扉を叩く。
「すみませーん! 誰かいますかー!」
少しして、内側から物音がして扉が開く。
「はいはい、どなたですよ?」
中から女の子が顔を出した。
「あ」
「どっしぇー!」
「えっ!?」
いきなり驚かれた。
「びしょ濡れじゃないですか! そんなところに立ってないで、早く入るのですよ!」
「いいの?」
「風邪を引いたら大変なのですよ。 ほらほら、そっちのお兄ちゃんもですよ」
後ろから追いついてきたティルを見る。
「お兄ちゃん……」
「何か?」
「いや」
ティルは微妙な顔をしながらも小屋へ入った。
「ありがとうございます!」
「いいのですよ。 困ったときはお互い様なのですよ」
女の子はクレティスを見る。
「ところで、お名前は?」
「ボクはクレティス」
「ではクレちゃんですね」
「いきなりちゃん付け!?」
でも、別に悪い気はしなかった。
「そっちは?」
「ティルだ」
「ティルちゃん」
「ティルちゃん……って俺もなのか?」
「もちろんですよ」
ティルが何とも言えない顔になってるのを見て、クレティスは吹き出した。
「ティルちゃんだってさ」
「笑うな」
「だって似合わない!」
「外に戻すぞ」
「なんでティルが決めるのさ!?」
「仲良しさんなのですね」
そんな二人の様子を見ながらお茶とタオルを用意してくれている。
「あー、えっと…ありがとう」
クレティスはタオルを受け取る。
「私はループですよ。 よろしくなのですよ、クレちゃん、ティルちゃん」
「よろしく、ループ!」
「ループちゃんでいいですよ」
妙な人だが、悪い人ではなさそうだ。
少なくとも雨の中に放り出される心配はない。
「それにしても」
クレティスは小屋の中を見回した。
「いろいろあるね」
室内には見慣れない道具や部品がいくつも置かれていた。
何に使うのかわからない物も多い。
「ループは何してる人なの?」
「発明家なのですよ」
「発明家?」
「そうなのですよ」
ループは胸を張る。
「キーリル一の大発明家と言っても過言ではないのですよ!」
「へえ!」
「自称だろ」
ティルが横から言った。
「失礼なのですよ、ティルちゃん!」
「ちゃん付けをやめろ」
「ティルちゃんは細かいですねえ」
「……お前と話してると疲れる」
ティルが額を押さえる。
クレティスは笑いながら、再び室内を見回した。
工具。
見たことのない部品に用途のわからない装置。
どうやら発明家というのは嘘ではないらしい。
「なんだろうこれ?」
クレティスは筒状の物体を持ってみた。
「それはループが最近作った発明品の大生伊藤くんなのですよ」
「へー」
伊藤くんをみながらクレティスは変なのーと思う。
「床に置くと爆発するという画期的なアイテムなんですよ!」
「こわっ!」
思わず手から伊藤くんが落ちる。
「あぶねぇ!」
ティルのナイスキャッチ。
「うかつにそこら辺を触るな何があるかわからんぞ」
「うん……そうだね」
そのとき。
「…………」
クレティスの視線が窓に止まった。
外の小屋に何かがいる?
人だろうか?
「あぁ、ちょっと前からうちの小屋を貸している人ですよー」
ボクの疑問に答えるループ。
「へぇ、そうなんだ」
「何でもするから泊めてくれって言うので、お使いとかたまに頼んでるんですよねー」
「ふーん」
それ以上は追及しなかった。
ここはループの家だ。
誰を泊めていようと、誰と暮らしていようがクレティスが勝手に踏み込むことではない。
「それよりループ」
「何ですか、クレちゃん?」
「この辺りの山に詳しい?」
「それなりには詳しいですよ」
「じゃあさ」
クレティスはティルを見る。
ティルも頷いた。
「洞窟を探してるんだ」
「洞窟?」
「うん! キーリルと隣の国の境にある山脈の中なんだけど」
ループが首を傾げる。
「どの辺りなのですよ?」
ティルが受領書から得た場所を説明する。
聞いているうちに、ループの表情が変わった。
「ああ!」
「知ってる?」
「知ってるのですよ!」
クレティスの顔が明るくなる。
「ほんと!?」
「その辺りなら、心当たりのある洞窟があるのですよ」
「やった!」
思わぬところで案内役まで見つかった。
「場所、教えてくれる?」
「それなら――」
ループは少し考える。
「私が案内するのですよ」
「いいの?」
「もちろんですよ。山の中で迷子になったら大変ですからね」
「ありがとう、ループ!」
「ループちゃんですよ」
「そこ大事なんだ!?」
外を見ると雨も止んでいて、どうやら一時的な雨だった。
これならすぐにでも行けそうだ。