ψ(Pusai) / Evangelion:R:A 作:AllZ:M
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其の風の吹き溜まりに、人影がひとつ、静かに佇んでいた。
頭頂から足許までを過不足なく覆い隠す、深紅の
目深に落とされた頭巾の縁が影を落とし、其の内側に存在する面貌を完全に遮断している。
夜気が絶えず撫でていく筈の裾は、風が撫ぜようとも一片の揺らぎすら見せない。
身体と外界を隔たった重い布地だけが、其の者の輪郭だけを、頑なに繋ぎ止めている。
眼下には、一条の筋が横たわっていた。
遠州の浜から北東へ。
遠州灘の海岸線から山塊へ向けてその軌跡は、立ち並ぶ巨木の樹冠を左右へ破断して穿たれた大地の大傷。
其の稜線に沿って散在している、
先の作戦――
ずしり、ずしゃあと。
地表を揺らす重圧な駆動音。
頭部を完全に喪失し、胸腔の深部に収められた結晶を微かに明滅させた巨躯が、一歩、また一歩と斜面を遡行する。
大地を踏み締める度に、地鳴りが数瞬遅れて尾根へ届き、足許の砂利を小さく跳ねさせた。
――制御を
一歩、一歩と地道に三脚を踏み出す其れは、まるで初めて
深紅の被衣の縫合部が、徐々に緩んで隙間を作る。
波打つ布地の合間から、右腕が前方の空間へ差し出された。
生体の質感を完全に失った皮膚。
全体が石灰化を起こしたかのような灰白色の表皮が、細い骨格を覆う。
其の人差し指の腹部において、指紋は既に摩耗して消失していた。
皮膚の断層の縁には、乾固した赤黒い血片が固着しており、其の固まった血液が、辛うじて指紋の輪郭を準えていた。
指先の先端に位置する色の失われた爪膜は――既に、剥がれかけており。
…"ゆかないで"と。
呟いたのかどうかさえ不鮮明な、か細い声色が向けられた。
灰白色の指先が、眼下の巨躯が存在する空間へと向けられる。
直後、煩わしい遮蔽物を視界から排除するための。
それだけのための、単純な
――しっ、しっ、と。
血染めの指が、
視界に入った
腕は引き戻され、布は閉じる。
其れは、尾根から音もなく降りてゆくと、微かな新月の燐光が差す夜の稜線から、ふっ、と姿を消した。
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