エンジニアのSAO Progressive ~NPCが売ってないなら作ればいい~   作:Edward

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68 賢さと頭の柔らかさは違うよね

第六層スタキオン――ボス攻略前夜

 

迷宮区、最深部。

 

幾重ものパズルと仕掛けを突破した攻略組の前に、巨大な扉が姿を現していた。

 

間違いない。

 

この向こうが、第六層フロアボスの部屋だ。

 

そして――。

 

その巨大な扉の前に。

 

なぜか。

 

店があった。

 

「…………」

 

エギルは黙った。

 

正確には、店という表現すら適切ではない。

 

第一層では、敷物を広げただけの露店だった。

 

第二層では、簡素な屋台になった。

 

第三層では、武器、防具、料理を扱う臨時店舗になった。

 

第四層では船まで売り始めた。

 

第五層では休憩施設が併設された。

 

そして第六層。

 

「……階が上がる度に、こっちもレベルアップしているな 」

 

エギルが呟いた。

 

目の前には料理店、武器屋、防具屋、道具屋、鍛冶工房、裁縫工房。

 

さらには簡易休憩所、装備メンテナンス所、情報交換スペースまである。

 

完全に――。

 

前線基地である。

 

「いらっしゃいませー!」

 

「武器の耐久値確認しまーす!」

 

「防具の修理、今なら十五分!」

 

「ポーション補充はこちら!」

 

「矢束は一本単位じゃなく二十本セットがお得ですよー!」

 

エンジニア所属の職人たちが忙しく走り回っている。

 

初期から生産職を続けていた者たちは、すでに相当な熟練度へ達していた。

 

鍛冶。

 

裁縫。

 

木工。

 

料理。

 

薬品調合。

 

金属加工。

 

そして、それらを組み合わせるクラフト系プレイヤー。

 

上層へ進むにつれて素材が増え、加工法が増え、作れる物も増えている。

 

つまり――。

 

攻略組だけではなく、生産職もまた成長しているのだ。

 

エギルは腕を組んだ。

 

「……ここ、ボス部屋の前だよな?」

 

こっこは満面の笑顔で答えた。

 

「一等地ですよ✨️」

 

「そういう意味じゃねえ!」

 

---

 

改良型クロスボウ

 

そして今回、特に目立っていたのがクロスボウ売場だった。

 

第三層で開発された初期型から、何度も改良が加えられている。

 

弦。

 

滑車。

 

ストック。

 

トリガー機構。

 

矢を保持するレール。

 

さらに部品の規格化が進み、故障時には一部だけ交換できるようになっていた。

 

壁には説明書まで貼られている。

 

《Engineer Crossbow Mk-IV》

 

・高威力型

・速射型

・軽量型

・狙撃型

 

さらに――。

 

《特殊ボルト加工承ります》

 

毒。

 

麻痺。

 

睡眠。

 

鈍足。

 

状態異常系アイテムを調合できる職人が、矢じりへ薬品を塗布するサービスまで始めていた。

 

そして、その横に堂々と張り紙。

 

《PKギルド対策に! 備えあれば憂いなし!》

 

「…………」

 

エギルのこめかみが引きつった。

 

「おい」

 

「はい?」

 

「PKギルド対策の商品として毒矢を売ってるギルドって、どうなんだ?」

 

こっこは胸を張った。

 

「毒には毒をもって制する!」

 

「どっちもまともなギルドじゃねえよ!」

 

リズも呆れた顔で腕を組む。

 

「きつねとたぬきの化かし合いよ 」

 

シリカも苦笑した。

 

「高尚な思想ではないですね…… 」

 

「命を守るためですよ 」

 

「だったら張り紙の横にドクロ描くな!」

 

《☠ PK対策 ☠》

 

妙に凝ったデザインだった。

 

---

 

武器屋

 

その隣では、金属音が響いていた。

 

キリトが一本の剣を手に取る。

 

《Steel Sword》

 

特別な名前などない。

 

店頭に何本も並べられている、ごく普通の商品。

 

だが――。

 

キリトの表情が変わった。

 

重量。

 

耐久値。

 

要求STR。

 

基本攻撃力。

 

どれを見ても高い。

 

「……これ、アニールブレードより強いぞ」

 

「はい✨️」

 

「しかも……標準品?」

 

「標準品です✨️」

 

キリトは剣をもう一度見る。

 

「おかしいだろ。六層で普通に手に入る武器じゃない」

 

こっこの目が光った。

 

「さすがキリトさん、お目が高い」

 

「何したんだ?」

 

「第五層で石炭が手に入りましたよね?」

 

「ああ」

 

「燃料が変わったんですよ」

 

「…………」

 

「炉の温度管理と素材の選別、それから鍛冶職人の熟練度も上がりました。今までより安定して高品質な鋼材を作れるようになりまして✨️」

 

キリトは無言でSteel Swordを見る。

 

そして工房を見る。

 

さらに大量に並んだ同型剣を見る。

 

「……マジで?」

 

「マジです✨️」

 

そこへリズがやって来た。

 

「ただし、こいつが全部作ったわけじゃないからね」

 

「え?」

 

「炉を作った人、燃料を管理した人、素材集めた人、鍛冶スキル上げた人、試作品を何本も折った人――全部別」

 

こっこが頷く。

 

「エンジニアのみんなで作りました✨️」

 

キリトはもう一度、店を見る。

 

第一層では、肉を焼いていた集団だった。

 

それが今や――。

 

攻略組へ武器を供給できる生産集団になっている。

 

「……そりゃ強くなるわけだ」

 

エギルも苦笑する。

 

「攻略組が上に進めば素材が増える。素材が増えれば職人が強くなる。職人が強くなれば攻略組の装備が良くなる……」

 

「循環ですね✨️」

 

「お前が言うと、なんか胡散臭いんだよな」

 

「なんで 」

 

---

 

そして料理コーナー

 

しかし。

 

今回、最も人が集まっている場所は武器屋ではなかった。

 

「いらっしゃいませー♥」

 

シリカが両手を合わせる。

 

フリフリ。

 

ひらひら。

 

第六層仕様の可愛らしい店員衣装。

 

その横ではリズも――。

 

「今日はいっぱい買ってくださいね♥」

 

満面の営業スマイル。

 

フリフリ。

 

ひらひら。

 

エギルが遠い目をした。

 

「……慣れたな、リズ」

 

「何が?」

 

「いや、何でもない」

 

テーブルの上には大量のパンが並んでいる。

 

牛肉入り。

 

豚肉入り。

 

魚介入り。

 

蜂蜜パン。

 

チーズパン。

 

野菜サンド。

 

そして中央には――。

 

青い小さな竜を模したパン。

 

《ピナパン》

 

シリカが一つ持ち上げた。

 

「ピナパン、いかがですか? おいしいですよ♥」

 

「ください!」

 

即答する攻略組プレイヤー。

 

「一個?」

 

「十個!」

 

「ありがとうございますー♥」

 

その隣ではリズが別の商品を抱える。

 

「もっと買ってくれないと、リズ悲しいわ♥」

 

「じゃ、じゃあステーキサンド五個追加で!」

 

「ありがとうございますー♥」

 

二人。

 

「「またお越しくださいませー♥」」

 

プレイヤーは満足そうに去っていった。

 

エギルが震える指で指差す。

 

「……なあ」

 

こっこが振り返る。

 

「はい?」

 

「あれ、一個いくらだ?」

 

こっこが値札を見せる。

 

エギルの目が見開かれた。

 

「高っ!」

 

「適正価格です✨️」

 

「迷宮区の最深部だからって足元見てるだろ!」

 

「輸送費です」

 

「アイテムストレージだろうが!」

 

「危険手当です」

 

「お前ここまで普通に来てるだろ!」

 

「ブランド料です✨️」

 

「とうとう認めやがった!」

 

リズが笑顔のまま振り返る。

 

「エギル?」

 

「はい」

 

「営業妨害すると値上げするわよ♥」

 

「俺だけ!?」

 

シリカも笑顔だった。

 

「ピナパン、買います?」

 

「……一個くれ」

 

「ありがとうございます♥」

 

エギルは財布を開いた。

 

「もうぼった――」

 

リズの目が光った。

 

「何?」

 

「……良心的な価格だな」

 

「ありがとうございます♥」

 

---

 

その奥ではピナ本人が、自分そっくりのパンをじっと見つめていた。

 

「きゅる……?」

 

首を傾げる。

 

シリカがパンを見せる。

 

「ピナですよ♥」

 

「きゅ?」

 

ぱくっ。

 

「ああっ!?」

 

自分の顔を食べた。

 

こっこは感動した。

 

「本人公認✨️」

 

シリカは頭を抱えた。

 

「そういう問題じゃありません!」

 

---

 

さらに店の片隅には。

 

《初心者でも安心! ボス戦スターターセット》

 

ポーション。

 

解毒薬。

 

砥石。

 

予備武器。

 

携帯食。

 

状態異常回復薬。

 

それらが木箱に詰められている。

 

エギルが値段を見る。

 

「……これは安いな」

 

「初参加の人向けです」

 

こっこは普通に答えた。

 

「ボス戦で死んだら意味ないですからね。最低限必要な物は利益ほとんど乗せてません」

 

エギルが一瞬だけ黙った。

 

そして小さく笑う。

 

「……そういうところは、お前らしいな」

 

「でもピナパンは高いですよ✨️」

 

「台無しだよ!」

 

---

 

やがて、攻略開始時刻が近づく。

 

店に散らばっていた攻略組が装備を整え始めた。

 

剣を研ぐ音。

 

鎧を締める音。

 

ポーションをストレージへ収める音。

 

クロスボウ隊が矢束を確認する。

 

職人たちは最後まで装備を点検していた。

 

リズが大槌を背負う。

 

シリカも短剣を腰へ戻す。

 

ピナが肩へ飛び乗った。

 

キリトが剣を装備する。

 

アスナがレイピアを抜く。

 

エギルが大斧を担いだ。

 

そして、こっこもエプロンを外す。

 

店主の顔から――攻略者の顔へ。

 

巨大なボス部屋の扉を見上げた。

 

エギルが言う。

 

「店はどうする?」

 

こっこは振り返った。

 

そこには、何十人もの職人がいる。

 

第一層では考えられなかった光景だった。

 

「任せます」

 

「了解!」

 

職人たちから声が返る。

 

こっこは笑った。

 

もう、自分がいなければ回らない店ではない。

 

料理も。

 

鍛冶も。

 

裁縫も。

 

薬品も。

 

道具も。

 

それぞれに、自分より得意な人間がいる。

 

六層分の積み重ねだった。

 

そして――。

 

攻略組が巨大な扉の前へ集結する。

 

そのとき。

 

後ろから声が飛んだ。

 

「攻略組のみなさーん!」

 

全員が振り返る。

 

店員の一人が叫んだ。

 

「ボス撃破後、祝勝セールやりまーす!」

 

「「「おおおおおお!!」」」

 

攻略組の士気が上がった。

 

エギルだけが頭を抱える。

 

「……攻略の動機、それでいいのか?」

 

こっこは剣を抜いた。

 

「経済は世界を動かすんですよ✨️」

 

リズが大槌を構える。

 

「金儲けでしょ 」

 

シリカも短剣を構えた。

 

「否定できませんね 」

 

キリトが苦笑する。

 

「……まあ、生きて戻る理由が一つ増えたと思えばいいか」

 

アスナが微笑んだ。

 

「そうね」

 

そして。

 

巨大な扉へ手が掛かる。

 

第一層から積み重ねてきた攻略者たち。

 

その背後には、彼らを支える職人たち。

 

武器も。

 

防具も。

 

料理も。

 

薬も。

 

そして――。

 

ピナパンも。

 

全部そろった。

 

第六層フロアボス攻略戦。

 

開幕である。

 

 

 

第六層《スタキオン》。

 

迷宮区最奥――ボス部屋。

 

その巨大な扉の前には、もはや攻略組にとって見慣れた光景が広がっていた。

 

料理。

武器。

防具。

回復アイテム。

クロスボウ。

簡易休憩所。

 

もはや「露店」と呼んでいいのか怪しい規模にまで成長した《エンジニア》の前線店舗である。

 

エギルが呆れた顔でそれを眺める。

 

「階が上がる度に、こっちもレベルアップしてるな……」

 

そして、十分な準備を終えた攻略組は、巨大な扉の前へ集結した。

 

キリトが振り返る。

 

「行こう」

 

重い扉が開く。

 

ゴゴゴゴゴゴ――。

 

暗闇。

 

誰かが一歩、踏み込む。

 

すると――。

 

カッ!

 

床に青白い光が走った。

 

一本。

二本。

三本。

 

無数の線が床を走り、巨大な魔法陣――いや。

 

こっこだけが、それを違うものとして見ていた。

 

「……基板?」

 

「は?」

 

リズが振り返った。

 

「いや、なんか……配線パターンみたい」

 

「こんな時まで仕事目線やめなさいよ!」

 

やがて部屋の中央が照らし出される。

 

そこにいたのは――巨大な人型。

 

石と金属が組み合わされたような身体。

その全身には、スタキオンの街で何度も見た幾何学模様が刻まれている。

 

頭部には顔らしいものがない。

 

代わりに。

 

《□ △ ○ ◇》

 

四つの記号が高速で入れ替わっていた。

 

その頭上にボス名が表示される。

 

《The Enigma Guardian》

 

――謎を守る者。

 

「うわ……」

 

アスナが嫌そうな顔をした。

 

「絶対、普通に殴るだけじゃ駄目なタイプね」

 

「だろうな」

 

キリトが剣を抜く。

 

エギルも斧を構えた。

 

そして――。

 

ボスのHPゲージが表示される。

 

四段。

 

「四本か!」

 

誰かが叫ぶ。

 

攻略組が一斉に散開した。

 

「前衛、ヘイト取れ!」

 

「後衛準備!」

 

「クロスボウ隊、装填!」

 

号令と同時に戦闘が始まった。

 

キリトが踏み込む。

 

「はあっ!」

 

《ソニック・リープ》。

 

剣閃がボスの脚部へ叩き込まれる。

 

――ガキィィン!!

 

「っ!?」

 

弾かれた。

 

HP――変化なし。

 

続いてアスナ。

 

細剣が閃く。

 

エギルの斧が叩き込まれる。

 

攻略組の攻撃が次々と命中する。

 

しかし。

 

HPは――。

 

「減らない!?」

 

完全な無敵状態。

 

その時。

 

ボスの頭部に文字が浮かんだ。

 

《3 7 15 31 ?》

 

「……は?」

 

攻略組の動きが止まる。

 

こっこだけが首を傾げた。

 

「63」

 

ピコン♪

 

《CORRECT》

 

「…………」

 

全員がこっこを見る。

 

こっこも全員を見る。

 

「……なに?」

 

リズが叫んだ。

 

「なんで即答なのよ!!」

 

「倍して1足してるだけじゃん!」

 

「知らないわよ!!」

 

その瞬間。

 

ボスの胸部装甲が一瞬だけ開いた。

 

「キリト!」

 

「ああ!」

 

キリトが飛び込む。

 

一撃。

 

今度は――。

 

ガンッ!!

 

HPゲージが僅かに減った。

 

「通った!」

 

アスナが叫ぶ。

 

だが数秒後。

 

胸部装甲が閉じる。

 

再び無敵。

 

そして。

 

《5 10 20 40 ?》

 

「80!」

 

ピコン♪

 

《CORRECT》

 

再び装甲が開く。

 

「攻撃!」

 

攻略組が殺到した。

 

――しかし。

 

三度目。

 

《1 1 2 3 5 8 ?》

 

「13!」

 

《CORRECT》

 

四度目。

 

図形問題。

 

「右!」

 

《CORRECT》

 

五度目。

 

迷路。

 

「そこ左、上、右!」

 

《CORRECT》

 

エギルの額から汗が流れる。

 

「……なあ」

 

「なに?」

 

「これ、ボス戦だよな?」

 

「たぶん」

 

「一人だけクイズ番組やってねえか?」

 

リズが頭を抱えた。

 

「もう嫌、この層!!」

 

だが――。

 

異変が起こった。

 

問題に正解するたび、床を走る光が少しずつ中央へ集まっていたのである。

 

キリトが気付く。

 

「こっこさん!」

 

「うん」

 

部屋中央。

 

そこには小さな台座があった。

 

そして――。

 

台座の中央には。

 

立方体の窪み。

 

こっこは固まった。

 

「…………」

 

シリカも気付いた。

 

「あれ……?」

 

リズが振り返る。

 

「どうしたの?」

 

こっこはゆっくりとストレージを操作した。

 

取り出したもの。

 

黄金色に輝く、小さな立方体。

 

スタキオンの最終問題。

 

《解放=Release》

 

その答えを導き出した先で手に入れた――。

 

《黄金のキューブ》。

 

アスナが目を見開く。

 

「形が……同じ」

 

キリトも台座とキューブを見比べる。

 

「まさか……」

 

こっこは台座へ近づいた。

 

すると。

 

ピコン。

 

黄金のキューブが反応した。

 

淡い光が内部から溢れ出す。

 

同時に、ボスの動きが止まった。

 

《The Enigma Guardian》の頭部に表示されていた記号が消える。

 

そして。

 

部屋全体に巨大なシステムメッセージが浮かび上がった。

 

《KEY ITEM DETECTED》

 

《CUBE OF RELEASE》

 

《FINAL SEQUENCE AVAILABLE》

 

沈黙。

 

全員の視線が。

 

黄金のキューブを持つ、こっこへ集まった。

 

「…………」

 

こっこはキューブを見る。

 

台座を見る。

 

ボスを見る。

 

そして一言。

 

「……これ、返すやつだったの?」

 

リズの拳が震えた。

 

「だったの? じゃないわよ!!」

 

シリカが目を輝かせる。

 

「こっこさん! あの宝探し、ちゃんと攻略に必要なイベントだったんですよ!」

 

「おおっ✨️」

 

「なんで本人が一番驚いてんのよ!!」

 

だが。

 

キリトだけは台座を見つめていた。

 

「待って」

 

その表情が変わる。

 

「まだ入れるな」

 

「え?」

 

床を見る。

 

台座へ集まっている光。

 

四方向から伸びる光のライン。

 

そして壁面には――。

 

これまでスタキオンで解いてきたものと同じ、無数の記号。

 

数字。

 

図形。

 

文字列。

 

規則性。

 

暗号。

 

そのすべてが巨大な一つのパズルとして、ボス部屋そのものに組み込まれていた。

 

キリトが呟く。

 

「たぶん……キューブを入れたら始まる」

 

アスナも気付いた。

 

「最終問題……?」

 

こっこは黄金のキューブを握り直した。

 

そして。

 

ニヤリ。

 

「なるほど」

 

リズが嫌な予感に顔を引きつらせる。

 

「ちょっと待って。その顔やめて」

 

「スタキオン最後のパズルってことか✨️」

 

「嬉しそうにするなあああ!!」

 

その瞬間。

 

《The Enigma Guardian》が両腕を広げた。

 

ゴゴゴゴゴゴゴ――!!

 

ボス部屋全体が変形を始める。

 

床が回転する。

 

壁が移動する。

 

足場が分断される。

 

数字と記号が空中を埋め尽くす。

 

そして中央の台座だけが黄金色に輝いた。

 

《INSERT THE CUBE》

 

《AND RELEASE THE ANSWER》

 

こっこは黄金のキューブを握った。

 

スタキオンで追い続けた言葉。

 

彼らが最後に残した答え。

 

――《Release》。

 

解放。

 

「みんな」

 

こっこが前を見る。

 

「これ――」

 

黄金のキューブを掲げた。

 

「ただのボス戦じゃない」

 

そして。

 

楽しそうに笑った。

 

「でっかいパズルだ✨️」

 

エギルは斧を肩に担ぎ――深々とため息をついた。

 

「……今日はお前が主役らしいな」

 

リズが叫ぶ。

 

「調子に乗らせないで!!」

 

第六層ボス攻略。

 

その本当の戦いは――。

 

黄金のキューブが《鍵》であると判明した、その瞬間から始まった。

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