Free Companies Federation 作:ウラリンゴ
第1回調査委員会が開会されて3日後。
委員会に招集されたメンバーはありとあらゆる面から、金の流れと噂の出どころを調べていた。
しかし、証拠として提示された噂の中に裏帳簿と思われるものがあったが、果たしてどれが正しい数字だったのか詳細不明になっており、正規の帳簿すらその正当性を疑わざるを得なくなっていた。
「それで、委員会は手詰まり、と?」
第1席アーヴェン・クロイツァーは聞く体で答える。
第5席ベルテナン・ファルヴェールは手頃な相手として捕まえたアーヴェンに対して、怒り心頭な愚痴をこぼした。
「まったく一体いつから、書き換えが行われていたのか!数字もそうだがそもそもの現金から調べなければならなくなった!さらにこのふざけた状態が罷り通っていたのも意味不明だが、この噂を流した奴が一体どこからこの情報を手に入れたのか!調べれば調べるほど埃が出てくる!私はまるで埃の山を手掘りしている気分だ!」
ベルテナンの声は留まるところを知らない。
「お前、会計から離れて何年だっけ?」
「4年だ。正確に言うと4年と8ヵ月だが」
答えと訂正が一緒に来た事で頭を抱えたくなったアーヴェンは、若干の頭痛を我慢していることを自覚しながら続ける。
「戻るのが遅れたな。そんだけあれば腐敗も始まるか」
「私の予測では後2年は問題ないと考えていた」
「それが、破綻していたとはな」
言った瞬間にアーヴェンは後悔する。
「まったく度し難い!FCFの根幹ですらある会計部門を侮辱する行為だ!が、しかしだな」
突然静かになったベルテナンに、恐怖を感じたアーヴェンは何も言えない。
「何とも言えん、違和感と言うかやり方が綺麗すぎる。鮮やかと言っていい。私ですら美しいと感じた芸術だ。ここまで痕跡を残さないのははっきり言って、無かったも同じだ」
横領犯を褒めるベルテナンに、今度は寒気を感じたアーヴェンは何も言えない。
「現金にしても、帳簿にしても綺麗に揃っているんだ。それ故に手詰まりかつこれまで知られなかったんだが、証拠として提示された帳簿が横領を物語る。いや、そもそもその裏帳簿なる物が嘘で横領なんて無かったのかもしれないな。が、しかし大元の、まあここで言えばFCからの拠出なんだが、これに破綻があったんだ」
「分かりそうな物じゃないか?拠出金をネコババするなんて、源流も下流も同じギルであることに変わらないんだから」
ベルテナンは笑う。
「そこが違うんだが、およそ3年前から物による拠出が常態化していたんだ。これは私ですら知らなかったが、この『物』を時価で取引して、その際の申告を下げていたらしい。つまり、実際の価値と帳簿上の価値に差が生じることで差額を横領犯の懐に入れる事が出来る。これは調査の一環で判明した事だ」
「物での納品?しかしそれでは正確な拠出金額が分からなくならないか?」
「ごもっともな指摘だ。だからこそ横領犯にとって都合が良かったのだろう。そもそも現物拠出は制度化したものでは無い。しかしいつの間にかこれが普通の事になっていたんだ。そしてFCFの誰も不思議に思わない。なぜなら財務会計担当がそう言っているんだからな」
「と言う事は、横領をしていたのは主席執政官だけではない?」
アーヴェンの言葉に再度語意が強くなるベルテナン。
「まさにそこだ!つまるところ、奴の単独犯ではない可能性が出てきた!だから話がどんどんデカくなっていって収拾が着かなくなってきている!最初に言っただろう!埃の山を手掘りしているようだと!」
言葉の重みに気付いたのかアーヴェンはふと湧いた疑問を口にする。
「その現物拠出は誰から始まったんだ?」
ここでベルテナンは動きが止まる。
考えていなかった。当初、主席執政官が横領をした、と情報が流れてからカルヴァート1人に絞って調べてきた。
しかし、ギルの流れを追う内に単独犯では成しえない可能性が浮上してきた。
そこで気付くべきだったのだ。
「誰が……?それは、カルヴァートが……、いやしかし奴が主席執政官になったのは1年前だから、現物拠出が横領の温床ならそれ以前からこれを始めていた奴が居る事になる。もちろん、奴がFCマスターの頃からやっていた可能性もあるが、しかしその為には財務会計担当を取り込む必要があるし、自身がFCマスターなんだから回りくどいことはせずに適当にFCの金を入れればいい……。なんで気付かなかったんだ?これは、主犯がカルヴァートではない可能性が出てきた……」
ここに来てベルテナンと委員会の前提が崩れ始めていた。
「3年前に誰かが現物拠出を始めて、それに気づいたカルヴァートが主席執政官の選挙に立候補、無事当選を果たして……いやいや、なんで主席執政官になる必要が?しかしやり易くなったのは事実だ。その後誰かがこの事に気付いて評議会にリークした……、あぁ!なんでこいつは評議会にリークしたんだ!?」
ベルテナンの独り言は前からあったもので、自身も悪癖であると認識していた。
しかし一度始まると止まらないのでストッパーを必要としていた。
「待てベル。一度整理した方が良い。横領と噂のリークを混同しているぞ」
「あ、ああ。すまない、助かった。いやしかし問題の根本が見えてきたぞ。これは明日から委員会が今までにない速度で進む」
「と言うか、その話題の渦中であらせられる主席執政官様はどこで何をされておられるんだ?」
アーヴェンが尊敬語をたっぷり込めた皮肉を言う。
「詳しい事は知らんが、元老事務局曰く外遊中とかって話だ。今頃東方辺りに居るだろうよ」
「外遊?タイミングが良いな」
「まったくだ、帰ってきたらコインを数える全員で一発ずつ殴っても文句は言われん」
ベルテナンは深呼吸を一度すると話し始める。
「この現物拠出なんだが、恐らく最初にやり始めた奴が横領込みで考え出した巧妙な罠だ。オレの想像に過ぎないが、FCF加盟のFCが現金での拠出を渋るようなら現物でも良いみたいなことを言い出したのがきっかけだろう。それが慣行化して今に至るといったところか。オレや上のもとに届く時には既にギルに現金化された数字だけが行くわけだ。あぁ、あの時のオレはなんて馬鹿なんだ。ハ・チャカの事を言えないなこれは」
「今更だろ」
ベルテナンが自責し始めたので面倒くさくなったアーヴェンがボソッと答える。
う~ん頑張った
褒めてくれ(強欲