未来の妖怪画家・梶原空と蛇王カイラ   作:久保サカナ

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カイラの回想というか、何故、彼が空をウォッチャーにしたのか。

あと銀河鉄道の夜はマジで名作なのでおすすめします。


有名妖怪ウォッチ小説が更新されると便乗して更新しております。


カイラとエンマの銀河鉄道の夜

 

 

 

「銀河ステーション。銀河ステーション」

 

 

不思議な声が聞こえました。

 

目の前がぱっと明るくなって、まるではつでん神達がエジソンの元でクリスマスの電飾を灯す仕事をし出した様な、或いはダイヤニャン筆頭に宝石ニャン達が大量に現れたかのように眼の前がさあっと明るくなって、カイラは、思わず何べんも眼を擦こすってしまいました。

 

気がついてみると、さっきから、ごとごとごとごと、カイラの乗っている小さな列車が走りつづけていたのでした。

 

ほんとうにカイラは、夜の妖魔特急の、小さな黄いろの電燈のならんだ車室に、窓から外を見ながら座っていたのです。

 

すぐ前の席に、真っ赤な法衣を着た、背の低い子供が、窓から頭を出して外を見ているのに気が付きました。

 

そしてそのこどもの肩のあたりが、どうも見たことのあるような気がして、そう思うと、もうどうしても誰だかわかりたくて、たまらなくなりました。

 

いきなりこっちも窓から顔を出そうとしたとき、俄かにその子供が頭を引っ込めて、こっちを見ました。

 

それはエンマだったのです。

 

 

「みんなはずいぶん走ったけれども遅れてしまったんだ。ぬらりもな、ずいぶん走ったけれども追いつかなかった。」

 

(そうだ、オレたちはいま、いっしょにさそって出掛けたのだ。)

 

「どこかで待っていようか」

 

「いや、いい。ぬらりには暇を言い渡した」

 

 

エンマは、なぜかそう云いながら、少し顔いろが青ざめて、どこか苦しいという風でした。

 

するとカイラも、なんだかどこかに、何か忘れたものがあるというような、おかしな気持ちがしてだまってしまいました。

 

 

「あーやっちまったな、水筒もおやつもカメラ………いや、スケッチブックでも良いな。忘れて来ちまったぜ」

 

 

そう言いながら黒曜石で出来た地図と窓の外の風景をかわるがわる眺めるエンマにカイラはつい、「その地図は何処で買ったんだ。」と尋ねるのでした。

 

 

「銀河ステーションで、もらったんだ。お前もらわなかったのか?。」

 

「ああ、オレは銀河ステーションを通ったろうか。いまオレたちの居るとこ、ここだろう。」

 

 

そんな取り止めの無い雑談をしていると、窓の外には銀の空のすすきが、もうまるでいちめん、風にさらさらさらさら、ゆられてうごいて、波を立てているのでした。

 

ごとごとごとごと、その小さなきれいな妖魔特急は、そらのすすきの風にひるがえる中を、天の川の水や、三角点の青じろい微光の中を、どこまでもどこまでもと、走って行くのでした。

 

 

「ああ、リンドウの花が咲いている。もう秋なんだな。なぁ、カイラ。オレが飛び下りて、あいつをとって、また飛び乗ってみせようか。」

 

「もう良い歳なのだから危険行為はやめろ、全く、ぬらりひょんが見張っていないとお前はすぐコレだ。」

 

 

思わず、とカイラが溜め息を吐くと、エンマは一転してまた思い詰めた顔で「じいちゃんは、オレをゆるして下さるだろうか。」と咳き込んで言いました。

 

 カイラは、(ああ、そうだ、先代エンマ大王は、あの遠い一つのちりのように見える橙だいだいいろの三角標のあたりにいらっしゃって、いまオレ達のことを考えているんだった。)と思いながら、ぼんやりしてだまっていました。

 

 

「オレはじいちゃんの愛した妖魔界が、ほんとうに幸せになるなら、どんなことでもする。けれども、いったいどんなことが、妖魔界のいちばんの幸せなんだろうな。」

 

 

エンマは、なんだか、泣きだしたいのを、一生けん命こらえているようでした。

 

 

「先代エンマ大王を筆頭に歴代の大王達はみんな名君だ!お前だってそのひとりだろう!!」

 

 

カイラはびっくりして叫びました、そうでないと自分という半妖にしてクーデターで王位を奪った簒奪者がいないと大王になれなかったイザナ族の立つ背がないからです。

 

 

「オレもわからない。けれども、誰だって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸せなんだ。だから、じいちゃんは、オレをゆるして下さると思う。」

 

 

エンマは、なにかほんとうに決心しているように見えました。

 

俄にわかに、車のなかが、ぱっと白く明るくなりました。

 

見ると、もうじつに、ダイヤニャンや草の露つゆやあらゆる立派さをあつめたような、きらびやかな銀河の河床の上を水は声もなくかたちもなく流れ、その流れのまん中に、ぼうっと青白く後光の射さした一つの島が見えるのでした。

 

その島の平らないただきに、立派な眼もさめるような、白い十字架がたって、それはもう凍った北極の雲で鋳いたといったらいいか、すきっとした金いろの円光をいただいて、しずかに永久に立っているのでした。

 

すると、急に車内に居た乗客達が一斉に祈り始めました、妖怪は祈る神を持ちません、半妖もです、なぜなら既に死後の存在だからです。

 

ただ、一心不乱なその様子にエンマもカイラも見よう見まねで手を合わせるのでした。

 

そうしていると妖魔特急は「白鳥駅」と書かれた看板を掲げた駅で停車して祈っていたものたちは次々と降りて行きました。

 

ちょうど秋の時計は11時を指し示しており、下には20分停車と書いてありました。

 

「降りてみようぜ」とエンマがいうのでふたりは誰もいないガランドウの駅で降りました………駅はちゃんとあるのでガランドウの仕業では無いようです。

 

ふたりは20分の間、先程みえた綺麗な川を眺めたり、何やらバスターズトレジャーを行っているブリー隊長と一行に会いました。

 

そして、ふたりがあわてて妖魔特急に戻ると妖魔特急は再び銀河の星海を走り出したのです。

 

すると、「とれたての鳥はいらんかね」とひとりのボサボサ頭のおじいさんがやってきたのでした。

 

おじいさんはふたりの側まで来ると「やぁ、坊やたち。ちょうど鳥が獲れたんだ、トホホギスにヨコドリ、なんとぶんぶん鳥や死神鳥もあるぞ」と背負った袋の中から押し葉のようにぺちゃんこになっている鳥妖怪を差し出して来たのです。

 

エンマが喜んでヨコドリを口にするのを見て普段ならぎょっとして止めるところをカイラも口にしたのです、すると口の中にカイラの大嫌いな駄菓子の甘さが広がったのでした。

 

 

(なんだ、やはりこいつは菓子だ。チョコレートよりも、もっとマシだけれども、こんなトホホギスが飛んでいるものか。この男は、どこかそこらの野原の菓子屋だ。けれどもオレは、このものをばかにしながら、このものの菓子をたべているのは、大へん気の毒だ)

 

 

そう思いながら一口でやめたカイラ、エンマは駄菓子が大好物なのでよろこんで次の鳥をもらって口にしています。

 

鳥を獲るひとは鳥妖怪を獲るところも見せてくれました、トホホギスやブカッコウ、ヨコドリやハラオドリといった鳥妖怪達が次々にお菓子になって行く姿や走っている最中の妖魔特急に当たり前のように乗り降り出来る鳥を獲る人を見てふたりはおおいに驚いたのでした。

 

 

「切符を拝見いたします。」

 

 

いつのまにやらさんにんの側には妖怪らしき車掌がやって来ていて切符の提示を求めて来ました。

 

カイラがそのようなものはあったか…?と曖昧な記憶を振り返っていると、鳥を獲る人は白い紙切れを出していました。

 

エンマもふところから闇色の様に黒い切符を差し出しています、カイラもふところを探してみると出て来たのは宝石ニャン達のように煌めく虹色の切符でした。

 

 

「失礼いたしました、虹色の切符を持っていらしたとは」

 

「そんなに凄い切符なのか?」

 

「ええ、これはもう、ほんとうの天上…アミダ極楽へさえ行ける切符です。天上どこじゃない、望めば何処にでも行ける切符です。これをお持ちになるとは、なるほど、こんな不完全な幻想第四次の銀河鉄道なんか、どこまででも行けますよ。」

 

「やったじゃねぇか!カイラ!!。」

 

「ただ、そちらの黒の切符ではサザンクロス駅までですね。もうしばらくかかるのでゆっくりお待ちください。」

 

「そんな…」

 

「ハイハーイ!車掌さん、私の切符とエン…じゃなくてそっちの男の子の切符をトレードお願いしまっす!!。」

 

 

話に割り込んで来たのは眼鏡をかけた桃色のカーディガンを着た少女でした、彼女の手には確かにカイラのものと同じ虹色の切符がありました。

 

 

「私もUSAピョンと切符の色が違うって困ってたところなんで!交換したらちょうど良くなりますよね !?。

 

「ミーの切符も黒色ダニ」

 

「………交換ならば規則には触れません、サザンクロス駅までごゆっくりおくつろぎください。」

 

 

そこで去って行く車掌と一緒に鳥を獲る人も下車したようです、空いた席には女の子とUSAピョンと呼ばれた妖怪がすわりました。

 

 

「いやぁ〜おふたりとこんなところで会えるなんて我ながらラッキーですなぁ〜!まさしく友達が増えてくパーティ特急ですよぉ〜!!。」

 

「イナホもUSAピョンもこの列車に乗っているって事は行くところが出来たんだな…。」

 

「切符をトレードしてくれてありがとうダニ!これでミーとイナホはずっと一緒に居られるダニ!!。」

 

(どうしてオレはこんなにかなしいのだろう。オレはもっとこころもちをきれいに大きくもたなければいけない。あすこの岸のずうっと向うにまるでけむりのような小さな青い火が見える。あれはほんとうにしずかでつめたい。オレはあれをよく見てこころもちをしずめるんだ。)

 

 

カイラは熱って痛いあたまを両手で押おさえるようにしてそっちの方を見ました。

 

 

(ああほんとうにどこまでもどこまでもオレといっしょに行くひとはないだろうか。エンマだってあんな女の子とおもしろそうに談なしているしオレはほんとうにつらい)

 

 

カイラが窓の外を見ると、川の向こうが俄かに赤くなりました。

 

ルビーよりも赤くすきとおりリチウムよりもうつくしく酔ったようになってその火は燃えているのでした。

 

 

「アレは蠍の火!むかしのバルドラの野原に一ぴきの蝎がいて小さな虫やなんか殺してたべて生きていたそうです。するとある日いたちに見附みつかって食べられそうになったんですって。さそりは一生けん命遁げて遁げたけどとうとういたちに押さえられそうになったったんです、そのときいきなり前に井戸があってその中に落ちてしまった蠍、もうどうしてもあがられないでさそりは溺れはじめたんです。そのときさそりは斯う云ってお祈したといいます…。」

 

「ああ、わたしはいままでいくつのものの命をとったかわからない、そしてその私がこんどいたちにとられようとしたときはあんなに一生けん命にげた。それでもとうとうこんなになってしまった。ああなんにもあてにならない。どうしてわたしはわたしのからだをだまっていたちに呉れてやらなかったろう。そしたらいたちも一日生きのびたろうに。どうか神さま。私の心をごらん下さい。こんなにむなしく命をすてずどうかこの次にはまことのみんなの幸せのために私のからだをおつかい下さいって風にダニ!するとそしたらいつか蝎はじぶんのからだがまっ赤なうつくしい火になって燃えてよるのやみを照らしているのを見たんダニ。」

 

「そのとーり!!だから、この辺の三角標はちょうどさそりの形にならんでいるのです!!!。」

 

 

イナホはそこで言葉を区切ると「でも、私の望む本当の幸せとは違いますよ。だって蠍もイタチもみんなが幸せになっていません、やっぱり型月の世界観じゃあないけど自分の幸せを優先してから次にその幸せのお裾分けをするべきでしょう!!」と大きな声をあげました。

 

 

そして、妖魔特急はケンタウリ祭を通り越してサザンクロス駅がみえてきました。

 

 

「USAピョン、ここから天上に行けるはずだけど天上にこんどこそ私の居場所はあるのかな、まことの神さまは私の存在を許してくれるかな?。」

 

「イナホを否定するような悪い神さまなんてSランクになったミーがけちょんけちょんにしてやるダニ!妖怪ウォッチ3のリメイクはイナホ主人公で確定ダニ!!なんなら覇道にも出てやるダニ!!!。」

 

「「じゃあばいなら…(ダニ)」」

 

 

さわがしくふたりが降りていくとそれを皮切りに次々に乗客は降りて行き、ついにカイラとエンマのふたりだけになりました。

 

 

「エンマ、またオレたち二人きりになったな、どこまでもどこまでも一緒に行こう。オレはもうあのさそりのようにほんとうに妖魔界のみならず人間界みんなの幸せのためならばオレのからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。」

 

「ああ、オレだってそうだ」

 

「けれどもほんとうの幸せとは一体何だろう、それを探しに行こう」

 

カイラが胸いっぱい新らしい力が湧わくようにふうと息をしながら云いました。

 

窓の外を見れば、石炭袋のような銀河の真ん中にぽっかりと空いた赤くて真っ黒な孔、餓えた凶獣のように近くにあるものすべてを呑みこむソレが恐ろしく、カイラは目をそらしました。

 

 

「オレはもうあんな大きな暗闇(マゼラ)の中だってこわくない。きっと妖魔界も人間界もみんなのほんとうの幸せをさがしに行く。どこまでもどこまでもオレたち一緒に進んで行こう。」

 

「ああきっと行くよ。ああ、あそこの野原はなんてきれいなんだろうな。みんな妖怪も人間も半妖も同じ空を見上げている。あそこがほんとうの天上なんだ。あっあそこにいるのがオレの姉さんだよ。」

 

 

カイラはエンマのことばに釣られて窓の外を見たが、そこには何もありませんでした。

 

目の前に視線をやるとそこに座っていたエンマの姿はどこにもなく、黒いびろうどがそこにあるばかりでした。

 

 

カイラが目を覚ますと、そこは存在と無の狭間。

 

滅び行く妖魔界が微かに遺したテクスチャの一片、そこで彼はかつて人間界にいた頃に読んだ「銀河鉄道の夜」の夢を見ていたのだ。

 

 

「エンマ…いつもお前はそうだ、真の幸福の中に自分を入れない………お前が消えて悲しむ者の気持ちなど考えてはいない!イナホの言ってた通りだ、お前の犠牲の上に立つ世界など真の幸福であってたまるか!!」

 

 

カイラが夢の通り懐を探ると煌めく虹色の切符が出て来る、そういえば、あの車掌が言っていた。

 

 

ーーー望めば何処にでも行ける切符です。

 

 

すると、手にした切符から光のレールが伸びて、暗い暗い闇の中を走る一本の鉄道になった。

 

────恐らくそのレールの先は、エンマの持つあの切符へと続いているのだろう、カイラは現れた幸せの黄色い列車に躊躇い無く乗り込んだ。

 

 

「妖怪だけでは襲い来る脅威に対抗出来なかった………まずは再び妖怪と歩む人間、ウォッチャーを探さねば…!!」

 

 

あの約束を果たすために。

 

ずっとずっと、二人で共に行くために。

 

蛇王カイラの世界を超える覇道はこうして始まったのだ。

 

 





「この同性愛者め!」

「失礼だなぁ、友情だよ」

「それならこちらは百合だ!!」


カイラが空をウォッチャーにした理由は「妖怪だけでは外敵に勝てなかったから」です。

妖怪と人間の絆が無いとこの先は太刀打ち出来ないという考えに落ち着きました。


感想・評価・お気に入りお待ちしております!!貰えると続くかもしれません!!!

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