暗律の戦乙女は盤上を覆すが故、己が未来を選ぶ   作:カミッシー

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第六話 弱者のための武器

 

 

「ハイセ」

 

「ん?」

 

「今日はこれを使ってもらう」

 

「…………」

 

 朝。

 

 アルルカントの実験室。

 

 カミラが。

 

 机の上へ。

 

 一振りの武器を置いた。

 

「……剣?」

 

「正確には煌式武装の試作機だ」

 

「ルークス、だっけ?」

 

「ああ」

 

 昨日まで。

 

 散々。

 

 資料を見せられた。

 

 この世界の武器。

 

 万応素を利用した。

 

 煌式武装。

 

「これ」

 

 ハイセ。

 

 試作機。

 

 手に取る。

 

「普通だな」

 

「まだ起動していないからな」

 

「ああ」

 

「スイッチを入れろ」

 

「これ?」

 

「そうだ」

 

 押す。

 

 瞬間。

 

 柄から。

 

 光が伸びる。

 

「おお」

 

 刃。

 

 形成。

 

「…………」

 

 ハイセ。

 

 軽く。

 

 振る。

 

「…………」

 

「どうだ?」

 

「…………」

 

 もう一度。

 

 振る。

 

「ハイセ?」

 

「待って」

 

 踏み込む。

 

 斬る。

 

 止める。

 

 返す。

 

「…………」

 

 少し。

 

 考えてから。

 

「使いやすい」

 

「そうか」

 

「でも」

 

 カミラの目。

 

 鋭くなる。

 

「でも?」

 

「…………」

 

 ハイセ。

 

 剣を見る。

 

「面白くない」

 

「…………」

 

 沈黙。

 

 研究員達。

 

 一斉に。

 

 ハイセを見る。

 

「……ハイセ」

 

「何?」

 

「もう少し」

 

 カミラ。

 

「具体的に言ってくれ」

 

「いや」

 

 ハイセ。

 

 困る。

 

「使いやすいんだよ」

 

「それは聞いた」

 

「軽い」

 

「想定通りだ」

 

「癖もない」

 

「ああ」

 

「多分」

 

 振る。

 

「剣慣れてない奴でも」

 

「……」

 

「それなりには使えると思う」

 

「なら問題ないだろう?」

 

「でも」

 

 一拍。

 

「それだけ」

 

「…………」

 

 カミラ。

 

 黙る。

 

「俺だったら」

 

 ハイセ。

 

 試作機を見る。

 

「これ」

 

「?」

 

「ずっと使いたいとは思わない」

 

「…………」

 

「何故だ?」

 

「んー……」

 

 言葉。

 

 探す。

 

「なんて言えばいいかな」

 

 昨日。

 

 見た。

 

 天霧綾斗の剣。

 

 あれは。

 

 美しかった。

 

 完成されていた。

 

 だが。

 

 この剣には。

 

「使う奴のこと」

 

「……」

 

「考えてない感じがする」

 

「…………」

 

 研究室。

 

 静かになる。

 

「どういう意味だ?」

 

「誰でも使えるように」

 

 ハイセ。

 

「全部」

 

 一拍。

 

「真ん中に寄せてる」

 

「…………」

 

「重さも」

 

「……」

 

「癖も」

 

「……」

 

「多分」

 

 剣を。

 

 眺める。

 

「出力も」

 

「…………」

 

「誰にも嫌われないようにした結果」

 

 一拍。

 

「誰にも一番好きにはなられない武器になってる」

 

「…………」

 

 カミラ。

 

 目を。

 

 見開いた。

 

「…………」

 

 エルネスタ。

 

 少し離れたところから。

 

「へぇ」

 

 笑う。

 

「それ」

 

 一拍。

 

「面白いね」

 

     ◇

 

「では」

 

 カミラ。

 

 腕を組む。

 

「どうすればいいと思う?」

 

「俺に聞く?」

 

「ああ」

 

「作ってんのアンタだろ」

 

「だから聞いている」

 

「…………」

 

「実戦経験者としての意見が欲しい」

 

 ハイセ。

 

 頭。

 

 掻く。

 

「……例えば」

 

「うん」

 

「重さ」

 

「…………」

 

「軽い方がいい奴もいる」

 

「……」

 

「重い方が振りやすい奴もいる」

 

「……」

 

「なら」

 

 剣。

 

「変えられないの?」

 

「…………」

 

 カミラ。

 

「何を?」

 

「重さ」

 

「使用中に?」

 

「そこまでは知らないけど」

 

「…………」

 

「最初に」

 

 一拍。

 

「使う奴に合わせるとか」

 

「…………」

 

「あるいは」

 

 ハイセ。

 

 思いつく。

 

「使っていくうちに」

 

「?」

 

「そいつ用になっていく」

 

「…………」

 

「…………」

 

 カミラ。

 

 黙る。

 

 エルネスタも。

 

 珍しく。

 

 黙っている。

 

「……変?」

 

「いや」

 

 カミラ。

 

 ゆっくり。

 

「続けろ」

 

「別に」

 

 ハイセ。

 

「誰でも同じ武器使う必要ないだろ」

 

「…………」

 

「同じ剣でも」

 

 一拍。

 

「握り方」

 

「……」

 

「重さ」

 

「……」

 

「長さ」

 

「……」

 

「戦い方」

 

「…………」

 

「全部」

 

 ハイセ。

 

「人によって違うんだから」

 

「…………」

 

「だったら」

 

 試作機。

 

 机へ戻す。

 

「武器の方が」

 

 一拍。

 

「使う奴に合わせればいい」

 

「…………」

 

 沈黙。

 

 長い。

 

「……カミラ?」

 

「ハイセ」

 

「何?」

 

「君」

 

 一拍。

 

「本当に研究経験はないんだな?」

 

「何回聞くんだよ!」

 

「確認したくなる!」

 

「冒険者だって言ってるだろ!」

 

「それで何故」

 

 カミラ。

 

 額へ。

 

 手。

 

「研究テーマを一個増やすんだ……」

 

「知らねぇよ!」

 

 エルネスタ。

 

「いいじゃん!」

 

「お前は黙っていろ!」

 

「でもさぁ」

 

 楽しそう。

 

「ユーザーごとに最適化するルークス」

 

「…………」

 

「使用履歴から」

 

 指。

 

「癖とか動作とか」

 

「……」

 

「身体能力とか」

 

「……」

 

「戦闘傾向を学習して」

 

「……」

 

「性能を調整する」

 

「…………」

 

 エルネスタ。

 

 にっこり。

 

「出来たら面白くない?」

 

 カミラ。

 

「…………」

 

「…………」

 

「カミラ?」

 

「…………理論上」

 

 一拍。

 

「不可能ではない」

 

「やった!」

 

「喜ぶな!!」

 

     ◇

 

「でも」

 

 ハイセ。

 

「一個分かんない」

 

「何だ?」

 

「アンタが言ってる」

 

 カミラを見る。

 

「【究極の汎用性】」

 

「…………」

 

「誰でも使える武器なんだよな?」

 

「ああ」

 

「じゃあ」

 

 一拍。

 

「一人一人に合わせたら」

 

「……」

 

「汎用じゃなくならない?」

 

「…………」

 

 カミラ。

 

 少し。

 

 笑った。

 

「良い質問だ」

 

「何だよ急に先生みたいに」

 

「ここは学園だ」

 

「そうだった」

 

 忘れてた。

 

「ハイセ」

 

「ん?」

 

「私は」

 

 一拍。

 

「全員へ全く同じ武器を持たせたいわけではない」

 

「…………」

 

「同じ性能」

 

「……」

 

「同じ戦い方」

 

「……」

 

「同じ強さ」

 

「……」

 

「それを求めているわけではない」

 

「じゃあ」

 

「私が求めているのは」

 

 カミラ。

 

 試作機。

 

 手に取る。

 

「入口だ」

 

「入口?」

 

「ああ」

 

「…………」

 

「才能のある者だけが」

 

「……」

 

「最初から強力な武器を使える」

 

「……」

 

「適性のある者だけが」

 

「……」

 

「自分に合った力を得られる」

 

「……」

 

「それでは」

 

 一拍。

 

「弱い者には」

 

「…………」

 

「選ぶ権利すら与えられない」

 

「…………」

 

 ハイセ。

 

 表情。

 

 変わる。

 

「私は」

 

 カミラ。

 

「それが嫌いだ」

 

「…………」

 

「弱いから」

 

「……」

 

「才能がないから」

 

「……」

 

「適性がないから」

 

「…………」

 

「だから」

 

 一拍。

 

「最初から諦めろ」

 

「…………」

 

 その言葉。

 

 胸。

 

 刺さる。

 

「そんなものを」

 

 カミラ。

 

「私は認めたくない」

 

「…………」

 

「私の言う汎用性とは」

 

 武器。

 

 置く。

 

「誰でも同じ場所へ到達することではない」

 

「…………」

 

「誰でも」

 

 一拍。

 

「自分の可能性を試すところから始められることだ」

 

「…………」

 

 ハイセ。

 

 何も。

 

 言わない。

 

「その結果」

 

 カミラ。

 

「向いていないと分かることもある」

 

「……」

 

「負けることもある」

 

「……」

 

「強くなれない者もいるだろう」

 

「…………」

 

「だが」

 

 一拍。

 

「それを決めるのは」

 

「…………」

 

「武器でも」

 

「……」

 

「才能でも」

 

「……」

 

「他人でもない」

 

 カミラ。

 

 ハイセを見る。

 

「本人だ」

 

「…………」

 

 本人。

 

 その言葉。

 

 やけに。

 

 重い。

 

「やってみて」

 

「……」

 

「それでも駄目なら」

 

「……」

 

「次を選べばいい」

 

「…………」

 

「最初から」

 

 一拍。

 

「選択肢そのものを奪う必要はない」

 

「…………」

 

 ハイセ。

 

 拳。

 

 握る。

 

 弱いから。

 

 危険だから。

 

 お前のためだから。

 

 勝手に。

 

 決められた。

 

「……そういうことか」

 

「?」

 

「アンタの」

 

 一拍。

 

「究極の汎用性」

 

「ああ」

 

 ハイセ。

 

 小さく。

 

 笑った。

 

「前より」

 

「?」

 

「好きになった」

 

「…………」

 

 カミラ。

 

 少し。

 

 目を逸らした。

 

「そうか」

 

「照れてる?」

 

「黙れ」

 

「図星?」

 

「実験へ戻るぞ!」

 

     ◇

 

 午後。

 

「じゃあ次!」

 

 エルネスタ。

 

 試作機。

 

 改造。

 

「早くない?」

 

「仮実装だよ」

 

「三時間しか経ってないぞ」

 

「三時間もあった!」

 

「研究者怖ぇ」

 

「エルネスタが特殊だ」

 

 カミラ。

 

 即答。

 

「一緒にするな」

 

「酷い!」

 

「何変えたの?」

 

 ハイセ。

 

 武器。

 

 受け取る。

 

「重心調整機構」

 

「もう作ったの?」

 

「既存部品を組み合わせただけ」

 

「…………」

 

 起動。

 

 刃。

 

「ほら」

 

 エルネスタ。

 

 端末。

 

「好きに調整して」

 

「…………」

 

 ハイセ。

 

 操作。

 

「これ?」

 

「うん」

 

 重心。

 

 変える。

 

 振る。

 

「…………」

 

 もう一度。

 

 変える。

 

 振る。

 

「……あ」

 

「どう?」

 

「さっきより」

 

 一拍。

 

「いい」

 

「どの辺?」

 

「俺は」

 

 剣。

 

「ちょっと先に重さあった方が好きかも」

 

「ほう」

 

 カミラ。

 

 記録。

 

「理由は?」

 

「斬る時」

 

 振る。

 

「乗せやすい」

 

「なるほど」

 

「でも」

 

「?」

 

「このままだと」

 

 一拍。

 

「細かい動きは遅れる」

 

「……」

 

「だったら」

 

 ハイセ。

 

 端末を見る。

 

「戦ってる途中に切り替えられたら?」

 

「…………」

 

 カミラ。

 

「…………」

 

 エルネスタ。

 

「…………」

 

「何?」

 

「ハイセくん」

 

 エルネスタ。

 

 笑顔。

 

「もっと言って」

 

「え?」

 

「思いついたこと全部」

 

「エルネスタ」

 

 カミラ。

 

 嫌な予感。

 

「待て」

 

「だって面白い!」

 

「待てと言っている!」

 

「例えばさぁ!」

 

 止まらない。

 

「攻撃時は先端!」

 

「…………」

 

「防御や連撃時は手元!」

 

「…………」

 

「使用者の動きを感知して」

 

「…………」

 

「自動で切り替えたら――」

 

「待て!!」

 

 カミラ。

 

 声。

 

 響く。

 

「何?」

 

「一度」

 

 一拍。

 

「整理しろ!」

 

「えー」

 

「思いついた物を全部突っ込むな!」

 

「でも出来そうじゃない?」

 

「出来るかどうかだけで判断するな!」

 

 ハイセ。

 

「でも」

 

「?」

 

「出来るなら」

 

 一拍。

 

「やってみてもいいんじゃない?」

 

「…………」

 

 カミラ。

 

 ゆっくり。

 

 ハイセを見る。

 

「…………」

 

「何?」

 

「……お前」

 

 一拍。

 

「本当にエルネスタと距離を取る気はないんだな」

 

「何で今その話?」

 

「分かった」

 

 カミラ。

 

 ため息。

 

「もう諦める」

 

「何を!?」

 

     ◇

 

 夕方。

 

 試験終了。

 

「……疲れた」

 

「今日も言った」

 

「毎日疲れてるから」

 

「でも楽しかったでしょ?」

 

 エルネスタ。

 

「まあ」

 

「ほらぁ」

 

「…………」

 

 ハイセ。

 

 今日使った。

 

 試作ルークスを見る。

 

「なあ」

 

「何だ?」

 

 カミラ。

 

「これ」

 

「?」

 

「完成したら」

 

 一拍。

 

「弱い奴でも使える?」

 

「…………」

 

 カミラ。

 

 少し考える。

 

「それが」

 

 一拍。

 

「目標だ」

 

「…………」

 

「だが」

 

「?」

 

「勘違いするな」

 

「何を?」

 

「武器一つで」

 

 カミラ。

 

「全てが解決するわけではない」

 

「…………」

 

「本人が努力しなければ」

 

「……」

 

「成長しようとしなければ」

 

「……」

 

「武器だけ良くても意味はない」

 

「…………」

 

「私が作りたいのは」

 

 一拍。

 

「努力しなくても強くなれる道具ではない」

 

「…………」

 

「努力する機会を」

 

「……」

 

「奪わせないための武器だ」

 

「…………」

 

 ハイセ。

 

 黙る。

 

 やがて。

 

「……いいな、それ」

 

「そうか」

 

「ああ」

 

「なら」

 

 カミラ。

 

 端末。

 

 差し出す。

 

「今日の意見をまとめておいてくれ」

 

「…………」

 

「何?」

 

「まとめる?」

 

「ああ」

 

「俺が?」

 

「ああ」

 

「何で?」

 

「研究協力者だからだ」

 

「…………」

 

「…………」

 

「聞いてないぞ!」

 

「今言った」

 

「そういう問題じゃねぇ!」

 

「観察結果を文章へしろ」

 

「無理!」

 

「出来る」

 

「何で断言する!」

 

「昨日まで散々」

 

 一拍。

 

「武器の問題点を具体的に指摘していただろう」

 

「喋るのと書くのは違う!」

 

「冒険者は報告書を書かないのか?」

 

「…………」

 

 ハイセ。

 

 止まる。

 

「書く」

 

「なら出来る」

 

「…………」

 

「逃げ道塞ぐなよ」

 

「研究者だからな」

 

「関係ある!?」

 

     ◇

 

 夜。

 

「…………」

 

 ハイセ。

 

 一人。

 

 机。

 

 端末。

 

「……面倒くせぇ」

 

 文章。

 

 書く。

 

 試作機。

 

 重量。

 

 重心。

 

 操作。

 

 長所。

 

 欠点。

 

 改善案。

 

「…………」

 

 書き始めると。

 

 意外と。

 

 進む。

 

 ダンジョン。

 

 魔獣。

 

 地形。

 

 危険。

 

 依頼。

 

 冒険者として。

 

 何度も。

 

 報告してきた。

 

「…………」

 

 気づけば。

 

 かなり。

 

 書いていた。

 

「こんなもん?」

 

 送信。

 

     ◇

 

 翌朝。

 

「ハイセ」

 

「何?」

 

「これ」

 

 カミラ。

 

 端末。

 

「君が書いたのか?」

 

「ああ」

 

「一人で?」

 

「そうだけど」

 

「…………」

 

「何だよ」

 

「非常に」

 

 一拍。

 

「分かりやすい」

 

「…………」

 

「……そう?」

 

「ああ」

 

「へぇ」

 

「何故君自身が一番驚く」

 

「だって」

 

 一拍。

 

「適当に書いたし」

 

「適当に書くな!!」

 

「必要なことは入れたぞ」

 

「それを適当とは言わない!」

 

 カミラ。

 

 資料。

 

 見る。

 

「実際の操作感」

 

「……」

 

「危険になる条件」

 

「……」

 

「想定される使用者差」

 

「……」

 

「改良案」

 

「…………」

 

「研究員の報告より」

 

 一拍。

 

「実戦的だ」

 

「そりゃ」

 

 ハイセ。

 

「実戦で使う前提で見てるから」

 

「…………」

 

「武器って」

 

 一拍。

 

「失敗したら死ぬだろ」

 

「…………」

 

 カミラ。

 

 小さく。

 

 笑う。

 

「やはり」

 

「?」

 

「君を研究へ入れたのは正解だった」

 

「…………」

 

 また。

 

 それ。

 

「そうかよ」

 

「ああ」

 

 ハイセ。

 

 少し。

 

 視線を逸らす。

 

「……なら」

 

「?」

 

「また手伝う」

 

「そうか」

 

「暇だし」

 

「素直ではないな」

 

「うるせぇ」

 

     ◇

 

 廊下。

 

「ハイセくーん!」

 

「…………」

 

 聞き覚え。

 

 嫌なほど。

 

 元気な声。

 

「何?」

 

 エルネスタ。

 

 走ってくる。

 

「昨日の重心調整!」

 

「うん」

 

「もう次の試作出来たよ!」

 

「早くない?」

 

「あとね!」

 

「?」

 

「ハイセくんの異世界素材」

 

「…………」

 

「一個」

 

 満面。

 

「ちょっと面白い使い方思いついた!」

 

「…………」

 

 ハイセ。

 

 目。

 

 輝く。

 

「何?」

 

「ハイセ!」

 

 後方。

 

 カミラ。

 

「食いつくな!」

 

「まだ聞いてないだろ!」

 

「だからだ!」

 

「えー?」

 

 エルネスタ。

 

「聞くだけ聞こうよ」

 

「そうだな」

 

「ハイセ!!」

 

「聞くだけ!」

 

「お前達の“聞くだけ”は信用できない!!」

 

 研究棟。

 

 カミラの声。

 

 響く。

 

 そして。

 

 ハイセは。

 

 この時。

 

 まだ。

 

 気づいていなかった。

 

 昨日まで。

 

 自分は。

 

 ただ。

 

 知らない世界へ。

 

 迷い込んだだけの。

 

 異世界人だった。

 

 だが。

 

 今は。

 

 違う。

 

 自分の言葉が。

 

 武器を。

 

 少し変えた。

 

 その武器が。

 

 いつか。

 

 誰かの選択肢になるかもしれない。

 

 その事実が。

 

 ハイセには。

 

 思っていた以上に。

 

 嬉しかった。

 

 だから。

 

 次も。

 

 考える。

 

 次も。

 

 試す。

 

 そして。

 

 次も。

 

 選ぶ。

 

 それが。

 

 後に。

 

 学戦都市そのものを。

 

 変えることになるとも知らずに

 

 

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