Blue Archive Fam-made Gamebook ゲーム開発部と未完成のゲーム 作:瑠璃色ゲンソウ
アリスが壁を押した。
ミドリ「……アリスちゃん、それは背景」
夕焼け色の光が差し込む時計塔は、ミドリが一番時間をかけた絵だった。
アリス「えっ、触れないんですか? ここ、動いていたので……宝箱が出るのかと!」
本物のスイッチは、壁と同じ真鍮色だった。
ミドリは画面を見直す。目立つ色を置けば解決する。でも、せっかくそろえた雰囲気が変わってしまう。
モモイはアリスの後ろから、正しい場所を指しかけた。ユズがそっとその手を下ろす。
もう少しだけ、何も教えずに見ていたい。
ミドリ「最初に説明を入れるか……絵の方を変えるか」
ミドリは二枚の試案を並べた。片方には操作説明、もう片方には取っ手と足跡が描いてある。
背景の絵だけを開くと、ミドリは少し誇らしい気持ちになった。歯車の大きさを変え、壁に傷を付け、奥の窓から夕日が入るようにしてある。
モモイ「このままポスターにできそう!」
ミドリ「……そう? まだ影、ちょっと直したいんだけど」
アリス「アリスはここが好きです! 奥に何かありそうです!」
アリスの指した場所は、何もない背景だった。褒められて嬉しかった分、ミドリは返事に困った。
ユズはゲーム画面へ切り替え、小さな発明家を置いた。背景だけの時には気にならなかった飾りが、動いているキャラクターと重なる。ミドリは思わず椅子を近づけた。
ミドリ「……このままだと、遊んでる時は見づらいんだ」
モモイ「最初に説明を出せば? これは飾り、こっちはボタン、って」
アリス「アリス、説明も読みますよ! 大事なことが書いてあるので!」
ミドリ「でも、そのたびに画面を止めるのもね……」
ミドリは二つの案を並べた。最初に操作を説明すれば、いまの背景を大きく変えずに済む。操作するところへ印を描けば、遊んでいる途中でも確かめられる。その代わり、印が増えすぎると綺麗に描いた時計塔が案内板だらけになる。
モモイ「私、ずっと説明読まされるのは嫌かも」
ユズ「短かったら……どうかな。最初の一回だけとか」
モモイ「それなら読む! たぶん!」
ミドリ「たぶんじゃ困るんだけど……」
アリスは笑ってから、また壁を調べた。今度は正しいスイッチのすぐ隣を触っている。惜しい。あと少しで届く。何が動くものなのかだけが、まだ伝わっていない。
ユズが口を開きかけ、閉じた。ミドリも同じだった。答えを言えば一秒で終わる。その一秒を渡さずにいるのが、こんなに難しい。
発表の日、四人はすべての人の横には立っていない。
アリス「……見つけました! ここですね!」
やっと押せたボタンを見て、ミドリはほっとした。それから、いま何秒かかったかを思い返す。この時間を宝探しと呼べる人が、何人いるだろう。
ミドリはペンを持ち直した。せっかく描いた絵を、遊ぶ人にもちゃんと見てもらいたい。まずどちらの方法を試すか、二枚の紙を四人の真ん中へ置いた。
▶ 冒頭に操作説明をまとめ、背景の統一感を守る [NODE 020]
▶ 取っ手と足跡を描き、遊びながら分かる画面にする [NODE 108]