2ちゃんねるのハーメルン作者スレにて話題に出たので、冗談交じりに製作。

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小説に関するHow Toに関する小説

 エアコンの効いた部室で、購買部で買ったエクレアパンとブリックを摘む。そんな細やかな僕の幸せに、水を差す者が一人。————眼前で這い蹲るその男に、僕はソファに座ったまま声を掛けた。

 

「部員七号。君は何故に僕に土下座をしているのだ。謝られる心当たりが無いのに土下座などされると気分が悪いのだが」

「安西部長……! 小説が、書きたいです……!」

「誰が安西だ、誰が。僕はスポーツ大嫌いだぞ。————で、小説を書きたいなら書けば良いだろう。君は栄光ある我が『文芸及び美術及びアニメ研究及びテーブルゲーム及び漫画研究及び落語愛好及び妖怪研究及び空想科学検証及びTRPG及び囲碁将棋同好及び黒魔術研究及びUMA研究及び声優研究に関する部』、略して『文芸部』の一員なのだから」

「毎度ですけどそのクソ長い正式名称よく覚えてますよね、部長」

「部長だからな」

 

 弱小文化部がキメラ合体を果たした結果長くなった我が部の寿限無的正式名に関するツッコミは不要である。ともかく、僕からすれば文芸部に所属する彼がどうしてわざわざ小説を書く許可を求めるのか、とんと見当が付かぬのだ。

 

「あ、いや、部長。俺は許可を求めに来たわけじゃないんですよ」

「ほう?」

「ただ、二次創作小説をネットに投稿してる部長に、コツを教えてもらえないかな、と」

 

 部員七号のその言葉に、僕は思わずため息を吐く。————だが、部長であるからには部員の活動を助けてやる義務があった。

 

「良いだろう。ただ、文章作法などは教えてやる気は無いぞ。もう高校の現代文で散々やっただろう? 大学生である我々には出来て当然だ」

「え?」

「……愚かなる部員七号よ、世の中にはインターネットという素晴らしいものがあるのだ。無知蒙昧たる君には想像も付かないかもしれないが、文章作法程度であれば検索すれば出てくる。テキスト入力欄をクリックし、日本語変換にキー設定を切り替えて、BUNNSYOUSAHOUと入力するんだ。……ああ、すまない、クリックというのはだな————」

「いや、どんだけ馬鹿だと思ってるんですか!? 分かりましたよ、文章作法はググっときますから、それ以外を教えてください」

「分かればいいのだ。分かれば」

 

 

* * * * * *

 

 

 さて、時刻は少し進み、授業料として部員七号から餡パンを徴収した僕は、それを貪り喰いながら部員七号に問いを投げる。

 

「時に部員七号。君はどんな小説を書くつもりなのだ? 僕としてもそれが分からない事には説明のしようが無い」

「そうですね……個人的にはいきなりオリジナルは不安なんで、まずは二次創作を書こうと思うんですけど。やっぱ、書くからにはウケる小説(・・・・・)が書きたいっす」

「ふむ。ウケる小説か。————では、今回は小説を書く上での心構えについて教えよう。これを守っているかどうかで、ウケは変わってくる」

 

 そう言って、僕はソファから立ち上がって部活にあるホワイトボードにキュキュッと要点を纏める。

 

①自分が楽しんで書く事。

②読者に楽しんで貰う事。

③原作を大切にする事。

 

 今日のところはこの三つで十分だろう。三つ目は二次小説に限る話ではあるが。

 

「さて、まずは一番から説明しようか。————部員七号。小説を書くのに最も重要な才能が何か、分かるかね?」

「うーん。まぁホワイトボードに書いてるってことは楽しむ事(・・・・)なんでしょうけど。————文才とかじゃないんすか?」

「文才なんぞ、書いているうちに身に着く。僕の持論だが、文章を書く事が楽しいという人間は書き続けられる(・・・・・・・)という偉大な才能を持っている。————先程僕は嫌いだと言ったがな、文章を書く事はスポーツに近い」

「え? もろインドアとアウトドアで真逆なイメージなんですけど」

「比喩表現だ。双方ともにプロになるならば生来の素質が重要だが、アマチュアの世界においては『より長時間打ち込んだ者』に軍配があがる事が多い。だが、嫌々やる者は必ず無意識に手を抜く。好きであると言うのは、質の良いトレーニングを長時間行える(・・・・・・・・・・・・・・・・・)という点で非常に強いんだよ。故に、まずは書く事を楽しめ」

「なるほど。————ちなみに楽しめない場合は?」

「楽しめない趣味なんぞやめてしまえ。というのが持論だが、友人と見せ合ってみるなりというアプローチは効果的かもな。馬鹿なことを友人と行うのは楽しいものだ」

 

 そう言って、僕はポケットから飴を取り出すと口に含む。長口上は喉に悪いのだ。

 

「ところで部長。二番の読者に楽しんで貰うってのは、どうすりゃ良いんですか? 三番は原作があって初めて二次があるんで当たり前っすけど」

「そうだな…………部員七号、君は健全な男子大学生なのだろう?」

「は? まぁ、はい」

「AV(アダルトビデオ)は好きかね?」

 

 僕のその問いに、部員七号は盛大にむせ込んだ。————この反応は、割と見ているな。

 

「さて、では健全な部員七号に分かりやすく喩えてやろう。自分だけが楽しい小説を書くのが自慰、他人も楽しいのがオナニー系のAVだ。この違いが分かるか?」

「いやさっぱり。というか、その喩え恥ずかしいんでやめませんか?」

 

 赤面する部員七号。だが、僕は容赦無く喩え話を続行する。

 

「さて、童貞力を発揮している部員七号には難解だった様だから答えてやると、『程よい媚び』だ。小説を書く際は、読者に程よく媚びねばならない。AVというのは視聴者に程よく媚びているからエロい訳で、媚びすぎも良くないし、全く媚びずに女優だけ気持ち良くなってもダメだ。それと同じ事が小説にも言える」

「意味は分かるっす。けど、作者が媚びてもキモいだけじゃないですか?」

 

 おや。部員七号にしては良いところに気がついたな。

 

「その通りだ。作者は自身ではなく小説で媚びねばならない。言うなれば、AVの監督ポジションだな。小説という女優をどこまで魅力的にできるかを常に考えるのが作者の仕事だ。自分の小説を客観視し、読者として読んでみて面白いかを考えなくてはならない」

「なるほど」

 

 なにやらメモを取っている部員七号が書き終えるまでに、僕はペットボトルに入ったオレンジジュースで喉を潤した。物欲しそうな目で部員七号が見ているが、僕はこいつと間接キスをする気はない。

 

 一人で全部飲み干した僕は、ホワイトボードに今日の纏めを書いて話の仕上げをする。

 

「さて、今日のところはこんなところだな」

 

①楽しんで書く事で、文章を沢山書こう。継続は力。

②読者に程よく媚びよう。サービス精神無くしてエンタメはあり得ない。

③二次創作させて貰ってるんだから原作リスペクトは当たり前。

 

「また分からないところがあれば、いつでも訊きに来たまえ。僕は基本的に部室にいるのでね」

「了解っす。————ところで、部長」

 

 そう言って、部員七号は頭を掻きながら言いづらそうに言葉を紡ぐ。

 

「部長も女の子(・・・)なんすから、AVとか言わないほうが良いと思いますよ?」

 

 その言葉に、僕は「善処しておく」とだけ答えて、部室から去る部員七号にヒラヒラ手を振るのだった。




今のところ続かない予定。

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