エンジニアのSAO Progressive ~NPCが売ってないなら作ればいい~   作:Edward

27 / 44
27 それぞれの開花

森エルフ「ご助力に感謝する。人間たちよ」

 

戦闘を終えた金髪の森エルフは、剣を鞘に収めると、静かに一礼した。

 

その所作には無駄がなく、背筋はまっすぐに伸びている。

長い金髪が木漏れ日に揺れ、端正な顔立ちには穏やかな微笑が浮かんでいた。

 

リズ「……」

 

シリカ「……」

 

こっこ「?」

 

リズは完全に見惚れていた。

 

シリカも頬をほんのり赤らめ、目を輝かせている。

 

森エルフ「私は《ランスロット》。この森を守る戦士の一人だ」

 

リズ「ランスロット……✨️」

 

シリカ「素敵なお名前ですね……✨️」

 

こっこ「なんだか急に、二人とも声のトーンが変わっていない?」

 

リズ「気のせいよ」

 

シリカ「気のせいです」

 

こっこ「そうかなあ……」

 

ランスロットは三人のやり取りにわずかに首を傾げたものの、すぐに表情を引き締めた。

 

ランスロット「近頃、この森では闇エルフとの争いが激化している。だが、それだけではない。森に棲む獣たちまで、落ち着きを失っているのだ」

 

こっこ「獣たちまで?」

 

ランスロット「ああ。何者かが、森の均衡を崩しているらしい」

 

その言葉に、こっこの目が光った。

 

こっこ「均衡……森の生態系……?」

 

リズ「あ、嫌な予感がする」

 

シリカ「こっこさんが興味を持ちました」

 

こっこ「ランスロットさん、その話を詳しくお聞かせください!」

 

ランスロット「え?」

 

こっこ「森の植生は? 薬草の分布は? 木材の種類は? 鉱物は採れる? この辺りのモンスター素材は加工できる?」

 

ランスロット「ま、待て、人間よ」

 

リズ「始まったわね」

 

シリカ「止まりませんね……」

 

ランスロットは困惑しながらも、三人を森エルフの野営地へ案内した。

 

---

 

木々の間に造られた野営地は、人間の街とはまるで異なっていた。

 

巨大な樹木をそのまま利用した住居。

蔓と枝を組み合わせた柵。

木の実や薬草を乾燥させる棚。

 

そして中央には、ひときわ大きな老木が立っていた。

 

その根元に、一人の老エルフが座っている。

 

長老「……ランスロット。その人間たちは何者じゃ?」

 

ランスロット「森で襲撃を受けた私を助けてくれました」

 

長老「ほう」

 

長老は三人を静かに観察した。

 

しかし――

 

こっこは、すでに長老を見ていなかった。

 

長老の横に並べられた薬草。

 

木の器。

 

編み込まれた蔓。

 

加工された樹皮。

 

それらに釘付けになっていた。

 

こっこ「長老さん!」

 

長老「……なんじゃ」

 

こっこ「この樹皮は、どのようにして柔らかくしているのですか?」

 

長老「……は?」

 

こっこ「それから、この薬草は乾燥させる前と後で効果が変わりますか? 煮出した場合は? 粉末にした場合は? この紐は植物繊維ですよね? 強度はどの程度ありますか?」

 

長老「…………」

 

リズ「申し訳ありません」

 

シリカ「悪い人ではないんです」

 

長老「見れば分かる」

 

こっこ「それと、この木材は素晴らしいですね! 軽いのに硬そうです!」

 

長老「人間よ」

 

こっこ「はい!」

 

長老「少し黙れ」

 

こっこ「はい…… 」

 

リズ「怒られたわね」

 

シリカ「怒られましたね」

 

しばらくして。

 

長老は大きくため息をついた。

 

長老「まったく……人間というものは、森に来れば木を切り、獣を狩り、利益になるものばかり探すと思っておったが」

 

こっこ「いえ、切る前に性質を調べなければ、もったいないですよ」

 

長老「……」

 

こっこ「成長速度も異なりますし、採りすぎれば無くなります」

 

長老の眉が、わずかに動いた。

 

こっこ「利用できるからといって、すべて採ってしまえば、次に来た時に困るではありませんか」

 

長老「……ほう」

 

こっこ「必要な分だけ使い、再び採取できるように残しておく。その方が、長期的に利用できます」

 

長老はしばらく、こっこを見つめていた。

 

やがて――

 

ふっと。

 

厳しかった表情が、わずかに和らいだ。

 

長老「変わった人間じゃ」

 

こっこ「よく言われます✨️」

 

リズ「褒めているわけではないわよ」

 

シリカ「たぶん」

 

長老「……だが、嫌いではない」

 

こっこ「では、この薬草について!」

 

長老「調子に乗るな」

 

こっこ「はい 」

 

---

 

その頃。

 

野営地の端で、シリカは小さな鳴き声を聞いていた。

 

「キュゥ……」

 

シリカ「?」

 

木で作られた檻。

 

その中に、小さな竜のような生き物がいた。

 

淡い緑色の身体。

大きな瞳。

背中には小さな翼。

 

シリカ「この子は……」

 

ランスロット「《フェアリーリドラ》だ」

 

シリカ「フェアリーリドラ……」

 

ランスロット「野営地の者たちが弱っている所を保護した。森へ戻そうとしたのだが、人を恐れて暴れてしまってな」

 

フェアリーリドラはシリカを見ると、身体を震わせて檻の奥へ逃げた。

 

シリカ「怖いよね……」

 

シリカはしゃがみ込んだ。

 

手を伸ばさない。

 

近づかない。

 

ただ、静かに座る。

 

シリカ「大丈夫だよ」

 

「キュ……」

 

シリカ「何もしないから」

 

ストレージから、小さな木の実を取り出す。

 

地面に置いた。

 

シリカ「食べる?」

 

フェアリーリドラは警戒しながら、少しずつ近づいてきた。

 

一歩。

 

また一歩。

 

木の実を口にする。

 

シリカ「おいしい?」

 

「キュゥ……」

 

その小さな声に、シリカは微笑んだ。

 

時間をかけて。

 

何度も。

 

木の実を置いて。

 

優しく話しかける。

 

やがてフェアリーリドラは檻の出口までやってきた。

 

そして――

 

シリカの手に。

 

そっと頭を擦りつけた。

 

シリカ「……!」

 

目の前にウインドウが開く。

 

《Taming Successful》

 

シリカ「え……」

 

リズ「ええっ!?」

 

こっこ「テイム!?」

 

ランスロット「まさか……」

 

フェアリーリドラはシリカの腕を駆け上がり、その肩にちょこんと座った。

 

「キュウ!」

 

シリカ「ふふっ……よろしくね」

 

嬉しそうに頬を寄せるシリカ。

 

リズ「かわいいーっ!✨️」

 

こっこ「すごい! シリカちゃん、テイマーになった!」

 

シリカ「私も驚きました!」

 

長老はその光景を遠くから眺めていた。

 

そして静かに呟く。

 

長老「森の子が、自ら人を選ぶか……」

 

ランスロット「長老?」

 

長老「どうやら、この者たちは……ただの人間ではないようじゃな」

 

こっこ「長老さん! このリドラは何を食べるんですか!?」

 

長老「……」

 

リズ「台無しね」

 

シリカ「こっこさんらしいですけどね」

 

「キュウ!」

 

深い森の中。

 

こうして三人は、森エルフたちとの最初の縁を結んだ。

 

一人は、森の知識を求め。

 

一人は、金髪の美男子に目を奪われ。

 

そして一人は――

 

小さな竜を、新たな仲間として迎え入れた。

 

 

第三層――森エルフ野営地

 

森エルフの野営地には、独特の活気が満ちていた。

 

巨大な樹木の根元を利用した住居。

木々の間に張られた天幕。

焚き火の周囲ではエルフの兵士たちが食事を取り、少し離れた場所では損傷した武具の修繕が行われている。

 

人間の街とは、まったく異なる光景だった。

 

そして――。

 

「…………すごい」

 

リズベットは、先ほどからその場を動かなかった。

 

彼女の目の前にいるのは、一人の森エルフの鍛冶職人だった。

 

無口な壮年の男が、簡素な炉の前で剣を打っている。

 

カァン――!

 

火花が散る。

 

カァン――!

 

槌が振り下ろされるたび、赤熱した刀身が少しずつ形を変えていく。

 

リズは、職人の手元を食い入るように見つめていた。

 

「すごい……。叩く位置が全部違う」

 

「そうなの?」

 

シリカが覗き込む。

 

「うん。私だったら形を整えるために、もっと何度も叩く。でも、この人は……必要な箇所しか叩いていない」

 

カァン!

 

「ほら!」

 

リズの目が輝く。

 

「今ので刃の厚みまで調整した!」

 

「わかるんですか?」

 

「鍛冶屋だもの!」

 

リズは胸を張った。

 

しかし次の瞬間には、再びエルフの手元へ釘付けになっていた。

 

「……でも、あれは真似できるかな」

 

その表情は、完全に職人のものだった。

 

エルフの鍛冶師も、そんなリズの様子に気づいたらしい。

 

ちらりと彼女を見る。

 

「人間の娘。鍛冶をするのか?」

 

「はい!」

 

即答だった。

 

「見せてもらってもいいですか!?」

 

「構わぬ」

 

「やった!」

 

その返事だけで、リズは満面の笑みを浮かべた。

 

シリカが小声で呟く。

 

「リズさん、完全に弟子入りする顔をしていますね」

 

「放っておこう。たぶん今日は、眠らないよ」

 

こっこが苦笑した。

 

――そのこっこも。

 

人のことを言えたものではなかった。

 

 

「…………」

 

森エルフの兵士が、少し困ったような表情を浮かべている。

 

なぜなら、こっこが先ほどから彼の弓を凝視しているからだ。

 

「人間よ」

 

「はい」

 

「……そんなに珍しいか?」

 

「珍しいというより……構造が気になって」

 

「構造?」

 

「少し持ってもいい?」

 

許可を得ると、こっこは弓を受け取った。

 

木製の弓。

 

しかし、人間の街で見かける粗末な木製武器とは、明らかに異なっている。

 

指で軽く弾く。

 

――ビィン。

 

「なるほど……」

 

木のしなり。

 

弦の張力。

 

矢をつがえる位置。

 

そして、引き絞った弦が元に戻る力。

 

こっこは矢を射る者の目ではなく、完全に機械を観察する目で弓を見ていた。

 

「こっこさん?」

 

シリカが嫌な予感を覚える。

 

「シリカちゃん」

 

「はい」

 

「これ……人間が腕で引かなくてもいいんじゃないかな?」

 

「はい?」

 

近くにいたリズまで振り返った。

 

「また何か始まったわよ」

 

こっこはすでに地面にしゃがみ込み、《クラフト》用の道具を広げていた。

 

「弓というのは、要するに木材に力を蓄えて、それを弦から矢へ伝えて飛ばしているわけでしょ」

 

「まあ……そうだけど」

 

「なら、この弓を横にして――」

 

枝を一本拾う。

 

地面に線を引いた。

 

「こういう台座に固定する」

 

森エルフたちが集まり始めた。

 

「そして、弦を引いた状態で保持する仕組みを作って……ここに矢を置く」

 

カリカリカリ。

 

「引き金のような留め具を外せば――」

 

ピン。

 

こっこが枝を弾いた。

 

「撃てる」

 

沈黙。

 

エルフたちが地面に描かれた図を見る。

 

一人が呟いた。

 

「……弓を、機械にするというのか?」

 

「そういうことになりますね」

 

リズが額を押さえた。

 

「あんた、エルフの野営地に来て、何を作ろうとしているのよ」

 

「クロスボウ」

 

「名前まで決まっているの!?」

 

「現実にあるよ!?」

 

それは発明というより、既存の武器の再現だった。

 

問題は――この世界で製作できるかどうかである。

 

こっこは《クラフト》を起動した。

 

幸い、森エルフの野営地には良質な木材が豊富にあった。

 

まずは弓そのものを小型化する。

 

木製の台座を削る。

 

弦を固定する溝。

 

矢を走らせるレール。

 

そして最大の難関――弦を保持する留め具。

 

「金属部品が欲しいな……」

 

「これを使いなさい」

 

横から手が伸びた。

 

リズだった。

 

「作ってみた」

 

小さな金属部品が手渡される。

 

「おお!」

 

「私も興味が出てきた」

 

リズがニヤリと笑う。

 

「エルフの鍛冶を見た直後に、変な物を作り始めるんだもの。最後まで付き合うわよ」

 

「ありがとう!」

 

二人の生産職が作業を始める。

 

削る。

 

合わせる。

 

失敗する。

 

弦が外れる。

 

「痛っ!」

 

こっこの指に、わずかなダメージエフェクトが走る。

 

「こっこさん!?」

 

「大丈夫、大丈夫。安全圏だから」

 

「そういう問題ではありません!」

 

もう一度。

 

今度は留め具が壊れた。

 

さらに改良を重ねる。

 

そして――。

 

カチッ。

 

弦が固定された。

 

「……できた」

 

見た目は無骨だった。

 

森エルフの美しい長弓とは、比較にならない。

 

木製の台座。

 

短い弓。

 

簡素な引き金。

 

その上に一本の短い矢を乗せる。

 

周囲には、いつの間にか十人以上のエルフが集まっていた。

 

こっこは少し離れた木製の標的へ向ける。

 

「いきます」

 

引き金を引く。

 

――バシュッ!!

 

矢が飛ぶ。

 

ドッ!

 

標的へ突き刺さった。

 

「…………」

 

森が静まり返る。

 

こっこは首を傾げた。

 

「威力は普通の弓より低いかな。射程も、まだ短そうだ」

 

「そこなの!?」

 

リズが叫ぶ。

 

森エルフの兵士がクロスボウへ近づく。

 

「人間よ……」

 

「はい?」

 

「お前は弓兵なのか?」

 

「いえ」

 

「では、弓術を修めているのか?」

 

「まったく」

 

「…………」

 

エルフがクロスボウを見る。

 

そして標的を見る。

 

もう一度、こっこを見る。

 

「弓術を修めていない者が……矢を放った……?」

 

「あ」

 

こっこも、そこで初めて気づいた。

 

弓の最大の難点。

 

射手自身が弦を引き、狙い続けなければならない。

 

しかしクロスボウなら、機構が弦を保持してくれる。

 

「なるほど……。そこが最大の利点か」

 

こっこの目が輝く。

 

「ただし、連射はできない。装填にも時間がかかる。もっと強くしたら、今度は僕の力では弦を引けなくなるな……」

 

「まだ改良する気!?」

 

リズのツッコミが森に響いた。

 

 

その頃。

 

野営地の外れでは、まったく別の訓練が行われていた。

 

「ピナ!」

 

「キュルルッ!」

 

青い小さなフェアリーリドラが、シリカの周囲を旋回する。

 

シリカは嬉しそうに、その姿を目で追った。

 

森エルフのランスロットは腕を組み、二人を見ている。

 

「良い絆だ」

 

「ありがとうございます!」

 

「だが、友となることと、共に戦うことは違う」

 

「……はい」

 

シリカの表情が引き締まる。

 

「使い魔を戦わせるのではない」

 

ランスロットは腰の剣を抜いた。

 

「共に戦うのだ」

 

「共に……」

 

「そうだ」

 

ランスロットが、木剣を持つエルフの兵士へ合図する。

 

兵士がシリカへ向かって走る。

 

「えっ!?」

 

「構えろ!」

 

シリカは慌てて短剣を抜いた。

 

ガキン!

 

木剣を受ける。

 

「きゃっ!」

 

体勢が崩れる。

 

その瞬間。

 

「キュルッ!」

 

ピナが兵士の顔の前を横切った。

 

「むっ!」

 

一瞬だけ、兵士の視線が逸れる。

 

「今だ!」

 

「はい!」

 

シリカの短剣。

 

――シュッ!

 

兵士の胸元で寸止めする。

 

シリカが目を丸くした。

 

「……できた」

 

ランスロットは頷いた。

 

「今のが基本だ」

 

「ピナが攻撃したわけではない……」

 

「必要ない」

 

ランスロットは剣を収める。

 

「敵の視線を奪う。攻撃の予兆を知らせる。死角を補う。お前が崩した敵へピナが追撃し、ピナが作った隙へお前が入る」

 

シリカはピナを見る。

 

「キュル?」

 

小さな竜が首を傾げた。

 

シリカは笑った。

 

「そっか」

 

手を伸ばす。

 

ピナがその腕へ降りる。

 

「私がピナを守って――ピナが私を助けてくれるんですね」

 

「その通りだ」

 

ランスロットが微笑んだ。

 

「もう一度だ」

 

「はい!」

 

シリカは短剣を構える。

 

「行くよ、ピナ!」

 

「キュルルッ!」

 

再びエルフ兵が迫る。

 

今度はシリカから動いた。

 

正面から短剣を振る――フェイント。

 

兵士が受けようとする。

 

「ピナ!」

 

青い影が頭上を通過する。

 

兵士の視線が一瞬、上へ向く。

 

シリカが身体を沈める。

 

死角へ。

 

短剣が脇腹へ滑り込む。

 

「そこまで!」

 

ランスロットの声。

 

シリカは動きを止めた。

 

「……!」

 

成功。

 

「やった!」

 

「キュルルー!」

 

ピナがシリカの肩へ飛び込む。

 

「ピナ!」

 

シリカが頬を寄せる。

 

「すごい! 私、一人で戦っている時とは全然違う!」

 

ランスロットは静かに二人を見る。

 

「忘れるな。命令するのではない」

 

「はい」

 

「相手を見るのだ。ピナがお前を見るように、お前もピナを見る。それがコンビネーションの始まりだ」

 

シリカは肩の小さな相棒を見る。

 

ピナも彼女を見返す。

 

「よろしくね、ピナ」

 

「キュルッ!」

 

その時――。

 

――バシュッ!!

 

遠くから何かが飛んだ。

 

ドッ!!

 

鳥たちが一斉に森から飛び立った。

 

ランスロットが剣へ手をかける。

 

「敵襲か!?」

 

「たぶん違います」

 

シリカは遠い目をした。

 

「たぶん……こっこさんです」

 

「……なぜ分かる?」

 

「慣れました」

 

野営地へ戻ってみれば――。

 

「これは素晴らしい!」

 

森エルフたちが、謎の木製武器を囲んでいる。

 

「弓兵でなくとも扱えるのか!?」

 

「だが、装填が遅い!」

 

「弦をもっと強くすれば威力が上がるぞ!」

 

「いや、それでは引けぬ!」

 

中心では、こっことリズが地面いっぱいに図面を描いていた。

 

「だから、ここに足を掛ける部品をつけて――」

 

「だったら、金属で補強したほうがいいわよ!」

 

「なるほど!」

 

ランスロットは絶句した。

 

「……私は少し目を離しただけなのだが」

 

シリカが笑う。

 

「いつものことです」

 

「キュルッ!」

 

ピナまで同意する。

 

そして森エルフの鍛冶師が、完成した試作クロスボウを興味深そうに持ち上げた。

 

弓を愛し、何百年もの時を森で生きてきた種族が――。

 

人間の作った、奇妙な横向きの弓を囲んでいる。

 

鍛冶師がぽつりと言った。

 

「……人間とは、妙な種族だな」

 

リズが胸を張る。

 

「でしょ?」

 

シリカは慌てた。

 

「そこで誇らないでください!」

 

こっこはというと。

 

「次は装填機構だな」

 

「まだやるんですか!?」

 

第三層。

 

エルフ戦争が続く深い森の中で。

 

鍛冶屋は新たな技術に出会い。

 

少女は新たな相棒との戦い方を学び。

 

そしてエンジニアは――。

 

また一つ、余計な物を作った.

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。