オーバーロード〜約束の指輪〜   作:愛飢夫

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デビュー

 この体の物覚えが大変によろしいのか、博士系や研究者系の職業(クラス)構成でお勉強したからか、一週間程で文字を習得した俺は遂に一人で冒険者組合へとやってきた。

 

 本日の装備は……武器に戦士職初期装備の剣。防具はユグドラシル全プレイヤー初期装備の『旅人の服』と『旅人のマント』『旅人のブーツ』その他と見える部分は全て初期装備コーディネートである。

 

 職業(クラス)構成は『戦士(ファイター)』レベル5のみ。

 

 普通の農民である父のレベルが4であることから、多分訓練を積んだ駆け出しならこのくらいのレベルだろうと思ってのことである。

 

 ちなみにさすがにこれだけでは怖いので、各種耐性系の腕輪やネックレスを服の下に装備している。

 

 なんというかこの世界、装備の重ね着が出来ちゃうんだよね。

 なので耐性アクセの他にも聖遺物級(レリック)のインナーを着込んでいるので見た目と比べて防御力は物凄く高い。

 これなら早々死にはしないだろう。

 

 死んだとしても即時復活のアクセサリーも身に付けているので最悪問題は無い。

 いや、キチンと発動するかどうかが問題ではあるのだけれど。

 

 しっかりと首元のプレートと装備に不備が無いかを改めて確認して冒険者組合の扉を開く。

 

 中に入ると一瞬先輩冒険者の視線が俺に集中するが、別に気にするようなことでもないので入ってすぐ左手にある掲示板の前まで足を進めて銅級(カッパー)でも受けられる依頼を吟味する。

 

「うーん……銅級(カッパー)で一人で受けられる依頼……」

 

 上から順に視線を走らせるが、街の中でのお使いクエストくらいしか見当たらない。

 

 もっとこう……討伐系って無いの? ドラゴンとか。

 

「そういえば……王女様の政策提案で今年からモンスターを倒して証明部位を回収して来れば報奨金が貰えるんだっけ?」

 

 カルネ村からの道中でベロテさんがそんなことを言っていたな。

 報奨金が出るから倒したゴブリンやオーガの耳を証拠と切り取るんだと教えてもらった。

 

 なら……依頼受けなくてもそれでいいんじゃね?

 

 多分正式に依頼として出ているモンスターを依頼を受けて狩る方が貰える金額が多いのだろうけど、そもそも銅級(カッパー)の俺には受けれないんだから関係ない。

 

 街の中で荷運びなんかをするよりはそっちの方が稼げそうだし、何より楽しそうだ。

 

「よし!」

 

 方向性も決まったのでその場でひとつ頷いて冒険者組合の建物を出る。

 そのまま城壁へと向かい、検問所の兵士に一声かけて外に出る。

 

「さて……街道から外れれば見つかるかな?」

 

 ゴブリンなんて街道から逸れて草原を進んでいれば腐るほどいる、そんなふうにベロテさんからは教わっている。

 以前は大量発生するとようやく依頼が出て、受注した冒険者が狩っていたらしい。

 

 そういえば昔ユグドラシルのフレンドが「村娘がゴブリンに襲われる作品は名作。でも竿役がボブゴブリンなら駄作」と言っていた記憶があるんだけど、この世界のゴブリンって女性を襲ったりするのかな?

 もしそうだとしたら俺はその手のジャンルは苦手なのでゴブリンは見つけ次第根絶やしにするんだけど。

 

「よし、とりあえず行ってみよう」

 

 そんな事を考えつつエ・ランテルの街から出て少し街道を歩き、適当なところで街道から外れて草原へと足を踏み入れる。

 

「お、いるいる……」

 

 街道を外れて20分ほど歩くと、チラホラとゴブリンやそれを狩る冒険者の姿が目に入ってきた。

 中には女性冒険者の姿もあるが、男性冒険者と比べて特別狙われているような様子は無さそうだ。 

 

 これなら根絶やしにはせず程々に狩っとけばいいだろう。他の人の獲物も残しておかなければ。

 

「横殴りはマナー違反だから……」

 

 ユグドラシルで横殴りをしてしまうと、先に戦っていたプレーヤーから物凄く怒られるし、場合によっては背後から切り付けられる事も少なくない。

 なので誰とも戦っていないゴブリンを探してみると、すぐに見つけることが出来た。

 

「そこのゴブリン! 君に決めた!」

 

 腰の剣を抜き、見つけたゴブリンへと向かって駆け出す。

 

「ニンゲ……」

「ほいっと!」

 

 こちらに振り返ったゴブリンが何か言おうとしていたが、気にせず首チョンパ。

 

 なんか「ニンゲ……」って言ってたけど、この世界のゴブリンって喋るの? ユグドラシルのゴブリンは「ギャギャ!」とか鳴いてた気がするけど。

 

「まぁ気にしても仕方ない。それより耳だ耳」

 

 持っている剣で倒したゴブリンの耳を切り取り、バレアレさんにもらった古い腰袋に放り込む。

 

「さて次……ん?」

 

 次の獲物を探そうと立ち上がり再び辺りを見渡していると、ゴブリンと戦っていない何人かの冒険者が驚きの目でこちらを見ていることに気がついた。

 

 なんだろう?

 

 内心首を傾げながらさらに周りの様子を伺ってみると、5人チームの冒険者がゴブリン1匹を囲んでタコ殴りにしている姿が目に入った。

 

「ありゃ? もしかしてゴブリン瞬殺ってよろしくない?」

 

 ベロテさんたちが簡単に倒していたので気にしていなかったが、銅級(カッパー)がゴブリン瞬殺は驚かれることなのかもしれない。

 

 現にあっちの方で5人組のパーティがゴブリン2匹から逃げてるし……

 

 これはやっちまったかもしれん。

 

 そもそも装備もアレだわ。

 あっちの人なんて村人が着てる服そのままだし、武器として持ってるのはただの木の棒だ。

 今にも折れそう。それ、そのまま拳で殴った方が強くない?

 

 どうやらこの初期装備ですら駆け出しには豪華すぎだったようだ。

 

「まさかこの世界の駆け出しにとってゴブリンですら強敵なの……?」

 

 レベル低すぎるだろ……

 

「ま、いっか」

 

 他人は他人、俺は俺。

 細かいことを気にするのは辞めよう。

 

「見たけりゃどうぞ見ればいい。いくぞー!」

 

 こうして俺は次の獲物へと向かって駆け出した。

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