「お父さん! お母さん!」
「ンフィーレア!」
村長宅に到着し、扉を開いた瞬間、ンフィーレアが駆け出しバレアレ夫妻に抱き着いた。
「よがっだ……よがっだよぉ……」
「ンフィーレア、心配かせてごめんな」
「私たちは無事だから、もう安心していいのよ」
パパーレアとママーレアは飛び込んできた息子を受け止め、強く抱き締めた。
助けてよかった。
素直にそう思える尊い光景である。ちょっと泣きそうだ。
「よかったなぁ……よかったなぁ……」
ここで俺が泣くのは少し違うと思い、連続瞬きで涙を散らしていたのだが、隣に立っている我が父はそんなことはお構い無しにと号泣している。
見れば村長夫妻も目頭を抑えており、周りの大人が泣いているからか釣られたようにエンリも泣き出してしまった。
これでは泣いてない俺が薄情者みたいじゃないか……
瞬きを止め、涙で目が潤み始めた頃、村長宅の外から大きな声が聞こえてきた。
「こりゃめでたい! 今日は宴だ! バレアレさん生還の祝いの宴だー!」
誰が発したかは周りわからなかったが、その声に呼応して「おー!」や「飲み明かすぞ!」などの声も聞こえてきた。
それからの村の動きは早かった。
村長が陣頭指揮を取り、宴の準備が開始され、村長夫人が村の女衆を引き連れて料理を作る。
俺たち子供組は、子供組リーダーに指名された俺に率いられ、自分たちに出来るお手伝いをこなし、あっという間に宴会の準備が整った。
一応、リーダーに指名された時に
「それでは……バレアレさん夫妻と冒険者の方の生還を見せた祝して……乾杯!」
「かんぱーい!!」
村長が乾杯の音頭を取り、俺たちは手に持ったコップを掲げて宴会は始まった。
俺たち子供組の飲み物は当然酒では無い。
森で採れる果物や蜂蜜を水で割ったジュースである。
普段は飲ませて貰えないのだが、こういう時だけは特別だ。
普段とは違う食事に飲み物にテンションが上がる。
これは仕方ない。俺は子供なのだから仕方の無いことなのだ。
宴会は大いに盛り上がり、一人また一人と大人たちが潰れて倒れたり、帰ったりしていく。
あそこに倒れているのはうちの父だ。
なにやってるんだよもう……
「アレス、ネムも寝ちゃったから私たちもそろそろ帰りましょう」
「わかったよ。でもお父さんはどうするの?」
「放っておきなさい」
「はーい」
もう帰るとのことなので、エンリはどこかと探してみると、楽しそうにンフィーレアとお喋りしているのを発見した。
「エンリ! そろそろ帰ろうだって!」
「えー! まだンフィーとお喋りしたい!」
「わがまま言わないの。ネムも寝ちゃったんだから仕方ないだろ?」
「でもー!」
エンリはまだ帰りたくないのだろう、帰るよと言う俺に対してエンリは頬を膨らませて抗議してくる。
大変に愛らしいのだが、エンリを残して帰る訳にはいかないので許す訳にはいかない。
「帰らないの?」
「帰らない!」
中々に強情だ。
そんなにンフィーレアと離れたくないのかな?
そうだったらお兄ちゃん少し寂しい。
「じゃあどうするの?」
「ンフィーとお喋りするの!」
「そっか……ならお兄ちゃんは帰るけど、エンリは一人で帰れるの?」
「それは……」
やはり夜道を一人で帰るのは怖いらしい。
よし、この線で攻めれば……
「エンリ、僕もそろそろお父さんとお母さんのところに戻るから、アレスくんと一緒に帰りなよ」
「えー」
よしンフィーレア、ナイスだ!
「また明日遊ぼう?」
「うー……ンフィーがそう言うなら……」
口を尖らせ、渋々といった様子でエンリは立ち上がり、俺の隣に歩いてきた。
ナイスだンフィーレア。褒めて遣わす。
「バイバインフィー! また明日ね!」
「う、うん、また明日!」
気持ちを入れ替えたのか、エンリが笑顔でンフィーレアに手を振ると、ンフィーレアは頬を赤くさせながら手を振り返してきた。
ンフィーレア、貴様……
うちのエンリに対して赤くなるなんて、つまりはそういうことなのか?
指揮官系の職業でビルドを組んでいて良かった。
死霊系
エンリを見て胸がドキドキするのならその鼓動を止めてやんよ……!
「お兄ちゃん、帰ろ?」
「うん」
殺意を込めた瞳でンフィーレアを睨みつけていたが、隣にいたエンリが俺の手を握ってきたのでンフィーレアから視線を外してエンリを見る。
癒された。俺は心から癒された。
そういえばなんかンフィーレアがびっしょりと汗をかいているのだけど、どうしたのかな?
風邪ひくよ?
エンリの笑顔でンフィーレアに対する怒りも消え去ったので、俺たちは4人で肩を並べて自宅へと帰る。
父? 朝には帰ってくるんじゃない?
「じゃあアレス、エンリ、おやすみ」
「「おやすみなさい」」
家に到着し、簡単に汚れを落として布団に入る。
ンフィーレアの両親を助けることが出来て良かった。
心からそう思いながら、俺はまぶたを閉じた。