暗律の戦乙女は盤上を覆すが故、己が未来を選ぶ   作:カミッシー

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第47話 収束する拳

 

 

 

 大塩湖攻略からしばらく経った、ハイベルグ王都。

 

 冒険者ギルドの扉が勢いよく開き、一人の少女が堂々と中へ踏み込んできた。銀灰色の長い髪をポニーテールにまとめ、身軽な格好のまま肩を回している。腰に剣はなく、両拳こそが武器だと言わんばかりの立ち姿だった。

 

「ねぇ!」

 

 よく響く声に、冒険者達が一斉に振り返る。

 

「この国に、めちゃくちゃ強い冒険者がいるんでしょ? 禁忌迷宮まで攻略したっていう――」

 

 少女は周囲を見渡し、一人を見つけて目を止めた。

 

「…………」

 

 暗紫色の長髪。

 

 紫の瞳。

 

 以前聞いていた人物像とは、性別からして違う。

 

「アンタ?」

 

「何?」

 

「ハイセ?」

 

「そうだけど」

 

「…………女じゃん」

 

「今はね」

 

「今はね、で済ませていい話!?」

 

 ハイセは少し考えた。

 

「最近みんな同じこと言う」

 

「そりゃ言うでしょ!」

 

 少女はしばらくハイセを眺めたあと、不意に歯を見せて笑った。

 

「ま、いっか。強いなら」

 

「雑だね」

 

「アタシはヒジリ。【金剛の拳】ヒジリ。西からアンタとサーシャに会いに来たの」

 

「走って?」

 

「走って」

 

「馬車は?」

 

「遅いじゃん」

 

「…………」

 

 ハイセは少しだけ思った。

 

 たぶん。

 

 この人。

 

 かなり使える。

 

 

 同じ頃。

 

 アスタリスク。

 

 アルルカント・アカデミーの研究室では、完成したばかりの強化型煌式武装のデータが巨大な画面へ並んでいた。

 

 プレセアが持ち帰った七十日分の長期運用記録によって、【雛形】による個人適応制御は実用域へ達している。使い手が未熟な段階では武器側が補助し、本人が成長すれば介入量を減らす。安全域も固定値ではなく、使用者の能力と状態に合わせて変化する。

 

 だが。

 

「最後に一個、足りない」

 

 ハイセが言った。

 

「何が?」

 

 エルネスタが画面から顔を上げる。

 

「強度」

 

「既存の構造強度?」

 

「それもだけど」

 

 ハイセは一本の仮想刀身を表示した。

 

「形を固定する強さそのもの」

 

 カミラが表情を変える。

 

「……【収束】か」

 

「うん」

 

 物質や煌式武装を構成するエネルギーを、設定した相対座標へ固定する。

 

 問題は、固定出来るかどうかではない。

 

 どこまで固定するか。

 

「ゼロと百だけじゃ意味ないと思う」

 

 ハイセが表示を動かす。

 

「ゼロなら自由に動く。百なら完全に固定する。でも三十、四十、七十って途中を自由に選べたら?」

 

 仮想刀身が変形する。

 

 低収束では柔軟に動く。

 

 収束率を上げるにつれて形状が固定され、最高値では巨大な負荷を受けてもほとんど歪まない。

 

「武器が」

 

 エルネスタの目が輝く。

 

「自分で硬さを変えられる」

 

「正確には使用者が選ぶ」

 

 カミラが補足した。

 

「しかも、固定する座標そのものを逐次更新出来れば……」

 

「動きながら、一瞬だけ硬く出来る」

 

 ハイセが答える。

 

 ヒルダが笑った。

 

「面白いね」

 

 その一言で。

 

 カミラの顔が嫌そうになった。

 

「お前が面白いと言うと不安になる」

 

「失礼では?」

 

「経験則だ」

 

 

 試験機は。

 

 籠手型になった。

 

 名称。

 

 【ジークフリート】。

 

 拳を覆う黒銀の装甲は、複数の細かな構造体へ分かれている。普段は低い収束率を保ち、使用者の手首や指の動きを妨げない。

 

 しかし。

 

 打撃が相手へ接触する瞬間。

 

CONVERGENCE:92%

 

 構造が固定される。

 

 一撃。

 

 試験用の標的が砕けた。

 

 直後。

 

92% → 14%

 

 再び柔軟になる。

 

「逐次展開式」

 

 ハイセが呟く。

 

 殴る瞬間だけ硬い。

 

 防御する瞬間だけ固める。

 

 必要がなければ緩め、動作を邪魔しない。

 

 エルネスタが笑う。

 

「これ、使える人いる?」

 

「いる」

 

 ハイセは即答した。

 

「誰?」

 

「ヒジリ」

 

「…………」

 

 カミラが。

 

 嫌な予感を覚えた。

 

 

「嫌だ」

 

 カミラは即答した。

 

「まだ何も言ってない」

 

「顔で分かる」

 

「顔?」

 

「お前とエルネスタとヒルダが並んでいる時点で、まともな相談ではない」

 

「俺もいるぞ」

 

 通信画面からディルクが言う。

 

「だから余計に駄目なんだ!!」

 

 四人が。

 

 揃っていた。

 

 ハイセ。

 

 エルネスタ。

 

 ヒルダ。

 

 ディルク。

 

 最近、研究関係者の間で密かに恐れられ始めた組み合わせである。

 

「ヒジリにジークフリートを使ってもらう」

 

「そこまではいい」

 

「サーシャと戦ってもらう」

 

「本人同士が了承するならいい」

 

「サーシャには武器のこと言わない」

 

「駄目だ!!」

 

 やっぱりだった。

 

「何で?」

 

「実験相手への説明と同意はどうした!」

 

「ヒジリにはするよ」

 

「サーシャの話をしている!」

 

「でも武器の性能言ったら、戦い方変えるかもしれない」

 

「当たり前だろう!」

 

「それだと自然なデータ取れない」

 

「だからといって黙って踏み台にするな!!」

 

 その言葉に。

 

 エルネスタがハイセを見る。

 

「ハイセ」

 

「何?」

 

「サーシャをそんな風に使って、心は痛まないの?」

 

「違う」

 

「何が?」

 

 ハイセは。

 

 少し。

 

 悪い笑顔を浮かべた。

 

「踏み台だ! 扱いじゃない」

 

「…………」

 

 カミラが目を閉じた。

 

「今の会話、絶対残すなよ」

 

 エルネスタが端末を見る。

 

「もう記録されてる」

 

「消せ!!」

 

 この会話が。

 

 後に。

 

 最悪の形で再生されることを。

 

 まだ誰も知らない。

 

 

 ヒジリを説得したのは。

 

 ディルクとヒルダだった。

 

『つまり』

 

 ヒジリは通信画面を見ながら、机の上に置かれた【ジークフリート】を持ち上げた。

 

「コイツを付けてサーシャと戦えばいいんでしょ?」

 

『話が早ぇな』

 

 ディルクが答える。

 

「で、強くなんの?」

 

『武器が勝手に強くするわけではないよ』

 

 ヒルダが笑う。

 

『君の判断に合わせて、装甲の強度を変える。最初は補助するが、いずれ君自身が制御することになる』

 

「へぇ」

 

 ヒジリは片方を装着する。

 

 指を握る。

 

 開く。

 

「軽いじゃん」

 

『低収束状態だからね』

 

「サーシャには?」

 

『黙ってろ』

 

 ディルク。

 

「何で?」

 

『知らない方が自然なデータが取れる』

 

 ヒジリは。

 

 一瞬だけ。

 

 考えた。

 

「……面白そう」

 

『決まりだ』

 

「でもアタシ、手加減しないよ?」

 

『する必要はない』

 

 ヒルダは楽しそうだった。

 

「壊しても?」

 

『それもデータだ』

 

「いいね」

 

 ヒジリが。

 

 拳を合わせた。

 

「気に入った!」

 

 

 数日後。

 

 王都郊外。

 

 広大な荒野に、サーシャとヒジリが向かい合っていた。

 

 サーシャは既に剣を抜いている。

 

 ヒジリは黒銀の籠手を装着していたが、それを特別な武器とは説明していない。もともと拳や金属製の武装を使うヒジリだけに、サーシャも深く疑わなかった。

 

「前から一度、アンタとはやってみたかったんだよね」

 

「奇遇だな。私もだ」

 

「ハイセは?」

 

「今日は来ないらしい」

 

「えー」

 

 ヒジリは露骨に不満そうな顔をした。

 

「次はあいつとやりたかったのに」

 

 サーシャの眉が動く。

 

「……ハイセと?」

 

「強いんでしょ?」

 

「そうだが」

 

「じゃあ戦いたいじゃん」

 

「…………」

 

 既に。

 

 少しだけ。

 

 機嫌が悪くなった。

 

 ヒジリは気づかない。

 

「ま、今日はアンタからでいっか!」

 

「その言い方、後悔するぞ」

 

「させてみなよ」

 

 両者が構えた。

 

 

 本当は。

 

 ハイセもいた。

 

 ただし。

 

 世界を一つ隔てた研究室に。

 

「映像来た」

 

 エルネスタが表示を拡大する。

 

 ジークフリート内部のローカルクライアントが、戦闘データを世界間通信経由で送っていた。

 

 ヒルダ。

 

 ディルク。

 

 そしてハイセ。

 

 三人が画面を見る。

 

 少し離れたところでは。

 

 カミラが腕を組んでいた。

 

「私は関与しないからな」

 

「見てるじゃん」

 

「安全確認だ!」

 

「バレたら?」

 

「知らん!」

 

「助けて?」

 

「知らん!!」

 

 カミラは。

 

 本当に。

 

 怒っていた。

 

 

 開始直後。

 

 先に動いたのはサーシャだった。

 

 踏み込み。

 

 一閃。

 

「速っ!」

 

 ヒジリが拳で剣を受ける。

 

IMPACT PREDICTION

 

CONVERGENCE:38% → 81%

 

 接触直前。

 

 籠手が硬化する。

 

 金属音。

 

 サーシャの剣が弾かれた。

 

「…………?」

 

 サーシャの目が細くなる。

 

「何だ今の」

 

「さぁ?」

 

 ヒジリ本人も。

 

 少し驚いていた。

 

「何か硬くなった!」

 

「何故お前が知らない!?」

 

「細かいこと気にすんなって!」

 

 ヒジリが踏み込む。

 

 右拳。

 

 サーシャは避ける。

 

 拳が通り過ぎた瞬間、ジークフリートは収束率を落とし、腕の動きを妨げない。

 

81% → 19%

 

 次の左拳。

 

19% → 76%

 

 サーシャが剣で受ける。

 

 衝撃。

 

 一歩。

 

 後ろへ。

 

「……重い」

 

「アタシの拳だからね!」

 

 

 序盤。

 

 まだ。

 

 サーシャが上だった。

 

 ジークフリートは、ヒジリの判断より先に収束率を計算している。だから攻防の切り替えに、ごく僅かな遅れがある。

 

 その隙を。

 

 サーシャは逃さない。

 

「そこ!」

 

 低収束へ戻った直後。

 

 剣が籠手の外側を抜け。

 

 ヒジリの肩を切り裂いた。

 

「いったぁ!」

 

 血が飛ぶ。

 

 それでも。

 

 ヒジリは笑った。

 

「やっぱ強いじゃん!」

 

「笑っている場合か!」

 

「楽しいんだから仕方ないでしょ!」

 

 再び。

 

 拳。

 

 剣。

 

 衝突する。

 

 

「遅い」

 

 ハイセが言った。

 

「何が?」

 

 エルネスタが聞く。

 

「【雛形】が判断してから収束してる」

 

「設計通りじゃん」

 

「うん。でもヒジリの方が早くなったら?」

 

 画面を見る。

 

 戦闘開始から。

 

 七分。

 

AUTO ASSIST:HIGH → MEDIUM

 

「もう落ちた」

 

 ヒルダが楽しそうに笑う。

 

「適応が早い」

 

 八分。

 

 ヒジリが。

 

 サーシャの肩を見る。

 

 踏み込み。

 

 右。

 

 サーシャが受ける。

 

 その瞬間。

 

USER INPUT DETECTED

 

CONVERGENCE REQUEST:84%

 

 システムの推奨値。

 

82%

 

「……先に選んだ」

 

 エルネスタの笑みが。

 

 消える。

 

 研究者の顔になる。

 

「二パーセント違うけど」

 

「ヒジリが選んだ」

 

 ハイセも。

 

 画面から目を離さない。

 

 

「何だ?」

 

 サーシャが。

 

 違和感を覚え始める。

 

 最初とは。

 

 違う。

 

 同じ拳なのに。

 

 一撃ごとの感触が変わる。

 

 硬い。

 

 次は柔らかい。

 

 重い。

 

 次は流れる。

 

「アンタ」

 

 ヒジリが笑う。

 

「これ面白いね!」

 

「何の話だ!」

 

「拳!」

 

 サーシャの剣が振り下ろされる。

 

 ヒジリは両腕を交差する。

 

CONVERGENCE:96%

 

 剣を受ける。

 

 直後。

 

96% → 4%

 

 右腕だけ。

 

 脱力するように。

 

 滑る。

 

 サーシャの剣の側面を撫で。

 

 身体を内側へ。

 

「なっ――」

 

RIGHT GAUNTLET:100%

 

 腹部。

 

 一撃。

 

「ぐっ――!」

 

 サーシャの身体が吹き飛んだ。

 

 

「百」

 

 ハイセが呟く。

 

「自分で入れたね」

 

 エルネスタ。

 

AUTO ASSIST:LOW

 

 ヒルダが。

 

 満足そうに頷いた。

 

「もう要らないな」

 

「まだ」

 

 ハイセは止める。

 

「完全に手動へ移るまで見る」

 

 ディルクは。

 

 戦闘より。

 

 別の画面を見ていた。

 

「……市場に落とせる」

 

「もう?」

 

「ゼロから百まで使用者が自由に変えられるならな」

 

「まだ試験中だぞ」

 

 カミラが睨む。

 

「だから準備だけだ」

 

「お前の『準備だけ』は信用していない」

 

「奇遇だな。俺もお前ら研究者の『ちょっと試す』は信用してねぇ」

 

 それだけは。

 

 誰も反論出来なかった。

 

 

 戦闘開始から十五分。

 

 ヒジリの動きは。

 

 完全に変わった。

 

 サーシャが速くなったのではない。

 

 ヒジリが。

 

 戦いながら。

 

 武器の使い方を学び続けている。

 

 踏み込む時。

 

8%

 

 拳を振る。

 

21%

 

 接触直前。

 

93%

 

 受けられた。

 

 即座に。

 

11%

 

 軌道を変える。

 

 再度。

 

100%

 

 サーシャの防御を。

 

 破る。

 

「くっ……!」

 

「遅い!」

 

 ヒジリが笑った。

 

「さっきまでそんな動きじゃなかっただろ!」

 

「アタシだって成長するんだって!」

 

「戦闘中にか!?」

 

「出来るならした方がお得じゃん!」

 

「そういう問題か!!」

 

 

 サーシャは。

 

 全力へ入った。

 

 大塩湖で身につけた。

 

 七十日分の戦闘経験。

 

 仲間と戦うために抑えていた闘気を。

 

 今は。

 

 一人のために使う。

 

 速度。

 

 圧力。

 

 剣技。

 

 全てが一段上がる。

 

「来なさい!」

 

「最初からそれで来なよ!」

 

 二人が。

 

 真正面から。

 

 ぶつかった。

 

 剣。

 

 拳。

 

 連続する。

 

 だが。

 

 もう。

 

 互角ではなかった。

 

 

 ヒジリは。

 

 サーシャの剣を見る。

 

 右から。

 

 なら。

 

 左籠手。

 

100%

 

 受ける。

 

 右腕。

 

0%

 

 身体の捻りに追従。

 

 拳を放つ瞬間。

 

97%

 

 サーシャが避ける。

 

 ならば。

 

17%

 

 軌道を変える。

 

 膝。

 

 距離を詰める。

 

 もう一度。

 

100%

 

「――っ!」

 

 サーシャの剣が。

 

 手から。

 

 弾き飛ばされた。

 

 そのまま。

 

 ヒジリの拳が。

 

 サーシャの眼前で。

 

 止まる。

 

CONVERGENCE:100%

 

 拳一つ。

 

 その距離。

 

 サーシャには。

 

 分かった。

 

 振り抜かれていれば。

 

 終わっていた。

 

「…………」

 

 ヒジリは。

 

 拳を下ろした。

 

「アタシの勝ち」

 

 サーシャは。

 

 しばらく。

 

 何も言わなかった。

 

 やがて。

 

 悔しそうに。

 

 それでも。

 

 笑った。

 

「……完敗だ」

 

 

 研究室。

 

 一枚の表示が。

 

 画面中央へ出る。

 

AUTO ASSIST:OFF

 

USER CONTROL:MANUAL

 

CONVERGENCE CONTROL:MASTERED

 

 誰も。

 

 すぐには喋らなかった。

 

 最初に。

 

 エルネスタが笑う。

 

「完成」

 

 ヒルダも。

 

 口元を上げた。

 

「最後の一要素が埋まったね」

 

 ディルクは。

 

 既に別の資料を開いている。

 

「なら次だ」

 

「何?」

 

 ハイセが見る。

 

「売る」

 

「早い」

 

「遅いくらいだ」

 

 そこへ。

 

 カミラが。

 

 低い声で言った。

 

「…………お前ら」

 

「何?」

 

「一つだけ言っておく」

 

 四人が。

 

 振り返る。

 

「バレても知らんからな!」

 

「大丈夫じゃない?」

 

 ハイセが答える。

 

「何を根拠に言っている!」

 

「サーシャ、ジークフリートのこと気づいてなかったし」

 

「だから今はな!!」

 

「じゃあ問題ない」

 

「ある!!」

 

 カミラの怒声が。

 

 研究室へ響いた。

 

 その横。

 

 市場投入用の。

 

 二つの仮称が。

 

 画面へ表示される。

 

万能対応型強化煌式武装

 

【ランビリス】

 

 そして。

 

高機動射撃型強化煌式武装

 

【ケリードーン】

 

 ジークフリートは。

 

 完成品ではない。

 

 一つの実験機に過ぎない。

 

 だが。

 

 その拳が。

 

 サーシャを打ち倒した瞬間。

 

 強化型煌式武装は。

 

 最後の壁を。

 

 越えた。

 

 そして。

 

 この時点では。

 

 まだ誰も知らない。

 

 この小さな。

 

 四人の共謀が。

 

 一週間後。

 

 六学園全体の武器市場を。

 

 文字通り。

 

 塗り替えることになるなど。

 

 まして。

 

 タイクーンという男が。

 

 会話を再現出来る魔法を持っていることなど。

 

 ハイセ達は。

 

 まだ。

 

 思い出してすらいなかった。

 

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