プレアデスストーリー   作:八束祐

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幕間だった話と次の話が入ってます。
1000以上じゃないと無理だったんだ……


1部クレティス編 8(幕間)

 その夜――

 キーリルの街のどこか。

 

 昼間までクレティスと行動を共にしていたティルは、薄暗い一室にいた。

 向かいに立っているのは、一人の使用人だった。

 

 しかし、ただの使用人ではない。

 ティルから渡された書類へ目を通す姿にも、その立ち方にも妙な隙がなかった。

 

「状況は?」

 

「現在も調査中です」

 

「そうか」

 

 ティルは短く答えた。

 

 昼間、クレティスとともに見つけた受領書。

 宝石の受け渡しが行われているという、国境の山脈にある洞窟。

 

 少なくとも、宝石を巡って何者かが動いていることは間違いない。

 

「引き続き探れ。 妙な動きがあれば、すぐ俺に知らせろ」

 

「承知しました」

 

 使用人の一人が頭を下げる。

 ティルは次の話へ移ろうとして――ふと止まった。

 

「ところで――」

 

 部屋の隅を見る。

 

「48号はなぜ泣いているんだ?」

 

「うわああああああん!」

 

 さっきから、もう一人の使用人?が床に座り込んで泣いていた。

 

「お尻ぺんぺんされたー!」

 

「…………」

 

 ティルが黙る。

 

「痛かったんだぞー! いっぱいぺんぺんされたんだぞー!」

 

「誰に?」

 

「知らない男ー!」

 

「…………」

 

 ティルは額に手を当てた。

 

「それで、任務は?」

 

「うわああああああん!」

 

「泣くな。報告しろ」

 

「お尻が痛いんだもん!」

 

「…………」

 

 会話にならない。

 

 最初の使用人が静かに口を開く。

 

「申し訳ありません。 この状態ですので、まともな報告はまだ」

 

「見ればわかる」

 

「うわああああああん!」

 

 ティルは盛大にため息をついた。

 

 宝石を巡る怪しい動き。

 正体の見えない相手。

 

 時間をかけて調べるべきことはいくらでもあるというのに。

 

「……こいつは何をしに行ったんだ」

 

「お尻ぺんぺんされたんだぞー!」

 

「それはもう聞いた」

 

「うわああああああん!」

 

 結局その夜は、48号から有益な情報を聞き出すことはできなかった。

 ティルは泣き続ける使用人を眺めながら、もう一度深いため息をついた。

 

 次の日、彼はクレティスとともに、受領書に記されていた山脈へ向かうことになるのだった。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 翌朝――

 

 首都を離れてからしばらくたった。

 見上げると空模様が怪しくなってきている。

 

「降りそうだね」

 

 クレティスが空を見上げながら呟く。

 

「そうだな」

 

「急いだほうがいいかなー」

 

「山に入ってから降られるよりは――」

 

 ぽつ。

 

 クレティスの鼻先に水滴が落ちた。

 

「…………」

 

 ぽつ、ぽつ。

 

「ティル」

 

「言うな」

 

「降ってきた」

 

「見ればわかる」

 

 直後。

 

 ざあああああ――!

 

「うわあっ!?」

 

 一気に雨脚が強くなった。

 

「走るぞ!」

 

「どこに!?」

 

「雨宿りできる場所を探す!」

 

 二人は慌てて駆け出した。

 

 木々の下へ入っても雨は防ぎきれない。

 枝葉を叩いた水滴が次々と落ちてくる。

 

「もう! なんでこうなるのさ!」

 

「俺に聞くな!」

 

「昨日はあんなに晴れてたじゃん!」

 

「天気に文句を言ってどうする!」

 

 クレティスはゴーグルを押さえながら走る。

 

「あ!」

 

「今度は何だ!」

 

「あそこ!」

 

 木々の向こうに、建物が見える。

 小さな山小屋だった。

 

「行こう!」

 

「待て、勝手に――」

 

「すみませーん!」

 

「人の話を聞け!」

 

 クレティスはすでに小屋へ向かっていた。

 

 

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