とあるアースのピーター・パーカーがスーペリア・スパイダーマンを目指す物語。

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ブランド・ニュー・デイを観て連載を書きたくなったものの、序盤やヒロインをどうするか思いつかずとりあえず絶対書きたいところだけを書いて短編で投稿することにしました。
だいぶ久しぶりに書いたから文章変なところあるかもですが、楽しんでいただければ幸いです。


第1話

 OK! じゃあもう1回だけ説明するね。

 僕の名前はピーター・パーカー。

 数年前、遺伝子操作された蜘蛛に噛まれて以降、ニューヨーク市で自警団活動をしている、この世界でたったひとりのスパイダーマンだ。……他にも話すことはあるけど、今は重要じゃないから省いておこう。

 スパイダーマンとして活動し始めてから色々あった。

 力を手に入れてお金のためにレスラーをやって、調子に乗ってる時に父親代わりだったベンおじさんを失い、大いなる力と責任を学んだ。

 どうにか高校生活と両立しながらニューヨークで困ってる多くの人を助けた。

 多くのスリや銀行強盗、ギャングたちをやっつけ、更にはスーパーヴィランたちとも戦った。

 母親代わりのメイおばさんと幼馴染で大親友のMJにスパイダーマンとして活動していたことがバレた。

 ウェブ液の材料費のためにベンおじさんの大学時代の後輩であるデイリー・ビューグルのJJJにバイトとして雇ってもらい、スパイダーマンの写真を提供なんかもした。今の時代はリモートでもバイトできるんだから素晴らしいね。

 思い返せば大変なことばかりだけど、後悔はしてない。おばさんとMJに正体がバレた時は受け入れてもらえたし、活動している間に良い出会いもあった。大変なことは、いつかこんなこともあったなって笑い飛ばせればいいのさ。

 ……それでも、ベンおじさんのことは一生悔み続けると思うけどね。

 さて、自己紹介はここまでかな。

 僕は今マンハッタンにある裁判所に向かっている。とあるヴィラン……正確には元ヴィランかな? その人に下される判決を知るためだ。

 名前はオットー・ギュンター・オクタヴィアス。ヴィラン名、ドクター・オクトパス。僕の大学の先生だ。

 大学教授兼義肢開発者だった彼は、神経接続アームの実験の際に起こった事故でアーム側のAIに精神を支配されてしまい、ドクター・オクトパスという名のスーパーヴィランに変貌してしまったんだ。

 アームの開発を少し手伝った身としてもスパイダーマンとしてもオクタヴィアス先生を助けなきゃと思い、アームのAIを制御するチップを開発して、どうにかこうにか救った。

 でもオクタヴィアス先生を元に戻しても、ドクター・オクトパスとして建物や人的被害を与えたのは事実。だからこうして裁判が行われてるわけなんだ。

 幸い死者は出なかったから有罪でもそこまで重くならないと思うし、先生の裁判を担当する弁護士は優秀だけど、それでも先生が有罪になったらどうしようと考えてしまう。

 ……が、今はそんなこと言ってられない。何故なら現在進行系で裁判所に向かってる途中だからね。

 予定通りなら間に合ったはずなんだけど、途中で車上荒らしを見かけちゃったから放置できず解決しに行った。普通ならそこまで時間はかからないんだけど、今回の奴らは妙に粘り強くてしんどかったよ。

 まあ、そういうわけで裁判開始までに車上荒らし退治は間に合わず、急いで裁判所に向かってるわけだ。

 せめて判決が下される前には着きますように。そう願いながらウェブを飛ばしてマンハッタンのビル群をスイングした。

 しばらくスイングしてると目的が見えたからそろそろ着替えなきゃ。

 裁判所手前に着いて急いでスパイダーマンスーツから私服に着替え、裁判所の出入り口をくぐる。

 あらかじめ聞いていた法廷のある階へすぐさま昇り、早歩きで廊下を歩いてドアを静かに開けた。

 開かれたドアの向こうは裁判官が濃いめのレンズのサングラスをかけた弁護士が最後の弁護を行い、法廷にいる全員がそれを聞いているところだった。ドアを開けたせいで一瞬弁護士以外の法廷にいる人間全員が僕を見たけど、すぐさま弁護士に視線を戻す。

 ドアを閉めて燃えるような赤毛の美男子の隣に静かに座る。

 

「……遅かったなピーター。オクタヴィアス教授の裁判だってのにこんな時間かかるなんて」

「……僕も予想外だったよモーリス。車上荒らし退治がさ」

「……ま、そういうところがお前のいいところだけどな」

 

 小声で赤毛の美男子が話しかけてくる。

 彼がスパイダーマンの正体が僕と知っている数少ない人間のひとり、幼馴染のMJことモーリス・ジェフリー・ワトソンだ。

 事前に事件が起こったみたいだから遅れるかもって連絡したとはいえからかうような口調で話しかけてくるとは。まあ遅れたのは事実だけどさ。ぐぬぬ……

 

「……で、無罪に持ってけそう?」

「……たぶんな。やっぱりAIが暴走したっていう点がでかいみたいだ」

 

 弁護士も敏腕だからね。もし有罪判決だとしても刑は軽くなるはずだ。

 気づけばすぐに弁護士による最終弁論が終了した。どうやら僕が入ってきた時点で終わりの方だったらしい。

 そして判決が下される時がやってきた。

 ……アームに僕が開発したAI制御チップをつけたあと正気に戻ったオクタヴィアス先生は、AIの暴走が原因とはいえ自分のやってしまったことに対して向き合う覚悟をしていた。有罪でも無罪でも責任は取る、と。

 そんなオクタヴィアス先生が報われて欲しくて、目をつむり、手を握りながら祈った。

 目を開けると同時に裁判長の口が開く。判決の時だ。

 

「被告、オットー・オクタヴィアスは――」

 

 

 

 

 

「オクタヴィアス先生、無罪おめでとうございます!」

「ははは……ありがとうパーカー。ああ、本当によかった」

 

 裁判所から出た僕たちはオクタヴィアス先生のラボへ移動して無罪を祝って乾杯していた。僕は未成年だから水だし、オクタヴィアス先生も心情的に無罪になってすぐ飲酒というわけにはいかないのかノンアルコールだけど。

 無罪でよかったよ本当に。弁護を担当してくれた彼には改めてお礼を言わなきゃ。

 ちなみにMJは元々バイトの予定だったこともあってこの場にはいない。本来は裁判の時間にはバイトだったけど、無理言ってバイト先にシフトの時間をズラしてもらったらしい。

 

「……ここにロージーとワトソンもいてくれればもっとよかったんだがな」

「仕方ないですよ。MJはバイトで奥さんは入院中なんですから」

「わかってるさ。しかし……自分の意思じゃないとはいえ妻に重傷を負わせるなんて旦那失格だ」

「先生……」

 

 そう、先生は暴走の際に同席していた妻のロージー夫人に両足の骨折などの重傷を負わせていたんだ。

 先生が悪いわけじゃないけど、AIに精神を支配されたとはいえやってしまったのは先生本人だ。相当悔やんでいるんだろう。

 ただロージー夫人の容態は回復に向かっていて、昨日お見舞いに行った時には病院食じゃ物足りないと不満を漏らすくらいには元気になっていた。しばらく入院しなきゃいけないから裁判に顔を出せないのは残念がってたけどね。

 

「でも状態は良好ですし、夫人も先生の意思じゃないのはわかってます。……どうか自分を責めないで」

「……そうやって、色んな人を助けてきたんだな、君は」

 

 先生はそう言って僕に微笑む。

 たぶん、スパイダーマン活動のことを言ってるんだろうな。先生を助けた時にマスクを外して正体をバラしたからね。

 

「もう何年も続けてるんだろうが、大変じゃないのか?」

「そんなこと……」

「パーカー、本音で話してくれ。カウンセラーの真似事というわけじゃないが、スパイダーマンに救われ、正体を知った者として、私も君を支えたい。君の叔母にワトソンもいるから必要ないかもしれんがね」

「オクタヴィアス先生……」

 

 ここまで言ってくれてるんだ、僕も腹を割って話さなきゃ。

 

「……正直なところ、大変じゃないと言えば嘘になります。スパイダーマンとして人を助けてたらピーター・パーカーとしての時間を犠牲にしなきゃいけませんからね」

「君は遅刻が多いからな」

「やめてくださいよ……でも、困ってる人を見捨てられないし、ニューヨークで暴れてるスーパーパワーを持ってる悪い奴がいたら止めなきゃって思うんです。僕はこの力を授かってしまったから」

「大いなる力には大いなる責任が伴う、か。君の亡くなった叔父が言っていたんだったな。……重い言葉だ」

「はい……」

 

 それから、ぽつりぽつりとオクタヴィアス先生にこれまでのことを語った。

 蜘蛛に噛まれて力を得て、大いなる力と大いなる責任を学ぶ代償にベンおじさんを失い、スパイダーマンになったこと……自分のすべてを話した。

 改めて思うと、スパイダーマン優先しすぎてるなぁ、僕。高校で留年しなかったの奇跡なんじゃ?

 

「話してくれてありがとう、パーカー。頑張ってきたんだな」

「いえ、まだまだです。もっとやれたことがあるから……」

「その優しさや誰かを救おうとする気持ちは美徳だが、傲慢でもある。幸い、私が暴走した時は死者は出なかったが、いつも全員救えるわけじゃない」

「それは……」

「それに、ピーター・パーカーの人生と引き換えに誰かを救おうとするのもよろしくない。⸺ピーター・パーカーの人生とも両立しなければ」

 

 先生が僕の肩を叩いて立ち上がり、窓の外に映る青空を眺める。

 その後ろ姿は4本のアームがついたスーパーヴィランじゃない。頼れる僕の先生の後ろ姿だと、改めて感じた。

 

「なぁパーカー。スパイダーマンである時に誰かを取りこぼしそうになっても助けてもらえばいい。君にはワトソンも叔母もいるし、同じ自警団の面々も……そして、私もいるだろう。もう少し、頼ることを覚えなさい」

「先生……ありがとう。すぐには無理かもしれないけど、努力します」

「いいんだ、私は君に救われた。恩を返させてくれ」

 

 そして先生は部屋の上を見上げる。そこには僕との戦いで多少ボロボロになったアームが機械に吊るされている。

 事故とはいえあれはAIが先生を支配して夫人に重傷を負わせた上にドクター・オクトパスというヴィランに変貌させた絶望の象徴でもあるけど、機械の腕を増やして神経接続義肢をより早く作り、腕や脚がない誰かを喜ばせるための希望の象徴でもある。

 それを見て、今先生はどういう気持ちでいるんだろう。

 

「だからピーター・パーカーの人生も諦めるな。今よりも良いスパイダーマンになりたいなら、まずピーター・パーカーというひとりの人間としても幸せになれ。そうすれば、君はきっと今よりも優秀な(スーペリア)スパイダーマンになれる」

 

 すごく胸に響いた言葉だった。

 無意識でどこか、力と責任のためにはひとりでなんでもやって、自分をどこまでも犠牲にしていいんだと思ってたのかもしれない。でも、よく考えたらそうしたらいずれお金に困ってウェブ液を作れなくなってスパイダーマン活動の死活問題になるかもしれないし、おばさんやMJが悲しむかもしれない。

 少なくとも、僕がちゃんとピーター・パーカーとして人並みの生活ができてなきゃ、きっとダメなんだ。

 そうだ、おばさんにもMJにもいっぱい心配かけてきたじゃないか。ひとりですべてやって怪我してちゃ心が休まらないだろうし、それはきっとベンおじさんも生きてたらそうなってるかもしれない。……ああ、反省しないと。

 僕は僕としても幸せにならなきゃ。不幸なことはいっぱいあったけど、それでも。

 思い耽っていると、先生が僕に近づいて手を差し伸べてきた。

 

「だから、私に君を助けさせてくれ。私の恩人が自分の幸せを掴められないのは見過ごせない」

 

 これは、きっと暴走してしまった先生なりの贖罪でもあるんだと思う。誰かを幸せにしようとしたのに、アクシデントで誰かを不幸にしてしまったから。

 いつか先生はこう言ってた。「知性は特権でなく授かりものだ。人類のために使わねば」と。次に先生が己の知恵を使うのはここということなんだろうね。

 大いなる力には大いなる責任が伴うに似たものを感じるよ。

 だからこそ僕は差し出された手を握る。

 

「わかりました。先生、これからよろしくお願いします!」

「ありがとう。ただ、条件がある」

「えっ、何ですか?」

「これから私のことはオットーと呼んでくれ、ピーター。流石にプライベートな場に限るがね」

「……はい、改めてよろしくお願いします、オットー」

 

 

 

 

 

 あの日から早くも数ヶ月が経った。

 無罪になったこともありオクタヴィアス先生……オットーは大学教授と義肢の開発に復帰して、退院したロージー夫人は入院前と変わらずオットーを支え続けている。

 当初は散々オットーを叩いていたデイリー・ビューグル……もといJJJは事の詳細が判明するとしっかり記事を訂正していた。まあ、関わってた僕に関しては相変わらず叩いてた。何なら僕がドクター・オクトパスに仕立て上げたんじゃないかなんて言う始末。全く、ベンおじさんの忘れ形見ピーター・パーカーには厳しくも優しくしてくれるのになぁ。

 いつものことながら悲しい出来事を思い出しつつ、スマホでデイリー・ビューグルウェブの最新記事をチェックしながらスイング。

 普段はこの時間は街をスイングしてパトロールしてるところだけど、残念ながら今日はやることがあるから後回し。もし何が起こっても、無理に僕が行く必要はない。ニューヨークには警察やディフェンダーズの皆、最近はソーズマンやホワイトタイガー、クローク&ダガーのような自警団もいる。もしかしたら、場合によっては手の空いてるアベンジャーズやファンタスティック・フォーの誰かが出てくるかもしれないし。

 ひとりだけでやらない努力をしなきゃね。……パニッシャーことフランクは容赦なく実弾ぶっぱするから僕の方針的に歓迎しづらいけど。

 というか、こんなにヒーローや自警団がいたら逆に僕必要ないんじゃ?

 考えるのはよそう。閑話休題。

 さて、今日の目的は新スーツと2個ある新ガジェットを試すこと。

 スーツはデザインと素材を変えたから実際に着て動き、感触を確かめる。あんまり必要ない気はするけど、一応ね。

 ちなみに新スーツは赤と黒の2色で、目は若干悪役っぽくなってるのが特徴。親愛なる隣人にしては強面っぽいし目は変えるかも。

 新ガジェットの方は試作品だからこちらの試運転が大本命。しっかり使って不具合や改善点を洗い出して完成に近づけなきゃ。2個あるからそんなに時間はかからないはずだし、さっさとやっちゃおう。

 というわけで、クイーンズはロングアイランドシティにある高層アパートの屋上に到着。ここなら試作品のガジェットを使っても人に迷惑がかからなくて最高だ。

 

「こちらスパイダーマン。所定の位置に到着」

『了解した。……ワトソン、データ取りの準備は問題ないな?』

『もちろんですよ教授。ピーター、お前の好きなタイミングで始めてくれ』

 

 今回の試運転はMJの他にもオクタヴィアス先生……オットーが手伝ってくれることになった。試作品の片方はオットーが積極的に関わってくれたのもあってありがたいよ。僕じゃプログラム周りは覚えてる最中だし。

 MJも最初に使う試作品の設計とデザインを手伝ってくれたし、もうひとつの試作品の冷却も担当してくれた。……僕、本当にいい仲間に恵まれたな。

 

「それじゃあ始めます!」

 

 僕が声を上げるとマスクに内蔵されてるHUDにポップアップが。MJから『OK』とチャットで返事が来た通知だ。

 というわけでまずスマホを取り出し、右腕につけているガントレットのスロットに挿入する。ウェブ・シューターはつけてないのかって? これがウェブ・シューターさ。本当だよ。

 これは僕とMJで一緒にデザインした新型ウェブ・シューターことウェブ・ガントレット。これまで通りのウェブ・シューターと同じ機能に加えて左腕用にはウェブ液の予備カートリッジ内蔵、右腕用には内部にスマホを挿入、ガントレットと接続してウェブやテーザーの出力調整などを行えるようにした。ガントレットに内蔵したモニターを直接タップするだけじゃなく、試作ホロスクリーンを展開できるようにもしたから予想以上のハイテクになってる。

 あとは今までウェブ液の残量は10%になったら音声で通知させてたけど、ガントレットで常に残量を確認できるようにもした。何で今までやってなかったんだろうって思うくらい便利で後悔してるくらいさ。

 試作品だからひとまずこれだけだけど、いずれアイアンマンが敵に拘束具を射出してたのを再現できたり……なんてのも考えてる。

 さて接続は……うん、今のところ良好かな? 表示に不具合もなさそう。ウェブ残量は両方共に95%だ。満タンのを装填してきたんだから当然だね。

 試作ホロスクリーンも展開。

 うわ、動作がめちゃくちゃもっさりしてる……

 

『タッチパネルのレスポンスは少々遅いな。同期が完全じゃないのかもしれん』

『試作ホロスクリーンもラグすごいですよ教授』

「MJ、それは僕のスマホのメモリと性能が低いだけだと思う……」

『すまん』

『ではガントレット側にもメモリを内蔵、もしくはスマホに仮想メモリ機能をつけるかだな』

 

 試作ホロスクリーンを閉じてタッチパネルを操作、メモリの使用状態を確認したら案の定とんでもないことになってた。僕のスマホはそこそこ前の機種だから仮想メモリ機能なんてない。はぁ、スマホ買い換えるとなるとお金が……

 それはさておき、ウェブの出力調整なんかは上出来だったから一安心。テーザーの出力調整は流石にオットーのラボでチェックかな。

 じゃあもう片方の試作品も試してみますか。

 初めて起動するんだしせっかくだからタッチパネルで……と思った時、スパイダー・センスが何かを感じ取る。

 振り向いた方に視線を向けてみれば、すぐ近くにあるATMに誰かが近づいていた。フードを深く被った身長170センチほどの男だ。

 

『おいピーター、どうした?』

「ごめんMJ、いったん中止。ATMに怪しい人影。そういうわけなんで、オットーもすいません」

『タイミング悪いな。仕方ない、頑張れよタイガー』

『今度の試運転は私のラボで行うべきだな』

「確かに」

 

 ウェブを使って人影に近づく。

 奴は僕に気づかないままATMに入ると、何かを起動した。そしてそれは剣の形を取る。

 

『ナノテクのように見えたが違うな。ふたりとも、アレは何かわかるか?』

『プログラマブルマターってやつですね。去年の頭頃から裏社会で出回ってる代物で、ああいう剣とでっかいガントレットになるのだけですけど』

「あとわかってるのはティンカラーって名前の誰かが製造者ってくらいです」

『そうか……プログラマブルマター自体は気になるが、悪人の手に渡っているのは危険だな』

 

 どうしてこうもニューヨークは治安悪いんだろうね。

 他の自警団は基本マンハッタン拠点なのもあって来る気配なし。

 まあ、時間があってすぐ動ける時だから今誰かに頼る必要はないもんね。とにかく止めなきゃ。

 足音を出さず静かに近づくと男に動きがあった。形成した剣にあるボタンを押す。すると、刃から音が鳴り、動き始める。

 チェーンソーにもなるのか……

 

「へ、へへ……やってやるぜ」

 

 まるで怯えているような声音で自分に言い聞かせながら、男がチェーンソーの如く刃が回転する剣を振りかざす。

 

『ピーター!』

「わかってる。……ヘイ、チェーンソーガイ! それは悪魔じゃないよ!」

「なっ!?」

 

 チェーンソー型の剣を握る手へウェブを撃って引っ張る。無事ATMへの被害はゼロだ。ナイススパイダーマン。

 けど、運悪く腕を拘束するウェブにチェーンソーの刃が当たって早々に拘束が解けてしまった。もう少し多めにウェブを出しとくべきだったかな。

 

「ここは狭いんだから、人気のアニメごっこしたいなら、もっと広いところでしたらどう? たとえばライカーズ島とかさ」

「す……スパイダーマン……!」

「見たところ初犯っぽいけど大人しくするつもりはない?」

 

 無理かもしれないけど一応降伏勧告。けど、チェーンソー型の剣を持った目の前の彼はそれを構え直す。

 だよね! たまには大人しくやめるか捕まってよもう。

 

「お、おれだって目的があるんだ。……こいつでぶちのめしてやる……!」

『ピーター、チェーンソーで試作品を壊すなよ』

『それとできればその剣を回収してくれ。試作品のアップデートに使えそうだ』

「オーライ。……それじゃ、ぶっつけ本番といきますか」

 

 MJとオットーの無茶振りに内心苦笑しつつウェブ・ガントレットのタッチパネルを操作して、もう1個の試作品を起動する。

 すると、背中のバックパックから先端が蜘蛛の脚のようになっている無骨な4本のアームが展開された。

 オットーがつけていたアームを参考にしたスパイダー・アームだ。試作品だからひとまず爪状の先端になってるけど、いずれは人助けのために人の手の形状をした先端にも切り替えられるように改良したいね。

 流石にいきなりアームが展開したせいか、男の表情が強ばり、剣の柄を握る力が強くなるのが見える。

 

「な、なんだよそれ。聞いてないぞ」

「そりゃスーツも込みで本邦初公開だからね」

 

 それに、ティンカラーの新作を持った人間が現れたんだ。情報を聞き出すためにも今出せる本気は出さなきゃ。

 他のヒーローたちとも情報を共有したいし。

 

「それじゃ、僕が勝ったらそれの出処を教えてもらうからね、チェーンソーガイ」

「──お、おおおおおおっ!」

 

 更に表情を強張らせた男がチェーンソーの刃を起動して剣を振るう。

 僕は姿勢を低くしつつ、アームを攻撃態勢に移行させる。

 同時にHUDに通知が入る。メイおばさんから「今晩は絶対夕飯一緒に食べましょうね!」と連絡が来た。

 すぐ返信はできないけど、OKメイおばさん。絶対夕方までには帰るよ。僕は少し前からデキる男に進化中だからね。

 そして、手を握りジャンプして男の顎にアッパーを食らわせる。

 さ、今日もよくある日常のスタートだ。

 

 これは、僕がピーター・パーカーとしても幸せを掴むべく、今よりも優秀な(スーペリア)スパイダーマンを目指す物語。




読んでくださりありがとうございました。
多少設定変更はあるかもだけど、ヒロインをどうするか決めたりしたら連載で書きたい、かも。他に書きたいところはあるし。

以下箇条書きで名前だけ出たキャラも込みの登場人物設定

ピーター・パーカー/スパイダーマン
・我らが親愛なる隣人。本作では蜘蛛に噛まれるまでアトピーで、それが原因でいじめられてた過去を持つ
・配信で稼ごうと考えてた時期があるが、回線などから特定されたらまずいのでやめた
・MJが男になったのでヒロイン未定。グウェンかもしれないしフェリシアかもしれないしシンディかもしれないしジーンかもしれない
・採用するか未定の設定として、前世はアメコミヒーロー中心のコスプレ活動をしてた日本人男性で、3Dプリンタ使用経験があるのでおじさんのを使ってスーツやガジェット製作してる。あと金がなくてもスーツは複数用意して毎日違うのを着るし洗濯する

MJことモーリス・ジェフリー・ワトソン
・そういえば自分の知る限り公式でも男のMJいないんだなぁと思ってTSさせた。本作におけるMCUのネッドポジ
・両親との関係は原作と違い良好だが、揃って仕事で忙しいので一時期はパーカー家によくいた
・オシャレでイケメンな美容男子。今では改善してるが、人より肌が荒れやすい体質で、蜘蛛に噛まれる前のピーターもアトピーによる肌荒れが目立っただったので自分とピーターのために色々調べてるうちに美容男子となる
・身長はピーターより高く大体180半ばなイメージ。彼女持ち
・余談→最初はファーストネームがマシューだった。後でマット・マードックと被ることに気づいてボツった

ベンおじさん
・このアースでも殺される運命の人。年齢は50前半のイメージ。亡くなるまでは大型の本屋で勤務していた
・趣味はDIYや工作。ガレージに3Dプリンタがあり、おじさんの死後ピーターはそれを使ってウェブ・シューターを作成した

メイおばさん
・40後半〜50前半のイメージ
・衛生用品を開発する会社で働いてる。その流れでFEASTと関わる予定

オットー・オクタヴィアス/ドクター・オクトパス
・パーソナルは実写版、義肢開発者としてはMarvel's Spider-Manシリーズをベースにしてる
・普段はESUの教授。ピーターとは気が合い、先生と呼ばれてる
・義肢開発するきっかけは生まれつき片足がない親戚の子供のため
・ドクター・オクトパスとしては実験中にアームと接続してた補助電撃のケーブルから過剰に電力供給されAIが異常を起こした流れ。オットーをヴィランにして兵器開発させようとした黒幕がいるかもしれない
 実験中にオットーが「世界のための実験」と考えてたことから世界のために何をする?→世界のために争いをしまくってる人類を滅ぼすとなり、デビルズブレス的なのを作ろうとした
・以降はピーターを陰ながら支える予定

ロージー・オクタヴィアス
・オットーの奥さん。本作では重傷を負うも生存

サングラスの弁護士
・皆大好きデアデビルことマット・マードック
・スパイダーマンと共闘する回数がそこそこあり、ピーターの頼みでオットーの弁護士をやってくれる程度には仲良くなってる

JJJ
・デイリー・ビューグルの編集長。このアースではベンおじさんの大学の後輩。コミックでもやってる正体バレ→JJJと和解をいずれやりたいがため現アルティメットユニバースの設定を参考にした
・ベンおじさんの息子同然のピーターには優しい。金に困ってたらデイリー・ビューグルでバイトしろと言ってくれる。でもこのアースでも覆面の自警団は嫌い

ディフェンダーズの皆さん
・ディフェンダーズはMCU版と同じメンバー。同じニューヨークを守る自警団として、たまにスパイダーマンが外部協力者になることも

フランク・キャッスル/パニッシャー
・MCU設定と大体同じ。対物ライフルで腹撃たせるかはわからない

ソーズマン
・ニューヨークで活動する自警団。設定はMCUと似た感じに
・こっちでもお金持ちなので、ジャック・デュケインとして寄付などの善行も

ホワイトタイガー
・ニューヨークで活動する自警団
・中の人未定。ヘクターかもしれないしアンジェラかもしれない

クローク&ダガー
・ニューヨークで活動するコンビの自警団。クスリがきっかけで能力を得たので麻薬組織を優先してる
・誤解からスパイダーマンと少し戦った時期があるのを考えてはいる

ファンタスティック・フォー
・こちらでも有名なヒーローチーム。シンビオートスーツのことで関わる
・悪ガキジョニーとは仲がいいけどジョニーはスパイダーマンの正体は知らない。でも自分より年下のガキなのは気づいてる

アベンジャーズ
・メンバーは決めてないけど、MCU初期メンバー+ウォーマシン+ファルコン&ウィンター・ソルジャーはいるかも

トニー・スターク/アイアンマン
・ナノテクアーマーはない
・MCU同様セプテンバー奨学金制度をやってるのでピーターが申請してる
・ピーターとどう関わらせるか思いついてないけど、どんな小さい犯罪でも立ち向かう姿勢のスパイダーマンは気に入ってそう

ティンカラー
・裏社会でプログラマブルマター製の武器を売っている
・プログラマブルマター周りはMarvel's Spider-Man由来

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