あの宴会からおよそ3年、俺は13歳になっていた。
宴会の後、いくら『森の賢王』の縄張り近くと言ってもやはりモンスターは脅威であると確信した俺は、その日から毎晩のようにモンスター退治に勤しんだ。
基本的には戦士系ビルドでゲームとリアルの感覚の差を埋めるように戦い、飽きてきたら魔力系や死霊系、時折信仰系
並行してアイテムボックスに詰め込まれているアイテムの確認作業も行っていたので、モンスター駆除と確認作業は遅々として進まなかった。
そんなある日、ようやく消耗品の仕分けが終わったので次は装飾品をと思い、適当に装飾品を取り出していくとその中にある指輪を発見した。
『
これを身につけていれば睡眠や飲食が不要になる素敵アイテムだ。
最初からこれを身に付けていればこんな苦労はしなくて済んだのにと頭を抱えたが、この指輪を持っていることを忘れていた己の責任なので誰にも文句は言えない。
そもそも5年ぶりにアイテムボックスを開いたのだ。
中身を忘れていても仕方ないと思う。
残るは本丸、
本当は最初に
今日までの努力を思い返せば、本当に俺はよく頑張ったと思う。
アイテムボックスというのは本来そこまで容量のあるものでは無い。
プロゲーマーであり、『ユグドラシル』が出世作である俺は当然最大まで課金して容量を増やしているのだが、それでも1000を超えるアイテムを持ち運ぶことは不可能だ。
ならば何故俺がこれだけのアイテムを保持できているのかと言うと、答えは単純で『ある方法』を使ってほぼ無限にアイテムを保持出来るようにしているからだ。
その方法と言うのは先程話に出てきた
俺が保有している
これだけ聞けばとても便利なアイテムなのだが、デメリットとして保持者がキルされた時に確定でドロップしてしまい中身ごと奪われてしまう。
なのでこれを使う際には細心の注意が必要なのだが、俺がこれを使う事を決めた時には既にトッププレイヤーの何名かは引退した後だったのであまり深く考えることなく使うことを決意した。
死んでドロップしたら引退すればいいだけだし。
さて話を戻すが、この中にはプロゲーマーが集まって作ったギルドメンバーたちの遺品がこれでもかと言うほどに詰め込まれていたのだ。
所属メンバー全員がプロゲーマーであったためか、ユグドラシルの過疎化が始まると割と早い段階で皆引退していった。
いつの間にか出来ていた引退するプレイヤーは残っているプレイヤーに自分の所持していた全てのアイテムを遺品として配って辞めるという暗黙のルールのおかげで、最後まで残った俺のアイテムボックス及び乾坤袋の中にはプロゲーマーたちが集めまくったアイテムが収納されていたのだ。
中には戦士職初期装備の剣や魔法職初期装備のローブまで入っていた。
一体誰がこんなモノ残していたのか疑問である。
話がだいぶ逸れたが、プロゲーマーギルドに所属していたため、当然
それを今から一つずつ鑑定していくのだ。正直胸が踊る。
「まずは『乾坤袋』だけど……これは多分そのままだからいいとして、『アイギスの盾』だな。《
魔法を唱えると、頭の中にアイテム名と説明文が浮かび上がってくる。
◇◆
アイギスの盾
見た目はみすぼらしい皮の盾であるが、その中心に埋め込まれている『ゴルゴンの瞳』を見た者を強制的に石化させる盾。
完全耐性すら突破する
◇◆
「これは効果変わってないな。次は『ミョルニル』だな」
◇◆
『ミョルニル』
破壊不可オブジェクトすら破壊する槌。
対物兵器であり、肉体にダメージは及ばない。
◇◆
「これも変化なし。装備破壊くらいにしか使えないよな」
これを入手した時にはギルメンで大いに盛り上がり、
もちろん、物凄く恨まれた。
そのせいで過疎化が進んだような気も……関係ないと思いたい。
「最後に……」
アイテムボックスから『エンゲージリング』を取り出した瞬間、世界が止まったかのような衝撃を受けた。
「なんで……」
俺の右手の上にある小さな指輪。
その台座に飾られている宝石は青く輝いている。
「青……所有者がログインしている印……」
エンゲージリングの宝石は普段は無色透明である。
所有者がユグドラシルにログインしていると青く輝き、全ステアップの効果が発動している時は赤く輝く。
この指輪が青く輝くということは――
「この指輪のもう一人の所有者はスーちゃんなはず……」
俺は慌てて《
「変質……していない……」
ユグドラシルの時と全く同じ説明文が頭の中に流れ込む。
変質していないということは……俺の持つエンゲージリングと対になる指輪がこの世界に存在しているということになる。
「誰が……まさか……」
ユグドラシルでこの指輪の対となる指輪を持っていたのは当然スーちゃんだ。
スーちゃんの最後のログインユグドラシルの最終日になっていたが、あれは俺にメールを送るためにログインしていたと考えると純粋にプレイするためのログインは俺と別れる前日だったはず。
その日はもちろんログアウトの瞬間までスーちゃんの指にはエンゲージリングが装備されていたため誰かに奪われたということは考えられない。
だとすれば――
「もしかして――スーちゃんもこの世界に?」
世界から全ての音と色が消えたような気がした。