プレアデスストーリー   作:八束祐

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クレティス編 7

 盗賊団の件を騎士団へ報告し終えたころには、出た時から次の日の夜になっていた。

 

「疲れたぁ……」

 

 クレティスは首を回しながら街を歩く。

 

 戦うより、その後の説明のほうが疲れた気さえする。

 

 でも成果はあった。

 盗賊団は捕らえ、宝石についてもわずかながら情報を得たのは大きい。

 

 なら次は――

 

「ティルに報告しないとね」

 

 クレティスは黄金の雄鹿亭へ戻った。

 扉を開ければ、昼間と変わらず賑わっている。

 

 その中を見回す。

 

「あ」

 

 いた。

 

「ティル!」

 

 クレティスは迷わずそちらへ歩いていく。

 

「遅かったな」

 

「遅かったなじゃないよ。 結構大変だったんだから」

 

「逃げ帰ってこなかっただけ上出来か」

 

「だから微妙に偉そうなんだよね、君!」

 

 クレティスは向かいの席へ座った。

 

「それで?」

 

「盗賊団は退治してきたよ」

 

「本当に一人でやったのか?」

 

「一人じゃなかったけど」

 

 ティルの目がわずかに細くなった。

 

「誰かいたのか?」

 

「フォルテって人」

 

「フォルテ?」

 

「うん。 大きくて、ガントレット付けてて、すっごく無愛想な人」

 

クレティスは身振り手振りを使い説明する。

 

「……お前は相手のことをそれで覚えるのか?」

 

「だって凄く大柄で無愛想だったもん」

 

 クレティスは頬杖をついた。

 

「でも強かったよ? なんか探し物してたみたい」

 

「何を?」

 

「知らなーい」

 

「聞かなかったのか?」

 

「聞いたよ? でも教えてくれなかったんだ」

 

「そうか」

 

 ティルはそれ以上、フォルテについて追及しなかった。

 

「で、肝心の宝石は?」

 

「それなんだけどね」

 

 クレティスは盗賊団で得た情報を話した。

 ティルは口を挟まず聞いている。

 

 話し終わると、しばらく考え込んだ。

 

「やはり、ただの宝石じゃなさそうだな」

 

「そんなにすごいの?」

 

「ああ。 俺が調べた限り、それは相当な魔力を持っている」

 

「相当って?」

 

「普通の宝石にも多少は魔力ってのはあるものだが、そんなのと比べる意味がない程度にはな」

 

「へえ……」

 

 クレティスは少し興味を持った。

 

 最初は単なる金欠から引き受けた仕事だったが……

 ところが、どうも思ったより妙なものを追いかけているらしい。

 

「それに」

 

 ティルが続ける。

 

「王家の周辺でも、妙な動きがある」

 

「王家?」

 

 突然話が大きくなった。

 

「どういうこと?」

 

「まだ確証はない」

 

「またそれ?」

 

「確証がないものを、あるように話すよりましだろ」

 

「それはそうだけどさ~」

 

 クレティスは口を尖らせた。

 

 聞きたいことはいくつもある。

 

 ティルは何者なのか。

 どうしてそんなことを調べているのか。

 なぜ自分へこの仕事を持ってきたのか。

 

 そして――

 

 夕方に会った、あの白髪の男。

 

『アイツから手を引け』

 

 ティルについて、何か知っている?

 彼は明らかに何かに警戒していた。

 

「…………」

 

「どうした?」

 

「ん?」

 

「俺の顔をじっと見てるだろ」

 

「ああ」

 

 クレティスは少し考える。

 

「君ってさ」

 

「何だ」

 

「悪いことしてないよね?」

 

「…………」

 

 ティルの眉が動いた。

 

「何だ? その質問は」

 

「いや、なんとなく」

 

「質問が雑すぎるだろ」

 

「じゃあ悪いことしてる?」

 

「なぜそうなる」

 

「してない?」

 

「お前は俺を何だと思ってるんだ」

 

「今日会った中では、一番態度の悪い人候補」

 

「候補が他にもいるのか?」

 

「二人くらい」

 

「……妙な一日を過ごしてきたんだな」

 

「誰の仕事のせいだと思ってるの?」

 

 ティルは答えなかった。

 

 クレティスも、それ以上は追及しなかった。

 

 白髪の男についてこれ以上話すことも――このときは、やめておいた。

 

 何となくだ。

 

◇冒険者心得・その4 【冒険者は、確信もないものはうかつに喋るな】

 

 もう少し自分で確かめてからのほうがいい気がした。

 

「まあ、いいや」

 

「いいのか」

 

「『なせばなるなんとかなる』っていうのがボクの持論だよ」

 

 心得とは別に、これに関しては叔父さんから聞いたことでもない、ボクなりの冒険者理論だ。

 

 たいていは進めば何とかなるだろうと思って行動する。

 そうすれば自ずと道が開けるもんだってね。

 

「さ~て、今日は疲れたし」

 

 クレティスは大きく伸びをした。

 

「続きは明日!」

 

「勝手に決めるな」

 

「じゃあ今日これからやる?」

 

「…………」

 

「ほら、明日でいいじゃん」

 

「最初からそれを狙ってただろ」

 

「なんのことかな?」

 

 クレティスは笑った。

 

 宝石。

 王家の妙な動き。

 探し物をしていたというフォルテ。

 そして、ティルから手を引けと警告してきた白髪の男。

 

 随分と妙なものを抱え込んでしまった。

 

 けれど。

 

「明日は何があるかなぁ」

 

 クレティスの声は、どこか楽しそうだった。

 

わからないことが増えたなら、調べればいい。

 行ったことのない場所があるなら、行けばいい。

 

 その先で何が待っているのか。

 

 それを自分の目で確かめるために、クレティスは冒険者になったのだから。

 

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