エンジニアのSAO Progressive ~NPCが売ってないなら作ればいい~   作:Edward

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20 タラン支店開店

翌朝  第2層、最終村《タラン》。

 

攻略組の多くはすでに迷宮区へと足を踏み入れ、次なるフロアボスを目指して探索を続けている。

 

当然、その拠点となるタランには大勢のプレイヤーが集まっていた。

 

武器を修繕する者。

 

ポーションや食料を買い込む者。

 

新しい装備を求める者。

 

そして、その一角――。

 

昨日まで空いていた大きな店舗の前に、見慣れない看板が掲げられていた。

 

《Engineer――タラン臨時支店》

 

《武器・防具 製作/修繕/強化》

 

《衣服・アクセサリー》

 

《料理・保存食》

 

《各種道具・素材加工》

 

《攻略組向け装備、取り扱い中!》

 

そして。

 

その下に、ひときわ大きな文字で――。

 

《本日の目玉商品!》

 

《攻略組トッププレイヤーも使用!》

 

《キリトモデル 強化アニールブレード&黒衣セット!》

 

「…………」

 

店の前で、リズが看板を見上げていた。

 

昨日こっこから渡された、普段より少し大人びた服を着て。

 

「…………」

 

その隣にはシリカ。

 

こちらはフリルのついた可愛らしい衣装を着ている。

 

そして。

 

二人の背後から、満面の笑みを浮かべたこっこが現れた。

 

「似合ってるじゃないか✨️」

 

「誰のせいよ!! 」

 

ゴンッ!!

 

開店前からメイスが頭に刺さった。

 

ここは圏内。

 

今日もダメージはゼロである。

 

「やっぱり着ましたね、リズさん……」

 

「うるさいわよシリカ!」

 

「私も着せられてますよぉ! 」

 

そんな三人を見ながら、アルゴは店の壁にもたれかかってニヤニヤしていた。

 

「でも、こっこの狙いは当たってるみたいダゾ」

 

「ん?」

 

アルゴが親指で店の外を示す。

 

すでに数人のプレイヤーが看板を眺めていた。

 

「キリトって、あの黒い奴だよな?」

 

「第一層のボス戦にいた奴だろ?」

 

「アニールブレード使ってるのか」

 

「同じ強化なのか?」

 

「服まで付いてるぞ」

 

ざわ。

 

ざわざわ。

 

こっこの口角が上がる。

 

「ふっ……」

 

リズが嫌そうな顔をした。

 

「その顔やめなさいよ」

 

「計画通り✨️」

 

「もっとやめなさい!」

 

こっこは勢いよく店の扉を開いた。

 

「開店だ!!」

 

 

結果から言えば。

 

――売れた。

 

ものすごく売れた。

 

「キリトモデル一つ!」

 

「はいよー!」

 

「俺も!」

 

「アニールブレードの強化値は!?」

 

「基本は丈夫さを重視! 前線で長く使えるよう調整してあるよ!」

 

「黒い上着だけ欲しいんだけど!」

 

「シリカさん、衣服単品!」

 

「は、はいっ!」

 

「俺、サイズお願いします!」

 

「ちょっと待ってください! 順番ですー! 」

 

店内は一気に戦場と化した。

 

リズは武器担当。

 

シリカは衣服とアクセサリー担当。

 

こっこは会計、説明、修繕受付、料理販売、在庫管理を行ったり来たりしている。

 

アルゴはというと――。

 

「にゃはは♪ こりゃ面白い商売になったナ」

 

完全に見物人だった。

 

「アルゴ! 見てないで手伝って!」

 

「情報屋は店員じゃないヨ」

 

「昼飯おごるから!」

 

「交渉成立ダ!」

 

即決だった。

 

そして、こっこは確信する。

 

性能だけではない。

 

「あの強いプレイヤーと同じ武器」。

 

「あの有名なプレイヤーと同じ格好」。

 

それ自体が価値になるのだ。

 

「これだ……!」

 

こっこの商売人としての何かが、また一つ開花してしまった。

 

「これからは装備に《物語》を付けて売るんだ!」

 

リズがハンマーを振りながら叫ぶ。

 

「変な方向に成長しないでよ!!」

 

 

昼を過ぎた頃。

 

店の前に二人のプレイヤーが現れた。

 

一人は黒髪の少年。

 

もう一人はフードを外し始めた栗色の髪の少女。

 

キリトとアスナだった。

 

「ここだよな。こっこさん達が店を出したっていうの」

 

「結構大きなお店ね」

 

「攻略組向けの装備も扱ってるらしいから、見ていこう」

 

「うん」

 

二人は何の疑いもなく店へ近づき――。

 

キリトが看板を見た。

 

《攻略組トッププレイヤーも使用!》

 

《キリトモデル》

 

「…………」

 

止まった。

 

アスナも止まった。

 

「…………キリトモデル?」

 

「…………」

 

「キリト君?」

 

「俺に聞かないでくれ」

 

店頭には黒い服。

 

その横には強化済みアニールブレード。

 

さらに、

 

《迷宮区攻略に!》

 

《丈夫で長持ち!》

 

《前線プレイヤー御用達!》

 

などと書かれたポップまで付いている。

 

「…………」

 

キリトの目から光が消えた。

 

そこへ。

 

「いらっしゃいませー!」

 

何も知らないこっこが店から飛び出してきた。

 

そして固まった。

 

「…………」

 

「…………」

 

二人の視線が交差する。

 

キリトが看板を指差した。

 

「こっこさん」

 

「はい」

 

「これは?」

 

「キリトモデルです」

 

「それは読めばわかります」

 

妙に丁寧な声だった。

 

こっこは一歩後退する。

 

「いやぁ……キリト君は攻略組でも有名になってきたし」

 

「はい」

 

「同じ装備を欲しがる人がいるかなって」

 

「はい」

 

「だから参考にしました✨️」

 

「本人に許可は?」

 

「…………」

 

沈黙。

 

アスナが横を向いた。

 

肩が震えている。

 

「アスナ?」

 

「ご、ごめん……」

 

ぷるぷる。

 

「……ふふっ」

 

「笑うなよ!」

 

「だって……キリトモデルって……!」

 

ついに耐えられなくなった。

 

「ふふふっ、あはははっ!」

 

「アスナぁ!」

 

そこへシリカがやって来る。

 

「あっ、キリトさん! アスナさん!」

 

そして悪気なく言った。

 

「キリトモデル、すごく売れてますよ!」

 

「売れてるの!?」

 

「はい!」

 

キリトにさらなる衝撃。

 

リズまで顔を出す。

 

「あんた人気あるのね。追加生産する羽目になったわ」

 

「追加!?」

 

こっこが胸を張った。

 

「安心したまえキリト君」

 

「何をですか」

 

「売上の一部をモデル料として――」

 

キリトの表情が少し変わった。

 

「……モデル料?」

 

「店の運営資金に回す」

 

「俺に入らないの!?」

 

「攻略組支援になる✨️」

 

「いい話みたいにまとめないでください!!」

 

アルゴが腹を抱える。

 

「にゃははははは!!」

 

 

すると。

 

アスナが店内の別の商品に気づいた。

 

「……ねえ、こっこさん」

 

「はい?」

 

そこには細身のレイピア。

 

そして赤と白を基調とした女性用装備。

 

まだ値札しか付いていない。

 

アスナは嫌な予感を覚えた。

 

「これ……何?」

 

こっこが満面の笑みを浮かべた。

 

「よくぞ聞いてくれました✨️」

 

キリトが察する。

 

「あっ」

 

リズが察する。

 

「あー」

 

シリカも察する。

 

「あ……」

 

アルゴだけが楽しそうだった。

 

「来たナ」

 

こっこは商品を指し示した。

 

「次の目玉商品――」

 

アスナの頬が引きつる。

 

「《アスナモデル》です!!」

 

「やっぱり!!」

 

「細剣と衣服をセットにした女性プレイヤー向け商品! 生産数を絞って希少性も――」

 

「ちょっと待ちなさい!!」

 

「数量限定!」

 

「そこじゃないわよ!!」

 

今度はアスナがこっこを追いかける。

 

「本人の許可を取りなさい!!」

 

「売れるんだよぉぉぉ!!」

 

「だからって勝手に売らないの!!」

 

「攻略組の資金になるからぁぁぁ!!」

 

店内を逃げ回るこっこ。

 

追いかけるアスナ。

 

腹を抱えて笑うアルゴ。

 

呆れるリズ。

 

おろおろするシリカ。

 

そして。

 

騒動の中心から少し離れたところで、キリトは自分そっくりの黒衣を手に取った。

 

「…………」

 

サイズを見る。

 

デザインを見る。

 

値札を見る。

 

「高くない?」

 

ピタッ。

 

逃げていたこっこが止まった。

 

振り返る。

 

「ブランド料✨️」

 

「こっこさん!!」

 

「ぎゃああああ!!」

 

――《Engineer》タラン支店。

 

開店初日。

 

売上、絶好調。

 

武器修繕、絶好調。

 

衣服販売、絶好調。

 

そして店主への信用――。

 

若干、下降。

 

しかし。

 

《キリトモデル》は、その日のうちに初回生産分が完売した。

 

翌朝。

 

店の入口には、こっこの手書きによる新しい札が掲げられることになる。

 

《好評につきキリトモデル増産決定!》

 

その札を見たキリトが頭を抱えるのは――。

 

また別の話である。

 

 

翌日――。

 

その一角にある《エンジニア》の店は、朝から異様な熱気に包まれていた。

 

「武器の修理をお願いします!」

 

「こちらは強化を! 素材は持ち込みで!」

 

「ワイルドステーキを二つ!」

 

「《キリトモデル》は試着できますか?」

 

シリカ「シリカちゃーん! オムライス追加!」

 

シリカ「なぜ私を名指しするんですかぁ!? 」

 

武器屋なのか。

 

鍛冶屋なのか。

 

服屋なのか。

 

食堂なのか。

 

もはや誰にもわからない。

 

ただ一つ、確かなことがある。

 

大繁盛していた。

 

店の左側では、鍛冶炉が真っ赤に燃えている。

 

カァン!

 

カァン!

 

リズがハンマーを振るうたび、火花が派手に飛び散った。

 

その背後の壁には、修理を終えた片手剣や斧、メイスがずらりと並んでいる。

 

さらに別の棚には、昨日こっこが思いついた《トッププレイヤーモデル》が堂々と展示されていた。

 

《黒の剣士モデル! 強化アニールブレード付き!》

 

《閃光モデル! 細剣&白赤コーデ!》

 

《チャンピオン・サタンモデル! 武闘着&手甲!》

 

そして、その端には――。

 

《重戦士エギルモデル!》

 

巨大な斧。

 

重量級防具。

 

そして、妙に頭部が目立つマネキン。

 

こっこ「うーん……」

 

こっこは腕を組み、売れ行きを確認した。

 

こっこ「キリトモデルは順調。アスナモデルも試着希望が多い。サタンモデルは……なぜこんなに売れているんだ?」

 

プレイヤー「素手でボスを殴りたいから!」

 

プレイヤー「チャンピオンになりたい!」

 

プレイヤー「ベルトは付いていないんですか!?」

 

こっこ「付いていないよ! あれはラストアタック報酬だから!」

 

プレイヤー達「ええーっ!」

 

その横では――。

 

リズ「お待たせしましたぁ♥ ワイルドステーキです♥」

 

ジュワァァァ……!

 

巨大な牛肉から肉汁が溢れ、香ばしい匂いが店内を満たす。

 

プレイヤー「うおお……!」

 

リズ「熱いうちに召し上がってね♥」

 

プレイヤー「はい!」

 

リズ「ふふっ♥ ごゆっくりどうぞ」

 

プレイヤー「…………♥」

 

シリカ「リズさん……」

 

リズ「なに?」

 

シリカ「完全に楽しんでいますよね?」

 

リズ「やるなら本気で取り組まないと」

 

シリカ「鍛冶の話ですよね!? 」

 

ところが。

 

シリカにも逃げ場はなかった。

 

こっこ「シリカちゃーん!」

 

シリカ「はい!」

 

こっこ「五番テーブル、オムライス!」

 

シリカ「お持ちします!」

 

こっこ「《おいしくなーれコール》付き!」

 

シリカ「…………」

 

ぴたり。

 

シリカの動きが止まる。

 

五番テーブルでは、男性プレイヤー三人が期待に満ちた表情で待っていた。

 

プレイヤー「お願いします!」

 

シリカ「なぜこんなサービスを作ったんですかぁ…… 」

 

こっこ「追加料金を取れるから 」

 

シリカ「商魂!!」

 

しかし、注文を受けてしまった以上、やるしかない。

 

シリカは真っ赤になりながらオムライスをテーブルへ置いた。

 

そして、小さく両手でハートを作る。

 

シリカ「お……」

 

周囲の客まで静かになる。

 

シリカ「おいしく……なーれ♥」

 

一瞬の静寂。

 

「うおおおおおおおお!!」

 

店内から大歓声が上がった。

 

シリカ「もう嫌ですぅぅぅ!! 」

 

こっこ「追加注文入りましたー!」

 

シリカ「なぜですかぁ!?」

 

そんな騒ぎの中――。

 

カラン。

 

入口のベルが鳴った。

 

「……なんだ、ここは」

 

巨大な斧を背負ったエギルが、入口で立ち尽くした。

 

昨日まで、ここは確かに攻略組向けの臨時補給拠点だったはずだ。

 

武器の修理。

 

防具の補修。

 

素材加工。

 

装備強化。

 

迷宮区攻略に必要な物資を扱う、極めて真面目な店だった。

 

――そのはずだった。

 

だが、今は。

 

右を見る。

 

シリカ「おいしくなーれ♥」

 

左を見る。

 

リズ「ほら♥ お残ししてはいけないでしょう?」

 

正面を見る。

 

《トッププレイヤーになりきろう!》

 

そんな看板まで掲げられている。

 

エギル「…………」

 

エギルは、もう一度外へ出た。

 

看板を確認する。

 

《エンジニア》

 

エギル「……間違っていないな」

 

もう一度、店内へ入った。

 

こっこ「あっ、エギル!」

 

エギル「お前……」

 

こっこ「ちょうどよかった。迷宮区はどうだった?」

 

その言葉で、エギルも本来の目的を思い出した。

 

そうだ。

 

遊びに来たのではない。

 

迷宮区で得た情報を共有するために来たのだ。

 

エギルはカウンターまで歩くと、背負っていた斧を降ろした。

 

ゴトン。

 

「かなり手強いぞ」

 

こっこの表情が変わる。

 

「牛人型か?」

 

「ああ。これまでの獣系モンスターとは違う。武器を使う」

 

こっこ「やはり……」

 

エギル「あいつらは、ただ振り回しているだけじゃねえ。間合いも取るし――」

 

その後ろで。

 

シリカ「おいしくなーれ♥」

 

エギル「…………」

 

こっこ「それで?」

 

エギル「あ、ああ。特に斧を持った奴が厄介だ。攻撃範囲が広くて――」

 

リズ「ダメじゃない♥」

 

エギル「…………」

 

リズの声が聞こえる。

 

「こんなに残して」

 

プレイヤー「いや、もう腹いっぱいで……」

 

リズ「仕方がないわね」

 

リズがフォークにステーキを刺した。

 

「あーん♥」

 

プレイヤー「えっ!?」

 

リズ「あーん♥」

 

プレイヤー「あ、あーん……」

 

周囲「おおおおおお!!」

 

エギル「………… 」

 

こっこ「斧を持った奴が?」

 

エギル「真剣な話ができるかぁぁぁ!! 」

 

ドン!!

 

巨大な拳がカウンターを叩いた。

 

「なんだ、このふざけた店は!!」

 

こっこ「大繁盛だよ✨️」

 

エギル「売上の話じゃねえ!」

 

こっこ「昨日の三倍」

 

エギル「聞いてねえ!!」

 

こっこは満足そうに店内を見渡した。

 

修理を待っている間、客は料理を注文する。

 

料理を待っている間、装備を見る。

 

装備を見ているうちに、強化を依頼する。

 

強化を待っているうちに、また料理を注文する。

 

そして――シリカやリズの給仕を目当てに、追加注文まで発生する。

 

こっこ「完璧なビジネスモデルだ✨️」

 

シリカ「最悪の循環です!! 」

 

リズ「でも、儲かっているわよ?」

 

シリカ「リズさんまでぇ!」

 

そこで、こっこはエギルを見上げた。

 

「そういえばさ」

 

「なんだよ」

 

「エギルモデル、あまり売れないんだよね」

 

「…………は?」

 

こっこが指差す。

 

エギルもそちらを見る。

 

そこには――。

 

自分そっくりの重量級装備。

 

巨大な斧。

 

そして、妙に頭部を強調したマネキンが置かれていた。

 

《重戦士エギルモデル》

 

《圧倒的な威圧感!》

 

《最前線の壁役を目指すあなたへ!》

 

ここまではいい。

 

だが、その下に小さく。

 

《スキンヘッド付き》

 

エギル「…………」

 

こっこ「やはり、このスキンヘッドが問題なのかな?」

 

エギル「俺はハゲじゃねえ!!」

 

店中に怒声が響いた。

 

全員が振り返る。

 

エギルは自分の頭を指差した。

 

「剃ってんだ!!」

 

こっこ「…………」

 

じーっ。

 

エギル「なんだよ!」

 

こっこ「あれー? そうなんだ」

 

エギル「 」

 

こっこ「じゃあ、商品説明を直しておくよ」

 

エギル「おう」

 

こっこはメニューを操作する。

 

《スキンヘッド付き》

 

削除。

 

そして――。

 

《剃髪スタイル完全再現!》

 

エギル「そういう問題じゃねええええ!! 」

 

店内が爆笑に包まれた。

 

その笑い声の中。

 

武器の修理を終えたプレイヤーが立ち上がる。

 

「よし。そろそろ迷宮区に戻るか」

 

「俺も行く」

 

「ポーションは確認したか?」

 

「ああ」

 

リズが修理した剣を手渡す。

 

「はい。耐久値は完全に戻しておいたわ」

 

「ありがとう!」

 

シリカも包みを渡した。

 

「保存食です。無理はしないでくださいね」

 

「助かるよ」

 

こっこはカウンター越しに声をかけた。

 

「危なくなったら戻っておいで。装備はまた直せる。でも、HPがゼロになったら直せないからね」

 

プレイヤー達は笑った。

 

「わかっているよ!」

 

「行ってくる!」

 

扉が開く。

 

そして彼らは再び、迷宮区へ向かって歩いていった。

 

エギルは、その背中をしばらく眺めていた。

 

ふざけた店だ。

 

間違いなくふざけている。

 

だが――。

 

武器を直せる。

 

防具を整えられる。

 

温かいものを腹いっぱい食べられる。

 

攻略情報を交換できる。

 

そして、死と隣り合わせの迷宮へ戻る前に、馬鹿みたいに笑える。

 

エギル「……なるほどな」

 

こっこ「ん?」

 

エギル「いや」

 

エギルは小さく笑った。

 

「悪くねえ店だと思っただけだ」

 

こっこ「でしょ✨️」

 

エギル「ただし」

 

エギルは《エギルモデル》を指差した。

 

「それは撤去しろ」

 

こっこ「えー」

 

「撤去しろ 」

 

シリカ「そこは素直に聞いてあげてください 」

 

第二層攻略の最前線――タラン。

 

そこには今日も、攻略組を送り出す店がある。

 

武具屋。

 

工房。

 

食堂。

 

服屋。

 

情報交換所。

 

そして、なぜかコスプレ喫茶。

 

誰かが言った。

 

「結局、ここは何屋なんだ?」

 

こっこは胸を張って答えた。

 

「《エンジニア》だよ✨️」

 

誰一人として納得しなかった。

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