Blue Archive Fam-made Gamebook ゲーム開発部と未完成のゲーム 作:瑠璃色ゲンソウ
ユズの試作品には、白い四角が二つしかいなかった。
ユズ「こっちが運ぶ役。こっちは、スイッチを触る役」
モモイは早速、大きい四角で小さい四角を持ち上げた。
モモイ「飛べー!」
アリス「わあっ!? モモイ、高すぎます!」
小さい四角は画面の外へ消えた。
ユズが無言でリセットする。
ミドリ「お姉ちゃん。壁の向こうに出口があるんじゃない?」
壁の穴を通れるのは小さい四角だけだ。その先には、大きい四角には押せないボタンが見える。
ユズ「そっちから橋を出してもらう予定だったんだけど……まだ、動かなくて」
ユズは古いコードを開いた。橋の処理は途中まで書いてある。一方、壁の高さならすぐ変えられる。
モモイ「一回ちゃんと遊べるようにしてから、考えない?」
ミドリは画面の外を指した。
ミドリ「私は、置いていかれた方も向こうへ行けるところが見たいな」
戸棚から出てきたフォルダには、似たような名前がいくつも付いていた。試作、新しい試作、今度こそ試作。モモイが最後のものへ手を伸ばすと、ユズは慌てて別のフォルダを選んだ。
ユズ「そ、それは本当に動かない方……!」
モモイ「名前だけ見たら、一番動きそうなのに!」
ミドリ「お姉ちゃんの『完成版』も、だいたい完成してないよね」
ユズの肩が少し下がった。誰にも見せずにいた試作品だったが、二人はいつもの調子で画面をのぞいている。怖いものを見せるような空気にはならなかった。
アリスは大きい四角と小さい四角を、順番に動かした。絵がなくても、持ち上げた時の重さや跳ぶ高さは違う。
アリス「ユズ、この大きい方、ちょっと止まりにくいですね!」
ユズ「重いものを動かしてる感じにしたくて……。でも、行きすぎちゃう?」
アリス「はい! さっきも、止まろうと思ったのに落ちました!」
モモイ「私が投げた時とは別の話だからね!」
アリスは笑ってうなずいた。ユズは言い訳をせず、止まる速さの数字を書き留める。その横でミドリが、小さい四角に工具鞄を付ける落書きをした。
まだ主人公を決めるには早い。それでも、ただの四角にも誰かが動かしている時の癖が見える。モモイの四角は常に走り、アリスの四角は気になる隅で立ち止まった。
ユズ「ここを越えられたら、二人で帰れるはずなんだけど……」
橋の先にある出口だけは、最初から作ってあった。そこへたどり着いた時の画面を、ユズは誰かに見せたかったのだろう。ミドリは橋の線をたどり、未完成のところで指を止めた。
壁を低くすれば、少なくとも最後までは遊べる。二人分の動作を一度通して確かめるには、それも意味がある。橋を直せば、相手のために動くところまで試せる。
モモイはコントローラーを膝に置いた。次の一回でどう遊べるようになるのか、もう待ちきれない顔だった。
アリス「ユズ。どちらを作っても、アリスが試していいですか?」
ユズ「うん。……また落ちるかもしれないけど」
アリス「大丈夫です! 落ちた場所も、冒険の記録に残しておきます!」
ミドリが白紙を一枚、ユズの隣に置いた。失敗した場所も、面白かった場所も、一緒に書いていけるように。
▶ 壁を低くして、まず最後まで動く形にする [NODE 094]
▶ アリスが待つ間に、ユズが帰りの橋を実装する [NODE 049]