洞窟を少し進んだだけで、入口から届く光が弱くなった。
「ティル」
「わかってるよ。 光る光るっと」
ティルが魔法を使う。
光球が生まれ、周囲を照らしそれをループが凄いという目で見ている。
「ティルちゃん、ライトが使えるのですね」
「簡単なものだけだ」
「便利なのですよ」
「でしょ?」
「なぜお前が得意げなんだ」
「仲間だからね。 クレティスと大いなる仲間!」
「いつ仲間になった」
「えー、冷たいなぁティルは」
三人はさらに奥へ進む。
クレティスは時折、足を止めて周囲を確認した。
ここはただの自然洞窟に見える。
だが、人が出入りしていた痕跡はあった。
「ここ、誰か通ってるね」
クレティスが足元を見る。
「わかるのか?」
「なんとなくだけどね。 地面とかみたら」
詳しく説明しろと言われると困るが冒険者としていくつもの遺跡や洞窟を歩いてきた。
人が使っている場所と、誰も立ち入っていない場所では空気が違う。
もしかすると人型のモンスターという可能性もあるがめったには会えない存在だ。
「受け渡し場所っていうのは、もしかしたら間違ってなさそうだね」
「問題は、宝石がまだここにあるかだ」
「なかったら?」
「次を探すしかないだろ」
「また?」
「依頼を受けたよな?」
「そうだけどさぁ」
わかったら行くぞと言わんばかりに進むティル。
クレティスはため息をつきながら進んだ。
やがて、道が二つに分かれた。
「どっち?」
「私はこっちだと思うのですよ」
ループが片方を指す。
「この先は少し広くなっていたはずなのですよ」
「じゃあ行ってみよう」
三人がそちらへ進もうとしたその時――
クレティスの足が止まった。
「待って」
ティルも止まる。
「どうした?」
「…………誰かいる」
ループが目を丸くした。
「人なのですか?」
「たぶん」
クレティスは槍を構えた。
奥から複数の足音がする。
「ティル」
「ああ」
ティルも警戒する。
ループは二人の後ろへ下がった。
光の向こうの存在。
最初に見えたのは、教会服だった。
「……あ」
クレティスには見覚えがあった。
「昨日の……」
ロックを連れて退いた、あの人物だ。
そして、その傍らから白髪の男が姿を現す。
「――ロック!」
「――クレティス!」
同時に互いの名前を叫ぶ!
昨日とは違う。
互いに、もう名前を知っている。
「また会ったね」
「俺は会いたくなかったけどな」
「それはこっちも――」
言いかけて、クレティスは教会服の人物へ視線を移した。
ロックと行動を共にしている以上、無関係ではないだろう。
教会服の人物はクレティスではなく――ティルを見ていた。
「見つけました」
その声音に、昨日のような退く気配はない。
クレティスの目が細くなる。
「ロック」
「なんだよ」
「昨日は帰ってくれたけど」
槍を握り直す。
「今日はそういうわけにはいかなそうだね」
「……だな」
説得も無理と判断したクレティスは槍を本格的に構える。
ロックもナイフへ手を伸ばした。
洞窟の空気が変わる。
ループが困ったように二人を見比べる。
そしてティルも、アルド教会の人物から目を離さなかった。
宝石を探しに来たはずだった。
だが、その前に――
ボクたちは、どうやら別の問題を片付けなければならないらしい。