少女と精霊の聖剣十年戦記 ~ひとりの少女が勇者になるまで~   作:美風慶伍

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13:カリナ、80人の英霊を召喚する

 カリナに率いられたアルカナヴァンガードの一団は中央大聖堂に一気になだれ込んだ。

 さらにははしごなどを用いて、外壁を直接乗り越える手段も行われた。四方八方から、怒涛のようにアルカナヴァンガードは突入していく。

 先行して行われた迫撃攻撃により、庭園敷地に配置されていた敵兵たちの半数はすでに滅していた。

 

「敵生存者多数、ですが戦力として動ける敵兵は少数です」

 

 敵魔族兵は迫撃の爆風により吹き飛ばされていた。しかもアルカナヴァンガードの魔道士が魔力付加したエンチャント弾丸だ。下級魔族の息の根を停めるには十分な威力を持っている。安堵気味の隊員たちの言葉にカリナは警戒を促した。

 

「報告了解しました。ですが警戒を怠らないで下さい。大聖堂内部を制圧するために突入点を確保します、正面や側面、可能な限りの扉を探して下さい」

「了解」

 

 剣を抜き、周囲に視線を巡らせる。そして、大聖堂の建物を速やかに包囲しようとする。だが、敵はそのタイミングを見計らっていた。

 

――パリィィンッ!――

 

 大聖堂の窓が割れる。ステンドグラスが破裂する。大聖堂内部から魔導の光弾が、魔力の付加された弓矢が放たれたのだ。

 

「敵襲! 回避!」

 

 カリナが叫ぶのと同時にアルカナヴァンガードの隊員たちは、即座に反応した。魔道士が防御結界を展開し、兵士は抜剣して矢を捌いていく。カリナも複数の矢で集中的に狙われたが、怯むことなくレギオンブレイドを振るい、すべての矢を薙ぎ払った。

 だが、敵の攻撃は止まない。割れた窓から、大聖堂の側面の扉から、屋根上から。内部に潜んでいた魔族兵が続々と現れたのである。しかも、上級の鎧と武器を身につけている。あきらかに上級格の魔族兵どもである。

 

「勇者覚悟!」

「勇者に連なるもの! 尽く死ねぇ!」

 

 裂帛の叫びとともに敵は襲いかかってくる。その数はアルカナヴァンガードの突入勢に匹敵する数である。そしてその猛攻も凄まじものだった。

 いたるところでアルカナヴァンガードの隊員たちと魔族兵の鍔迫り合いが発生する。カリナにも複数の魔族剣士が襲いかかって来たが、エルリックとその配下がカリナを護ってこれを排除した。

 

「カリナは傷つけさせん! 貴様らこそ魔界の地獄へ帰れ!」

「抜かせ! 人間どもが!」

 

 状況は拮抗していたが、思わぬ伏兵により膠着状況に陥った。だが、敵の企みをさらに深読みするならこれで終わるはずが無かったのだ。

 カリナはさらなる手を打った。

 

「この状況を突破する! エリュシオ!」

『了解、各兵士に剣舞に優れた英霊を召喚します』 

「お願い!」

 

 カリナは一歩下がった位置に立つと、聖剣レギオンブレイドを垂直に構えた。そして、英霊召喚の聖句を詠唱する。

 

英霊(エイドロン)召喚(イヴォーク)! 来たれ! 魔族を葬りし剣士たる英霊たちよ! 我軍の兵士たちにその剣技を授け給え!」

『歴代英霊より、剣士・剣豪の英霊80柱、召喚いたします』

 

 カリナの聖句と、エリュシオの声が、流れた時、聖剣から光が天上に向けて光の柱となって溢れる。そして、その光の柱は左右に広がり天界とつながった〝扉〟を出現させた。そして、その扉が開いた時、中からは、かつて魔族軍との戦いに命を燃やした歴代の英霊が大挙して躍り出てきたのである。

 

『我らを地上へと招いたのは何故(なにゆえ)ぞ!』

『現世勇者の意思か?!』

 

 歴代勇者の英霊たちは口々に叫ぶ。カリナはそれに答えた。

 

「いかにも! 魔王軍の謀略を叩くため制圧戦の最中です! 今こそ我が軍の兵士たちに皆様の剣技をお貸し下さい!」

『心得た!』

『魔王に連なるものを屠るためなら力を貸すぞ!』

『我が魂に、今こそ重なれ!』

 

 そして、80体の英霊たちは次々にアルカナヴァンガードの兵士たちの体に重なっていく。そして、その英霊の持つ力を一時的に兵士たちにもたらすのだ。

 それを見て、エルリックが叫んだ。

 

「これぞ好機! 一気に押し返し叩き伏せろ!」

「おおおおっ!」

 

 それまで兵士としては通常の剣技にとどまっていたアルカナヴァンガード隊員たちだったが、カリナが召喚した剣士系の英霊たちが憑依したことで、その剣技は一気に底上げされた。これにより、押され気味だったアルカナヴァンガードは状況を一気に押し返すとともに、魔族たちを次々に斬り伏せていったのである。

 

「覚悟ぉ!」

「ぐあっ!」

 

 ある者がロングソードで敵を袈裟斬りにすれば、

 

「きえぇぃ!」

 

――キィイインッ!――

 

 裂帛の気合いとともに魔族兵の持つ剣を叩き折った豪のものも現れた。

 

――ズヒュッ! ザバッ!――

 

 敵に左右から挟まれたにも関わらず、流れるような剣技で前と後ろの魔族兵を立て続けに斬り伏せる者も居た。今まさにアルカナヴァンガードの兵たちの剣技は、まさに勇者に比肩するほどの冴えを見せたのだ。

 こうして敵が大聖堂内部から繰り出してきた魔族兵はまたたく間に斬り伏せられた。そして、今度こそ、敵が立てこもる大聖堂へとその勢いのままに大聖堂の四方八方の扉という扉から、アルカナヴァンガードの精鋭たちは大聖堂へとなだれ込んでいく。

 

「行け! 我らも続け!」

 

 戦いは大聖堂内部へと駒を進めたのである

 

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