プレアデスストーリー   作:八束祐

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1部クレティス編 9

 扉を叩く。

 

「すみませーん! 誰かいますかー!」

 

 少しして、内側から物音がして扉が開く。

 

「はいはい、どなたですよ?」

 

 中から女の子が顔を出した。

 

「あ」

 

「どっしぇー!」

 

「えっ!?」

 

 いきなり驚かれた。

 

「びしょ濡れじゃないですか! そんなところに立ってないで、早く入るのですよ!」

 

「いいの?」

 

「風邪を引いたら大変なのですよ。 ほらほら、そっちのお兄ちゃんもですよ」

 

 後ろから追いついてきたティルを見る。

 

「お兄ちゃん……」

 

「何か?」

 

「いや」

 

 ティルは微妙な顔をしながらも小屋へ入った。

 

「ありがとうございます!」

 

「いいのですよ。 困ったときはお互い様なのですよ」

 

 女の子はクレティスを見る。

 

「ところで、お名前は?」

 

「ボクはクレティス」

 

「ではクレちゃんですね」

 

「いきなりちゃん付け!?」

 

でも、別に悪い気はしなかった。

 

「そっちは?」

 

「ティルだ」

 

「ティルちゃん」

 

「ティルちゃん……って俺もなのか?」

 

「もちろんですよ」

 

 ティルが何とも言えない顔になってるのを見て、クレティスは吹き出した。

 

「ティルちゃんだってさ」

 

「笑うな」

 

「だって似合わない!」

 

「外に戻すぞ」

 

「なんでティルが決めるのさ!?」

 

「仲良しさんなのですね」

 

 そんな二人の様子を見ながらお茶とタオルを用意してくれている。

 

「あー、えっと…ありがとう」

 

 クレティスはタオルを受け取る。

 

「私はループですよ。 よろしくなのですよ、クレちゃん、ティルちゃん」

 

「よろしく、ループ!」

 

「ループちゃんでいいですよ」

 

 妙な人だが、悪い人ではなさそうだ。

 少なくとも雨の中に放り出される心配はない。

 

「それにしても」

 

 クレティスは小屋の中を見回した。

 

「いろいろあるね」

 

 室内には見慣れない道具や部品がいくつも置かれていた。

 何に使うのかわからない物も多い。

 

「ループは何してる人なの?」

 

「発明家なのですよ」

 

「発明家?」

 

「そうなのですよ」

 

 ループは胸を張る。

 

「キーリル一の大発明家と言っても過言ではないのですよ!」

 

「へえ!」

 

「自称だろ」

 

 ティルが横から言った。

 

「失礼なのですよ、ティルちゃん!」

 

「ちゃん付けをやめろ」

 

「ティルちゃんは細かいですねえ」

 

「……お前と話してると疲れる」

 

 ティルが額を押さえる。

 

 クレティスは笑いながら、再び室内を見回した。

 

 工具。

 

 見たことのない部品に用途のわからない装置。

 どうやら発明家というのは嘘ではないらしい。

 

「なんだろうこれ?」

 

クレティスは筒状の物体を持ってみた。

 

「それはループが最近作った発明品の大生伊藤くんなのですよ」

 

「へー」

 

 伊藤くんをみながらクレティスは変なのーと思う。

 

「床に置くと爆発するという画期的なアイテムなんですよ!」

 

「こわっ!」

 

 思わず手から伊藤くんが落ちる。

 

「あぶねぇ!」

 

 ティルのナイスキャッチ。

 

「うかつにそこら辺を触るな何があるかわからんぞ」

 

「うん……そうだね」

 

 そのとき。

 

「…………」

 

 クレティスの視線が窓に止まった。

 

 外の小屋に何かがいる?

 人だろうか?

 

「あぁ、ちょっと前からうちの小屋を貸している人ですよー」

 

 ボクの疑問に答えるループ。

 

「へぇ、そうなんだ」

 

「何でもするから泊めてくれって言うので、お使いとかたまに頼んでるんですよねー」

 

「ふーん」

 

 それ以上は追及しなかった。

 

 ここはループの家だ。

 

 誰を泊めていようと、誰と暮らしていようがクレティスが勝手に踏み込むことではない。

 

「それよりループ」

 

「何ですか、クレちゃん?」

 

「この辺りの山に詳しい?」

 

「それなりには詳しいですよ」

 

「じゃあさ」

 

 クレティスはティルを見る。

 

 ティルも頷いた。

 

「洞窟を探してるんだ」

 

「洞窟?」

 

「うん! キーリルと隣の国の境にある山脈の中なんだけど」

 

 ループが首を傾げる。

 

「どの辺りなのですよ?」

 

 ティルが受領書から得た場所を説明する。

 

 聞いているうちに、ループの表情が変わった。

 

「ああ!」

 

「知ってる?」

 

「知ってるのですよ!」

 

 クレティスの顔が明るくなる。

 

「ほんと!?」

 

「その辺りなら、心当たりのある洞窟があるのですよ」

 

「やった!」

 

 思わぬところで案内役まで見つかった。

 

「場所、教えてくれる?」

 

「それなら――」

 

 ループは少し考える。

 

「私が案内するのですよ」

 

「いいの?」

 

「もちろんですよ。山の中で迷子になったら大変ですからね」

 

「ありがとう、ループ!」

 

「ループちゃんですよ」

 

「そこ大事なんだ!?」

 

 外を見ると雨も止んでいて、どうやら一時的な雨だった。

 これならすぐにでも行けそうだ。

 

 

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