田舎少年が行く学園青春狂騒曲 厄ネタを添えて 作:ビスマルク
「まったく。ほんとうにまったく!!もう少し他人から見られることを考えなさいよ。代表であるヨルがそんなのだと闇寮全体が変人だと思われるでしょ!!」
「それに関してはもうとっくの昔に思われてると思うんだが」
機嫌が著しく悪くなっているリリィと共に歩くのは本校敷地内の飲食店街だ。感情的というか激情家というべきか、一度感情が昂ったリリィを鎮めるのは結構大変だというのは魔導車での出会いからここまでの生活でよく分かっている。
そんな彼女をどう落ち着かせるか、一番楽なのはお菓子などの甘い物を食べさせることがあげられる。甘い物一つで落ち着くわけではなく、それをご馳走してくれたという事実自体が彼女を冷静にさせるのだろう。逆に言うとそれに気づかないと何時までもこういうお説教が続くということだ。俺は別に構わないどころか美少女に気にしてもらえているので役得だが周囲の視線が不味いことになりかねない。リリィは優しいのにそういう誤解をされるのは嫌だ。
「ま、今日は俺が奢るから何でも好きな物を好きなだけ食えばいいからさ。少しは落ち着いてくれよ」
「……そんなこと言われたら本当に好きなだけ食べるわよ、私」
「まぁ問題はないだろ。俺、学園通貨結構持ってるし」
「本当に?代表になって色々と仕事やらされてるって聞いたけど。モンスターの討伐とかやってる時間、他の生徒より少ないんじゃないの?」
「代表としての仕事すればその分通過貰えるんだよな。モンスターの討伐も問題なしだ」
勝手にされた代表としての仕事は多岐にわたる。書類整理もそうだしクラスメイトの馬鹿共が壊した物の修理の申請もそうだ。最近は修理に関しては書類書くのが面倒なので俺が陣頭指揮をとりながらあの馬鹿共に修理させてる。そっちの方が闇寮の資金を使わないで済むし安上がりで早いからだ。
そう言った仕事をすれば通貨も貰えるので割と余裕がある。というか俺の場合は代表の仕事してる時にオバケとかトットリにモンスターを倒してもらってるのでそっちの収入も当然ある。闇寮で一番の稼ぎ頭と言えば俺のことだろう。
「しかし、結構人が多いわね。制服も私達とちょっと違う人が多いけど」
そう言ってキョロキョロ周囲を見るリリィがちょっと面白い。だがまぁ言いたいことは分かる。この本校敷地は全ての寮の生徒が申請なしで訪れることが出来る唯一の場所だ。武具防具の店や今俺達が歩いている飲食店街など多種多様な店が出ている。寮の外に出て買い物を楽しむならばここが一番手軽で楽なのだろう。それにしては移動時間が死んでる気がするがもしかしたら闇寮の特色なのかもしれない。
そんな考察をしつつリリィの疑問に答える。俺はつい先日エンリ・ウリエラとアルザードさんという他寮の生徒を見ているから気付けたことだ。というかそういう細かいところをちゃんと説明しない教師陣に問題があると思えてならない。ジョージ先生は大変過ぎて言い忘れてる可能性高いが。
「制服に入ってる線の色で寮を区別してるらしいぞ。闇寮は黒、炎寮は赤って感じで」
「ふぅん、確かにそうみたいね。学年別になってるのかと思ったけどそれにしては色の種類が多いし。うん、他にも色々と知らない事知れそうだし来てよかったかも」
「そこで来てよかったって断言させられるようにエスコートさせてもらうぜ、お嬢様?」
「ええ。それじゃあ紳士的な先導をお願いしようかしら」
貴族のお嬢様であるリリィに対して冗談めかして言ったら笑ってそう言われた。しかも手を差し出してくるおまけ付きで。からかっているのは分かるがそれでもここで引いたら負けただと思いその手を取る。想像以上に柔らかくてすべすべしてて本当に同じ人間なのか疑わしくなる。
「そ、そんじゃあっちにクレープ屋とかあったし行こうぜ。買い食いとかしたことねぇから結構楽しみだったんだよな」
「そ、そうね。うん、それがいいわ。初めての事なんだから楽しむのが大事よね、うん」
しかしエスコートと言ったものの俺は狭い田舎村で育った世間知らずでこういった街と言ったところには疎い。というか建物が4階以上あることに割とビビってる。うちの村では最高でも3階だったのにそれより高い。ジョージ先生曰く雷寮は本校敷地より発展しているというがこれ以上となると最早想像もできないレベルだ。
一方のリリィもまた貴族として育てられた影響かこういう場所には不慣れだろう。つまり俺達は二人してこういう場所における買い食いというか楽しみ方を知らないということだ。全て手探り状態でどうすればいいものか。
「――――おや?おやおやおやおやおや??そこにいるのはもしかして、噂の闇寮の一年生さんでしょうか?」
そんな俺達の上からそんな声が聞こえてきた。声だけで分かるほどの知的好奇心の塊だろう声の主は俺達の上で空を飛んでこちらに何かを向けている。嫌な感じはしないので武器ではなさそうだが一応警戒してリリィを背にして庇う形にする。
「ふむ、噂と違い紳士的ですね。やはり実体というのは直に調べなければ分からないという事でしょうか」
「見え、見え、クソ見えねぇ……!!」
「違いました。この人私のスカートの中を覗こうとしているだけですね。噂と違わない変態さんですか」
「ふんっ!!さっき言ったこともう忘れたのかしら!!?」
「あだっ!?ごめん、ごめんなさい!!でもこういう時スカートの中を見ようとするのは男の本能なんだよ!!どうしようもないんだよ!!!」
鴉のような黒い羽を広げて空を飛ぶ少女はそのまま俺達の前に着地する。その制服に入っている線の色は緑。だとすれば彼女は闇寮でもなければ炎寮でもない、今まで接したことのない寮の生徒ということになる。
「申し遅れました。私の名はアロウ・クラウと言います。風寮一年生代表をさせてもらっていますが、それよりもカラス新聞の記者であることの方を覚えてほしいですね」
「えっと、これはこれはご丁寧に?俺はヨル・イザナミ。こっちはリリィ・ベルゼリュートだ。それで、俺達に何か用なのか?」
「いえ、用という程ではないのですがこの本校敷地で初めて闇寮の一年生に出会えたので興味本位で接触してみることにしました。何人か闇寮生徒は見たのですが皆さん上級生のようでして。他寮と違い闇寮は上級生徒の関わりも少ないとのことでろくな情報も入ってきませんし。この機会に色々と聞いてみたいと思いましてこうして話し掛けた所存です」
「随分と情報収集に熱心なのね……」
「ええ、ええ。私達風寮はどうにも知りたがりという共通点があるらしく、私もその例に漏れないという事ですね。知りたいという欲求から逃げることも出来ずにこうして反射的に様々な人に話しかけるのは悪癖だと思うのですがどうにも我慢できず」
「記者の性、って奴なのかね」
自分のことなのに他人事のようにやれやれとポーズをとっているアロウに少し呆れと羨望を向ける。そこまで夢中になれる何かを俺は持っていないから、それを見つけて邁進している姿は俺にとっては眩しすぎる。協力してやりたい、そう思うくらいには憧れてしまう。
「他寮に関しては潜入が楽だったので大分情報を集めることが出来たのですが闇寮だけやけに硬いというか、侵入したらしたらで今度はモンスターが襲い掛かってきて追い掛け回されるわ。ようやく闇寮の校舎を見つけたと思ったらなんか爆散したり生徒達がぶっ飛んだりしてたりでヤバいという事しか分からないし。是非是非闇寮の生徒さんに話しを聞きたいと思っていたんですよ」
「他寮に許可なく入るのは厳禁って聞いたんだが???」
「???正しい情報を知り発信する為に必要とあれば躊躇う理由はないと思いますが???」
訂正する。いくら夢中になれるからってそんな目に合ってまだ調べようとするのは狂気ともいえるだろう。というかこの学校の代表とは変人しかいないのだろうか?
この話のメインヒロインはリリィちゃんです。ハーレムはねぇんじゃねぇかなぁ……?
どうなんのか分かんねぇ……。