エンジニアのSAO Progressive ~NPCが売ってないなら作ればいい~ 作:Edward
《DUEL START!!》
ダンッ!!
オルランドが飛び込んだ。
「速っ!?」
ガギィン!!
こっこが受ける。
HPは減っていない。
だが衝撃に身体が押される。
二撃目。
三撃目。
ガンッ! ガキィン!!
こっこ「うわっ! ちょっ!」
オルランド「どうした! さっきの威勢は!」
こっこ「ブラフだったんだから当然だろ!!」
リズ「自分で言うな!!」
剣が頬をかすめる。
HPがわずかに削れる。
こっこ「うわああっ!」
シリカ「こっこさん!!」
オルランド「もらった!」
さらに踏み込む。
こっこは防戦一方。
純粋な剣士としての技量なら――。
オルランドが上だった。
だが。
三度。
四度。
五度。
攻撃を受けるうち。
こっこの目つきが変わっていく。
こっこ(……右肩)
オルランドが踏み込む。
こっこ(攻撃直前に、少し下がる)
剣が来る。
ガキン!!
こっこ(踏み込みも同じ)
さらに一撃。
こっこ(ソードスキルの前は――必ず右足から)
機械の故障診断と同じ。
正常動作を観察する。
繰り返しを見る。
パターンを見つける。
そして――。
予測する。
オルランド「これで半分だ!!」
剣が赤い光を帯びた。
ソードスキル。
こっこ(来る!)
振り下ろされた剣に対し――。
半歩。
横へ。
ブォン!!
オルランド「なに!?」
空振り。
こっこ「《スラント》!!」
青い閃光。
ザシュッ!!
「ぐっ!」
初めてオルランドのHPが大きく減った。
オルランド「てめえ……!」
こっこ「やっぱり」
「なに?」
こっこ「癖がある」
オルランドの顔が歪む。
そこから戦況が変わった。
攻撃を受ける。
避ける。
弾く。
そして反撃。
一方的だったHP差が、少しずつ縮まっていく。
こっこも傷を受ける。
オルランドも削られる。
残りHP――。
こっこ、56%。
オルランド、58%。
リズ「まずい……」
シリカ「次にまともなのを一発もらったら……!」
オルランド「終わりだ!!」
ソードスキルが発動する。
こっこも《スラント》を発動。
正面衝突――。
ではなかった。
直前。
こっこがアニールブレードから右手を離した。
オルランド「!?」
剣が一瞬、宙を舞う。
パシッ!!
左手が柄を掴む。
「左手!?」
今まで右手で戦い続けていたこっこ。
構えが反転する。
踏み込みも。
剣筋も。
攻撃方向も――。
すべて逆。
オルランド「しまっ――!」
こっこ「僕、両利きなんだ!」
左手から放たれる――。
《スラント》!!
ザシュッ!!
青い閃光がオルランドを斜めに切り裂いた。
HPバーが――。
50%を割る。
《DUEL FINISHED》
《WINNER:KOKKO》
「…………」
静まり返った。
こっこも動かない。
そして。
こっこ「…………」
膝から崩れ落ちた。
こっこ「怖かったあああああ 」
リズ「ブラフで喧嘩売るからでしょ!! 」
シリカ「本当に負けるところでしたよ!」
こっこ「もう二度とやらない 」
リズ「絶対またやるわよ、あんたは!」
◇
決闘後。
オルランド達は約束を反故にしようとした。
だが、騒ぎを察知したアルゴが周囲のプレイヤーへ情報を流していたことで、逃走は失敗。
さらにネズハの証言。
強化詐欺に利用されたギミック。
奪われた武器。
被害者達の証言。
それらが揃い――。
《レジェンドブレーブス》による強化詐欺は完全に明るみに出た。
そして。
ネズハもまた――。
処分を免れることはなかった。
ネズハ「……僕も、ですか」
こっこ「うん」
ネズハはうつむく。
こっこは責めるような口調ではなかった。
しかし、そこを曖昧にはしなかった。
こっこ「脅されていたことも、抜けられなかったことも分かる」
「…………」
こっこ「でも、君が詐欺に加担していたことも事実だから」
ネズハ「……はい」
一定期間。
レジェンドブレーブスとネズハは、《黒鉄宮》へ送られることになった。
◇
《はじまりの街――黒鉄宮》
巨大な扉の前。
オルランド達とネズハが、中へ連れて行かれていく。
ネズハ「こっこさん……」
こっこ「ネズハ君」
ネズハが振り返る。
こっこ「戻ってきたら、僕のところに来なよ」
ネズハ「……え?」
オルランド達も足を止めた。
リズ「こっこ?」
こっこ「一定期間なんだろ? だったら出てきた後のことを考えよう」
ネズハ「でも僕は……」
こっこ「罰を受ける」
きっぱりと言った。
「それで今回のことは一区切りだ」
ネズハは目を見開く。
こっこ「鍛冶を続けたいなら、リズさんがいる」
リズ「私!?」
こっこ「細工でもクラフトでもいい。素材集めだって仕事になる」
リズ「ちょっと勝手に決めないで――」
だが。
リズはネズハを見る。
そして、小さくため息をついた。
リズ「……まあ、基礎からなら教えてあげてもいいけど」
ネズハ「……!」
シリカ「私も手伝います!」
こっこ「ほら」
そしてこっこは――。
オルランド達にも目を向けた。
オルランド「……俺達にも言ってんのか?」
こっこ「もちろん」
オルランド「俺はお前から全部奪おうとしたんだぞ」
こっこ「だから黒鉄宮に行くんだろ?」
「…………」
こっこ「戻ってきた後まで犯罪者を続ける必要はないよ」
黒鉄宮の扉が開く。
こっこ「待ってるよ」
ネズハは深く頭を下げた。
オルランドは何も答えなかった。
ただ一度だけ、こっこを見る。
そして――。
一行は黒鉄宮へ入っていった。
重い扉が閉じる。
ゴォォン――。
アルゴ「甘いナ」
いつの間にか隣にいたアルゴが呟いた。
こっこ「そうかな?」
アルゴ「騙されて、囲まれて、剣まで向けられた相手だゾ」
こっこ「でも、罰は受けてもらった」
アルゴ「……」
こっこ「だったら、その後は別の話だよ」
リズ「はぁ……」
盛大なため息。
こっこ「な、なに?」
リズ「それより、あんたには反省してもらうことがあります」
こっこ「え?」
シリカ「ブラフでデュエルをけしかけた件です」
こっこ「…………」
一歩後退。
リズ、一歩前進。
こっこ「いや、結果的には上手くいったということで――」
リズ「いくかぁぁぁ!! 」
こっこ「ごめんなさああああい!! 」
黒鉄宮前を走って逃げるこっこ。
それをメイス片手に追いかけるリズ。
シリカの笑い声が、その後を追った。
――こうして。
《レジェンドブレーブス》、そしてネズハによる強化詐欺事件は幕を閉じた。
彼らは一定期間、黒鉄宮で過ごすことになる。
そして、彼らが戻る場所を――。
こっこはすでに作るつもりでいた。
だが、その前に。
第2層攻略組には、新たな問題が迫っていた。
迷宮区直前の村《タラン》。
そこへ至る道を塞ぐ、巨大な雄牛。
フィールドボス――
《Bullbous Bow》。
攻略組への緊急招集が、間もなくアルゴから届けられることになる。
第2層――タランへの道
フィールドボス《Bullbous Bow》
レジェンドブレーブスによる強化詐欺事件は、ひとまずの決着を迎えた。
彼らには一定期間、《黒鉄宮》での拘束措置が取られることになった。
ネズハも含め、彼らが行ったことは決して軽いものではない。武器のすり替えによる詐欺。そして、それが露見しそうになると強盗まがいの行為にまで及んだ。
しかし――こっこは、彼らをそこで切り捨てるつもりはなかった。
「戻ってきたら、彼らを保護しようと思う」
その言葉に、リズは眉をひそめた。
「……あんた、あれだけのことされて、まだそんなこと言うの?」
「許すのとは違うよ」
こっこは静かに答えた。
「やったことの責任は取らなきゃいけない。でも、戻ってきたあとに誰からも相手にされなくなったら、結局また同じことをするかもしれないだろ?」
生産職なら、生産職として生きる道を。
攻略を目指すなら、正しい戦い方を学ぶ機会を。
この世界から逃げられない以上、失敗した者にも戻ってこられる場所は必要だ。
「少なくとも、詐欺や強盗よりまともな仕事なら紹介できるよ」
「……ほんっと、お人好しなんだから」
呆れたように言いながらも、リズはそれ以上反対しなかった。
シリカも小さく笑う。
「でも……私は、いいと思います」
その時だった。
「こっこー! そんなところで油売ってる場合じゃないゾ!」
聞き慣れた声とともに、小柄な影が駆けてきた。
「アルゴ?」
「攻略組に緊急通達ダ」
アルゴがウインドウを開く。
表示されたのは、第2層南部の地図。
現在地であるウルバスから、迷宮区直前の村《タラン》へ続く街道。その途中に、大きな赤い印がつけられていた。
「タランへのルートを、厄介なヤツが塞いでる」
「モンスター?」
「ああ。それも普通のじゃない」
アルゴがニヤリと笑った。
「巨大な雄牛型モンスター――《Bullbous Bow》」
「牛!」
こっこの目が輝いた。
リズが嫌な予感を覚える。
「……ちょっと。なんで嬉しそうなのよ」
「牛肉✨️」
「ボスの話してんのよ!!」
アルゴは肩をすくめながら続けた。
「ちなみにHPバーは三段確認されてる」
「三段……?」
こっこの表情から、一瞬で食欲が消えた。
「現時点じゃ、ほぼボスクラスだナ。攻略組でも《フィールドボス》扱いで討伐することになった」
「牛……怖い 」
「切り替わり早すぎでしょ」
こうして攻略組による、《Bullbous Bow》討伐作戦が決定した。
そして――。
「僕たちも行こう!」
「え?」
「えっ?」
リズとシリカが同時に振り向いた。
「素材集めだけじゃ、戦闘経験が偏るからね。攻略組の集団戦を経験できるいい機会だよ」
「まあ……それはそうだけど」
リズは背負ったメイスを確認する。
シリカも小剣の柄を握った。
「わ、私も頑張ります!」
こうして二人も、攻略組に混じってフィールドボス戦へ参加することとなった。
◆
タランへ続く街道。
そこにはすでに、攻略組のプレイヤーたちが集結していた。
キリト、アスナ、エギル。
第1層のボス攻略を経験した者を中心に、即席のレイドが編成されている。
その正面――。
ドスン。
地面が揺れた。
ドスン。
再び、重い振動。
岩場の向こうから、巨大な影が姿を現す。
「……でかっ」
リズが思わず呟いた。
《Bullbous Bow》。
雄牛。
ただし、その一言では到底表現できない。
肩の高さだけで人間を超え、異様なほど発達した前半身を持つ巨体。頭部から伸びる二本の角は、もはや角というより巨大な槍だった。
ブオオオオオオオオ――!!
雄叫びとともに前脚が地面を掻く。
頭上には――三本のHPバー。
キリトが剣を抜いた。
「突進系だ。正面には立たない方がいい。盾役でも、あの質量をまともに受けたら危険だ」
エギルも頷く。
「攻撃後の硬直を狙って削るしかなさそうだな」
「よし」
こっこもアニールブレードを抜く。
その隣ではリズがメイスを構え、シリカも緊張した表情で小剣を握っていた。
キリトがちらりと三人を見る。
「……こっこ」
「なに?」
「頼むから今回は普通に戦ってくれよ」
「失礼だな。僕はいつだって普通だよ」
「第1層のボス戦でフライパン使ってた奴が言う台詞じゃない」
「今日は持ってきてないよ✨️」
「そういう意味じゃない!!」
アスナが小さく吹き出した。
直後――。
Bullbous Bowが地面を蹴った。
「来るぞ!!」
ドドドドドドドドド――!!
笑っている余裕など、一瞬で消えた。
巨大な質量が猛烈な速度で迫る。
攻略組が左右へ散開した。
雄牛が通過しただけで土煙が舞い上がり、地面には深い轍が刻まれる。
「こんなの盾で止められるか!」
エギルの声が飛ぶ。
「でも、小回りは利かない!」
こっこが叫ぶ。
Bullbous Bowが停止する。
その背後へ――リズが飛び込んだ。
「そこぉっ!!」
メイスが後脚を直撃する。
ガァン!!
硬い。
だが、ダメージエフェクトが走った。
「シリカ!」
「はいっ!」
側面から小剣のソードスキル。
さらに――。
「スラント!」
こっこのアニールブレードが斜めに走る。
三人の攻撃が連続して命中した。
「減った!」
「いけるわ!」
リズが笑う。
そこへキリトが飛び込んできた。
「スイッチ!」
こっこが後退。
キリトの斬撃。
さらにアスナの細剣が銀色の閃光となって連続で突き込まれる。
攻略組の攻撃がつながっていく。
一本目のHPバーが――消滅した。
ブオオオオオオオオ!!
Bullbous Bowが咆哮する。
巨大な角が横薙ぎに振るわれた。
「離れろ!!」
数人が間一髪で回避する。
戦闘パターンが変わった。
直線的な突進だけではない。
角による薙ぎ払い。
後脚による蹴り。
フェイントを混ぜた方向転換。
それでも攻略組は崩れなかった。
第1層のボス戦を経験したプレイヤーたちが声を掛け合い、攻撃役と回復役を入れ替えながら、少しずつ巨大なHPを削っていく。
やがて――。
二本目も消滅した。
「残り一本!」
しかし、その瞬間。
Bullbous Bowの全身を赤いエフェクトが包んだ。
「狂暴化するぞ!」
キリトの警告。
Bullbous Bowが突進する。
速い。
先ほどまでとは明らかに速度が違う。
「きゃっ!」
シリカの目前へ巨大な角が迫る。
「シリカ!」
こっこが横から飛び込み、彼女を押し出す。
二人のすぐ横を巨大な雄牛が通過した。
「だ、大丈夫!?」
「はい!」
「よし、無理に攻めない! 回避優先!」
攻撃を欲張らず、確実に削る。
三割。
二割。
そして――一割。
キリトが剣を構えた。
「もう少しだ!」
アスナも細剣を引く。
「次の硬直で一気に決める!」
攻略組が散開する。
Bullbous Bowが前脚で地面を掻いた。
次の突進。
それを避ければ――。
その時だった。
「待てえええええええええええ!!!」
遠くから。
ものすごく聞き覚えのある声が響いた。
「……え?」
こっこが振り向く。
キリトの顔が引きつった。
「まさか……」
岩場の向こうから、一人の男が猛烈な勢いで走ってくる。
筋骨隆々。
武器――なし。
「サタン!?」
「わーっはっはっはっ!! 待たせたな!!」
「誰も待ってない!!」
キリトの叫びを無視して、サタンは一直線に戦場へ突入してきた。
「サタン! 危ない!」
こっこも叫ぶ。
「そいつはフィールドボスだ!」
「望むところ!!」
「いや、あんた素手じゃダメージ通らないだろ!!」
キリトが叫んだ。
第1層で何度も見た。
武器を装備せず殴っても、SAOの戦闘システム上まともなダメージにはならない。
ところが――。
「……え?」
キリトが目を見開いた。
サタンの拳が。
光っていた。
淡いシステムエフェクトが、拳から腕へと走っている。
それだけではない。
踏み込み。
腰の回転。
拳を引く動作。
明らかに――システムアシストが発生している。
アスナも目を見開く。
「ソードスキル……?」
「いや」
キリトは呆然と呟いた。
「体術……?」
リズが叫ぶ。
「ちょっと待って!? あのおじさん武器持ってないわよ!?」
シリカも目を丸くする。
「拳にエフェクトが出てます!!」
そして、こっこ。
「ええええええええ!? 」
Bullbous Bowがサタンを標的に定めた。
地面を蹴る。
巨大な雄牛と、素手の男。
真正面から激突する。
「サタン! 避けろ!!」
「ぬおおおおおおおおお!!」
サタンは避けない。
むしろ――踏み込んだ。
拳にまとわりつく光が強くなる。
「これぞ修行によって会得した、我が新必殺――」
「それシステムスキルだから!!」
キリトのツッコミなど聞いていない。
「ダイナマイトォォォォ――パンチ!!」
ドゴォォォォォン!!
Bullbous Bowの額に拳が叩き込まれた。
赤いダメージエフェクトが炸裂する。
巨体が――止まった。
攻略組全員が固まる。
「…………」
こっこが口を開けたまま震える。
「ダ、ダメージ入った……」
サタンが拳を突き出したまま笑う。
「わーっはっはっはっ!! 見たか!! 修行の末、ついに儂の肉体がこの世界の理すら超越したのだ!!」
「超越してないアル」
知らない声が聞こえた。
全員が振り向く。
少し離れた岩陰から、中国風の装束を着たNPC商人が顔を出していた。
「老師から《体術》スキル教えてもらっただけアル」
サタン「余計なことを言うな!!」
キリト「誰だよあんた!?」
NPC商人「こっちが聞きたいアル!! なんで私までこんな所来てるアルカ!!」
だが。
こっこは気づいた。
「あっ!」
Bullbous BowのHP。
残り――ほんのわずか。
キリトも気づく。
「ラストアタック!」
攻略組が一斉に動いた。
キリト。
アスナ。
エギル。
こっこ。
全員が最後の一撃を狙う。
だが――。
サタンの脚が光った。
「まさか!?」
キリトの顔が青ざめる。
サタンが跳躍する。
身体をひねる。
システムアシストによって、右脚に鮮やかなエフェクトが集中していく。
「必殺!!」
「やめろおおおおおお!!」
キリトの悲鳴。
「ダイナマイトキィィィィィィック!!」
ドゴォォォォォン!!
Bullbous Bowの額に、強烈な飛び蹴りが直撃した。
最後のHPバーが――。
消えた。
一瞬の静寂。
そして。
パァァァァァァン!!
巨大な雄牛の身体が無数のポリゴン片となり、夕暮れの空へ爆散していった。
討伐成功。
攻略組から歓声が上がる――。
はずだった。
サタンの目の前に一枚のウインドウが浮かぶ。
《LAST ATTACK BONUS》
「…………」
キリト。
「…………」
アスナ。
「…………」
こっこ。
「…………」
リズ。
「…………」
シリカ。
サタンはウインドウを見る。
そして。
大きく息を吸った。
「わ――」
「言うな!!」
「――っはっはっはっはっはっはっ!!」
「また取られたああああああああ!!」
キリトの絶叫が街道に響き渡った。
「僕も狙ってたのにぃぃぃ!! 」
「こっこも!?」
アスナが思わず振り向く。
サタンは腰に手を当て、胸を張った。
「これで証明されたな!! 武器など不要!! 己の肉体こそ最強の武器!!」
「《体術》スキル使ってるアル」
「黙っておれ!!」
リズが、こっこの袖を引いた。
「ねえ……」
「うん?」
「あの人、第1層のボスでもラストアタック取ったんでしょ?」
「……うん」
シリカが指折り数える。
「ということは……第1層のフロアボスと、第2層のフィールドボス……」
「……うん」
「二連続?」
「…………うん」
全員の視線がサタンへ集まった。
武器なし。
筋骨隆々。
満面の笑み。
攻略理論など一切知らない。
つい先日までは、素手でモンスターを殴ってもまともにダメージすら与えられなかった男。
その男が今や――攻略組で誰よりもラストアタックを獲得している。
キリトが頭を抱えた。
「……なんでだよ」
こっこも遠い目をする。
「この人……攻略組に入れて本当に大丈夫なのかな 」
「何を言う!!」
サタンは高らかに笑った。
「次の強敵はどこだ!! 今の儂ならば何者が相手でも――」
「まず服買うアル」
「儂はこの姿が完成形なのだ!!」
「防御力ゼロに近いアル!!」
こうして、第2層のフィールドボス《Bullbous Bow》は討伐された。
迷宮区直前の村――《タラン》への道が開かれる。
そして攻略組は、この日もう一つの重大な事実を知った。
第1層で、武器を持たず。
素手で敵を殴り。
ダメージが入らず。
それでも「己の肉体こそ最強」と豪語していた、あの男。
サタン。
その男がついに――。
SAOのシステムから正式に、
《素手で戦うことを許されてしまった》
のである。