エンジニアのSAO Progressive ~NPCが売ってないなら作ればいい~   作:Edward

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63 いじわる問題って性格悪いよね

第6層スタキオンの街には、奇妙な仕掛けが無数に存在していた。

 

石畳に刻まれた数字。

 

一定の順番で踏まなければ開かない扉。

 

街角に置かれた石碑には、ところどころ文字の抜け落ちた文章。

 

宿屋の壁にはクロスワード。

 

噴水広場には、縦横に数字を並べる数独のような盤面。

 

そして路地裏には、意味不明な記号だけが刻まれた石板まである。

 

普通のプレイヤーなら、途中で嫌になる。

 

実際――。

 

「こういうのは苦手だ 」

 

サタンは早々に音を上げた。

 

その直後。

 

――ピコン♪

 

《メッセージを受信しました》

 

差出人は、老師。

 

『戻ってこい。次は関節技と寝技じゃ!』

 

「…………」

 

サタンの顔が輝いた。

 

「残念だなあ♪ 師匠からの修行が入ってしまった。では!」

 

ものすごい勢いで走り去っていく。

 

中国風の商人が、その背中を見送りながら腕を組んだ。

 

「今回は素直に行くアルナ……」

 

だが。

 

そんなスタキオンを見て、逆に目を輝かせている男が一人いた。

 

「…………」

 

こっこは、街の中央に設置された巨大なパズル盤を見上げていた。

 

そして――。

 

「なにここ……」

 

震える。

 

リズが嫌な予感を覚えた。

 

「ちょっと?」

 

「天国じゃないか✨️」

 

「うわ、始まった」

 

クロスワード。

 

数独。

 

論理パズル。

 

暗号。

 

図形。

 

迷路。

 

こっこは片っ端から手を出した。

 

一問。

 

二問。

 

三問。

 

最初はエンジニア達も付き合っていた。

 

しかし、一時間後。

 

「次、こっちだ!」

 

「いや、こっこさん。迷宮区の探索が……」

 

「この数字の並び、さっきの石碑と対応してる!」

 

「聞いてない……」

 

二時間後。

 

「分かった! この石像の向きだ!」

 

ガコン!

 

新しい地下通路が開く。

 

「おおおお✨️」

 

「…………」

 

三時間後。

 

エンジニア達は静かに撤退した。

 

「なんで 」

 

誰もいなくなった。

 

リズは腰に手を当てる。

 

「あんたね。攻略っていうのはパズル大会じゃないの」

 

「でも、まだあっちに三つ残ってる」

 

「知らないわよ!」

 

シリカも苦笑する。

 

「こっこさん、たぶん止めても無理ですよ」

 

エギルは腕を組み、しばらく考えた末に結論を出した。

 

「……放っておこう」

 

「エギルさんまで 」

 

「腹が減ったら戻ってくるだろ」

 

「猫みたいに言わないで!」

 

こうして。

 

リズ、シリカ、エギルは通常攻略へ。

 

こっこは一人、スタキオンの街に残された。

 

 

最初のうちは、本当にただ楽しかった。

 

「なるほど……」

 

石碑の文章を読む。

 

《三人の旅人が三つの門を訪れた――》

 

「典型的な論理問題だね」

 

ウインドウを開き、情報を書き留める。

 

Aは北門ではない。

 

Bは赤い鍵を持っていない。

 

Cが訪れた門は――。

 

「じゃあCが東。Bが北。Aが西」

 

――カチッ。

 

石碑が青く光った。

 

《Puzzle Clear》

 

「よし✨️」

 

次。

 

数字。

 

次。

 

暗号。

 

次。

 

図形。

 

気がつけば、こっこはスタキオンの街を縦横無尽に歩き回っていた。

 

だが――。

 

十数個目を解いた頃だった。

 

「……あれ?」

 

足が止まった。

 

こっこは、先ほど解いた石碑を振り返る。

 

ウインドウを開いた。

 

保存していた文章を読み返す。

 

「…………」

 

別の石碑。

 

さらに、その前のクロスワード。

 

噴水広場の数字。

 

「これ……」

 

こっこの表情から、少しだけ笑みが消えた。

 

「答えが被ってる?」

 

偶然ではない。

 

一つのパズルだけを見れば、ただの問題だった。

 

しかし、答えを並べると――。

 

《鐘》

 

《地下》

 

《十三》

 

《封印》

 

《夜》

 

意味のある単語になっている。

 

「…………」

 

こっこは地図を開いた。

 

そして、今までパズルを解いた場所にマーカーを置いていく。

 

一つ。

 

二つ。

 

三つ。

 

十。

 

十五。

 

「……待てよ」

 

点と点を線で結ぶ。

 

現在のスタキオンの街とは、微妙に道路の位置が合わない。

 

だが。

 

古い路地。

 

塞がれた井戸。

 

使われていない地下道。

 

それらを基準にすると――。

 

一本の街路が浮かび上がった。

 

現在のスタキオンには存在しない道。

 

「昔の街……?」

 

こっこは立ち上がった。

 

そして初めて、パズルそのものではなく――スタキオンという街を見た。

 

 

その遥か上空。

 

アインクラッド第百層。

 

紅玉宮。

 

巨大なモニターの前で、茅場晶彦が椅子から身を乗り出した。

 

「……速い」

 

隣にいた神代凛子が画面を見る。

 

映っているのは、一人で路地を歩き回る中年プレイヤー。

 

「何が?」

 

「彼だ」

 

「こっこさん?」

 

「あのパズルを一人で、こんな短期間に解いていくのか!?」

 

珍しく茅場の声が大きくなった。

 

凛子が目を丸くする。

 

「そんなに驚くことなの?」

 

「本来これは、複数のプレイヤーが情報を持ち寄ることを想定している」

 

茅場は操作盤に触れる。

 

こっこが通過したパズルが一覧表示された。

 

そのほとんどに《CLEAR》の文字。

 

「個々の問題を解くこと自体は、それほど難しくない。だが、問題同士に関連性があることを発見し、さらに街の構造そのものに疑問を持たなければ次のクエストラインは出現しない」

 

「へえ」

 

「論理性だけでは到達できない。途中で前提そのものを疑う必要がある」

 

茅場が小さく息を吐いた。

 

「発想力だけなら、私を超えているかもしれないな」

 

「そこまで?」

 

「一定以上の論理的思考と発想の転換ができなければ、このクエストには到達できないよう設計したつもりだ」

 

そこで茅場は凛子を見る。

 

「彼とはリアルで知り合いだったな。そんなに賢い人物なのか?」

 

凛子は少し考えた。

 

「学歴は大したことなかったと思うけど」

 

「……そうなのか?」

 

「でも、発想は変だったわね」

 

「変?」

 

「何人がかりで調べても直せなかった医療機器を、一人で短時間に直すことがあったの」

 

茅場が興味を示す。

 

「どうやって?」

 

「みんなが故障箇所を順番に調べている横で、一人だけ全然違う場所を触り始めるのよ」

 

「ほう」

 

「『たぶんここ』って」

 

凛子は苦笑した。

 

「それで本当に直すから驚いたわ。それから私は、難しい故障の時に彼を指名するようになったの」

 

茅場は再びモニターを見る。

 

ちょうど、こっこが地図上の点を結んでいるところだった。

 

「なるほど……」

 

少しだけ笑う。

 

「積み上げて答えを出すのではない」

 

画面の中。

 

こっこは存在しないはずの道を見つめている。

 

「先に仮説を作り、その仮説を証明する情報を拾っていくタイプか」

 

凛子が肩をすくめた。

 

「だから変なものばっかり作るのよ」

 

「クロスボウ」

 

「船」

 

「携帯式浮き袋」

 

「工具を戦闘中に使う」

 

二人は黙った。

 

「…………」

 

「…………」

 

茅場が呟く。

 

「なるほど。奇天烈な理由が分かった」

 

「褒めてる?」

 

「最大限に」

 

その時だった。

 

モニターの中で――。

 

こっこが止まった。

 

 

「ここだ」

 

現在の地図には何もない。

 

ただの古い建物。

 

こっこは壁を調べた。

 

石。

 

石。

 

石。

 

一ヶ所だけ――。

 

「音が違う」

 

コンコン。

 

工具を取り出す。

 

「ここ、空洞だ」

 

周囲を見る。

 

壁には小さな窪みが十三個。

 

こっこは目を細めた。

 

「十三……」

 

先ほどの答え。

 

《十三》

 

そして別の問題。

 

《鐘》

 

「……そういうこと?」

 

街の中央。

 

時計塔。

 

こっこは時間を確認した。

 

夜。

 

鐘が鳴る。

 

一回。

 

二回。

 

三回――。

 

十三回目。

 

本来なら存在しないはずの鐘が響いた。

 

――ゴォォォン。

 

カチッ。

 

目の前の壁が動いた。

 

「…………」

 

暗い階段。

 

地下へ続いている。

 

今までのこっこなら、

 

「隠し通路だー✨️」

 

と飛び込んでいただろう。

 

だが。

 

今回は動かなかった。

 

何かがおかしい。

 

パズルの答え。

 

古い街路。

 

地下。

 

十三。

 

封印。

 

夜。

 

全部がここへ集まっている。

 

「……これ」

 

遊びじゃない。

 

少なくとも――この世界では。

 

愛用のローグサーベルへ手をかけた。

 

一歩。

 

地下へ降りる。

 

その瞬間。

 

――ピコン。

 

視界中央にウインドウが出現した。

 

《Hidden Quest Updated》

 

こっこの足が止まる。

 

そして。

 

新しいクエスト名が表示された。

 

《The Curse of Stachion》

 

――《スタキオンの呪い》。

 

「…………呪い?」

 

先ほどまでの楽しそうな顔は完全に消えていた。

 

クエスト説明を見る。

 

しかし――。

 

説明がない。

 

報酬もない。

 

討伐対象もない。

 

表示されているのは、たった一行。

 

《夜半、旧市街地下へ向かえ》

 

「いやいやいや……」

 

こっこは暗い階段を見る。

 

「絶対、ろくなことないやつじゃん 」

 

誰もいない。

 

リズも。

 

シリカも。

 

エギルも。

 

サタンに至っては、今頃老師に関節を極められている。

 

「…………」

 

戻ることもできる。

 

明日、みんなを連れてくればいい。

 

その方が安全だ。

 

デスゲームなのだから当然である。

 

「…………」

 

だが。

 

こっこはもう一度、クエストログを見る。

 

《夜半》

 

時間指定。

 

今を逃せば、次にいつ入口が開くか分からない。

 

「……仕方ないな」

 

ローグサーベルを抜いた。

 

左手を空ける。

 

いつでもウインドウを操作できるように。

 

工具の配置を確認。

 

回復アイテム確認。

 

「ちょっと見るだけ」

 

誰も聞いていないのに言い訳する。

 

「危なかったらすぐ帰る」

 

一段。

 

また一段。

 

「絶対に無茶しない」

 

さらに一段。

 

もしリズがここにいれば。

 

間違いなく言っただろう。

 

――その台詞を言う時点で、もう無茶してるのよ!

 

だが、そのツッコミを入れる者はいない。

 

やがて。

 

ゴゴゴゴゴ……。

 

こっこの背後で石壁が閉じた。

 

「…………」

 

振り返る。

 

完全に塞がれている。

 

「…………帰れない 」

 

そして。

 

地下深くから。

 

――カァン……。

 

何かを叩くような音が響いた。

 

こっこはゆっくり前を見る。

 

暗闇の奥。

 

そこには――。

 

現在のスタキオンでは失われたはずの、もう一つの街が眠っていた。

 

紅玉宮。

 

茅場晶彦は無言でモニターを見つめていた。

 

凛子が尋ねる。

 

「これでクリア?」

 

「いや」

 

茅場の声から、先ほどまでの余裕が消えていた。

 

「ここからだ」

 

画面には、一人で地下旧市街へ踏み込んでいくこっこの背中。

 

「彼が解いたのは、入口に過ぎない」

 

茅場は静かに告げた。

 

「ここから先が――《スタキオンの呪い》だ」

 

 

「さあ――」

 

こっこは《ローグサーベル》を構えた。

 

「最終問題、解きますか✨️」

 

《The Answerer》

 

最後の回答者。

 

長い白髪を垂らした老人は、玉座からゆっくりと立ち上がった。

 

その右手には一冊の分厚い本。

 

武器らしい武器は持っていない。

 

しかし、頭上に表示されたHPゲージは――五段。

 

「……多くない? 」

 

老人が本を開く。

 

《QUESTION Ⅰ》

 

空中に巨大な文字が浮かび上がった。

 

『右、左、右、右、左――次は?』

 

「え?」

 

次の瞬間。

 

老人が右手を振る。

 

右側の壁から巨大な石槍が飛び出した。

 

「うおっ!?」

 

こっこは慌てて左へ跳ぶ。

 

続いて左。

 

右。

 

右。

 

左。

 

表示された順番そのままに攻撃が飛んでくる。

 

そして――。

 

老人が問いかける。

 

「次は?」

 

「知らんがな!」

 

こっこが叫んだ瞬間。

 

――ドゴォン!!

 

「ぎゃあああっ!?」

 

真正面から石槍が飛び出し、こっこを吹き飛ばした。

 

HPが一気に削れる。

 

「痛ったぁ…… 」

 

老人は淡々と告げる。

 

「誤答。」

 

――ピコン♪

 

《The Answerer 攻撃力上昇》

 

「間違えたら強くなるの!?」

 

これはまずい。

 

適当に答え続ければ、そのうち手がつけられなくなる。

 

こっこは立ち上がりながら、空中の文字を見る。

 

右、左、右、右、左――。

 

「……待てよ。」

 

規則性。

 

単純な交互ではない。

 

だが、どこかで見た。

 

「右左、右右左……。」

 

こっこの目が細くなる。

 

「次は……右!」

 

老人の手が動く。

 

右側の壁が光った。

 

「よし!」

 

左へ回避。

 

――ピコン♪

 

《正答》

 

老人のHPゲージ一本目に亀裂が走る。

 

「なるほど✨️」

 

こっこの口元が上がった。

 

「お前、問題を解かないとダメージ通らないのか!」

 

老人は答えない。

 

代わりに本のページをめくった。

 

《QUESTION Ⅱ》

 

今度は床に数字が浮かび上がる。

 

《2 3 5 7 11 ?》

 

「これは簡単。」

 

こっこは即答する。

 

「13。」

 

――ピコン♪

 

《正答》

 

老人の身体を覆っていた光が一瞬消える。

 

「今!」

 

一気に踏み込む。

 

ローグサーベル。

 

――スラント!

 

ザシュッ!!

 

「入った!」

 

HPが減る。

 

だが老人はすぐに本を閉じた。

 

再び防御障壁。

 

「一問正解につき攻撃チャンス一回か!」

 

《QUESTION Ⅲ》

 

今度は図形。

 

三角。

 

四角。

 

五角。

 

そして空白。

 

「六角形!」

 

《誤答》

 

「えっ!?」

 

――ドゴォン!!

 

床が爆発した。

 

「なんでええええ!?」

 

こっこが転がる。

 

《The Answerer 攻撃力上昇》

 

老人が初めて僅かに笑った。

 

「形だけを見る者に、答えは見えぬ。」

 

「……引っかけ問題かよ 」

 

こっこは立ち上がる。

 

だが――。

 

少し楽しくなってきた。

 

「いいねえ✨️」

 

ローグサーベルを肩に担ぐ。

 

「そういうの大好き。」

 

 

紅玉宮。

 

「……笑っているぞ。」

 

茅場が呟いた。

 

凛子は呆れたようにモニターを見る。

 

「楽しそうね。」

 

「二度誤答している。」

 

「だから楽しいんじゃない?」

 

「普通は焦る場面だ。」

 

「あなた、まだ分かってないわね。」

 

凛子は笑う。

 

「直らない機械を前にしたときも、あんな顔してたわよ。」

 

茅場が画面を見る。

 

老人の攻撃をフライパンで弾きながら、こっこは床の図形を観察している。

 

「……理解できんな。」

 

「でしょうね。」

 

 

十分後。

 

「分かった!」

 

こっこが叫んだ。

 

「角の数じゃない!」

 

三角形。

 

四角形。

 

五角形。

 

だが、それぞれの図形には小さな点が描かれていた。

 

三角には一つ。

 

四角には二つ。

 

五角には三つ。

 

「図形じゃなくて、点の位置が移動してる!」

 

次に来るのは――。

 

「三角形!」

 

――ピコン♪

 

《正答》

 

「よっしゃ!」

 

障壁消失。

 

こっこは走る。

 

だが老人も杖のように本を振り下ろす。

 

「遅い。」

 

「おっと!」

 

《The Explorer》。

 

警告ポップアップ。

 

こっこは攻撃を寸前で回避。

 

左手を動かす。

 

ブラインドタッチ。

 

アイテムストレージから――。

 

巨大ハサミ。

 

ガチン!!

 

老人の本を挟み込む。

 

「なっ……!」

 

「もらった!」

 

ローグサーベルを滑らせる。

 

――ディスアーム!

 

老人の本が宙を舞った。

 

「おおっ!」

 

こっこの目が輝く。

 

「盗める!?」

 

反射的に本へ手を伸ばす。

 

しかし。

 

――バチィッ!!

 

「痛っ!?」

 

本は光となって老人の手へ戻った。

 

《QUEST ITEM》

 

「ですよね 」

 

 

第四問。

 

第五問。

 

第六問。

 

数列。

 

図形。

 

文章。

 

迷路。

 

記憶。

 

戦闘中に一瞬だけ表示される記号。

 

こっこは何度も間違えた。

 

吹き飛ばされる。

 

転がる。

 

HPを回復する。

 

フライパンが飛ぶ。

 

ハサミが飛ぶ。

 

巨大カッターまで飛び出す。

 

「なんでパズル解きながら戦闘しなきゃいけないの 」

 

そう叫びながら――。

 

顔は笑っていた。

 

そして。

 

老人のHPゲージが最後の一本となった。

 

《FINAL QUESTION》

 

部屋全体が暗くなる。

 

老人が静かに問いかける。

 

「最後の問いだ。」

 

こっこは剣を構える。

 

空中に文字が現れる。

 

《私の次の攻撃を答えよ》

 

「……。」

 

こっこが固まった。

 

「は?」

 

老人は動かない。

 

右か。

 

左か。

 

上か。

 

下か。

 

突きか。

 

薙ぎ払いか。

 

魔法か。

 

罠か。

 

今までの攻撃パターン。

 

問題の出題順。

 

床の模様。

 

本のページ。

 

こっこの頭の中で、情報が高速で組み上がっていく。

 

「……なるほど。」

 

気づいた。

 

第一問。

 

第二問。

 

第三問。

 

そこから続く全ての攻撃。

 

規則性がある。

 

老人が問いかける。

 

「答えよ。」

 

こっこは笑った。

 

「分かった。」

 

老人の目が細くなる。

 

「ならば答えよ。」

 

「次は――」

 

言いかけて。

 

こっこは止まった。

 

「…………。」

 

そして。

 

ローグサーベルを構え直す。

 

「やっぱり言わない✨️」

 

沈黙。

 

老人が固まった。

 

「……何?」

 

「分かったけど、教えない。」

 

「答えよ。」

 

「嫌です。」

 

「答えよ。」

 

「自分で考えろ 」

 

老人の表情が初めて崩れた。

 

「私は出題者だ!」

 

「知らんがな。」

 

「お前が回答者だ!」

 

「さっきから思ってたけど――」

 

こっこは老人を指差した。

 

「《The Answerer》って名前なのに、お前、一回も答えてないじゃん。」

 

「…………。」

 

完全な沈黙。

 

紅玉宮でも。

 

「…………。」

 

茅場が固まった。

 

凛子が吹き出した。

 

「確かに。」

 

「…………。」

 

「晶彦?」

 

「……そこを突くのか。」

 

 

老人が震える。

 

「答えを……。」

 

「嫌。」

 

「答えを言え!」

 

「嫌✨️」

 

「答えを!!」

 

その瞬間。

 

――ピコン♪

 

《特殊回答を確認》

 

《FINAL QUESTION――正答》

 

「え?」

 

こっこ自身が固まった。

 

老人の無敵障壁が砕け散る。

 

パリン――!!

 

《The Answerer 全防御機構停止》

 

《特殊条件達成》

 

《回答を拒む者》

 

《最後の回答者は、“答えない”という答えを知らなかった》

 

こっこは数秒、表示を見つめた。

 

そして――。

 

「……やっぱり、それが答えか。」

 

老人が後退する。

 

「ありえぬ……。」

 

「全部に答えが必要なわけじゃない。」

 

一歩。

 

「分からないものがあっていい。」

 

二歩。

 

「間違えてもいい。」

 

三歩。

 

「誰かより遅くてもいい。」

 

ローグサーベルを握る。

 

「だって――」

 

こっこは笑った。

 

「分からないから、面白いんだろ?」

 

老人の身体から力が抜けた。

 

こっこが踏み込む。

 

ソードスキル。

 

――スラント。

 

一閃。

 

老人の最後のHPが消える。

 

《The Answerer》は、静かにこっこを見つめた。

 

そして。

 

初めて穏やかに笑った。

 

「……それもまた、答えか。」

 

身体が青いポリゴンへ変わっていく。

 

「いや。」

 

こっこは剣を鞘へ戻した。

 

「答えじゃなくてもいいんじゃない?」

 

老人は一瞬だけ目を見開き――。

 

笑った。

 

そして消えた。

 

――パァン!

 

《QUEST COMPLETE》

 

《スタキオンの呪い》

 

静寂。

 

長い戦いが終わった。

 

こっこは大きく息を吐く。

 

「ふう……。」

 

そして目の前に現れたリザルト画面を見る。

 

《単独攻略》

 

《特殊解法達成》

 

《隠し条件達成》

 

《報酬を算出しています》

 

こっこの目が輝いた。

 

「おおおおおっ✨️」

 

そこだけは何も変わっていなかった。

 

「お宝♪ お宝♪」

 

紅玉宮。

 

凛子が笑う。

 

「結局それなのね。」

 

茅場は腕を組んだまま、しばらく何も言わなかった。

 

やがて――。

 

「……面白いプレイヤーだ。」

 

凛子が横を見る。

 

「今頃気づいたの?」

 

そしてスタキオン地下最深部。

 

こっこの目の前に――。

 

黄金色の宝箱が出現した。

 

「来たああああああ✨️」

 

勢いよく手をかける。

 

――ピコン♪

 

《報酬を受け取るには、最後の問題に回答してください》

 

「…………。」

 

こっこは固まった。

 

宝箱の上に問題文が表示される。

 

《最終問題》

 

こっこの頬が引きつった。

 

「まだあるの?」

 

そして問題文を読む。

 

「…………。」

 

十秒。

 

三十秒。

 

一分。

 

「……え?」

 

五分。

 

「…………分からん。」

 

十分。

 

こっこは宝箱の前に正座した。

 

「…………。」

 

ついに。

 

スタキオンへ来てから初めて――。

 

こっこの顔から完全に笑顔が消えた。

 

「これ……。」

 

頭を抱える。

 

「めちゃくちゃ難しい 」

 

《スタキオンの呪い》は解けた。

 

《The Answerer》も倒した。

 

だが。

 

こっこはまだ知らなかった。

 

本当の最終問題は――。

 

これからだった。

 

「誰か助けてえええええ 」

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