プレアデスストーリー   作:八束祐

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1部クレティス編 15(幕間)

 

 目を覚ますと、最初に見えたのは見知らぬ天井。

 

「……んん?」

 

 ぱちぱちと瞬きをする。

 

 柔らかなベッドにふかふかの枕。

 磨き上げられた家具に上等そうな絨毯が敷かれ。

 壁には絵画まで飾られている贅沢仕様。

 

 少なくとも洞窟でも山小屋でもないし。

 ましてや牢屋には見えなかった。

 

 ベッドの上で身を起こし考える。

 

「これは……」

 

 自分は騎士たちに助けを求めて――そこから先の記憶がない。

 なのに、目覚めた場所はこんなに綺麗な部屋。

 

「まさか!」

 

 ループの目が輝いた。

 

「どこかのお貴族様がループを見初めて、プロポーズのためにさらってきたのでは!?」

 

 だとしたら一大事である。

 天才発明家のループ、ついに玉の輿。

 

「どっしぇー! 困るんですよー! ループちゃんはまだ心の準備が――」

 

「ふっふっふ」

 

 背後から笑い声が聞こえループの動きが止まる。

 

「お目覚めザンスね」

 

 現れた男を見て露骨にがっかりした声で。

 

「チェンジ!」

 

 そう叫ぶ。

 

「何がザンス!?」

 

 大臣も思わず叫んだ。

 

「いきなり失礼ザンスよ貴女!」

 

「いやー、ループにも選ぶ権利というものがあるですよ」

 

「何の話をしてるザンス!?」

 

「プロポーズではないですか?」

 

「違うザンス!」

 

「よかったです」

 

「なんでちょっと安心してるザンス!?」

 

 大臣は咳払いしながら答える。

 

「まったく……話が進まんザンス」

 

 手に持っていた紙を広げる。

 

「ミーが君をここへ連れてきたのは、作ってほしいものがあるからザンス」

 

「作ってほしいもの?」

 

「これザンス」

 

 大臣がテーブルの上に設計図を広げた。

 ループはベッドから降りると、近づいてその設計図を覗き込む。

 

「…………」

 

 さっきまでのふざけた顔が消えた。

 

 紙面を目で追う。

 

 構造や機構に必要とされる出力。

 どれをとっても最新……いや、今の技術で出来そうで出来なさそうな微妙な塩梅。

 

「これは……」

 

「作れるザンス?」

 

「…………」

 

 ループは設計図から顔を上げた。

 

「お断り――」

 

 やりたい! 作りたい! だが待ってる人がいる。

 そう思って断ろうとしたときである。

 

「洞窟にいた二人の命と引き換えはどうザンス?」

 

 言葉が止まった。

 

「…………」

 

 大臣を見る。

 

「今、なんて言ったです?」

 

「聞こえなかったザンスか?」

 

 大臣は笑っている。

 

「洞窟にいた二人。あの二人の命と引き換えなら、作ってくれるザンス?」

 

 クレちゃんにティルちゃん。

 フォルテも洞窟に探しに行ったのは良いが見つかったのだろうか?

 

 ループの頭に二人の顔と一人の居候が浮かんだ。

 

「……二人は、生きてるです?」

 

「さあ?」

 

「…………」

 

「ただ、ミーの頼みを聞いてくれれば、少なくとも悪いようにはしないザンス」

 

 ループは大臣を睨みつける。

 

 断りたい。

 

 こんなやり方をする人間のために、何かを作るなんて嫌だ。

 

 けれど……

 

「…………わかったですよ」

 

 声が低くなった。

 

「作ればいいんですね」

 

「ふっふっふ。 さすがはキーリル一の発明家というだけあって話が早くて助かるザンス」

 

 大臣は満足そうに設計図を置いた。

 

「それでは頼んだザンスよ」

 

 踵を返し部屋を出ていく。

 

「……」

 

 扉が閉まった。

 

「…………」

 

 一人になったループは、もう一度設計図を見る。

 

 先ほどとは違う目で。

 

 じっと――その構造を見つめた。

 

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