原神転移 異世界おじさん   作:ところてんの

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第7話「異世界帰りの剣」

 モンド城へ入ってから、まだそれほど時間は経っていない。

 

 それなのに、俺たちは西風騎士団の本部に呼ばれていた。

 

 理由は単純だった。

 

 俺たちが何者なのか。

 

 どんな力を持っているのか。

 

 そして――危険な存在ではないのか。

 

 それを騎士団側が確認する必要があるらしい。

 

 まあ、当然だと思う。

 

 突然、身元の分からない異世界人が二人も現れた。

 

 しかも、そのうち一人は見たこともない魔法を使う。

 

 さらに、その魔法を使った本人は妙に落ち着いている。

 

 俺だったら警戒する。

 

 むしろ、よく今まで普通に話してくれたなと思う。

 

「こちらです」

 

 案内してくれているのはアンバーだった。

 

 城内の一角にある訓練場へ向かって歩いている。

 

 その後ろにはジンさん、ガイアさん、リサさんもいる。

 

 蛍とパイモンも一緒だ。

 

 そして、その中心にいるのが――。

 

「……おじさん」

 

「なんだ」

 

「本当にやるの?」

 

「頼まれたからな」

 

「いや、そうだけど……」

 

 おじさんはいつもの調子だった。

 

 緊張している様子はない。

 

 まあ、こういうところは昔からそうだ。

 

 異世界から帰ってきた叔父は、俺が知っている範囲でも普通じゃない。

 

 十七年間も異世界にいた。

 

 そこで魔物と戦い、精霊魔法を覚え、何度も死にかけたらしい。

 

 その経験を考えれば、騎士団の訓練場に連れてこられた程度では緊張もしないのだろう。

 

「それにしても……」

 

 俺は周囲を見回した。

 

 訓練場には木製の標的や武器が並んでいる。

 

 いかにも騎士団の訓練場という感じだ。

 

 ゲームで見た場所とは違う。

 

 当然だけど、実際に人が使っている場所を見ると印象が変わる。

 

 ここで本当に騎士たちが訓練している。

 

 そう考えると、妙な感じがした。

 

「たかふみ」

 

「ん?」

 

 蛍が隣から声をかけてきた。

 

「おじさん、大丈夫?」

 

「まあ、大丈夫だと思う」

 

 俺は即答した。

 

「むしろ問題があるとしたら、やりすぎないかどうかだと思う」

 

「……なるほど」

 

 蛍も少しだけ納得したようだった。

 

「おじさんなら、やりそう」

 

「だろ?」

 

「おい」

 

 前を歩いていたおじさんが振り返る。

 

「何の話だ」

 

「いや、なんでもない」

 

「そうか」

 

 それだけ言って、おじさんは前を向いた。

 

 ……この人、本当に話を聞いているのか怪しい。

 

 やがて訓練場の中央まで来ると、ジンさんが立ち止まった。

 

「ここなら問題ないでしょう」

 

 ジンさんが周囲を確認する。

 

「今回お願いしたいのは、あなたの戦闘能力についてです」

 

「戦闘能力か」

 

「はい」

 

 ジンさんはおじさんを見る。

 

「先ほど、アンバーから報告を受けました。あなたが使った魔法についても確認しています」

 

「精霊魔法だな」

 

「ええ」

 

 リサさんが一歩前へ出る。

 

「それについては、私もとても興味があるわ」

 

 柔らかな笑みを浮かべている。

 

「元素とは違う力なのよね?」

 

「そうだ」

 

「精霊と契約して、力を借りる……という理解でいいのかしら?」

 

「正確には、精霊に頼んでいる」

 

「まあ」

 

 リサさんが少し楽しそうに目を細める。

 

「随分と変わった魔法なのね」

 

「この世界にはないのか?」

 

「少なくとも、私が知る限りでは聞いたことがないわ」

 

 リサさんの視線がおじさんの手へ向く。

 

「だからこそ、実際にどんなものなのか見てみたいの」

 

「分かった」

 

 おじさんはあっさりとうなずいた。

 

「まず魔法を使う」

 

 そう言うと、おじさんは訓練場の奥へ向かって手を伸ばした。

 

「ワーグレント・マグナ――疾風操作」

 

 瞬間。

 

 風が走った。

 

 訓練場に置かれていた標的が、わずかに横へ動く。

 

 その動きは、自然な風とは明らかに違った。

 

 まるで見えない手に押されたように、標的の位置がずれる。

 

「……風?」

 

 アンバーが目を丸くする。

 

「でも、元素反応が……」

 

「やっぱり風に見えるよな」

 

 俺は小さくつぶやいた。

 

 ゲームで見ていた俺からすれば、見慣れた光景だ。

 

 だけど、ここにいる人たちにとっては違う。

 

 風元素と似ている。

 

 でも、元素ではない。

 

 その違いはかなり大きいらしい。

 

「興味深いわね」

 

 リサさんが楽しそうに言った。

 

「風を操っているように見えるのに、元素の力とは違う……」

 

「そうだ」

 

「なるほど」

 

 リサさんはそれ以上追及しなかった。

 

 ただ、観察する目だけは明らかに変わっていた。

 

 研究者の目。

 

 たぶん、後で色々質問される。

 

 俺はなんとなくそんな予感がした。

 

「次だ」

 

 おじさんが言う。

 

 俺は思わず身構えた。

 

 知っている。

 

 ここからが、おじさんの本来の戦い方だ。

 

 おじさんは腰を落とした。

 

 右手を前へ。

 

 そして――。

 

「キライド ルギド リオルラン――光剣顕現」

 

 光が集まった。

 

 おじさんの手の中で、まばゆい光が一本の形を作っていく。

 

 次の瞬間。

 

 そこには一本の剣があった。

 

 刀身そのものが光でできている。

 

「……剣?」

 

 アンバーが驚く。

 

「すごい……」

 

 蛍も目を向けている。

 

 俺は見慣れている。

 

 グランバハマルで、おじさんが使っていた光の剣。

 

 ゲームには存在しない。

 

 少なくとも、俺が知っている原神の装備や武器とはまったく違う。

 

 だけど、おじさんにとってはこれがいつもの武器だった。

 

「それが、あなたの武器ですか?」

 

 ジンさんが尋ねる。

 

「ああ」

 

「非常に珍しい形状ですね」

 

「光でできている」

 

「それは見れば分かります」

 

 ガイアさんが笑う。

 

「だが、面白い武器だな」

 

 おじさんは答えず、剣を構えた。

 

 その瞬間だった。

 

 空気が変わった。

 

 さっきまでの気の抜けたおじさんとは違う。

 

 表情がほとんど変わっていないのに、視線だけが鋭くなる。

 

 訓練場に並んでいる標的を見る。

 

 距離。

 

 位置。

 

 高さ。

 

 動き。

 

 周囲の障害物。

 

 俺には、それらを一つずつ確認しているように見えた。

 

「……始めます」

 

 ジンさんが合図する。

 

 訓練用の標的が動き出した。

 

 一つ。

 

 二つ。

 

 三つ。

 

 木製の人形が、おじさんへ向かって動く。

 

 おじさんはすぐには斬らなかった。

 

 まず、一歩下がる。

 

 最初の標的の攻撃をかわす。

 

 そのまま二つ目の標的の動きを確認。

 

 さらに三つ目との距離を取る。

 

「……?」

 

 アンバーが首を傾げた。

 

 俺も分かる。

 

 おじさんは、わざと攻撃していない。

 

 敵の動きを見ている。

 

 そして――。

 

「ワーグレント・マグナ――疾風操作」

 

 風が走る。

 

 標的の進行方向がわずかに変わった。

 

 本来なら、おじさんへ向かっていたはずの一体が横へ流れる。

 

 もう一体とぶつかりそうになる。

 

 その一瞬。

 

 おじさんが踏み込んだ。

 

 光の剣が走る。

 

 ――ガンッ!

 

 木製の標的が大きく弾き飛ばされた。

 

「速い……」

 

 アンバーが呟く。

 

 しかし、おじさんはそこで止まらない。

 

 次の標的へ向かう。

 

 だが、正面から突っ込んではいかなかった。

 

 一度横へ回り込む。

 

 標的が向きを変える。

 

 その動きに合わせて、おじさんも足を止める。

 

 そして再び――。

 

「ワーグレント・マグナ――疾風操作」

 

 風が標的を押す。

 

 攻撃の軌道がずれた。

 

 その隙間へ、おじさんが入り込む。

 

 光の剣が一閃。

 

 標的の中心を正確に打ち抜いた。

 

 木片が飛ぶ。

 

「なるほど……」

 

 ジンさんが静かに呟いた。

 

 ガイアさんも腕を組んでいる。

 

「剣だけで戦っているわけじゃないな」

 

「そうだな」

 

 おじさんが答える。

 

「魔法だけでもない」

 

 その言葉通りだった。

 

 おじさんは剣を振り回しているわけではない。

 

 魔法で全部吹き飛ばしているわけでもない。

 

 相手の位置を確認する。

 

 攻撃をかわす。

 

 魔法で動きをずらす。

 

 できた隙に接近する。

 

 そして剣で攻撃する。

 

 相手が変われば、その方法も変える。

 

 俺は今まで何度もおじさんの戦いを見てきた。

 

 でも、テイワットに来て改めて見ると、少し違って見えた。

 

 ゲームの戦闘には、基本的な型がある。

 

 元素スキルを使って、元素反応を起こして、通常攻撃をする。

 

 キャラクターによって得意な戦い方も違う。

 

 だけど、おじさんの戦い方には、決まった手順がない。

 

 その場で考える。

 

 相手を見て考える。

 

 地形を見て考える。

 

 距離を見て考える。

 

 そして、一番効率のいい方法を選ぶ。

 

「……おじさんって、こういう戦い方だったんだよな」

 

 俺は小さく呟いた。

 

「何か言った?」

 

 蛍が聞いてくる。

 

「いや。改めて見ると、すごいなって」

 

「うん」

 

 蛍も訓練場を見る。

 

「強い」

 

「そうなんだけど……」

 

 俺は少し言葉を選んだ。

 

「ただ強いだけじゃないんだと思う」

 

 グランバハマル。

 

 おじさんが十七年間過ごした異世界。

 

 俺は、その世界を知らない。

 

 おじさんから話を聞いただけだ。

 

 でも、今なら少しだけ分かる気がする。

 

 あの世界で生き残るためには、単純な力だけじゃ足りなかった。

 

 相手より強いから勝てる。

 

 そんな簡単な話ではない。

 

 強い敵が出てきたらどうするか。

 

 魔法が効かなかったらどうするか。

 

 正面から戦えないならどうするか。

 

 逃げるのか。

 

 地形を使うのか。

 

 相手を誘導するのか。

 

 別の魔法を使うのか。

 

 おじさんは、その場で考えていたんだろう。

 

 そして今も同じだ。

 

 テイワットに来ても、それは変わっていない。

 

「もう一度」

 

 おじさんが言った。

 

 ジンさんが標的を増やす。

 

「お願いします」

 

 今度は、動きが少し複雑になった。

 

 左右から標的が来る。

 

 正面にも一体。

 

 おじさんは後ろへ下がる。

 

 右の標的が先に攻撃してくる。

 

 かわす。

 

 その勢いを利用して左へ移動。

 

 正面の標的が迫る。

 

 おじさんは剣を振る――と思った。

 

 しかし、直前で止める。

 

「ワーグレント・マグナ――疾風操作」

 

 風が横から吹いた。

 

 正面の標的がわずかに傾く。

 

 そのまま右の標的と接触。

 

 二体の動きが重なる。

 

 おじさんはその隙間を抜けた。

 

 光の剣が横薙ぎに走る。

 

 二体が同時に倒れた。

 

「……すごい」

 

 アンバーが思わず声を漏らす。

 

「魔法で攻撃すると思ってたけど、こういう使い方もするんだ」

 

「精霊魔法は便利だ」

 

 おじさんが答える。

 

「攻撃だけじゃない。相手の動きを変えるのにも使える」

 

「つまり、戦闘そのものを組み立てているのね」

 

 リサさんが言う。

 

「ああ」

 

「面白いわ」

 

 リサさんは本当に楽しそうだった。

 

「元素魔法とは、かなり考え方が違うのね」

 

「そうかもしれない」

 

 おじさんはあまり気にしていない。

 

 たぶん本人からすると、長年使ってきた普通の戦い方なのだろう。

 

「俺には普通なんだが」

 

「普通じゃないと思うぞ」

 

 思わず口を挟んだ。

 

「そうか?」

 

「そうだよ」

 

 即答した。

 

「光る剣を出して、風で敵の動きを変えて、その隙に斬るんだぞ。十分普通じゃないから」

 

「……そうか」

 

「納得するなよ」

 

 パイモンが横から入ってくる。

 

「オイラもたかふみに同意だぞ!」

 

「そうか」

 

「おじさん、もうちょっと驚いてくれよ!」

 

 訓練場に小さな笑いが起こる。

 

 ジンさんもわずかに表情を緩めた。

 

 ただ、ガイアさんだけはまだおじさんを観察している。

 

「一つ聞いていいか?」

 

「なんだ」

 

「相手によって戦い方を変えるのか?」

 

「ああ」

 

「なるほど」

 

 ガイアさんは顎に手を当てる。

 

「なら、あんたの強さは剣や魔法だけじゃないわけだ」

 

「そうなるな」

 

「面白い」

 

 ガイアさんの目が細くなる。

 

「剣が効かない相手なら魔法を使う。魔法が使いにくいなら剣を使う。それでも駄目なら別の方法を考える」

 

「そうだ」

 

「ずいぶん実戦向きだな」

 

「生き残るために必要だった」

 

 おじさんは短く答えた。

 

 その言葉に、俺は少しだけ黙った。

 

 生き残るため。

 

 簡単な言葉だけど、十七年間の経験がそこに詰まっている。

 

 俺には想像できない。

 

 異世界に放り込まれて、誰も助けてくれない。

 

 日本の常識も通じない。

 

 そこで生きるために戦い続ける。

 

 おじさんは、それを本当にやってきた。

 

「最後に、剣だけでも見せてもらえますか?」

 

 ジンさんが尋ねる。

 

「分かった」

 

 おじさんは再び光の剣を構える。

 

 今度は魔法を使わない。

 

 標的が一体だけ動く。

 

 おじさんは正面から近づいた。

 

 攻撃。

 

 かわす。

 

 一歩踏み込む。

 

 そして斬る。

 

 動きは無駄が少ない。

 

 派手ではない。

 

 だけど、必要な動きだけで標的を倒している。

 

 剣術そのものも、決して素人ではない。

 

「……剣も扱える」

 

 ジンさんが言う。

 

「ですが、やはり魔法と組み合わせた時が最も特徴的ですね」

 

「ああ」

 

 おじさんは光の剣を消した。

 

 光が霧散する。

 

「俺はこの戦い方が一番慣れている」

 

 俺はその言葉を聞きながら、改めておじさんを見る。

 

 たぶん、この人がグランバハマルで生き残ってきた理由は、単純な強さだけじゃない。

 

 強い魔法を持っている。

 

 強い剣を使える。

 

 それだけなら、いつか限界が来る。

 

 相手のほうが強かったら終わりだ。

 

 でも、おじさんは違う。

 

 相手を見て。

 

 状況を見て。

 

 使えるものを探して。

 

 どうすれば勝てるのかを考える。

 

 そして、それを実行する。

 

 それが、おじさんの戦い方なんだ。

 

「……なるほどな」

 

「どうした?」

 

「いや」

 

 俺は首を振った。

 

「なんでもない」

 

 そして、少しだけ笑った。

 

 テイワットに来てから、俺は何度も思っていた。

 

 原神の世界で、おじさんの力はどこまで通用するんだろう。

 

 ゲームに存在しない精霊魔法。

 

 光の剣。

 

 異世界で身につけた戦闘経験。

 

 最初は、それだけを見ていた。

 

 でも違う。

 

 おじさんの強さは、力そのものだけじゃない。

 

 状況に合わせて戦い方を変えられること。

 

 それが一番大きい。

 

 テイワットには、元素を使う人間がいる。

 

 剣士もいる。

 

 弓使いもいる。

 

 魔法使いもいる。

 

 そして、ヒルチャールやアビス教団みたいな、普通の人間とは違う敵もいる。

 

 そんな世界でも――。

 

「おじさんの戦い方、普通に通用するんだな」

 

「そうか?」

 

「うん」

 

 俺は訓練場を見渡した。

 

「むしろ、かなり厄介だと思う」

 

「厄介?」

 

「敵からしたらだけど」

 

「なるほど」

 

 おじさんは少し考えてからうなずいた。

 

「なら問題ないな」

 

「そこ喜ぶところなのか?」

 

「戦闘では重要だろう」

 

「まあ……そうだけど」

 

 ガイアさんが笑う。

 

「確かに、敵に回したくはないな」

 

 ジンさんも静かにうなずいた。

 

「少なくとも、先ほどの戦いを見る限り、あなたが無闇に力を振るう人物ではないことは分かりました」

 

「必要がなければ戦わない」

 

「それなら安心しました」

 

 リサさんはおじさんを見ながら、柔らかく笑う。

 

「でも、精霊魔法については、あとで少し詳しく聞かせてもらいたいわ」

 

「いいぞ」

 

「まあ、素直なのね」

 

「説明するだけなら問題ない」

 

「ふふっ」

 

 リサさんが笑う。

 

 俺はその会話を聞きながら、嫌な予感がした。

 

「おじさん」

 

「なんだ」

 

「たぶん、これからリサさんにめちゃくちゃ質問されるぞ」

 

「そうか?」

 

「絶対そうだよ」

 

「分かった」

 

「いや、分かったじゃなくて……」

 

 そのとき。

 

「お腹すいた」

 

 おじさんが言った。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 俺は思わず固まった。

 

「今?」

 

「今だ」

 

「いや、戦闘能力の確認終わった直後だぞ?」

 

「だから腹が減った」

 

「切り替え早すぎるだろ!」

 

 パイモンが笑いながら叫ぶ。

 

「おじさんって、本当におじさんだな!」

 

「どういう意味だ」

 

「そのまんまだぞ!」

 

 訓練場に笑い声が広がる。

 

 俺もため息をついた。

 

 まあ、いいか。

 

 少なくとも、騎士団に敵意がないことは伝わった。

 

 そして俺も少しだけ理解できた。

 

 この世界で、おじさんがどう戦うのか。

 

 光の剣と精霊魔法。

 

 そして、その場で考えて最善を選ぶ判断力。

 

 それらを組み合わせた戦い方なら――。

 

 テイワットでも、十分に通用する。

 

 むしろこれから先、もっと強い敵と戦うことになったとしても。

 

 おじさんなら、そのときもきっと考えるのだろう。

 

 どうすれば勝てるか。

 

 どうすれば生き残れるか。

 

 そして――。

 

「たかふみ」

 

「何?」

 

「昼食は何だ?」

 

「……知らないよ」

 

「そうか」

 

「自分で聞いてこいよ!」

 

 異世界帰りの叔父は、今日もいつも通りだった。

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