契約者ノ魔女裁判   作:眠り狐のK

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二ノB話 「見届けた」

 レイは見届けた。

 その瞬間を。

 人外とも呼べる速度と力で振られる鎌を。

 ソレが、人の命を奪い取る瞬間を。

 スローモーションのように動く世界で刻々一刻とその時間は迫ってくる。

 これは『人の死』を目の前に世界が遅く見えているだけに過ぎない。

 実際はほんの一瞬の出来事に過ぎない。

 だが、レイにとってはその一瞬が永遠とも呼べる時間に見える。

 だが、時間は残酷にも進み続ける。

 勢いよく振られた鎌はヒロの首を捉え、跳ね飛ばした。

 

「……え?」

 

 足元に落ちてきたヒロの首を見たエマは硬直する。

 残されたヒロの首のない胴体は火かき棒を持ったままふらふらと数歩歩き、そのまま倒れる。

 

「キャァァァ!!!」

 

 部屋中にハンナの悲鳴が響き渡る。

 それも仕方のないことだろう。

 何せ、目の前で今、人が死んだのだから。

 ハンナ以外にも、今にも悲鳴を上げてしまいそうな少女はいるだろう。

 衝撃で動けない少女がいるだろう。

 吐き気を催している少女がいるだろう。

 だが、レイにはもうみんながどんな反応をしているかなんてわからない。

 彼女にあるのは、目の前で少女を殺したなれはてに対する明確な殺意だけだった。

 看守がヒロの首を跳ね飛ばした瞬間、こいつは殺さないといけないと思った。

 その行動原理が何かなんてわからない。

 残されたみんなを守らなきゃって思ったのかもしれないし、ただただ自分と同じ年くらいの少女を手にかけた看守を許せないと思ったのかもしれない。

 だが、そんなことはどうでもいい。

 今考えるのは、目の前のこいつを殺すことだけだ。

 

「な、待つんだレイくん!!」

 

 レイアがレイに静止をかけるが、そんなもので止まる訳にはいかない。

 全力で駆け出し、転がり込むようにヒロの死体から火かき棒を手に取る。

 そして、全力で看守の顔に打ち付ける。

 何度も、何度も、何度も何度も何度も。

 刹那、看守の鎌が振り下ろされるがレイは難なくそれを躱す。

 何故だろう、レイにとって化け物退治なんて初めての筈なのに、この感覚は身体に染み付いているようにも感じられた。

 だが、そんな思考で手を緩める訳にはいかない。

 すぐさま思考を切り替え、火かき棒を振り下ろすことに集中する。

 火かき棒を振り下ろし傷つけ、鎌を振り下ろされては避ける。

 ただその繰り返し。

 レイには不思議な自信があった。

 耐久戦では負けない、そんな自信が。

 

 

 

 

 

 ひたすらに殴る、殴る、殴る、殴る

 

 

 

 

 ひたすらに避ける、避ける、避ける、避ける

 

 

 

 

 ひたすらに殴る、殴る、殴る、殴る

 

 

 

 

 ひたすらに避ける、避ける、避ける、避ける

 

 

 

 

 

 どれだけの時間が経っただろう。

 とてつもなく長い時間が経ったような気もするし、たった数分の出来事だったような気もする。

 周りの少女達は見ていることしかできない。

 レイ以外にこの化け物との殴り合いについていける人間なんてこの場に存在しない。

 この場の全員が分かっているのだ。

 先程のヒロの惨状を見て。

 今ここで行われている看守とレイの攻防を見て。

 自身が割り込みに行けば簡単に殺されるだけなのだと。

 まだまだこの戦いは続く。

 

「あっ……!」

「レイくん!!!!」

 

 看守の鎌を避けたレイは何かに躓いて転んでしまった。

 尻餅をついた体勢で足元を見れば、そこにはヒロの首のない身体があった。

 鎌を避けた拍子にヒロの死体に躓いてしまったようだ。

 看守が、鎌が、死が近づいてくる。

 看守が鎌を振り上げ、レイに向けて振り下ろされるその瞬間―――

 

「っ……!!!」

 

 何者かに抱きしめられ、弾かれるようにその人物と共に横へと転がる。

 その人物は身体を起こし、その金色の瞳をレイに向ける。

 

「もうやめるんだ!!! 分かっただろう!? こんなことを続けたって自分の命を危険に晒すだけだ!!!」

「だめ……あいつはここで殺しておかないと……!!」

「レイくん、冷静になるんだ。ゴクチョーが言っていただろう? 逆らえば殺す。逆に言えば下手に逆らわなければヒロくんのようにならないとも言える。ここで逆らったって良いことにはならない。だからここは矛を収めてみんなで団結し……てっ……!?」

 

 看守へ殺意を向け続けるレイに対して説得するレイアの言葉は最後まで紡がれることはなかった。

 背後に迫っていた看守により一瞬にして切り伏せられた。

 事切れたレイアの身体が乗った状態ではレイも満足に動くことなんて出来ない。

 レイアの血にまみれ、死体を抱えたまま身体を起こして看守へと目を向ける。

 そこには、ヒロがつけた傷も、レイがつけた傷もほぼ残っていない、黒衣だけがボロボロとなった看守が立っていた。

 

(あぁ、そっか……そうだった……)

 

 レイアの言う通りだった。

 この武器じゃあ駄目だった。

 これじゃあ、どれだけ殴ったとしても……。

 そんな思考の中、レイが最期に見たのは迫りくる銀色の鎌だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                   

BADEND




ロードする↓
https://syosetu.org/novel/425841/1.html



残念ながらバッドエンドでした
はい、選択肢でサポートしてたので分かってたと思います
このように原作同様に選択肢やバッドエンドもしっかりと作っていきます
原作と全く同じ選択肢、展開は選択肢として作るつもりはありませんので、エマ視点の話では正解ルートをしっかり引いてくれる炙りビンじゃないエマでいてくれます
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