異世界おじさん、原神の世界へ   作:ところてんの

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第27話「星を見る少女」

モンドへ戻る街道を、俺たちは歩いていた。

 

遺跡を出てから、それなりに時間が経っている。

 

先ほどまでいた場所とは違い、街道周辺は穏やかだった。

 

青い空。

 

風に揺れる草。

 

遠くにはモンドの城壁が見えている。

 

街道を歩く人や、荷物を積んだ馬車も見かける。

 

こうして見ると、さっきまでの出来事が嘘みたいだった。

 

「モンドに着いたら、まず冒険者ギルドだな」

 

ベネットが歩きながら言った。

 

「そのあと、準備を整えて――」

 

「西の森」

 

蛍が続ける。

 

「ああ」

 

ベネットが頷いた。

 

「そこを調べる」

 

それ以上、詳しい話はしなかった。

 

もう必要なことは確認してある。

 

今は一度モンドへ戻る。

 

それだけだ。

 

俺も特に口を挟まず、街道を歩いていた。

 

隣ではパイモンが何かを食べている。

 

「なあ、パイモン」

 

「ん?」

 

「それ、いつ買ったんだ?」

 

「さっき!」

 

「……いつ?」

 

「気づいたら持ってた!」

 

「いや、それ大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だぞ!」

 

「何が?」

 

「食べられるから!」

 

「そういう問題じゃないだろ」

 

俺が呆れていると、ベネットが笑った。

 

「パイモンらしいな!」

 

「そうだろ?」

 

パイモンが胸を張る。

 

フィッシュルはそんな二人を横目に見ながら歩いている。

 

オズはその隣を飛んでいた。

 

おじさんは少し前を歩いている。

 

相変わらず、周囲を気にしているようだった。

 

俺はその背中を見る。

 

こっちに来てから、いろいろあった。

 

ヒルチャール。

 

遺跡。

 

フィッシュルとオズ。

 

ベネット。

 

そして、西へ向かう魔物たち。

 

ゲームの中では、ただのイベントとして見ていたもの。

 

それが今では、俺たち自身が関わる出来事になっている。

 

「……」

 

俺は前を向いた。

 

そのときだった。

 

街道の先に、一人の少女が立っていた。

 

青い髪。

 

大きな帽子。

 

星を思わせる装飾が施された衣装。

 

遠くからでもかなり目立つ。

 

というか。

 

……いや、服装すごいな。

 

ゲーム画面で見たことはある。

 

でも、実際に目の前にすると印象が違う。

 

俺には、その人物が誰なのか分かった。

 

モナだ。

 

「誰かいるぞ」

 

ベネットが言った。

 

「知ってる人か?」

 

「いや」

 

俺は首を振った。

 

もちろん、本当は知っている。

 

ゲームの中で何度も見た。

 

占星術師のモナ。

 

でも、ここでは初対面だ。

 

向こうが俺たちを知らない以上、普通に接するしかない。

 

少女はこちらに気づいた。

 

ゆっくりと振り返る。

 

そして、俺たちを見た。

 

視線が一人ずつ動いていく。

 

蛍。

 

パイモン。

 

俺。

 

おじさん。

 

ベネット。

 

フィッシュル。

 

オズ。

 

最後に、もう一度俺たち全員を見る。

 

「……あなたたち」

 

少女が口を開いた。

 

「少し変わった組み合わせね」

 

「そうか?」

 

ベネットが首を傾げる。

 

「私はそう思うけれど」

 

少女は淡々と答えた。

 

「モンドでは、あまり見ない顔が多いもの」

 

「俺たち、最近来たばっかりなんだ」

 

ベネットが答える。

 

「そう」

 

少女は頷いた。

 

その視線が、今度は俺に向く。

 

「あなたは?」

 

「俺?」

 

「ええ」

 

「俺はたかふみ」

 

俺は簡単に答えた。

 

「こっちは蛍」

 

蛍が軽く手を上げる。

 

「パイモンだぞ!」

 

パイモンも名乗る。

 

そして。

 

おじさんが口を開いた。

 

「俺はウルフガンブラッドだ」

 

「……」

 

沈黙。

 

俺は思わずおじさんを見る。

 

「おじさん、その名前まだ使うの?」

 

「必要だからだ」

 

「いや、何に必要なんだよ」

 

パイモンも首を傾げる。

 

「ウルフガンブラッド……長いぞ」

 

ベネットが素直に言った。

 

「なんと仰々しき名……」

 

フィッシュルが腕を組む。

 

「だが、汝らしい名ではある」

 

「確かに印象には残りますね」

 

オズが言う。

 

蛍は少し考えてから、おじさんを見る。

 

「おじさんでいいと思う」

 

「……」

 

おじさんは黙った。

 

俺はため息をつく。

 

「ほら。みんなそう思ってるって」

 

「必要だからだ」

 

「だから、その必要性が分からないって」

 

少女――モナは、俺たちを見ていた。

 

少しの間。

 

それから、ほんのわずかに口元を緩める。

 

「……あなたたち、面白いわね」

 

「面白いというか、おじさんが変なんだよ」

 

「たかふみ」

 

「何?」

 

「余計なことを言うな」

 

「いや、今の流れでそれは無理だろ」

 

パイモンが笑う。

 

「おじさん、変な名前だな!」

 

「パイモンまで言うのか」

 

「だってそうだろ?」

 

ベネットも笑っている。

 

「でも、覚えやすい名前ではあるな!」

 

「覚えやすいか?」

 

「一度聞いたら忘れないだろ?」

 

「それはそうだけど……」

 

俺はもう何も言わないことにした。

 

少女は帽子のつばを軽く持ち上げた。

 

「私はモナ」

 

「モナ……」

 

ベネットが繰り返す。

 

「占星術師よ」

 

「占星術師?」

 

パイモンが興味を示した。

 

「星を見る人か?」

 

「簡単に言えば、そうね」

 

モナは頷いた。

 

「ただの星空観察とは違うわ。星の動きから、様々なことを読み取るの」

 

「未来とか?」

 

「そういうものも含まれるわ」

 

「すげえな」

 

ベネットが素直に感心した。

 

モナは少し得意げな顔になる。

 

「もちろん。占星術は簡単なものではないもの」

 

「じゃあ、明日のことも分かるのか?」

 

「何でも分かるわけではないわ」

 

「そうなのか?」

 

「星は答えを示してくれる。でも、その意味を読み取るのは占星術師の仕事よ」

 

「なるほど」

 

ベネットは頷いた。

 

「じゃあ、冒険の役に立つかもしれないな」

 

「場合によるわね」

 

「そっか」

 

ベネットは素直に引き下がった。

 

そのやり取りを見て、俺は少し笑った。

 

ゲームでもモナは自信家だった。

 

実際に会ってみても、その印象は変わらない。

 

「星を読み、運命を見通す者か」

 

フィッシュルがモナを見る。

 

「汝もまた、星々の導きを受けし者なのだな」

 

「あなたも星に興味があるの?」

 

モナが聞く。

 

「無論!」

 

フィッシュルが胸を張る。

 

「星々は我が運命を示し、我が歩むべき道を――」

 

「お嬢様はこういう話が好きなんですよ」

 

オズが横から説明した。

 

「ちょっと、オズ!」

 

「事実ですので」

 

「む……」

 

フィッシュルが黙る。

 

モナは少しだけ目を細めた。

 

「なるほど」

 

「何が『なるほど』なのだ!」

 

「別に悪い意味ではないわ」

 

「ならばよい!」

 

フィッシュルは満足そうに頷いた。

 

「私はモナ。あなたはフィッシュルね」

 

「然り!」

 

「それから、こちらは?」

 

モナがオズを見る。

 

「私はオズと申します」

 

オズが丁寧に頭を下げる。

 

「彼女の従者を務めております」

 

「なるほど」

 

モナは頷いた。

 

「ずいぶん仲がいいのね」

 

「当然だ!」

 

フィッシュルが言う。

 

「我らは深き絆によって結ばれている!」

 

「そうですね」

 

オズも微笑んだ。

 

モナは俺たちをもう一度見回した。

 

「それにしても、本当に珍しいわね」

 

「何が?」

 

俺が聞く。

 

「あなたたちの組み合わせよ」

 

「まあ……確かに」

 

俺も周りを見る。

 

蛍。

 

パイモン。

 

おじさん。

 

ベネット。

 

フィッシュル。

 

オズ。

 

確かに、ゲームでこんな組み合わせを見ることはなかった。

 

そもそも、おじさんとたかふみがいる時点で完全に別物だ。

 

「何か目的があるの?」

 

モナが聞いた。

 

「ちょっと調べてることがある」

 

俺は答える。

 

「モンドに戻って、準備してから動く予定だ」

 

「そう」

 

モナはそれ以上は聞かなかった。

 

無理に聞き出そうとする様子もない。

 

ただ。

 

何か考えているようだった。

 

「……」

 

モナが空を見る。

 

俺もつられて空を見上げた。

 

青い空。

 

雲がゆっくり流れている。

 

今は昼間だから、星なんて見えない。

 

それでもモナはしばらく空を見ていた。

 

「どうしたんだ?」

 

ベネットが聞く。

 

「少し気になっただけよ」

 

「何が?」

 

「星の流れ」

 

モナが答える。

 

「最近、モンド周辺の星に少し乱れがあるの」

 

俺は黙った。

 

第26話で話していた魔物の件とは別の話だ。

 

少なくとも、モナは魔物の情報を説明しようとしているわけではない。

 

「星に乱れ?」

 

パイモンが聞く。

 

「ええ」

 

モナは頷く。

 

「ほんのわずかなものだけれどね」

 

「それって、悪いことなのか?」

 

「まだ分からないわ」

 

「じゃあ、なんで気になるんだ?」

 

「普段と違うからよ」

 

モナは当然のように答えた。

 

「占星術師なら、その程度の変化でも気になるものなの」

 

「なるほど……」

 

ベネットが頷く。

 

「何か起きるかもしれないってこと?」

 

「可能性がある、という程度よ」

 

モナは空を見ながら言った。

 

「まだ何かが起きたと決まったわけではないわ」

 

「ふーん」

 

パイモンは少し考える。

 

「じゃあ、そんなに心配しなくてもいいのか?」

 

「今のところはね」

 

モナはそう答えた。

 

けれど、その視線は空から離れなかった。

 

俺はモナを見る。

 

ゲームの中で知っているキャラクター。

 

その知識があるからこそ、気になる。

 

モナは占星術師だ。

 

彼女がわざわざ「星の流れが乱れている」と言う。

 

それだけで、何かあるのではないかと思ってしまう。

 

でも。

 

ゲームと現実は違う。

 

俺が知っている展開が、そのまま起きるとは限らない。

 

だから、今は余計なことを決めつけない。

 

「それで、モナはこれからどうするんだ?」

 

俺が聞いた。

 

「少し調べるつもりよ」

 

「一人で?」

 

「基本的にはそうね」

 

「危なくないのか?」

 

ベネットが聞く。

 

「占星術師だからといって、戦えないわけではないもの」

 

モナは少し不満そうに答えた。

 

「それに、私は自分の身くらい自分で守れるわ」

 

「ああ、そういうことか」

 

ベネットはすぐに納得した。

 

「じゃあ大丈夫だな!」

 

「……あなた、ずいぶん素直ね」

 

「そうか?」

 

「ええ」

 

モナは少し呆れたように笑った。

 

そのとき。

 

おじさんがモナを見る。

 

「星の乱れ」

 

「ええ」

 

「方向は分かるのか?」

 

モナが少し驚いた。

 

「……分かるわ」

 

「どちらだ」

 

モナは空を見た。

 

それから、ゆっくりと西を向く。

 

「……あちら」

 

俺たちの進もうとしている方向と同じだった。

 

「西か」

 

蛍が呟く。

 

「ええ」

 

モナは頷いた。

 

「ただ、それだけでは何も断定できないわ」

 

「そうだな」

 

蛍も頷く。

 

「でも、気になるな」

 

ベネットが言う。

 

「俺たちもそっちへ行く予定なんだ」

 

「そうなの?」

 

モナがこちらを見る。

 

「ああ」

 

俺が答えた。

 

「だから、もしよかったら一緒に来ないか?」

 

モナは少し考えた。

 

「あなたたちと?」

 

「そう」

 

「……」

 

モナは俺たちを見る。

 

フィッシュル。

 

オズ。

 

ベネット。

 

蛍。

 

パイモン。

 

おじさん。

 

そして俺。

 

しばらく考えたあと。

 

「いいわ」

 

モナが答えた。

 

「私も、その方向を調べる必要があるもの」

 

「本当か?」

 

ベネットが喜ぶ。

 

「じゃあ一緒に行こうぜ!」

 

「ええ」

 

「やったな、たかふみ!」

 

「なんで俺に言うんだよ」

 

「仲間が増えたから!」

 

「まあ、それはそうだけど」

 

俺はモナを見る。

 

ゲームで知っていた人物が、本当に仲間になる。

 

やっぱり変な感じだ。

 

でも、悪い気はしなかった。

 

「よろしく、モナ」

 

蛍が言う。

 

「こちらこそ」

 

モナは軽く頷いた。

 

「私もあなたたちの調査に付き合うわ」

 

「よろしく!」

 

ベネットが笑う。

 

「何かあったら、俺が守るからな!」

 

「あなたは……」

 

モナがベネットを見る。

 

「随分と自信があるのね」

 

「もちろん!」

 

「そう」

 

モナは少しだけ笑った。

 

「期待しておくわ」

 

「任せてくれ!」

 

ベネットが胸を張る。

 

「……大丈夫かな」

 

俺が小さく呟く。

 

「大丈夫だ!」

 

ベネットが即答する。

 

「根拠は?」

 

「ない!」

 

「おい」

 

パイモンが吹き出した。

 

「ベネット、それじゃダメだろ!」

 

「でも、何とかなるって!」

 

「その考え方で今まで大丈夫だったのか?」

 

「まあ、色々あったけど……」

 

ベネットが少し目を逸らす。

 

俺は嫌な予感がした。

 

「……色々?」

 

「気にするな!」

 

「いや、気になるだろ」

 

モナがベネットを見る。

 

「あなた、少し変わってるわね」

 

「よく言われる!」

 

「そこは否定しないんだな……」

 

俺は苦笑した。

 

再び歩き始める。

 

今度は一人増えている。

 

モナが俺たちの列に加わった。

 

歩きながら、モナは周囲を観察している。

 

ときどき空を見上げる。

 

フィッシュルも何か言葉を交わしている。

 

オズは二人の会話を聞いている。

 

ベネットはパイモンと話している。

 

蛍は少し前を歩くおじさんの背中を見ていた。

 

俺はその様子を眺めながら歩く。

 

ゲームとは違う。

 

当たり前だけど、ここではキャラクターが勝手に仲間になるわけじゃない。

 

本人たちが話して。

 

考えて。

 

自分の意思で一緒に行くことを決める。

 

それだけなのに、ゲームとは全然違って感じる。

 

「たかふみ」

 

「ん?」

 

モナが隣に来た。

 

「さっきから何を考えているの?」

 

「俺?」

 

「ええ」

 

「いや……」

 

ゲームのことを考えていた、とは言えない。

 

「モンドに来てから、色々変わったなって」

 

「変わった?」

 

「最初は何も分からなかったから」

 

「今も分からないことは多いんじゃない?」

 

「まあ、それはそう」

 

俺は苦笑した。

 

「でも、少しずつ慣れてきた気はする」

 

「そう」

 

モナは前を見る。

 

「それならいいことね」

 

「モナは?」

 

「私?」

 

「こういうことには慣れてるのか?」

 

「何に?」

 

「知らない人たちと一緒に行動すること」

 

「慣れているとは言えないわね」

 

モナは少し考える。

 

「私は一人で研究することが多いもの」

 

「そうなのか」

 

「ええ」

 

「じゃあ、今回だけ特別?」

 

「そういうことになるわね」

 

「なんか申し訳ない」

 

「別にいいわ」

 

モナは淡々と答えた。

 

「私自身にも目的があるから」

 

「そっか」

 

それなら納得できる。

 

少し前を歩いていたフィッシュルが、こちらを振り返る。

 

「モナ!」

 

「何?」

 

「汝の星読みの力、いずれ我が運命にも――」

 

「お嬢様」

 

オズが止める。

 

「まずは目的地へ向かいましょう」

 

「む……」

 

フィッシュルが不満そうな顔をする。

 

「それもそうだな」

 

ベネットが笑った。

 

「モナの占星術の話は、移動しながらでも聞けるだろ?」

 

「もちろんよ」

 

モナが答える。

 

「ただし、簡単な話ではないわよ」

 

「大丈夫!」

 

ベネットが言う。

 

「俺、こういう話好きだから!」

 

「本当か?」

 

「分からないけど!」

 

「お前な……」

 

みんなが笑う。

 

モナも小さく笑っていた。

 

街道の先に、モンドの城壁が近づいてきた。

 

風車がゆっくりと回っている。

 

街からは人々の声が聞こえてくる。

 

見慣れた景色。

 

ゲームで何度も見た景色。

 

それなのに、今は少し違って見えた。

 

モナがいる。

 

フィッシュルがいる。

 

ベネットがいる。

 

そして、俺たちがいる。

 

ゲームのパーティーではない。

 

現実の旅の仲間だ。

 

「もうすぐモンドだな!」

 

ベネットが声を上げる。

 

「やっと着くぞ!」

 

「まず飯!」

 

パイモンが叫ぶ。

 

「お前はそればっかりだな」

 

俺が笑う。

 

「腹が減ってるんだから仕方ないだろ!」

 

「まあ、それはそうだけど」

 

「たかふみも腹減ってるだろ?」

 

「……少し」

 

「ほら!」

 

「何が『ほら』なんだよ」

 

ベネットが笑う。

 

蛍も少し笑っている。

 

フィッシュルは呆れたように二人を見る。

 

オズは静かに微笑んでいた。

 

モナはそんな俺たちを見ている。

 

「本当に賑やかね」

 

「いつもこんな感じだ」

 

俺は答えた。

 

「そう」

 

モナは前を向く。

 

「悪くないわ」

 

その言葉に、俺は少しだけ驚いた。

 

「……そうか」

 

「ええ」

 

それ以上は言わなかった。

 

モンドの門が近づいてくる。

 

街へ入る人々が見える。

 

俺たちもその列へ向かって歩いていく。

 

その途中。

 

おじさんが突然立ち止まった。

 

「どうした?」

 

俺が聞く。

 

おじさんは空を見る。

 

「……」

 

何かを確認しているようだった。

 

モナも気づいたらしい。

 

「何か感じたの?」

 

「いや」

 

おじさんは少し間を置いて答えた。

 

「今は何もない」

 

「そう」

 

モナはそれ以上聞かなかった。

 

俺も聞かない。

 

おじさんが何かを感じたのか、それとも単に周囲を確認しただけなのか。

 

今は分からない。

 

ただ。

 

「行くぞ」

 

おじさんが歩き出す。

 

「分かった」

 

俺たちも後を追う。

 

門をくぐる。

 

モンドの街並みが目の前に広がった。

 

石造りの建物。

 

風車。

 

人々の声。

 

店から漂ってくる料理の匂い。

 

そして、広場へ続く道。

 

ゲームの中で何度も見た場所。

 

でも。

 

今は自分の足で歩いている。

 

「やっぱりモンドっていいな!」

 

ベネットが嬉しそうに言った。

 

「帰ってきたって感じがする!」

 

「ベネット、ここが故郷なのか?」

 

「まあ、よく来る場所だからな!」

 

「なるほど」

 

俺は笑った。

 

「じゃあ、まずギルドだな」

 

「そうだ!」

 

ベネットが頷く。

 

俺たちは冒険者ギルドへ向かって歩き出した。

 

モナも一緒だ。

 

第26話で集めた情報。

 

そして、モナが見つけた星の乱れ。

 

それらがどこへ繋がっているのかは、まだ分からない。

 

ただ。

 

次に向かう場所は決まっている。

 

西。

 

その先に何があるのか。

 

まだ誰にも分からない。

 

俺も知らない。

 

ゲームでは知っているはずなのに。

 

この世界で何が起きるのかまでは、分からない。

 

だから。

 

今は一つずつ確かめていくしかない。

 

「たかふみ!」

 

前からベネットの声が飛んできた。

 

「早く来いよ!」

 

「分かったって!」

 

俺は走り出す。

 

モナもその後ろを歩いている。

 

フィッシュルとオズ。

 

蛍。

 

パイモン。

 

ベネット。

 

おじさん。

 

そして、俺。

 

少しずつ変わっていく旅。

 

ゲームとは違う物語。

 

その変化を感じながら、俺たちはモンドの街を進んでいった。

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