プレアデスストーリー   作:八束祐

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クレティス編 10

 扉を叩く。

 

「すみませーん! 誰かいますかー!」

 

 少しして、内側から物音がして扉が開く。

 

「はいはい、どなたですよ?」

 

 中から女の子が顔を出した。

 

「あ」

 

「どっしぇー!」

 

「えっ!?」

 

 いきなり驚かれた。

 

「びしょ濡れじゃないですか! そんなところに立ってないで、早く入るのですよ!」

 

「いいの?」

 

「風邪を引いたら大変なのですよ。 ほらほら、そっちのお兄ちゃんもですよ」

 

 後ろから追いついてきたティルを見る。

 

「お兄ちゃん……」

 

「何か?」

 

「いや」

 

 ティルは微妙な顔をしながらも小屋へ入った。

 

「ありがとうございます!」

 

「いいのですよ。 困ったときはお互い様なのですよ」

 

 女の子はクレティスを見る。

 

「ところで、お名前は?」

 

「ボクはクレティス」

 

「ではクレちゃんですね」

 

「いきなりちゃん付け!?」

 

でも、別に悪い気はしなかった。

 

「そっちは?」

 

「ティルだ」

 

「ティルちゃん」

 

「ティルちゃん……って俺もなのか?」

 

「もちろんですよ」

 

 ティルが何とも言えない顔になってるのを見て、クレティスは吹き出した。

 

「ティルちゃんだってさ」

 

「笑うな」

 

「だって似合わない!」

 

「外に戻すぞ」

 

「なんでティルが決めるのさ!?」

 

「仲良しさんなのですね」

 

 そんな二人の様子を見ながらお茶とタオルを用意してくれている。

 

「あー、えっと…ありがとう」

 

 クレティスはタオルを受け取る。

 

「私はループですよ。 よろしくなのですよ、クレちゃん、ティルちゃん」

 

「よろしく、ループ!」

 

「ループちゃんでいいですよ」

 

 妙な人だが、悪い人ではなさそうだ。

 少なくとも雨の中に放り出される心配はない。

 

「それにしても」

 

 クレティスは小屋の中を見回した。

 

「いろいろあるね」

 

 室内には見慣れない道具や部品がいくつも置かれていた。

 何に使うのかわからない物も多い。

 

「ループは何してる人なの?」

 

「発明家なのですよ」

 

「発明家?」

 

「そうなのですよ」

 

 ループは胸を張る。

 

「キーリル一の大発明家と言っても過言ではないのですよ!」

 

「へえ!」

 

「自称だろ」

 

 ティルが横から言った。

 

「失礼なのですよ、ティルちゃん!」

 

「ちゃん付けをやめろ」

 

「ティルちゃんは細かいですねえ」

 

「……お前と話してると疲れる」

 

 ティルが額を押さえる。

 

 クレティスは笑いながら、再び室内を見回した。

 

 工具。

 

 見たことのない部品に用途のわからない装置。

 どうやら発明家というのは嘘ではないらしい。

 

「なんだろうこれ?」

 

クレティスは筒状の物体を持ってみた。

 

「それはループが最近作った発明品の『大生伊藤くん』なのですよ」

 

「へー」

 

 伊藤くんをみながらクレティスは変なのーと思う。

 

「床に置くと爆発するという画期的なアイテムなんですよ!」

 

「こわっ!」

 

 思わず手から伊藤くんが落ちる。

 

「あぶねぇ!」

 

 ティルのナイスキャッチ。

 

「うかつにそこら辺を触るな! 何があるかわからんぞ」

 

「うん……そうだね」

 

 そのとき。

 

「…………」

 

 クレティスの視線が窓に止まった。

 

 外の小屋に何かがいる?

 人だろうか?

 

「あぁ、ちょっと前からうちの小屋を貸している人ですよー」

 

 ボクの疑問に答えるループ。

 

「へぇ、そうなんだ」

 

「何でもするから泊めてくれって言うので、お使いとかたまに頼んでるんですよねー」

 

「ふーん」

 

 それ以上は追及しなかった。

 

 ここはループの家だ。

 

 誰を泊めていようと、誰と暮らしていようがクレティスが勝手に踏み込むことではない。

 

「それよりループ」

 

「何ですか、クレちゃん?」

 

「この辺りの山に詳しい?」

 

「それなりには詳しいですよ」

 

「じゃあさ」

 

 クレティスはティルを見る。

 

 ティルも頷いた。

 

「洞窟を探してるんだ」

 

「洞窟?」

 

「うん! キーリルと隣の国の境にある山脈の中なんだけど」

 

 ループが首を傾げる。

 

「どの辺りなのですよ?」

 

 ティルが受領書から得た場所を説明する。

 

 聞いているうちに、ループの表情が変わった。

 

「ああ!」

 

「知ってる?」

 

「知ってるのですよ!」

 

 クレティスの顔が明るくなる。

 

「ほんと!?」

 

「その辺りなら、心当たりのある洞窟があるのですよ」

 

「やった!」

 

 思わぬところで案内役まで見つかった。

 

「場所、教えてくれる?」

 

「それなら――」

 

 ループは少し考える。

 

「私が案内するのですよ」

 

「いいの?」

 

「もちろんですよ。山の中で迷子になったら大変ですからね」

 

「ありがとう、ループ!」

 

「ループちゃんですよ」

 

「そこ大事なんだ!?」

 

 外を見ると雨も止んでいて、どうやら一時的な雨だった。

 これならすぐにでも行けそうだ。

 

 

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