プレアデスストーリー   作:八束祐

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1部クレティス編 5

 

「さて、と」

 

 盗賊団の頭が完全に伸びていることを確認すると、クレティスは槍を肩に担いだ。

 

 戦いは終わった。

 

 しかし、仕事まで終わったわけではない。

 

「宝石、宝石……」

 

 床に転がる盗賊たちを避けながら、アジトの中を調べ始める。

 

 棚を開けたり、箱を覗いてみる。

 机の上に散らばった物をひとつずつ確認をする。

 金目の物ならいくらでも出てくるのだが、クレティスが探しているのはそれではない。

 

 まぁ、それはそれとしていくらかはもらっていく。

 

「うーん」

 

 隣ではフォルテも黙々と何かを探していた。

 

 倒れた盗賊には目もくれない。

 棚の中を確認しては次へ行き、積まれた荷物を動かしては奥を調べる。

 

 その様子を見て、クレティスは首を傾げた。

 

「ねえ、フォルテ」

 

「何だ」

 

「さっき探し物があるって言ってたよね」

 

「ああ」

 

「まだ見つからない?」

 

「見つからん」

 

「そっか」

 

 フォルテはそれ以上話さない。

 

 何を探しているのか聞いても、先ほどの調子では答えてくれないだろう。

 

 クレティスは自分の仕事へ戻った。

 

「こっちもなしかぁ」

 

 目当ての宝石は見つからない。

 

 もっとも、最初から盗賊団が持っていると決まっていたわけではない。

 何か知っている可能性があるから調べてこい、という話だったんだし。

 

 ならば――

 

「起こして聞くしかないかな」

 

 クレティスが振り返る。

 

 隈取。

 ちょんまげ。

 相撲レスラーのような格好。

 

「…………」

 

 やっぱり近づきたくないが仕事である。

 クレティスは渋々、盗賊団の頭へ近づいた。

 

「ねえ」

 

 槍の石突きで、つんつんと頬を突く。

 

「起きて」

 

「…………」

 

「起きないと、そのちょんまげをハサミで切るよ」

 

「それだけはならん!」

 

「起きた!」

 

 頭領が飛び起きようとした。

 

「痛っ……!」

 

 直後、フォルテに投げられた身体が悲鳴を上げたらしく、その場でうずくまる。

 

「おのれ……我がヤーパン魂にこのような屈辱を……!」

 

「だからそれ本当にヤーパンの格好なの?」

 

「無論!」

 

 堂々と言い切られた。

 

「今、ヤーパンではこの姿が流行の最先端なのである!」

 

「…………」

 

 クレティスは少し考えた。

 

「絶対嘘だと思う」

 

「なぜだ!?」

 

「だって変態だもん」

 

「由緒正しき民族衣装であると言っておろう!」

 

「はいはいわかったわかった。 それより聞きたいことがあるんだけど」

 

 話が進まないので切り上げる。

 

「宝石について、何か知らない?」

 

「宝石?」

 

「すごく大きな魔力を持ってるらしいんだけど」

 

 頭領の反応を見る。

 

 クレティスは、ここで初めて少し真剣な顔になった。

 

「心当たりない?」

 

 聞き終えたクレティスは、必要なことだけ頭に入れた。

 少なくとも、ここまで来たのは無駄ではなかった。

 

「よし」

 

 立ち上がる。

 

「これでティルに報告できるかな」

 

 あとは盗賊団そのものを騎士団へ引き渡せばいい。

 

 そう思っていると、後ろでフォルテが物音をたてた。

 どうやら、彼も探す場所がなくなったらしい。

 

「見つかった?」

 

「いや」

 

 短い返事。

 

「そっか……」

 

 クレティスは少し残念そうにする。

 

 自分の探し物ではないし、なにを探しているのかすら知らない。

 それでも、一緒に戦った相手が探しているものなら、見つかればいいと思う。

 

「どんな物か教えてくれたら、ボクも探すの手伝えるけど」

 

「必要ない」

 

「そう?」

 

「ああ」

 

 フォルテは出口へ向かった。

 

「あ、もう行くの?」

 

「ここにはない」

 

「じゃあ別のところを探すんだ」

 

「…………」

 

 返事はない。

 

 クレティスは苦笑した。

 

「ほんと喋らないね」

 

 フォルテの足が一度だけ止まった。

 振り返る。

 

「クレティス」

 

「ん?」

 

「またな」

 

 それだけだった。

 今度こそ振り返らずに歩いていく。

 

 クレティスは少し驚いてから、笑った。

 

「うん。 またね、フォルテ!」

 

 クレティスは腕をぶんぶん振りながら答える。

 返事はなかった。

 

「……やっぱりそこは返事しないんだ」

 

 フォルテの背中が見えなくなる。

 結局、彼が何を探していたのかはわからなかった。

 

「さて」

 

 クレティスは振り返った。

 

 気絶した盗賊たち。

 拘束しなければならない頭領。

 

 これを騎士団へ引き渡すとなると――

 

「…………」

 

 思ったより大仕事がまだ残っていた。

 

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