【祝日間総合2位】【PHASE1 完結】悪役の魂と共にMCU転生したので生き延びる 作:ゆかりちゃん@良識のある物書き
「赤タグ急患は第2野外オペテントへお願いします。現在、3名の患者が待機状態です」
義兄マイケルの切迫した一喝が、仮設された野外病院に響き渡る。
仮設と言えども、オズコープ社製の装甲車両が周囲を隙間なく囲む事により、一定の安全が保たれている。
その重厚な鉄の壁が外からの爆音や衝撃を遮断する。お陰で、貧弱な医療従事者が極度の緊張状態に陥らず、治療に専念出来ていた。
野外病院内には消毒液と血の匂いが充満している。
自家発電機の重低音が響く中、白衣を赤く染めた医療スタッフたちが、区画整理された仮設オペ室の間を鬼気迫る表情で駆け回っていた。
「黄色タグの傷病者は聖マタイ病院へ回しています! マイケル義兄さん、聖ルカ病院のベッド空き数はあと4つ。溢れたら聖ヨハネ病院へ分散搬送になりますが、あそこは受入病床数が少ない上に、ここからかなりの距離があります」
私はその傍らでノートPCの画面を鬼の形相で叩いている。
マイク付きヘッドフォンを嵌め、近くの病院と連絡を取り合っていた。
「マイケル社長! 57丁目方面からの傷病者、さらに40名到着します! 既存の救急車じゃ追いつきません!」
別の回線から連絡が来る。
最前線で宇宙人どもと戦闘している超人レスキュー部隊からだ。
義兄は私を見て頷いた。
と、言う事は、受け入れるという判断か。
「了解。オフィスに連絡を入れて搬送車両を手配させます」
この場に置いて、唯一、医師でもなければ、看護師でもない私は、
義兄が命を救う作業に100%集中できるよう、搬送ルートと物資の最適化に徹している。
───だが。
修羅場の現場に、さらなる絶望的な悲鳴が上がり、ストレッチャーが雪崩れ込んできた。
「社長!59丁目でビル崩落に巻き込まれた重症者です!」
「……っ!? これは……!」
運ばれてきた傷病者の姿に、現場の医療スタッフたちが息を呑む。
男性患者の右脚には、太い鉄骨が深々と刺さり、完全に貫通していた。
抜けば出血多量で死亡。
抜かなければ数分で組織が壊死して毒素が全身に回だろう。
更に、左腕は爆風で飛散した巨大なガラス片が無数に突き刺さって肉が引き裂かれ、上半身全体がチタウリの銃撃を受けたのか、真っ赤に爛れていた。
息も絶え絶えで、バイタルはもはや停止寸前。ほぼ黒タグの手遅れな状態であった。
「ダメです。動脈に入っています。鉄骨を抜いた瞬間に大量出血で死ぬでしょう」
「腕も神経までズタズタですね。足も腕も切断するしかないかと」
スタッフたちがパニックを起こしかけたその時、義兄は冷静に判断を下した。
「諦めないでください。大丈夫です。オズコープならば、貴方を生かしてみせます。アルバ、エクストリミスの残量は?」
「残り34%」
義兄はそれだけ聞くと、神業のような手捌きで鉄骨が引き抜き、同時に黄金に輝くエクストリミスを傷口へ投与した。
次の瞬間───患者の右脚と左腕、そして爛れた皮膚が真っ赤に発光を始める!
シュウゥゥゥゥゥ……ッ!!
激しい蒸気とともに、潰れた大腿動脈が瞬時に繋がり、破壊された神経と筋肉が超勢いで再構築されていく!
無数のガラス片が弾き出され、黒く焦げた皮膚が脱皮するように剥がれ落ちると、そこには赤ん坊の素肌ような健康で新しい皮膚が再生されていた。
「バイタル安定。組織再生率76%。タグの色を変更してきます」
看護師は奇跡を前に驚きながらも、自身の職務を遂行する。
段々、この光景に慣れてきたのかもしれない。
「よし、次の患者を! 」
マイケルの力強い言葉に、医療スタッフたちの目に希望が宿った。
オズコープ社は、デス様規定はしっかりと守りつつ、
特許は取りつつも、外部にも提供している。
悪用しようと独自に研究した馬鹿がデス様に処されているらしいが、
その辺りは自己責任でよろしく頼むぞ。
「赤タグ、1名搬送! 40代男性、チタウリの爆風による重度熱傷および腹部穿刺創。血圧低下中、循環不安定です」
「血圧82/48、脈拍108、SpO₂ 88%!」
またもや、重症者が運び込まれてきた。
看護師から情報共有を受けつつ、適切な判断を下そうと現場が一致団結した、
その刹那────
───ガガガガガガガガッ!!
「ひっ……!? エイリアンの墜落機だ!!」
上空の戦闘で撃ち落とされたチタウリの大型ホバーバイクが、黒煙を吹き出しながら野外仮設病院へ急降下してきた。
更に、機体には瀕死で虫の息となったチタウリの兵士がしがみついており、最後の力を振り絞って主砲を乱射している。
ドガァァァァンッ!!!!
「くっ……!?」
オペテントの支柱が吹き飛び、鋭利な鉄骨とガラス片が周囲に飛散する。
独立した電源ケーブルが引きちぎられ、術室の照明が明滅した。
そして───倒れてきた瓦礫から咄嗟にスタッフを庇った義兄の右腕に、太い鉄骨が深く突き刺さった!
「マイケル義兄さんッ!?」
「いたいっ……! 大丈夫だ、骨は折れていない……!」
鮮血がマイケル義兄さんの白衣を真っ赤に染め上げる。
あの優しく、生命を救うためだけにその繊細な指先を使う天才医師の右腕が、宇宙人の攻撃を喰らって傷付いたのだ。
何故、何故なのだ。
この善良過ぎる義兄は、お前ら宇宙人すらも救おうとしたがるくらい善良な人間なんだぞ。
オズコープの光であり、私の大切な兄を!尊い兄貴を!
貴様ら、許せん。
その瞬間、私の頭の中で全ての思考が弾け飛んだ。
私の煮え滾るような殺意と激怒に反応して、己の血肉に眠っていたハルクの意思が熱く湧き上がる。
「アルバ!? 待て、どこへ───」
制止しようとするマイケル義兄さんの声を振り払い、私は足元の除細動器を拾い上げると、黒煙の中から這い出てきた瀕死のチタウリ兵に向かって一直線に突進した!
『ギ……ギギャ……ッ』
虫の息のチタウリ兵が、気味の悪い光線銃を私へ向けようとする。
だが、力強く踏み込んだ私は最短距離で肉薄する。
余りにも激しい怒りにより、死を恐れるだとか、宇宙人の異形な容姿にビビるという事がなかった。
躊躇無く、射線に身を晒し、されど、撃たれるよりも先に拳を振るい抜く。
ガキィィィィィンッ!!!!
1度で終わらす気は無い。
何度でも拳を振るう。
振り抜いた拳を頭上に掲げ、殺意を込めて振り下ろす。
私の超人的な怪力と地球の重力が、手にした除細動器へと一気に集中した。
振り下ろされた除細動器がチタウリ兵の胸響装甲を強打し、甲高い金属破壊音とともに異星人の胸郭を叩き潰す。
『ガハッ……!?』
「死ねぇぇぇッ!!ゴミが!クソぉ、死ね!兄貴に謝れ!謝罪しろ!死ね!」
ドバシッ! ガゴッ! ズドッ! ズバババババッ!!!!
「ひえっ……!? ア、アルバくん?」
「やめろアルバ! もう息をしていない! 相手はもう死んでいる!!」
驚く周囲。
義兄が負傷した腕を庇いながらも私の横までやってきた。
「ならば、生き返らせてもう一度殺すまで……離れて下さい!除細動器を発動します」
バチバチバチィィィッ!! ドガッ! ガゴッ!!
周りの医療スタッフが恐怖で引きつり、義兄が止めに入るのも中々耳に入らない。
どうしても怒りが暴走し、理性を半分塗り潰している状態であった。
呼吸の止まった異星人に電気ショックを叩き込んで脈を無理やり戻し、再び激昂の鉄槌を叩き込む。
私は白衣を返り血で真っ赤に染め上げながら、チタウリ兵が形をなくしてただの肉塊になるまで、除細動器だったものを叩きつけ続けた。
ハッとして正気に戻った時、私の前には原型を留めていないチタウリの残骸と、ひたすら引きまくっている現場スタッフたちの視線だけが残されていた。
「……ふぅ、ふぅ。……はっ! マイケル義兄さん!」
ハッと我に返った私は除細動器を放り投げる。
まだムカついているので、肉片を蹴り飛ばす。
息を整え、マイケル義兄さんの元へ駆け寄った。
「義兄さん! 腕は!? 早くエクストリミスを使って下さい。ほら、まだ残りはありますから!」
「……あ、ああ。君のその……驚異的な腕力には脱帽だよ、アルバ……」
引きつった苦笑いを浮かべつも、私がエクストリミスを使おうとすると抵抗する義兄。
だが、そんな貧弱なパワーでは私に抗う事は出来ず、結局、義兄は自らの腕にエクストリミスを使用した。
即座に傷口が塞がり、それを見て、ようやく私は安堵した。
一方、義兄は再び瞳に強い意志を宿らせてメスを固く握り直し、次の患者を呼び込む。いや、もう後方に下がってください。本当に!
「全員、持ち場に戻って下さい。敵はアルバが駆逐してくれました。電源ケーブルをつなぎ直し、オペを再開しましょう。 誰一人として死なせません!」
「「「は、はいぃぃぃッ!!」」」
ブチギレた私の狂行のお陰か、パニックになりかけていた現場の空気は一瞬で締め直され、恐怖と熱狂の交錯する中で救護活動が再開された。
傷病者の胸元に容赦なく貼り付けられていく色分けされたタグ。
赤、黄、緑、黒。
冷徹で、残酷で、だが一人でも多くの命を救う為のトリアージ。
黒色が貼られた人達は、ちゃんとデス様の抱擁を受ける事が出来ただろうか。
罪の無い善良なる一般市民が理不尽に殺される現状が腹立たしい。
宇宙人どもは絶対にぶち殺す。
まだ子供の私ではこの手で殺せる数はせいぜい数匹だ。
しかし、原作知識を使い、オズコープ社を上手く運用すれば、
私の代わりにバッキーや超人部隊が沢山シバキ回してくれるだろう。
宇宙人どもは地球よりも基礎的なスペックが高い。
身体能力、装備の質、こちらは使えない魔法。
分かっている。だからこそ、私は準備を怠らない。
今回、奴等にも通用する火力を準備すべく、
殺人を犯してまでヴィブラニウムを手に入れた。
エクストリミスの開発に専念する為に、
アルドリッチ・キリアンには事故死して貰った。
私はオズコープの皆を守る為、地球を守る為ならば、
原作を強引に粉砕し、血と泥に塗れてでも、命を繋ぎ止める。
空の上でアベンジャーズが華々しく戦っている。
S.H.I.E.L.D.から要請を受けて、オズコープ社が交渉を仲介したバナー博士の進退に関しても、ちゃんと成果が出ている。
ハルクは暴れているし、落ちてくるアイアンマンを空中でキャッチするだろう。
バッキーはキャプテンの加勢に行きたそうだったが、自らの意思でこの場に残り、オズコープの災害派遣部隊と共に泥臭い地上戦に励んでいる。
私も、義兄も、他のスタッフも、皆が力を合わせ、一致団結して宇宙人に立ち向かう。
絶対に私達は此処を退かない。
───そして、数時間後。
ワームホールが閉じた。
原作通り、アイアンマンは核弾頭をワームホールへ放り込み、チタウリの母船が爆破した。
空を埋め尽くしていた脅威は去り、マンハッタンに静寂が戻ったのだ。
だが、アベンジャーズが「シャワルマでも食いに行くか」などと呑気に言っている裏で、私の真の戦いが幕を開けたのである。
「戦闘は終わったようですが、災害派遣部隊は引き続き救助活動を行って下さい。医療チームも傷病者のケアに専念して下さい。オフィスに連絡して施設チームに重機を持って来させます。瓦礫撤去と一次道路の仮復旧に入りましょう」
私は一息着く間も無く、即座にニューヨーク市警、消防局、そして国務省へハッキングを開始した。データを集め、分析していく、
「アルバ、市民の死亡率は想定の1割以下に抑えられたよ。だが、街の被害は甚大だ……」
「ええ、マイケル義兄さん。ここからがオズコープの真骨頂です。スーパーヒーロー達では出来ない復興事業。その利権と主導権を手に入れましょう」
まず着手したのは、圧倒的な現場の実質支配と実績の保全だ。
州軍がノロノロと現場に到着した頃には、マンハッタン北部の主要エリアはすでにオズコープの重装甲車両とレスキュー隊によって完全に封鎖されていた。
救護された傷病者数千人のカルテ、避難誘導データ、そしてオズコープ社の民間救助隊が市民を命がけで守り抜いた記録映像が、完璧な公文書形式で整理されている。
チタウリの残骸や装甲は、危険有害物質の緊急回収という名目で、速やかにオズコープのラボへ搬送済みであった。
更に翌朝。
全米のテレビ局は、スターク・タワーの前でポーズを決めるアベンジャーズと共に、血と汗に塗れながら数千人のニューヨーカーを救い出し、自社製品を用いて無償の野外病院を運営したオズコープ・インダストリーズとマイケル・モービウス社長の姿も大々的に報じていた。
市民の命を繋いだ企業オズコープという圧倒的世論の支持。
これによってニューヨーク市議会も連邦政府も、マンハッタン再開発事業におけるオズコープ・インダストリーズの優先受注権を認めざるを得なくなったのだ。
「ふふふ、復興特需のインフラ工事受託、医療用人工血液および完全再生医療の全米標準規格化、そして異星人技術の独占回収!最高じゃないか」
「……アルバ、顔が完全に悪代官だよ。まあ、おかげで新しい医療研究の予算は無限に組めそうだがね」
呆れ顔のマイケル義兄さんに、私は満面の笑みを返した。
脳内のオバ爺も大歓喜だ。早速と色々聞いていかねば、な。
ゾラ爺は未知の技術に興奮している。此方も早いところ解析して、実用段階まで持っていかないとだな。
泥を啜り、命の選別を行い、ブチギレて異星人を叩き潰したNY決戦。
当日の私の行動自体は、そこまで物語に大きな影響を与えてはいない。
しかし、積み重ねた準備は、目で見える形で成果として表れた。
素晴らしい原作改変であったと、私は胸を張って誇れる。
この調子でサノスにも挑んでいきたい。
『アイアンマン3』イベント消滅。
一度、此処で完結します。
フェーズ2、3の構想が立てば、
更新再開するかも知れません。
皆様、沢山の応援ありがとうございました。
m(*_ _)m
2012年にGameloftからリリースされたスマホアプリ版『The Amazing Spider-Man』を
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