エンジニアのSAO Progressive ~NPCが売ってないなら作ればいい~ 作:Edward
第八層で手に入れた、さまざまな素材。
穀物、香草、酵母に使えそうな素材。
こっこは、それらを第九層へ持ち込み、以前から考えていた酒造りを本格的に始めていた。
場所は9層の《ヒマラズ》周辺。
厳しい寒さに覆われた地域である。
以前までなら、この寒さは攻略を阻む厄介な環境でしかなかった。
だが、こっこにとっては違った。
「この寒さ……使えるんじゃない?」
リズが嫌な予感を覚えた。
「……何に?」
「酒造り✨」
「攻略に使いなさいよ!」
だが、こっこは止まらなかった。
温度を変える。
発酵時間を変える。
素材の配合を変える。
失敗しては飲み、また仕込む。
「これ、ただお酒飲みたいだけじゃないですか?」
シリカの疑惑にも、
「研究です!」
と言い張った。
そして――。
何度目になるか分からない試作の末。
樽から木製のジョッキへ、黄金色の液体が注がれた。
その表面を、白い泡が覆う。
こっこはジョッキを持ち上げた。
一口。
「…………」
リズとシリカが顔を覗き込む。
「どう?」
「こっこさん?」
こっこの手が震えた。
「……できた」
「え?」
「できたあああああ!!」
ジョッキを天高く掲げる。
「ビールだあああああ!!」
「うるさいっ!!」
リズの拳が飛んだ。
それでも、成功は成功だった。
これまでアインクラッドで飲まれてきた常温のエールとは違う。
寒冷地を利用し、低温での製造にも耐えられる酒。
冷たくして飲むことで、その美味さを最大限に楽しめる酒――ビール。
こっこは感動していた。
そして、すぐに思い出した。
「……そうだ」
ドワーフ王との約束。
秘鍵を修復する際、王家に伝わる大切な冠まで差し出してくれたドワーフ王。
その時、王は言った。
――気に病むなら、美味い酒を奢れよ。
そしてもう一つ。
――儂が浴びるほどにな。
こっこは、もちろん忘れていなかった。
「これ、ドワーフ王に持っていこう」
「いいんじゃない?」
リズも頷く。
ところが――。
「…………」
こっこの動きが止まった。
シリカが首を傾げる。
「どうしました?」
「……洞窟」
「洞窟?」
「ドワーフ王のところへ行く洞窟、灼熱だった……」
「あ」
三人とも黙った。
ドワーフ王国へ続く《底なしの洞窟》。
そこは炎系モンスターが生息し、岩肌そのものから熱気が立ち昇るような灼熱地帯だった。
普通の樽で運べば、せっかく冷やしたビールも到着する頃にはすっかり温まってしまう。
「……どうするの?」
「考える」
こっこは腕を組んだ。
そして――。
ふと、あるものを思い出した。
長老から譲り受けた特殊なインゴット。
魔法復活後、長老から託された、冷却効果を宿す素材だった。
そしてもう一つ。
あの儀式を成し遂げたことで得た、こっこだけの力。
《Magic Enchant》。
――魔法付与。
その存在を知っているのは、長老とドワーフ王だけ。
リズにも。
シリカにも。
キリトにも、アスナにも伝えていない。
こっこは黙って立ち上がった。
「ちょっと作業場に籠もってくる」
リズが怪訝そうな顔をした。
「何作るの?」
「企業秘密です✨」
「企業じゃないでしょうが 」
作業場の扉が閉じた。
そして――。
こっこは一人になった。
作業台へ、一本のインゴットを置く。
永続付与に必要な素材は付与したいアイテム
今回は《酒樽》
そして永続付与に必要な《ミスリル》
先日10層の鉱山少しだが手に入れた。
さらに、属性を付与するならそれぞれの消費アイテム。
クリスタルをもらった時に一緒に長老が少しづつくれた。
使用するのは冷属性付与のアイテム・・・《氷花の葉》
手をかざす。
「……初めてだからな」
《Magic Enchant》。
発動。
淡い光がインゴットを包んだ。
そこから慎重に加工を始める。
冷却効果そのものを樽へ付与するのではない。
樽内部の温度変化を抑え、冷たいものを冷たいまま維持する。
そんな効果を狙う。
何度も加工を止める。
状態を確認する。
また加工する。
失敗すれば、長老から譲られた貴重な素材を失う。
額に汗を浮かべながら、こっこは作業を続けた。
やがて――。
淡い光が樽全体を包み込む。
木目の一部に、小さな魔法紋が刻まれた。
そしてアイテム名が表示される。
《保冷樽》
内部に収納した飲食物の温度変化を抑制する特殊容器。
「…………」
こっこは完成した樽を見つめた。
《Magic Enchant》。
記念すべき、初めての魔法付与。
それによって作られた最初のアイテム。
武器ではない。
防具でもない。
伝説の剣でもない。
――酒樽だった。
「……よし!」
こっこは満足そうに頷いた。
「これで冷たいビールを運べる!」
本人には何の迷いもなかった。
翌日。
完成した《保冷樽》へビールを詰める。
さらに、豚肉を加工して腸へ詰めた料理も用意した。
ウインナー。
焼けば皮が弾け、肉汁が溢れ出す。
ビールとの相性なら間違いない。
ところが――。
リズが樽に触れた。
「……ねえ」
「なに?」
「この樽、ずっと冷たいんだけど」
「…………」
「昨日から結構時間経ってるわよね?」
シリカも触ってみる。
「あ、本当です! 冷たい!」
二人の視線がこっこへ向く。
こっこは笑顔になった。
「企業秘密です✨」
「だから企業じゃないでしょうが!」
「行ってきまーす!」
「あ! 逃げた!」
こうして、こっこはドワーフ王国へ向かった。
灼熱の《底なしの洞窟》を越えても、《保冷樽》は効果を失わなかった。
そして――。
久しぶりにドワーフ王の前へ姿を現す。
「王様!」
「おお、こっこ殿ではないか!」
こっこは胸を張った。
「約束を果たしに来ました!」
ドワーフ王の眉が上がる。
その前へ、大きな樽を置く。
「美味い酒を持ってきました!」
「…………」
王は少し驚いた顔をした。
「覚えておったのか」
「もちろんです」
「儂は半分、冗談で言ったつもりだったんじゃがな」
「僕は本気でしたよ」
ドワーフ王はしばらくこっこを見つめ――。
豪快に笑った。
「ガハハハハ! そうか! ならば頂こう!」
樽が開かれる。
ジョッキへ黄金色のビールが注がれた。
王はジョッキを持つ。
その瞬間。
「……む?」
冷たい。
ここは灼熱の洞窟の奥。
その道を越えて運んできた酒が、まだ冷えている。
王の視線が樽へ向いた。
小さく刻まれた魔法紋。
そして、こっこを見る。
「お前さん……」
「…………」
「まさか」
こっこはニッコリ笑った。
「はい」
小声で答える。
「《Magic Enchant》です」
「…………」
ドワーフ王は樽を見る。
こっこを見る。
もう一度、樽を見る。
「お前さん……素材の少ない永続付与ではないか……」
「はい」
「最初に使ったのが……」
「《保冷樽》です✨」
沈黙。
数秒後――。
「ガッハッハッハッハッハ!!」
ドワーフ王が腹を抱えた。
「酒か! よりにもよって酒のために使いおったか!」
「だって冷たい方が美味しいですから!」
「気に入った!!」
王はジョッキを掲げる。
「それでこそ、お前さんじゃ!」
そして、一気に飲み干した。
「――っぷはぁぁぁぁぁ!!」
洞窟に声が響き渡る。
「美味い!!」
「でしょう!」
「冷たい酒というのは、こんなに美味いのか!」
そこへ焼きたてのウインナーが運ばれてくる。
王が一本を手に取る。
かぶりついた瞬間――。
パリッ。
皮が弾ける。
肉汁が溢れ出す。
「…………」
王は無言でビールを飲んだ。
そしてウインナー。
またビール。
ウインナー。
ビール。
「……これはいかんな」
こっこが焦る。
「え? 美味しくなかった?」
「逆じゃ」
王は真剣な顔をした。
「酒が止まらん」
「ですよね!」
周囲のドワーフ達から歓声が上がった。
やがて樽は開放され、宴が始まった。
冷たいビール。
熱々のウインナー。
笑い声。
ジョッキをぶつけ合う音。
長く外の世界との交流を避けてきたドワーフ達が、人間の持ち込んだ料理と酒を囲んで笑っている。
宴も落ち着いた頃だった。
ドワーフ王が静かにジョッキを置いた。
「こっこ殿」
「はい?」
「儂らも……少し変わらねばならんのかもしれんな」
こっこは黙って王を見る。
「長い間、儂らは地下で生きてきた。技術を守り、伝統を守り、それを誇りとしてきた」
それ自体を、王は否定しない。
だが。
大地切断以来、断絶していたエルフ達との関係が再び動き始めた。
人間とも出会った。
そして今日、自分達の知らなかった酒と料理を知った。
「外には、儂らの知らんものがまだ山ほどあるんじゃろう」
「ありますよ。たぶん、いっぱい」
「ならば知らねばならんな」
王は周囲の若いドワーフ達を見渡した。
「何人か、人の里へ送り出そうと思う」
こっこが目を見開く。
「え?」
「勉強じゃ」
鍛冶。
建築。
加工。
料理。
商売。
人間がどのように物を作り、どのように暮らしているのか。
それを学ばせる。
もちろん、人間の真似をするためではない。
「外を知り、学び、そして儂らの技術と混ぜればいい」
ドワーフ王は笑った。
「儂らには儂らの技術がある。じゃが、守ることと閉じこもることは違うからの」
若いドワーフ達が顔を見合わせる。
やがて、一人。
また一人と前へ出た。
「王よ。俺が行きます」
「儂もじゃ!」
「人間の鍛冶場というものを見てみたい!」
「俺はこのウインナーというものを覚えたい!」
最後の一人には、ドワーフ王が笑った。
「お前は酒が目的じゃろう!」
再び笑い声が広がった。
こっこも笑っていた。
森エルフは変わり始めた。
闇エルフも変わり始めた。
そして今――。
ドワーフ達も、自分達から外の世界へ一歩を踏み出そうとしている。
魔法が復活したから、世界が変わったのではない。
魔法の復活をきっかけに、それまで交わることのなかった者達が互いを知ろうとし始めた。
それこそが、本当の変化なのかもしれない。
ドワーフ王がジョッキを掲げる。
「こっこ殿!」
「はい!」
「美味い酒を奢れという約束――確かに果たしてもらった!」
「よかった!」
「じゃが」
王の口元がニヤリと歪んだ。
こっこに嫌な予感が走る。
「儂は確か――」
「…………」
「浴びるほど、と言ったはずじゃが?」
「え」
こっこは《保冷樽》を見る。
ほとんど空だった。
「そこまで律儀に覚えてるの!?」
「ガハハハハハ!!」
「次はもっと持ってこい!」
「そんなぁぁぁぁぁ!!」
ドワーフ達の笑い声が、灼熱の洞窟に響き渡った。
閉ざされていた国が、ほんの少しだけ外へ向かって扉を開く。
そのきっかけが――。
冷たい一杯のビールだったことを。
後にどれだけの者が知ることになるのだろう。
そして。
こっこの《Magic Enchant》によって生み出された記念すべき第一号が、伝説の武器でも防具でもなく――。
《保冷樽》だったということも。
夜間の秘密特訓――魔法剣士?こっこ
夜。
第十層《オーサカ》の喧騒が静まり、攻略組の多くが宿へ戻った頃。
千蛇城の一角に、ひとりのプレイヤーの姿があった。
「……よし。誰もいないな」
こっこである。
昼間はリズと共に素材を求めて走り回り、ミスリル鉱山を発見した興奮で鼻血を出して倒れた男。
だが、今夜ここへ来た目的は素材集めではない。
先日、森エルフの長老とドワーフ王から授けられたユニークスキル。
《Magic Enchant――魔法付与》
その存在は、まだ誰にも話していない。
リズにも。
シリカにも。
もちろん、攻略組の仲間たちにもだ。
知っているのは、長老とドワーフ王だけ。
だからこそ――誰にも見られない夜を選んだ。
「つぎは、《一時付与》の性能確認だな」
こっこはメニューを開く。
《一時付与》は素材を消費することで、武器や防具へ一時的な属性や効果を与える。
永続付与と違ってミスリルや魔法インゴットのような希少素材までは必要としない。
今回持ち込んだ素材は二種類。
《火トカゲの鱗》。
そして――
《氷花の葉》。
千蛇城には蛇型を中心とした爬虫類系モンスターが多い。
「RPGのお約束なら……爬虫類は冷気に弱い!」
本当にSAOでも通用するかは分からない。
だから試す。
比較するなら、使用するソードスキルも統一したほうがいい。
選んだのは――。
《バーチカル・スクエア》。
縦斬りから始まる片手直剣の四連撃。
キリトも好んで使うソードスキルであり、こっこ自身も大好きな技だった。
「まずは無属性!」
現れた蛇型モンスターへ駆け込む。
「《バーチカル・スクエア》!」
縦。
横。
再び縦。
そして最後の一撃。
四連撃が蛇の身体へ叩き込まれ、HPバーを削った。
「……これが基準値っと」
こっこは減少量を記憶する。
次は炎属性。
普通ならここで安全な距離を取り、メニューへ視線を移して素材を選択するところだ。
だが――。
こっこは違った。
視線は蛇型モンスターから一度も外れていない。
左手だけが動く。
空中に展開されたウインドウ。
指が迷うことなくアイテム欄を走る。
《火トカゲの鱗》。
《Magic Enchant》。
《一時付与》。
炎属性。
対象――右手の片手剣。
決定。
その間も、こっこの目はモンスターを追い続けている。
これこそ、こっこのプレイヤースキル。
《ブラインドタッチ》。
長年、機械を扱ってきた経験から身についた、メニューを見ずに操作する技術。
SAOの正式なスキルではない。
システムアシストもない。
完全なプレイヤースキルだった。
そして――。
――ボウッ!!
右手の剣が炎に包まれた。
「うおっ!!」
こっこの目が輝く。
燃え上がる刀身。
「ダイの大◯険!!」
誰もいない千蛇城で、はしゃぐおっさん。
だが見た目だけなら、かなり格好いい。
敵から目を離さず左手をわずかに動かしただけで、突然剣が炎をまとう。
事情を知らない者が見れば――。
完全に魔法剣士である。
「これはやるしかない!」
炎をまとったまま踏み込む。
「《バーチカル・スクエア》!」
一撃。
炎が走る。
二撃。
赤い軌跡が宙へ残る。
三撃。
四撃――!
四本の炎の軌跡が、暗い千蛇城に描かれた。
「うおおおおっ! かっけぇぇぇ!!」
攻撃している本人が一番感動していた。
だが、効果は見た目だけではない。
斬撃を受けた蛇の身体。
その傷口から――炎が上がった。
HPバーが追加で減少する。
「発火……継続ダメージか!」
そこで再び左手が動いた。
視線は敵へ固定したまま。
メニューを操作。
炎属性――解除。
次の素材。
《氷花の葉》。
《Magic Enchant》。
《一時付与》。
氷属性。
決定。
――キィィン……。
炎が消えた。
直後。
同じ剣から白い冷気が噴き出す。
「…………」
こっこは刀身を見た。
青白い冷気。
刀身を覆う薄い霜。
そして――。
「これは……!」
満面の笑み。
「ア◯ル伝説の氷の剣みたいだ!!」
再びはしゃぐおっさん。
だが、もし第三者がこの戦闘を遠くから見ていたなら――。
炎をまとった剣で四連撃。
敵から目を離すことなく左手を一瞬動かした直後、その炎が消失。
次の瞬間には、同じ剣から猛烈な冷気が立ち昇る。
そんな光景にしか見えない。
こっこ本人はただ高速でメニュー操作しているだけなのだが――。
見た目は完全に《魔法剣士》だった。
「次!」
蛇型モンスターへ踏み込む。
「《バーチカル・スクエア》!」
一撃。
斬撃部分が白く染まる。
二撃。
霜が広がる。
三撃。
蛇の身体が凍り始める。
そして――。
四撃目。
ガキィィン!!
モンスターの身体の一部が完全に凍結した。
「おおっ!?」
HPバーの減少量が明らかに違う。
無属性より大きい。
炎属性よりも、さらに大きい。
しかも蛇型モンスターの動きそのものが鈍っている。
「やっぱり弱点属性がある!」
こっこの表情が変わった。
ここからは、はしゃぐおっさんではない。
エンジニアの顔だった。
同じ敵。
同じ武器。
同じソードスキル。
変えたのは属性だけ。
つまり、この差は――。
「《一時付与》は単純な攻撃力アップじゃない。属性ごとに追加効果が違うんだ」
炎なら発火。
氷なら凍結。
さらに敵の弱点属性と一致した場合、その効果とダメージが増幅される。
「……ということは」
こっこは剣を構えたまま考える。
そして左手を動かした。
《氷花の葉》。
選択。
付与。
冷気。
さらに左手。
《火トカゲの鱗》。
選択。
付与。
炎。
また左手。
氷。
炎。
氷。
炎。
剣の属性が次々と切り替わっていく。
「できる……!」
戦闘中でもいける。
《ブラインドタッチ》なら、敵から目を離す必要がない。
相手の攻撃を見ながら素材を選択できる。
属性を変更できる。
付与できる。
そして、そのままソードスキルへつなげられる。
敵の種類。
行動。
弱点。
状況。
それに合わせて、戦闘中に属性を切り替える。
「これ……」
こっこは炎をまとった剣を見つめた。
左手を動かす。
直後、炎が消えて氷へ変わる。
「めちゃくちゃ面白いじゃん……!」
炎から氷へ。
氷から炎へ。
視線を一切切らず、戦いながら切り替える。
本来はメニュー操作と素材消費を必要とする《Magic Enchant》。
それが《ブラインドタッチ》というプレイヤースキルと組み合わさったことで――。
まったく別の戦闘技術へ変わろうとしていた。
職人として素材を知る。
エンジニアとして効果を検証する。
攻略者として敵の性質を読む。
そして《ブラインドタッチ》で、戦闘中に最適な属性へ切り替える。
剣士でもない。
魔法使いでもない。
SAOのシステム上、《魔法剣士》などという職業は存在しない。
だが。
その戦いを外から見れば――。
どう見ても魔法剣士だった。
もっとも。
本人はそんな格好いいことなど、まるで考えていない。
炎をまとった剣を振り上げる。
「ダイの大◯険!」
氷へ変更。
「ア◯ル伝説!」
炎。
「うひょー!」
氷。
「かっけぇぇぇ!!」
深夜の千蛇城。
誰にも知られることなく――。
新しい戦闘スタイルが生まれようとしていた。
そして同時に。
誰にも見られていないことをいいことに――。
四十過ぎのおっさんが、全力で少年へ戻っていた。