「本当に
遠くへ行ってしまう前に包みの
「結構うまそうだし、匂いもいいな」
魔術の風を
薄く焼かれた
口に近づける程に
「……」
二つの緑が建物の隙間から
「食べるか?」
黒く伸びた髪に緑の瞳、見た目はカルドリクの描いた絵の通りだが、今の所は普通の人間にしか見えない。
「…………」
少女は無表情のまま無言で見つめてくる。
「毒なら入ってないぞ、ほら」
一口
「うまいなこれ」
香辛料を使ってるから辛い物だと思ってたが、むしろ甘味が強くとしょっぱさが加わった年齢関係なく楽しめそうな味だ。
「……くんくん」
キメラの少女はゆっくりと一歩を
少女はゆっくりと口を開け、はみ出した肉だけを
「どうだ
「うまい……、アパテ……」
意味を理解してるのかは分からないが、人の言葉を
「ほら、野菜も食いな」
「やさい……」
手を動かして野菜が正面になるように動かすが、
これは肉食だからなのか、単に野菜が嫌いなだけなのか。
「肉しか食べないと身体が
「くさい……」
やはり言葉を理解してるように感じる、だが野菜だけは意地でも食べようとしない。
「嫌いなもんでもそれで食えるってのは便利だな」
肉体同士を合成し
「まだあるぞ、好きなだけ食べな」
「……!」
合成少女は器用に肉だけを食べては、残った物を全部竜に
腕輪から比較的小さな
これでもぶかぶかなくらいだが今までよりはずっとマシだろう。キメラは確かに肉体は強いが
「……指令役立ててどうするかって話だよな」
「……?」
合成少女が首を
「なんだ、もう全部食べたのか」
「お腹、空いた……」
俺でも三つ食べたら腹いっぱいになるようなものを、五個消費してもまだ足りないと来たか。
「じゃあこれ食うか?甘いぞ」
「あまい?」
甘いを知らないらしい、まあ
「甘いと甘いと油が重なった感じだな、うん」
甘く味付けした生地を油で
「串の所は食べるなよ、口開けな」
「あー」
大きく口を開けられた口の前に差し出すと、生地の表面が浅く
「むぐ……!」
合成少女の表情が
「それが甘いって味だ、気に入ったか?」
「もっと……!」
「ここにあるから食べな」
残りの串が入った袋を差し出すと、それを受け取って
「いったいどこに入ってんだか」
一先ず
取り敢えずブライトには報告するとしてだ、このまま
食べ終わるまで観察していると、最後の
「腹いっぱいになったか」
「はら……、いっぱい」
「そりゃいいな」
全部食いつくすとは思わなかったが、よっぽど空腹だったのか、それともキメラ故の食欲なのか。
「自分の名前は分かるか?」
「『|司令塔型合成体試作第四号《しれいとうがたごうせいたいしさぐだいよんごう》アムリタ』、役割は合成体達の
ただでさえ平坦だった口調がより
間違いなく
「長いしリタだな」
「リタ……?」
リタが首を
「短い方が呼びやすいだろ?」
現状、リタの
「なあリタ」
「俺と一緒に来ないか?」
「いっしょ……」
リタの持ってる性質が分かった以上、少なくとも騎士団に引き渡す選択肢は無くなった。リタの身が
「いっしょ……、いっしょにいく」
「よし、俺はリュートだ、これからよろしくなリタ」
それに近くにいる事で、キメラに対する
「よろしく、リュート」
———
「まずは服と靴だな、その後は髪も切った方いい」
リタは俺の
「
街に来たことはあっても
「……」
「ブライトは来たばっかって言ってたし、
「?」
「どうした」
リタは
「腕をここに通して、反対側もな、んで前はこうやって閉めるんだ」
騎士団辞めてから子守りばっかしてる気がするな。
「うごきづらい……」
だがその前に。
リタの
「?」
「大丈夫だ」
指先から展開された魔法陣がリタの
「あったかい」
魔法陣が通りすぎると広がっていた黒髪が
魔物相手にも何度も使った事はあるが、キメラに対しても問題なく効くらしい。
「それじゃ行くぞ」
リタの背中と両膝の裏に腕を通し横に抱きかかえる。
「わ」
素足で歩かせるのは流石に見た目がアレだからな、これも目立ちはするだろうが
「良い感じの店は無いかなっと」
余りまくった
「あそこなら全部
「人数からしてリタの
取り
約一名が滅茶苦茶こっちを見ていたが、どうにか切り抜け目的の店に無事
「いらっしゃい……ませ」
困惑した様子の従業員に出迎えられた。
まあ男が少女を抱えて入ってきたらそういう反応にもなるか
「妹の服を買いに来たんだけど、なんかおすすめあるか?」
「あ、妹さんでしたか……!ご希望の物があれば
ごり押せば意外となんとかなるもんだ。
「取り敢えず上下の服三着づつと、下着と動きやすい靴を
「かしこまりました、少々お待ちください」
リタを椅子に座らせ、その隣に座り従業員を待つ。
男が俺一人しか居ないのもあって
「リュート、やっぱりリュートじゃない……!」
「ん?」
聞き覚えのある呼び声の方向を見ると、さっきすれ違った女騎士が立っていた。
「……」
明るい青髪に青い瞳、髪と同じ色のペンダントを身に着けている。
「ちょ、ちょっと!私のこと覚えて無いの……!?」
条件が大体一致した知り合いはいるが、それでいいんだろうか。
「もしかしてセシリアか?」
「そうよ……!はあ、同期を忘れるなんて……」
俺の記憶のセシリアは腰まで髪を伸ばしてたし、久々に会って首元まで短くなっている状態だと流石に気付けなかった。
「悪い悪い、髪短くしたんだな」
「まあ、ね……、やっぱり長いと動き辛いでしょ?」
その
「短いのも似合ってるな」
「は、はあ!?別にアンタに
この反応も懐かしい。訓練生時代は直ぐ顔が赤くなるのが面白くて、よく
「そりゃ残念、んでなんでここに来たんだ?」
「それはこっちの台詞よ。アンタここの配属じゃないわよね、もしかして移動になった?」
そういやセシリアの配属先はここだったったか、あんまりその辺りの話はしてなかったな。
「俺は今仕事探し中だよ」
「はあ?アンタなに言ってんの?」
真顔で返されてしまった。
まったく
「ていうかこの子どちら様なの?さっき抱えて歩いてたわよね」
「娘だよ」
「……え?」
セシリアが
「……ふ、ふーん!相手は誰なの?いや、全然
「まあ嘘だけどな」
「……この!」
相変わらず反応の面白い奴だな。
「本当は妹だよ」
「い、妹?でもアンタ家族は居ないって」
「
「それってどかに
「俺が迎え入れられる方なのかよ」
いや迎える家も無いんだけども。
「……それで相手は誰なのよ、私も知ってる人なの?」
「義理の妹ってのも嘘なんだけどな」
「……っ!」
「いって」
「真面目に言うと
リタの頭の上に手を乗せると、前髪の分け目の間からこっちを見上げてくる。
「
「あと最初に言った俺が仕事探し中ってのも本当だぞ」
「さっきも言ったけど嘘にしては面白くないわよ」
「本当だっての、ブライトに聞いてみな」
「あの……」
「ん?ああ悪いな」
従業員が申し訳なさそうに立っていた。
「いえ、衣服の準備が出来ましたので」
「試着って出来るか?」
「ええ、もちろん出来ますよ、こちらの方へどうぞ」
セシリアもいる事だし丁度いいな。
「リタ行くぞ、セシリアもちょっと来てくれ」
「わ、私も?」
「今回用意させていただいたのは動きやすさを重視した二組と、お洒落な場に適したドレスでございます」
ドレスの方はともかく他二組は街の外でも問題なく動けるだろう、後でリタ用の
「いいな、んでセシリアに頼みなんだが」
「何?お金は今あまり持ってないわよ?」
「
セシリアの耳元に顔を寄せる。
「ちょ、近い……!」
「リタに服の着方を教えてやって欲しいんだ」
リタがキメラとはいえ見た目は少女そのものだ、公の場で俺が服を着させる訳にはいかないだろう。
「……どういう事?服の着方が分からないの?」
「後で説明する、頼めるか?」
「分かったわ」
リタの背中を押してセシリアの
従業員が何やってんだこいつらって目をしていたが気にしないでおく。
「よろしくな」
「ええ」
リタと共に
『合成魔術』自体は特に珍しくはない、魔道具や薬品の作成にもよく使われている。それが対生物になると話は別だ、まず市販の
「ちょっと……!」
まあ怒るよなそりゃ、最初からあの状態だったし文句はカルドリクに言って欲しいが。
一度魔法陣を消して、
「この子下に何も着て無いんだけど……!」
「それも後で
セシリアの額を押して更衣室の中に押し戻す。
「あ、ちょっと!」
さて、そんな謎だらけの魔術をカルドリクはどこで知ったのか、
「わあ!とてもお似合いです……!」
従業員の声で魔法陣を消す、どうやら着替えが終わったらしい。
白を基調としたシャツに髪と同じ色をしたスカート、白い
「へえ、似合ってるな」
長い黒髪は高い位置で二つに
「次は髪をどうにかしなきゃな、幾らだ?」
「お会計ですね、他二組もご購入されますか?」
「ああ、残りは一組ずつで袋に詰めといてくれ」
「かしこまりました、そうしますと合わせて五十二万ガリアでございます」
どうやら高級店に入ってしまったらしい。
「五十二万ね、んじゃ丁度で」
腕輪から召喚した
「はい、五十二万ガリア確かにお預かりしました」
薬草の取引で手に入った金が全部吹っ飛んだが、
「こちらお品物でございます」
「ありがとう」
「ありがとうございました、またお越しくださいませ」
袋ごと
「
「せっかくのもんだしな」
本音を言えばここまでの物を買うつもりは無かったが、他に金を使う事も無いし別にいいだろう。
「髪切ってくれる店とか知ってるか?」
「ええ知ってるわ、案内するから付いて来て」
「流石、リタ行くぞ」
道行く人々を
「
「嫌いでは無いんじゃねえかな」
ライルもリタも素直だし少なくとも嫌う要素は無い。
「ふーん……」
「ついたわよ」
「
「なによそれ」
窓は様々な色の
扉を開けて中に入っていくセシリアに続き入店すると、
「いらっしゃいませ、あら、お友達?」
「
「リュートだ、よろしくな」
「マナレアよ」
マナレアと
「早速だけど、髪切って貰えるか」
「可愛らしいお客様ね、そこに座って待ってて、すぐに準備するから」
マナレアはリタの前で
「髪型に注文はあるかしら」
「
リタの好みは分からないが、その道の
「なるほどね、
髪を
「
マナレアは髪を指で
「まずは腰まで落としちゃって……、前は
マナリアはリタの後ろ髪に
「……」
不意に足元へ飛んできた髪を拾い上げ、
やはり構成する成分は人間となんら変わらない、つまりは肉体を合成した訳では無いのだろうか。
「……アンタ、なにしてんの?」
セシリアがドン引きした表情で見ていた。
確かに今の俺は少女の切り落とされた髪を観察している
「後で説明する」
「アンタさっきからそればっかりじゃないの!」
「表で話せるような事じゃ無いんだって」
髪を床に戻してリタの方に目をやると、マナレアが笑みを浮かべてこちらを見ていた。
「貴方達って仲良しなのね」
「はー!?だ、誰がこんなのと仲良しなのよ!」
こんなのって凄い言い方だな、
「
「同期?つまり貴方って騎士様なのね」
「元だけどな、最近は個人で
「あら、それって誰でも守ってもらえるのかしら」
「俺が嫌な奴じゃなかったらな、アンタなら今のところは
俺も
「じゃあ家まで
「何言ってるのマナレア!あんた十分強いんだから護衛なんていらないでしょ!」
相変わらず照れたり落ち込んだり怒ったり忙しい奴だ、そこが面白くはあるんだが。
「怒られちゃった」
マナレアが
どうやら彼女もセシリア
「さ、終わったわよ」
マナリアがリタの髪を
「どうかしら?」
リタの顔を隠す程の前髪は
「かわいい……!」
セシリアにも
「リタちゃんの大きな目を生かすならこの辺りだと思ったの、正解みたいね」
リタは新鮮そう前髪を
「似合ってるな、気に入ったか?」
「きにいった」
「そりゃ何より、いくらだ?」
「今回は無料でいいわよ、その代わりまた来てね」
「そうか、じゃあその時はよろしくな」
「ええ、リタちゃんもまたね」
マナレアが手を
「またね」