音が重なり、儀式の間へ流れ込んでくる。
ギズメルが振り返る。
ランスロットも剣を構えた。
こっこは、ドワーフ王の手にある最後の秘鍵を見た。
魔法陣の淡い光が、まるでそれを待ちわびるように明滅している。
まだ、誰も動かない。
だが、次の瞬間には、この場所が戦場になる。
ゴオオオオオ――。
まるでその気配に呼応するかのように。
地下深くでマグマが大きくうねった。
そして。
すべての秘鍵を巡る長い争いは、ついに儀式の間へ集結した。
まだ誰も知らない。
彼らが追い続けてきた《秘鍵》を巡る戦いが。
まもなく――
終わろうとしていることを。