悪役の魂と共にMCU転生したので生き延びる 作:ゆかりちゃん@良識のある物書き
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誤字報告ありがとうございます!
感謝致しますm(*_ _)m
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バナー博士が、マヤ・ハンセン博士の論文に対して天才ゆえの勝手な深読みとインスピレーションを胸にブラジルへと去っていった後。
NYマンハッタンの一角にあるオズコープ社のラボでは、義兄マイケルが不眠不休で研究に没頭していた。
───そろそろ腕時計型麻酔銃を開発して眠らそうと考えている。
「素晴らしい。バナー博士から提供されたガンマ因子の生体データ……この異常な細胞増殖と自己修復の代謝アルゴリズムを解明できれば、僕やマイロの難病を根治する完全人工血液が完成する。それだけじゃないぞッ」
マイケルは顕微鏡から目を離し、モニターに映し出される緑色の遺伝子データを愛おしむように見つめた。
その瞳には、かつて病床で苦しんでいた少年ではなく、命を救うことに執念を燃やす一人の偉大な医師としての光が宿っている。
「心拍数の上昇に伴うガンマ因子の活性化を抑える特殊な酵素触媒……これさえ精製できれば、ブラジルへ向かったバナー博士の身体を元に戻す『鎮静化薬剤』すら作れるかもしれない。待っていてくれ、バナー博士……僕たちが必ず、君をその呪いから解放してみせる」
病に苦しむ人々を救い、自分を信頼してくれたバナー博士の苦痛を和らげるため、純粋な使命感と情熱で命を削るように実験を重ねるマイケル。
まさに科学者の鑑であり、光のヒーローそのものの姿であった。
一方、その頃、私が引きこもっている別室のラボでは、惨烈な事故が発生していた。といっても、自業自得の一面が強い。
「……なぁ、ゾラ爺。これ、ハルクの過剰代謝がどうとか、チタン合金フレームの剛性がどうとかいう以前の問題じゃないか?」
私は腐れた生肉の臭いと、飛び散った人工血液でグチャグチャになった実験台を前に、呆然と佇んでいた。青紫のカラーボールを投げ付けられたのかと錯覚する程、酷い有様だ。
因みに、ベースとなっている義兄製の人工血液は青色で、混在させている主な薬品郡が毒々しい色の組み合わせである。そして、その中で最も危険な配合物が、ブルース・バナー博士の赤色の血液。
混ぜたら、混ぜたら、何色なるかな〜。
───猛毒ッッ!!!
という笑えない冗談はさておき、テスト台の上では、自衛用外骨格『
それもそのはず。
「コレ、やっぱり生体筋を使用する以上、心肺機能は必要不可欠じゃね?」
善良なる精神を持つバナー博士が、同じく善良なる精神を持つ義父や義兄を信頼して預けていった血液サンプル。
コレを勝手に濃縮して、本人の同意を得ずに培養。
第二次世界大戦時にバッキー・バーンズに施したヒドラ式人体改造技術と、
カルバー大学でのデータから読み解いた計算式を元にハルク式超人血清のサンプルを作り上げたのである。
行政職員として安全基準に反しているものを見過ごせない私は、ゾラ爺の意見を押し切って、そのサンプルを数千倍希釈した。
そんな激薄超人化血清を配合した人工血液を独自に作り上げた訳であるが……。
『……ぬ、ぬぐぐぐぐ……ッ!! 黙れアルバ!! ワシとて解っておるわ!』
正直な所、ハルクの血なら瞬時に且つ永続的に爆発的な力を得られるとか思った。
しかし、いくらなんでも生体筋である以上、どうしても酸素は必要な様だ。
『そもそも濃度が薄過ぎるんじゃよ。神の血の無駄遣いに等しい。こんな濃度なら超人どころか、人類の上澄み程度にしかなれんわ』
安全性に配慮すると、ハルクの血の力を最大限に引き出す事は叶わず、人工血液を絶え間なく循環させ、酸素を取り込んでガス交換する必要が出てくる。でなければ、目の前の萎え筋の如く、人工的な生体筋は一瞬で酸素欠乏を起こして固着するだろう。
「 人工心肺の超小型化ってこの2008年の設備で出来るのか?でも、阿笠博士は小学生用の小さなシューズの中でそれを成立させてるんだよな」
ゾラ爺が脳内で不快な金切り声を響かせている。
阿笠博士に対する異常な劣等感のせいで、基礎的な解剖学・生理学の前提を見落としていたらしい。
『その東洋のジジイの名前を出すなと言っておろうがッ!! ぬぅ、ならば循環系を無理やり外部バイパスで押し込むまでよ!!』
ゾラ爺がキーキーと愚痴を吐きながら、脳内で試作2号機の修正回路を叩き出す。私はそれを受けて現実に投下していく。
もちろん、元公務員として労働安全衛生法とバイオセーフティレベルの徹底は怠らない。扱っているものがMCUにおける特級呪物そのものだからだ。
防護服を着用し、厚手の耐薬品手袋をはめ、頭には密閉式のフルフェイス防護マスクと保護ゴーグルを装着。
「保護具着用ヨシ! 安全基準適合ヨシ!」
と指差し確認まで行い、完全防護の状態で実験を再開する。
今回、数時間掛けてようやく作り上げたのは、自衛用外骨格『
それの内、酸素ボンベと電動小型オイルポンプを力技で圧入した試験型循環器系装置のテストを行う。
───が、ココで私は後戻り出来ない失敗を犯してしまったのだ。
ブシャアッ!!
「うわっ!? 」
ポンプの脈動圧力と生体バルブのタイト調整が狂い、人工筋肉の接続チューブが勢いよくスポンと抜け落ちる。
加圧された激薄超人血清入りの人工血液が、私の顔面とThinkPadの画面に逆噴射した。
完璧な防護マスクのおかげで顔面への着弾自体は防げた。
防げたのだが——あまりの血飛沫にマスクの視界が毒々しい青紫に染まり、吸気フィルターが濡れて息が詰まる!
「しまっ……前が見えなっゲホッ! 一旦脱ぐ……!」
視界不良と窒息感によるパニックで、私は反射的にマスクのロックを外して顔から引っ剥がした。
——それが命取りだった。
……プシューーーッ、ブシャッ!!
凄まじい圧力の影響を受け、異次元の放物線を描いているホース。
その先端部から噴き出した人工血液が、パニックを起こして叫び続けている私の口内にホールインワン。気道に入った。盛大にむせる。
刹那、ゾラ爺が脳内で叫んだ。
『ぬおおおっ!? 待て、ポンプの戻り弁の圧力が強すぎる! 人工筋肉側の毛細血管構造が破裂しておるぞ!!』
「ペッ、ペッ……!! 不味い。オエェェ。なんか苦味もある。ゾラ爺、流体制御の計算大雑把すぎでしょ! コレ、明らかに生体筋が痙攣を起こして千切れてるよ!」
脳内のゾラ爺に文句を言い終えた私は幾分か冷静になった。
それ故、衝撃的な事実に気が付いてしまった。
「あ、やべ。飲んじゃった。しかも、結構飲み込んだかも」
超激薄まで希釈しているとはいえ、ハルクの血とよく分からない様々な薬品が混ざったものを大量摂取してしまったのだ。
「待て待て待て待て、アボミネーションなるて!緑の変態半魚人成りたくない」
『なんじゃ、ソレは。精々、少し元気な7歳児になるだけじゃわい。はよ、実験の続きをせんか。次は戻り弁を調節するぞい』
この後、滅茶苦茶、ゾラ爺と喧嘩した。